TRICERATOPS、平井 堅を招き開催した恒例の自主企画をレポート!
TRICERATOPS | 2017.04.04
2017年3月17日、18日の2日間に渡ってEX THEATER ROPPONGIで開催された<TRICERATOPS“DINOSAUR ROCK’N ROLL 7”>は7という数字が入っているとおり、今回が7回目ということになる。2000年にスガ シカオとACOを迎えて第1回が行われて以来、毎回多彩なゲストを招いて、不定期で継続して行われてきたパーティ感覚溢れるイベントだ。最近は自主企画イベントが数多く行われているのが、この企画がスタートした当時はミュージシャン主導のイベントはそんなにはなかった。彼らが情熱を注ぎ、時間と労力をかけて育ててきたイベントであり、通常の対バンとは違って、貴重なコラボレーション、工夫を凝らしたゲスト登場の演出、ゲストとの交流が垣間見えるトークなどもこのイベントの醍醐味となっている。今年の1日目はUNISON SQUARE GARDENを招いて行われたのだが、2日目はシークレットゲストが予定されていた。ちなみに前回、2014年のシークレットゲストは桜井和寿だった。サプライズのハードルを自らがグッと高く上げての7回目。ここではその2日目の模様をレポートしていこう。
今回は誰が登場するのか。そんな期待感が渦巻く中でのスタートとなったのだが、オープニングナンバーの「PARTY」が始まった瞬間に、ゲストのことを忘れて、ステージに釘付けになってしまった。つまりそれだけTRICERATOPSの演奏がガツンと新鮮に響いてきたということだ。彼らは昨年11月から12月にかけて、アコースティックツアーを行っている。おそらくはアコースティック編成を経てエレクトリック編成になることで、楽器の特性、音色をそれぞれが突き詰め直したのではないだろうか。骨太であることとソリッドであることが両立したサウンドが気持ちいい。20周年を迎えようかという今もなお、和田 唱のギター、林 幸治のベース、吉田佳史のドラムスというスリーピースのバンドサウンドは日々更新され続けている。この鮮度の高さは彼らのミュージシャンとしての志の高さと比例するものだろう。前半はさらに「あのね Baby」「FUTURE FOLDER」とロック度の高いナンバーが続く構成。ダイナミックな演奏が気持ちいい。
「今日は基本的に僕らのワンマンショー的な構成で楽しんでもらおうと思っています」「未来の歌。でももうそんな未来じゃない」という和田の言葉で始まったのは「2020」。淡々と展開していくのだが、穏やかなグルーヴと繊細なハーモニーの奥に確かな思いが宿ったラブソングの名曲だ。この曲が発表された2002年にはかなり先の未来の歌という印象を受けたのだが、今やその未来はもうすぐ手の届くところまで来ている。過去と現在と未来とが交錯して、演奏だけでなく、歌詞の印象も日々変わっていく。「シラフの月」も空にかかる月の表情が毎晩違うように印象が変化していくナンバー。アコースティック編成でも演奏されることの多い曲だが、エレクトリック編成となってタイム感も変わり、切なさがこれまでとは違う角度から体に刻まれた。セッションから始まった「Silly Scandals」ではコール&レスポンスが起こり、「スターライト スターライト」では観客がハンドクラップして、踊り、歌っていた。林と吉田のコーラスもエモーショナルだ。“LOVE & PEACE”というシンガロングが会場内に響き渡って、早くもこの日最初のハイライトが訪れた。
続いては和田と林が着席して和田がキーボードを弾く編成で「Happy Saddy Mountain」「虹色のレコード」が披露された。味わい深い歌と演奏が染みてくる。このブロックからはトークやモノマネもグッと増えていく。吉田によるセリーヌ・ディオン、和田がアコースティックギターに持ち替えてのゆず、山崎まさよしなどなど。どうやらこの流れシークレットゲストの前フリでもありそうだ。さらに林が小田和正の「たしかなこと」を熱唱&絶叫。ハイトーンへの果敢な挑戦はスポ根ものみたいだ。「結構自信がある」と言いながら、和田が「たしかなこと」に挑むと、これが平井 堅の歌声にそっくりだった。その流れで弾き語りで「瞳をとじて」を歌ったのだが、これがあまり似ていない。「バンドが入ったら良くなるから。次は本気出します」と和田が言って、「瞳をとじて」を歌い出すと、今度はあまりにも似すぎて会場内がざわついた。実はソデで平井 堅が「たしかなこと」と2度目の「瞳をとじて」を歌っていたのだ。ステージ上に平井 堅が登場すると、割れんばかりの大きな歓声が起こった。「シークレットゲスト、堅さん!」と和田が紹介すると、驚きの空気とともに、全員でゲストを迎えようというウェルカムの温かな空気が会場内に充満していく。
「TRICERATOPSのお客さんって、平井 堅に興味ないでしょ。怖かったんですが、温かい拍手ありがとうございます」と平井が言うと、和田が「いやいや、僕らのファンは堅さんのファンでもあるので。今までのヒストリーがあるので」と答える。たしかに、これまでの数えきれない本数のステージがこの日の布石であり、壮大な前フリとなっていた。
