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1曲1曲で完全燃焼!10-FEET 「“ヒトリセカイ×ヒトリズム” TOUR 2017」ファイナル公演をレポート

10-FEET | 2017.03.28

 不完全の完全体。この日の10-FEETのライブを観て、そう感じた。いつものパフォーマンスとは違ったけれど、だからこそ、危機迫るものがあった。胸を激しく突かれ、内側までえぐられるようなエモーションに圧倒された。

 10-FEETの16thシングル「ヒトリセカイ×ヒトリズム」に伴うレコ発ツアーは2月5日の地元・京都KBSホールを皮切りにスタートし、16本目にあたるこの日にZepp Tokyoでファイナル公演を迎えることになった。対バンは竹原ピストル。アコギを持ってステージ中央に竹原が現れると、「10-FEETさん、ありがとうございます」と丁寧に挨拶。それから4月5日に出るニューアルバム『PEACE OUT』の冒頭曲「ドサ回り数え歌」からスタート。優しく、温かく、その中に芯の強さを持つ歌声が会場いっぱいに広がる。後半、TVドラマ『バイプレイヤーズ』のエンディング曲「Forever Young」も披露。情感豊かな伸びやかな歌声に、固唾を飲むように聴き入る観客の姿が印象的だった。モッシュもダイブも起きない。しかし、確実にフロアにいる人たちを鷲掴みにする歌の力。10-FEETが竹原ピストルを対バンに呼んだ理由の一端がわかった気がした。実際、10-FEETが竹原ピストルと対バンするのは、竹原が以前在籍していた2人組フォークユニット・野狐禅以来、実に10数年ぶりになるらしいが、10-FEETのメンバー3人も本編では口を揃えて「かっこいい!」と大絶賛していた。

 そして、20時8分にSEが流れると、ステージ背面に掲げられたフラッグに煌々とライトが照らされ、「10-FEET 20th ANNIVERSARY」という文字がくっきりと浮かび上がる。TAKUMA(Vo/Gt)、NAOKI(Ba/Vo)、KOUICHI(Dr/Cho)のメンバー3人が定位置に付くと、1曲目は最新シングル収録の「火とリズム」で幕を開けた。レゲエ調のゆったりした歌い回しで始まるが、観客は早くも曲を口ずさんでいる。何だ、この浸透具合は。ミドルテンポの曲調だが、観客は積極的に曲に参加し、既にアンセム感のある盛り上がりを記録。とてもライブ映えする楽曲だ。いや、最新作に収められた全3曲はどれも、現場=ライブ対応型のサウンドと言っていい。それから「VIBES BY VIBES」へ移ると、フロアや2階席までジャンプする光景が広がっていく。さらに場内を大合唱の渦に巻き込んだのは「hammer ska」だ。オイ!オイ!の歓声のでかさにビックリしながら、ここでふと気づいたことがある。TAKUMAのボーカルは掠れ気味で、普段の歌声とは明らかに違うことがわかった。だが、それを補って余りあるテンションで、目の前の観客に体当たりしてくるのが今の10-FEETだ。  「お前らと心中しに来たから!」とTAKUMAが叫ぶと、Zepp Tokyoの温度がグッと上がったのは言うまでもない。次の「蜃気楼」は歌モノ路線の曲調だけれど、聴き手は自分の曲のように心の内側でしっかりと受けとめていることがわかるほど、歌詞を共に歌い上げている。バンドとリスナーの絆が強く、より深いところで結ばれている。それも10-FEETのライブの特徴だ。「1sec.」でレッドゾーンに突入する凄まじい爆発力を発揮すると、「みんなと一緒に濃い時間を過ごしたい!」とMCで告げる。余力を残さず、1曲1曲で完全燃焼したい。それが今のバンドのモードなのだろう。  ここで最新作収録の「[final day]」を繰り出す。2分に満たないショート・チューンで、90年代のラウドロックを象徴するラップを用いたヘヴィな演奏にシビれた。今年20周年という大きな節目を迎え、自分たちがバンドをやり始めた頃の初期衝動を思い出したのかもしれない。それからライブには必要不可欠な初期の名曲「RIVER」に入ると、観客のクラウド・サーフは止まらない。中盤に演奏を一時停止し、再びプレイすると見せかけて、「行くと思ったやろ?」とイタズラ心を発揮するアプローチにもニヤッとした。

  そして中盤戦に差し掛かり、TAKUMAがハーモニカを吹きながら披露した「淋しさに火をくべ」においては、NAOKIがハイトーン・コーラスで華やかに色づけ。それを経て、前シングル表題曲「アンテナラスト」がプレイされた。以前は曲の導入部分に語りを挟むことが多かったが、今日はまるでケダモノのように一心不乱に叫ぶTAKUMA。言葉にならない、いや、言葉では言い表せない「感情」を伝えたかったのかもしれない。それは曲が持つメッセージ性ともリンクしている。ライブで聴くたびに成長を遂げ、心の奥底を?き毟られる楽曲だ。

 後半は「super stomper」、「2%」、「STONE COLD BREAK」、「goes on」、「その向こうへ」と鉄板ナンバーを畳み掛け、最新作の表題曲「ヒトリセカイ」へ。この曲は竹原同様、偶然にも同じTVドラマ『バイプレイヤーズ』のオープニング曲に抜擢されたものだ。なりふり構わず全身全霊で歌に、演奏に没頭する様に耳目を奪われっぱなし。ストレートな人間味を叩き付ける音色は、新たな代表曲と言える輝きを放っていた。ラストは「CHERRY BLOSSOM」、「back to the sunset」と怒濤の勢いで駆け抜けた後、「人生、言葉ひとつや! (膝が)ガクガクしてもいいから、その方が伝わるから!」とTAKUMAはここに集まった観客全員に熱く語りかけていた。

 ないものに目を向けるのではなく、今あるもので、すべてを投げ打って勝負する「感情」こそが大事なのではないか。それを身をもって体現した10-FEETのパフォーマンスにひどく感動した。

【取材・文:荒金良介】

tag一覧 10-FEET

リリース情報

ヒトリセカイ×ヒトリズム

ヒトリセカイ×ヒトリズム

2017年02月01日

ユニバーサル ミュージック

1.ヒトリセカイ
2.火とリズム
3.[final day]

セットリスト

『10-FEET“ヒトリセカイ×ヒトリズム”TOUR』
2017/03/16@Zepp TOKYO

  1. 火とリズム
  2. VIBES BY VIBES
  3. hammer ska
  4. 蜃気楼
  5. 1sec.
  6. [final day]
  7. SHOES
  8. RIVER
  9. 4REST
  10. 淋しさに火をくべ
  11. アンテナラスト
  12. super stomper
  13. 2%
  14. STONE COLD BREAK
  15. goes on
  16. その向こうへ
  17. CHERRY BLOSSOM
  18. back to the sunset

お知らせ

■ライブ情報

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2017/07/07(金)~9(日)
京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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