所属バンドが一堂に会した、渋谷エッグマンのイベント『murffin night 2017 in TOKYO DAY2』をレポ
shibuya eggman | 2017.04.19
各々で個性やカラ―をしっかりと擁し、そこに所属しているアーティストたちも、それぞれがユニークながらも音楽性以外の部分での近さや繋がり、シンパシーを感じさせる団体…。それが私の音楽レーベルのイメージだ。
そこにはCDを発売するだけの関係値に留まらず、そのアーティストを押し上げ、広め、一緒に大きくなっていく。そんな信頼関係や共存共栄、運命共同体的な趣きも感じられる。今でこそ若干淘汰や細分化された感もあるが、昔から「?印(じるし)」のように、そのアーティストの身元保証のような形で音楽レーベルがアーティスト輩出の重要な役割を担っていることに今も変わりはない。そしてそれは、ライブハウスshibuya eggmanが運営するmurffin discs(マーフィンディスクス)が行った、この『murffin night 2017』を観て、ことさら強く感じた。
2006年1月に発足されたmurffin discsは、これまでにThe Mirraz、Veni Vidi Vicious(Czecho No Republic武井・山崎が2009年まで在籍)、踊ってばかりの国、テスラは泣かない。等々、常に時代のちょっと先を観取するかのように、これまで気鋭のアーティストを数多く輩出してきた。
現在、mini muff records(Czecho No Republic、テスラは泣かない。、the quiet room)、[NOiD] (sumika、SUPER BEAVER、Amelie)、TALTO(東京カランコロン、マカロニえんぴつ)の3レーベルを抱える、このmurffin discs 。同レーベルが所属全アーティスト参加のライブツアー『murffin night 2017』を鹿児島、東京、大阪の3都市5公演を開催。東京イベントの2日目に当たるこの渋谷O-EASTには、Czecho No Republic、sumika、SUPER BEAVER、東京カランコロン、そしてこの日、晴れてレーベルの仲間入りが告げられたSAKANAMONが出演した。
この日の司会/進行のラジオDJ藤田琢己が一番手の東京カランコロンを呼び込む。
1曲目は疾走感たっぷりの「シンクロする」。ギターリフとサビの開放感や上昇感が気持ちいい。せんせい(Vo.&Key)の歌をメインに、いちろー(Vo.&G.)の歌が絡み得意のユニゾン部分にグッとくる。続くいちろーがメインボーカルをとる「16のbeat」に入ると、こちらも疾走ナンバーながらサビでのダンサブルさも手伝い、更に会場も前のめりになっていく。最新発表曲の「トーキョーダイブ」では男女ボーカルの混合性を楽しませてくれ、キャッチーなフレーズのリフレインと、いちろーとおいたん(G.)のギターユニソンと会場を交えての呼応が一体感を作り上げ、フロアとステージとの距離をグッと縮めていく。
この日は5月に発売の新曲「ビビディバビディ」もいち早く披露された。不穏さとそこを抜けたサビでのパーツとした開放感が心地良い同曲。作品として届けられる日が今から待ち遠しい。
前日には『TOKYO DAY1』と題され、テスラは泣かない。、the quiet room、Amelie、マカロニえんぴつと、murffin discsのこれからのアーティストたちがshibuya eggmanにて熱演を繰り広げた。そしてこの日の毎度の転換時のBGMには、そんな彼らの楽曲が丸っと会場に流された。ここから新しいお気に入りのアーティストに出会った方も多かったのではないだろうか。
2番手に登場したsumikaは独特のポップネスを終始展開。1曲目の「Lovers」から4ビートやラグタイム性を独自のポップ感覚にて昇華させる彼らならではの音楽性を会場に贈っていく。
「何気ない日を特別に変える魔法を一緒にかけてもらえますか」(Vo.&G. 片岡健太)の言葉のあと続けた「MAGIC」では、曲に合わせ、かけがえのない素敵な日へと魔法がかけられていき、「ふっかつのじゅもん」では、展開もめまぐるしく複雑な曲ながら会場に一体感が生み出されていく。「『murffin discs』と出会い、新しい兄貴や親を見つけた気がします。伝えたいという気持ちを最後に伝えて帰ります」(片岡)と、最後に「伝言歌」を放った彼ら。好きという確信を今後迷わない決心へと変えさせるかのようなその歌内容は、そのままmurffin discsのレーベルポリシーの代弁のようにも感じ取れた。
続いては、TALTOへと電撃的な移籍発表と嬉しい新作の発売をライブ中に告げたSAKANAMONが登場。1曲目の「マジックアワー」から力強くもエモい4つ打ちとコズミックな同期のウワモノが飛び出し、のっけから会場を盛り上げる。続いての「幼気な少女」では、彼らの良い意味での湿り気と和な感じ、そこを抜けた開放感を場内に溢れさせ、「UTAGE」ではエレクトロ度も更にアップ。会場を楽しそうに踊らせていく。