ヒョウタンからコマ。冗談から平井 堅。実は数年前からTRICERATOPSの3人はステージで平井 堅のモノマネを頻繁にやっていたのだ。構想数年。モノマネがきっかけで、こんな素晴らしいシークレットゲストが来てくれるところにもTRICERATOPSの人徳というか、バンド徳がある。メンバー3人の楽しませたい、驚かせたい、喜ばせたいという純粋なエンターテイナー気質とサービス精神、音楽を楽しむ心、天性の人懐こさがあればこそだろう。TRICERATOPSの要望に応えて、「たしかなこと」を歌ってしまう平井 堅もさすがだった。ジョークを楽しむ遊び心、度量の大きさ、人柄の良さも見えてきた。
「幾重にも重なったトリック。無駄に凝ってる(笑)」との平井からの言葉もあった。さらに「TRICERATOPSで好きな曲はたくさんあるんですが、僕のリクエストを4人で」という言葉に続いては「if」。和田のアコースティックギターもフィーチャーして、平井の柔らかでしなやかで伸びやかな歌が始まると、会場内から感嘆の声。「if」はTRICERATOPSの作品の中でももっともソウルのテイストが色濃い曲なので、選曲もドンピシャで、互いのルーツミュージックの交わる地点での深いコラボレーションとなった。ロマンチックかつソウルフルな歌声、平井と和田とのかけ合い、林と吉田も加わっての4声のハーモニーなど、聴きどころ満載。さらには平井 堅のオリジナル曲「POP STAR」をTRICERATOP流バンドバージョンで、和田と平井が交互にリードボーカルをとりながら披露。ポップでマジカルでカラフルな空気が漂っていく。盛大な拍手の中、平井がステージから去って、ライブ後半戦へと突入。曲数は少ないが、実に密度の濃い素敵なコラボレーションだった。
「“DINOSAUR ROCK”楽しいね」と和田。「すごかったね」と吉田。「堅さんの登場で頂きに行きましたが、その向こう側を目指してみよう」という和田の言葉に続いては2ndアルバムのナンバー「GREEN」。和田のギターの弾き語りで始まって、ゴリゴリのバンドサウンドが炸裂していく。初期の曲を初期衝動を損なわずに、最新のモードも入れつつ、強靱なロックとして鳴らしていけるところが素晴らしい。ゲスト登場の直後でありながら、メンバーの気合い、集中力もさらにすごいことになっていた。会場内も一気に熱狂していく。頂きのその向こうにはまた頂きがあった。さらに「Raspberry」「GOING TO THE MOON」とたたみかけていく展開で観客もパーティ感覚で盛り上がって、本編は終了。
「名残惜しいね。楽しいね。僕らも楽しんじゃおうか」という和田の言葉で始まったアンコールは「FEVER」。会場は、本編ラストに引き続いてパーティ感覚全開のステージで驚きと熱狂とに満ち溢れた。「20周年ツアーのアフターパーティ的な感覚で日比谷野音でやります」との和田からの発表。ここでもシークレットゲストを呼ぶ予定とのこと。“DINOSAUR ROCK”に通じる楽しさが詰まったステージになるのは間違いないだろう。デビューして20年。音楽によるお楽しみ空間を生み出していくTRICERATOPSの技はさらに磨きがかかっている。彼らはハードルを上げながら、次から次とそのハードルをクリアーしている。20周年ツアー、野音と、お楽しみはまだまだ続いていく。
【カメラマン:山本倫子】
【取材・文:長谷川 誠】
リリース情報
セットリスト
TRICERATOPS“DINOSAUR ROCK’N ROLL 7”
2017.3.18@ EX THEATER ROPPONGI
- 01. PARTY
- 02. あのね Baby
- 03. FUTURE FOLDER
- 04. 2020
- 05. シラフの月
- 06. Silly Scandals
- 07. スターライト スターライト
- 08. Happy Saddy Mountain
- 09. 虹色のレコード
- 10. if
- 11. POP STAR
- 12. GREEN
- 13. Raspberry
- 14. GOING TO THE MOON
- 15. FEVER
お知らせ
TRICERATOPS「20TH ANNIVERSARY TOUR」
05/13(土) クラブチッタ川崎
05/20(土) 郡山#9
05/26(金) 大阪BIGCAT
05/28(日) 熊本Django
06/03(土) HEAVEN’S ROCKさいたま新都心
06/04(日) 浜松窓枠
06/10(土) 柏PALOOZA
06/17(土) 札幌cube garden
06/24(土) 新潟LOTS
06/25(日) 金沢EIGHT HALL
07/02(日) 仙台Darwin
07/08(土) 広島クアトロ
07/09(日) 福岡イムズホール
07/17(祝) 名古屋club QUATTRO
07/21(金) 豊洲PIT
20TH ANNIVERSARY TOUR -AFTER PARTY-
07/23(日) 日比谷野外音楽堂
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。