Lastrum設立20周年『ニューカマー発見伝』予選第二回 ライブオーディション
Lastrum | 2017.06.23
◆予選第二回 ライブオーディション・東京◆
今年、設立20周年を迎える「Lastrum」が、新しい才能を見つけ出すために企画したオーディション『ニューカマー発見伝』。「優勝賞金100万円」と「CDリリースに向けた育成契約」を獲得できる最優秀アーティストを目指して、全国から多数の応募が寄せられた。東京の第二回予選ライブを通過したのは「FACTOTUM」「ASOBOiSM」「三柏スイ」「NEW FRONT SPARK」「Rollo and Leaps」。この5組による予選第二回 ライブオーディションが2017年3月16日(木)、東京 下北沢 LIVEHOLICで行われた。
【FACTOTUM】
東京で結成されたFACTOTUM(ファクトタム)は、ヤマザキダイキ(Vo/G)、ヤマグチハヤト(Dr/DJ)からなるロックユニット。“2人でできる限界を探しつつ”音楽を探究する2人組だ。彼らがステージに登場、拍手が鳴りやんだ。その一瞬の静寂を電子音が切り裂き、オーディエンスを異次元の世界へといざなう。『Free Word』。ヘヴィ―な音像の中で正確なビートを刻み続けるドラムが歌を支える。2曲目は『ミズリコ』。ふんわりとしたサウンドの中で駆け抜けるリズム。そこから立ち昇る情感を汲み取りながら、ポップなメロディに体を揺らせば、爽快感さえ覚えるから不思議だ。声をふりしぼるヤマザキ。余韻までもが心地よい。一転、激しいビートに乗ったクレイジーな演奏に揺さぶられる『MASSIVE』。「ちょっといい感じに帰ってもらえるように」。そう言って演奏されたラストナンバーは『HYPE』。スリリングでエモーショナルなサウンドながらヴォーカルが際立っている。ライヴ映えするこの曲で会場を一気に引きこみ、FACTOTUMのエキサイティングなステージは終了した。
【ASOBOiSM】
DJテルマエ・アンドリューとMC“たなまざふぁっかー”による新感覚ラップユニットASOBOiSM(アソボイズム)。「プレイグラウンドミュージック(遊べる音楽)」をコンセプトに掲げる日英の男女2人組だ。たなまざふぁっかーはシンガーソングライターからラッパーへと転身、今日が初ライブとなる。幕開けは『We are サランラッパー』。身長差54センチ。背の高いハンサムな男性と、小さくてキュートな女の子のコンビは見ているだけでワクワクする。シニカルなミドルナンバー『意識高い系のやつら』。DJテルマエ・アンドリューのラグジュアリーなギターと天井のミラーボールが光る。ミドルテンポの楽曲が続く。たなまざふぁっかーがアコギを抱えて歌う『カミングアウト』。哀愁を感じさせるメロディは、彼女のソングライターとしての手腕が生かされているようだ。最後の曲は『Don’t Worry Be Happy』。コール&レスポンス、ジェスチャーを交えたダンスで女の子の1日を語り、そして歌う。2人のエンターテイナーとしての可能性を存分に味わえるステージだった。
【三柏スイ】
美しく鮮烈な目元が印象的な彼女は、バンドやユニットなど名古屋の活動を経たのち、2014年に上京したギター弾き語りスタイルのシンガーソングライター。オープニングは、時にエキセントリックに、時に繊細な歌声で会場をシンとさせた「満月」。感情の昂りが歌となって溢れだし、静寂の中で響きわたる。パーカッシブなアコギは三柏の持ち味だ。続いて「ロジック」。赤裸々で強烈な、女の子というよりは女の“ロジック”には、恋する女性なら誰でも共感するだろう。生々しいほどに本能むき出しのミディアム・ナンバー「姫ごと」へ。彼女の鳴きに合わせて鳴るギター、どちらも次第に熱を帯びてゆく。日々のリアルな心情を綴った“こじらせ女子”ソング「しあわせマニア」。「後ろ向きだけど前向きに書いた」というこの曲を聴きながら、彼女の笑顔の奥に覗く陰りに思いを馳せた。
【NEW FRONT SPARK】
shin-men、mae-menの2人のラッパーを擁するジャパニーズヒップホップユニット、NEW FRONT SPARK(ニューフロントスパーク)。前説で“柏のビースティ・ボーイズ”と紹介された彼らは、ドラムとDJを加えた4人編成で登場した。「Q!Q!Q!」と連呼する『Q』からステージがスタート。「森田GO!」の雄たけびから始まる『LIFE』では押して押して押しまくる。ほかにも有名人が出てくるのはご愛敬。コミカルさと真面目さが交錯するこの曲で掴みはOK。息の合ったラップの応酬にはユーモラスな要素もふんだんに。スペイシーでスリリングなシンセが鳴り響く『うちゅう』ではステージから降り、フロアを軽くランニングするシーンも。 『中華』では文字どおりチャイニーズ風のバックトラックに乗せて「バーミヤン」を連発する。ラスト『実験室』は寸劇も交えながらの熱演だ。ダンスもポーズもキマった2人は再び客席に降り、暴れまわる。フロア全体がまるでステージであるかのように縦横無尽にふるまう2MC。息も絶え絶えの全身パフォーマンスに観客は唖然。彼らにとっては、してやったりのステージだったに違いない。