MCを挟み、勢いと突っ込んでいくストレートさも印象的な会場限定シングル曲「クダラナインサイド」。ラスト曲に入る前に前述の発表が成され、会場中から祝福の拍手が贈られる中、ゲストにテスラは泣かない。のキーボード飯野桃子を交えて新曲「テヲフル」が歌われる。♪ラブソングを作ろう♪のリフレインも印象深い同曲。鍵盤の伴奏と歌のみでしっとりと始めながらも、中盤からはバンドサウンドも加わり、生命感とダイナミズムが会場を包んでいった。
ここで今では一番のmurffin discs古株バンドとなったCzecho No Republicが現われる。この日の彼らは「No Way」からスタート。いきなりの上昇感がここではないどこかへと誘う。ノンストップで「Amazing Parade」に入ると、タカハシマイ(Key.&Vo.)の天空系のボーカルも交わり会場をアメージングなパレードへと誘引する。
武井優心(Vo.&B.)による会場を和ませるMCを挟み、ここは天国じゃないかとの錯覚に陥らせてくれた「MUSIC」、牧歌的な景色へと連れ出してくれた「ゴッホとジョン」、そしてEDMナンバー「Firework」では、高揚感と至福感溢れるサウンドの中、武井もハンドマイクで歌う。
「バンドが集まり一緒にイベントができて嬉しい」と武井。このレーベルの来し方を共に経てきた彼らだからこその言葉だ。そしてラストは「Oh Yeah!!!!!!!」で締め。楽しいポップさをスタジアム級のダイナミズムで味あわせてくれた。
「ダイナソー」等、同レーベル出自から1曲も演らなかった潔さに、現行の自身、また、ここまで成長した今の己を観てくれ。そんな頼もしさをも感じた。
トリを飾ったSUPER BEAVERは、「馴れ合いでは何も生まれない。切磋琢磨し、良かったら褒め、悪ければはっきり物申すべき」と、自身とレーベルやレーベルメイトとの信頼感と関係性、だからこそある今の自分たちに置き換え、歌や演奏、間のMCで説いた。
まずは「愛する」。まるで夜明けを彷彿とさせる彼ら流のロッカバラードがダイナミズムと共に会場中に浸透していく。渋谷龍太 (Vo.)の口上を挟んだ後に「→」を放ち、続けての「秘密」では、歌内容に各々が想いを重ね、会場の各々が好きなこと、大切にしてるものを思い浮かべ、みながそれを心の中でギュッと抱きしめていたように映った。
後半には、まるでみんなが主人公と言わんばかりに会場全体を包み込むまばゆい照明のなか歌われた「美しい日」、そして、「これからもmurffin discsをよろしくお願いします」(渋谷)とバックドロップを指し、「素晴らしい世界」にて本編を締めた。
アンコールは1曲。「東京流星群」が気高く、誇らしげに、みんなの大合唱も交え歌われた。
今や隆盛を誇るこのmurffin discsも、けっしてここまで順風満帆ではなかったに違いない。きっと冬の時代もあったし、バンドが解散したり、離脱したり、中途、悔しがったり、残念なこともあったろう。しかしそれでも、“これだ!!”と思ったアーティストと出会い、そのポテンシャルと自身の惚れ込みや明察を信じ、共に歩んできた結果が今のこの隆盛へと導かれ、数多くのアーティストたちのしっかりとした結びつきへと繋がっている。
今後も更に、このレーベルには日本のポップスシーンにかけがえのないアーティストたちを輩出し、聴く者に忘れえない作品の数々を送り出してくれることだろう。これからもそれが楽しみでならない。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【写真提供:Shibuya eggman】
murffin night ライブ 東京カランコロン sumika SAKANAMON Czecho No Republic SUPER BEAVER
セットリスト
murffin night 2017 in TOKYO DAY2
2017.3.17@TSUTAYA O-EAST
東京カランコロン- 1.シンクロする
- 2.16のbeat
- 3.トーキョーダイブ
- 4.ビビディバビディ
- 5.恋のマシンガン
- 1.Lovers
- 2.MAGIC
- 3.ソーダ
- 4.ふっかつのじゅもん
- 5.「伝言歌」
- 1.マジックアワー
- 2.幼気な少女
- 3.UTAGE
- 4.クダラナインサイド
- 5.TSUMANNE
- 6.テヲフル
- 1.No Way
- 2.Amazing Parade
- 3.MUSIC
- 4.ゴッホとジョン
- 5.Firework
- 6.Oh Yeah!!!!!!!
- 1.愛する
- 2.→
- 3.秘密
- 4.それでも世界が目を覚ますのなら
- 5.美しい日
- 6.素晴らしい世界
- En1. 東京流星群