レビュー
sumika | 2016.12.07
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連載 第150週 sumika「SALLY e.p」
音楽で気持ちを切り替えてくれるオーソドックスなメロディメーカー
ある程度、キャリアのあるロックバンドは、トリッキーなアレンジに向かうタイプと、グルーヴのバリエーションを追求するタイプに分かれるようだ。多くのバンドは、縦ノリのストレートなロックからスタートして、そこから自分たちの進化の方向を模索し始める。スリルを求めるのも良し、ハッピーなサウンドを目指すのも良し。sumikaはどうやら後者のタイプ。いいメロディを基軸に置いて、それを楽しく聴かせるアレンジに向かった。今作の1曲目「MAGIC」では初めてホーンセクションをフィーチャーして、わいわいガヤガヤのハッピーサウンドを作り上げている。横に乗れるグルーヴは、幅広いリスナーに支持されることだろう。
「MAGIC」を聴いて思ったのは、sumikaは狭い意味でのロックというジャンルにこだわっていないのではないかということだった。「MAGIC」で聴ける楽しいシャッフルのリズムは、ミュージカルやアニメで使われてもおかしくない。ポップスの定番中の定番のこのリズムは、これまでたくさんの名曲で使われてきた。だからこそ、広いリスナーに届くのだが、逆に言えば過去の名曲との対決を迫られる。これまでたくさん発表されてきたシャッフル曲の中で、この曲は飛び抜けているのかどうか問われるからだ。そうしたことを避けるためにトリッキーなアイデアに頼るバンドが出てきたりもする。そしてsumikaは真っ向勝負を挑み、自分たちの個性をしっかりアピールしている。
このトライの課題は、ロックバンドとしてシャッフルをライブでどう昇華するのかということ。縦ノリの8ビートよりテクニックを要求されるこのリズムを、ライブで具現化できるのか。さらにはほかの曲とのバランスをどうするのか。これは今後のお楽しみということにしておこう。きっとライブでは「MAGIC」がいいアクセントになり、sumikaらしいシャッフルをオーディエンスと一緒に作り出すことだろう。
カップリングのTHE YELLOW MONKEYのカバー「TACTICS」は、ちょっと影のあるBメロを明るく仕上げているのがsumikaの個性だ。
音楽で気持ちを切り替えてくれるオーソドックスなメロディメーカーとして、来年が楽しみなバンドだ。
【文:平山雄一】
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リリース情報
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SALLY e.p
発売日: 2016年12月07日
価格: ¥ 1,278(本体)+税
レーベル: [NOiD]/murffin discs
収録曲
01.MAGIC
02.坂道、白を告げて
03.まいった
04.オレンジ
bonus track.TACTICS (THE YELLOW MONKEYカバー) ※初回盤のみ収録
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