歌を愛し、歌に愛され――尾崎裕哉の魅力が詰まった熱い一夜をレポート
尾崎裕哉 | 2017.03.29
3月22日に1st EP「LET FREEDOM RING」でデビューした尾崎裕哉。2月26日の福岡・BEAT STATIONを皮切りに行われた“LET FREEDOM RING TOUR 2017”は、各地に彼の歌声と力強い意志を届けるツアーとなった。3月11日に行われた東京・EX THEATER ROPPONGI公演も大盛況。たくさんの人々が、彼の音楽の魅力を噛み締めたこのライブの模様をレポートする。
バンドメンバーの関口シンゴ(G)、Sunapanng(B)、小林岳五郎(KEY)、杉山賢一郎(Dr)に続いて登場した尾崎裕哉。ハンマーを手にした彼がステージ上に置かれていたベルを打ち鳴らしたのを合図に、「Road」がスタートした。エレキギターを刻みながら、歌声を雄大に響かせた裕哉。観客が届ける手拍子と歓声が早くも熱い。このライブの時点でまだメジャーデビュー前の“新人”だが、圧倒的な華の持ち主であることを示すオープニングであった。
彼が実に気持ちよさそうにギターを弾いていた姿も、序盤から観客を沸かせていた。ハンドマイクでステージ上をアクティブに動き回りながら歌ったあと、アウトロでギターを手にしてエモーショナルなフレーズを弾いた「愛か恋なんてどうでもいいや」。燻し銀のブルージーなプレイが際立っていた「Smile」……メンバーたちと音を交わし合い、活き活きとギター弾く姿が随所で際立っていた。そんな場面を経て迎えた最初のインターバル。彼は「曲が書けなかった期間があって、言葉を並べても納得いかなくて、結構苦しかったんだよね。でも、こうやってみんなの前で歌えてるって、自分にとってすごいことなんです」と言い、爽やかな笑顔を浮かべた。そして、披露されたのは、創作の悩みを抱えていた頃、公園を散歩しているときに浮かんだのだという「つかめるまで」。迷いながらも懸命に前へ進もうとする姿が伝わって来る曲だった。
オリジナル曲のほか、ORIGINAL LOVE「接吻」の一節を歌ったりもした中盤で、観客を激しく魅了したのは、父親である尾崎 豊の曲「Forget-me-not」。目を潤ませながら耳を傾ける観客の間に大きな感動がさざ波のように広がっていくのを感じた。客席へマイクを向けたときに起こった美しい大合唱……ステージ上の裕哉は、穏やかな表情を浮かべながら、その柔らかな波動を受け止めていた。
社内政治にばかり目がいき、世の中全体を見る視点が欠けてくる同世代について語ったMCタイム。そして、「学生のときのほうが社会のことを考えてたなと。志を忘れないためにみんなに捧げます」と言い、アコースティックギターの弾き語りで披露された「流れる風のように」。言葉を溢れ返らせるフォークソング的な歌唱スタイルで、強いメッセージを届ける曲であった。続いて、前曲同様にアコギの弾き語りで届けられた尾崎 豊の「I LOVE YOU」。観客の歌声も加わり、心地よいムードが広がった。
再びバンド編成に戻った「君と見た通り雨」のあとに迎えたインターバル。3月22日に1st EP『LET FREEDOM RING』をリリースすることに触れつつ、「人はなんで人を愛してしまうのか。その答えを君と一緒に探したいと思って書いた曲です」と言い、歌い始めたのは「Stay by my Side」。スタンドマイクに向かって一心に歌い上げる彼を見つめ、耳を傾ける観客の集中力がすごい。続いて、尾崎 豊の「僕が僕であるために」。裕哉が奏でるエレキギター+歌のみで届けられた1コーラス目を経て、バンドメンバーたちの演奏も合流。ソウルやブルースフィーリングに満ちたサウンドを響かせ、観客の手拍子を誘っていた。そして、その熱気のまま突入した「27」。軽快なロックサウンドに包まれながらハンドマイクで歌う彼の姿が雄々しかった。
「なんと次で最後の曲です。最初からやりたいよね(笑)。でも、できないのは、またライブに来る口実になりませんよね」……「口実になりますよね」と言うべきところをうっかり間違えてしまい、客席から起こった「頑張れー!」という声。「頑張れー!じゃないよ(笑)」と、彼は照れ笑いを浮かべつつ、次に披露する本編ラストの曲「サムデイ・スマイル」について語った。この曲は2011年の東日本大震災の直後に、大学の仲間と被災地でボランティアをした際の経験が背景にあるのだという。観客との掛け合い、裕哉のスキャットやマウストランペット、ボブ・マーリー「No Woman, No Cry」の一節も交えて披露され、観客を清々しいエネルギーで包んでいた。
「今、たくさんの人と空間を作れているのは心の糧です。でも、もっと多くの人に感動を届けたいと思います。音楽を通じて世の中を良くして、心と向き合うきっかけを作るのが、僕の使命だと思ってます。もっと頑張ります。ありがとう!」、アウトロが流れるなか、今後の活動への気持ちを語ってステージを後にした裕哉。しかし、観客の興奮は収まらず、アンコールが行われた。手を振りながら再登場した裕哉は、バンドメンバーたちを紹介し、秋のライブツアーが決定したことを発表。「最後に僕が両親に向けて書いた曲をやります」と言い、「始まりの街」を歌い始めた。響き渡る歌声がとても瑞々しい。弾いていたギターをスタンドに置き、フロアの前方エリアまで伸びた花道を歩きながら生声で歌う場面もあった。そして、エンディング間際で後方のスクリーンに並んで映し出されたのは、尾崎 豊と尾崎裕哉の写真。ふたりの顔が向き合ったこの演出は、シンガーソングライターとして歩き始めた息子を父が優しく見つめているかのような粋な演出であった。
全曲が披露されたあとに行われたのは、客席を背景にした記念撮影。バンドメンバーたちと並んだ裕哉の表情が、とてもうれしそう。彼が放つ穏やかな雰囲気が、自ずと観客の心を温かく震わせているのを感じた。ここからさらに活動を本格化させる彼は、たくさんの幸せを人々に届けていくことになるのだろう。
【取材・文:田中 大】
【カメラマン:Kenji.87】
リリース情報
LET FREEDOM RING
2017年03月22日
TOY’S FACTORY
2. 27
3. 始まりの街 (Soul Feeling Mix)
4. Stay by my Side
お知らせ
ARABAKI ROCK FEST.17
04/30(日) エコキャンプみちのく
秋のライブツアー
10/6(金) NHK大阪ホール
11/3(金・祝) 東京国際フォーラムホールC
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。