【Rollo and Leaps】
2015年結成のギターロックバンド、Rollo and Leaps(ロロアンドリープス)。高谷瞳二(G&Vo)、石岡和樹(G)、小原望史(B)、JACKSON kaki(Dr)から成る4人組だ。オープニングナンバーは、めくるめくギターイントロから始まる疾走感あふれる楽曲『BLUE』。観客の心を鷲掴みにしてゆく。一転、大人になってゆく過程での青春の軋みを歌ったミドル・ナンバー『箱庭の子どもたち』。はっきりと耳に届く歌、キャッチ―なメロディで早くもバンドのポテンシャルを見せつける。視界がパッと開けるような『ミッドナイター』。90年代~00年代の洋楽/邦楽のいいところ吸収してきたというだけあり、メリハリのあるメロディ、ドラマティックな展開は言わずもがな、そこへ懐の広いバンドアンサンブルが加わり、存在感を押し上げている。やや画一化している感のある現在のバンドシーンの中に今、彼らが飛び込んだら、どんな化学反応を起こすのか見てみたい。ラストではミラーボールが瞬く。『ムーンライダー』。迷いの果てのかすかな光を見出す曲でステージは締め括られた。
こうして5組の演奏が終了。観客は気に入った2組を選んで、投票用紙に記入する。この結果をふまえ、後日、優秀アーティスト賞にRollo and Leapsが選出。最終審査に臨む。そこで決定される最優秀アーティストの中で彼らがどう抜きんでるのかを考えながら続く大阪編へ。
◆予選第二回 ライブオーディション・大阪◆
設立20周年を迎える「Lastrum」が企画したオーディション『ニューカマー発見伝』。3月16日、東京 下北沢 LIVEHOLICで行われた第二回予選ライブオーディションに続き、5月25日、大阪 心斎橋 Pangeaにも4組が集結。飯室大吾(FM802)司会のもと、ニッポニアニッポン、Mankind Rhythms、 Marie Louise、FROM THE CRADLEらが最新のライブパフォーマンスを発揮した、その模様をレポートする。
【FROM THE CRADLE】
トップバッターはFROM THE CRADLE。2012年10月結成、京都を活動拠点に置く3ピースバンドだ。RADWIMPSやSEKAI NO OWARIを彷彿とさせるエレクトロ・ロックを鳴らす。冒頭から現在の代表曲ともいえる『マスイロ』を披露。続く『全ての心壊れかけている大人達へ』ではギターを置いたXuN(G&Vo)。手にしたハンドマイクからは言葉が溢れ出る。XuNの口から紹介された3曲目『セックスしたらこの距離はゼロになる』はメロウなミドルナンバー。時折、感情の昂りにまかせた絶叫が薄暗いライヴハウスの闇を切り裂いた。「前に進むことでしかこの苦しみからは解放されない」。MCをするのは珍しいというXuNが語ったこんな言葉が、バンドの存在意義を表しているように思う。最後の曲は光射す『Y.A.U』。明日からもまた一歩、彼らは前に進んでいくのだろう。
【Marie Louise】
2番手には京都を中心に活動を続ける3ピース・Marie Louiseが登場。ドラマティックかつエモーショナルな演奏で一気に観客を圧倒する。静寂と激情が交錯する中で、時にエキセントリックに、また時には不安定なか細い歌声で聴く者をあちらこちらへと翻弄する湧(Vo&G)。持ち味となっている変拍子がフックになり、聴く者の心にザクザクと踏み込んでくる西村創太、向涼によるリズム隊+湧のギター。とみに心に残ったのは湧の素直な声で歌われたステージ半ばのミドルナンバー。バンドのポテンシャルを見せつけられた1曲であったことは間違いない。柔軟であることと、ブレがないということはイコールであるのだと改めて気付かされる。緩急つけた演奏で静かな興奮を途切れさせることなく迎えたラストナンバー。ほんの短い時間、ステージを染めた赤いライトは、モノトーンの似合う彼らにとって鮮やかな差し色となっていた。
【Mankind Rhythms】
3組目は中野瑛斗(Vo)、大石皓貴(Gt&Cho)、龍野良(Ba&Cho)、佐々木翔梧(Ds&Cho)からなるMankind Rhythms。「泣く子も踊るファンキー人類ロックやってます」のキャッチどおり、ファンクサウンドに乗って登場した4人。中野の小気味よいMCによって冒頭から観客をハンドクラップの渦へと巻き込んでゆく。華のあるステージパフォーマンスは天性、満ち溢れる自信もうかがわせる。オープニング曲は重心低めの『Take me higher』。バンドの技量が試されるこの曲を1曲目にもってきたことも、やはり彼らの自信を窺わせる。初シングルとなった『Crazy For You』は全編英語で歌われる渋めのファンクロック・ナンバー。今回のライブで聴く限り、中野のファルセット・ボイスに若干の心もとなさは残ったものの、こちらも演奏を重ねるうちに盤石なものとなっていくはず。タテではないヨコのリズムに観客をのせることは、長きにわたり日本のロックシーンにおける課題のひとつだったが、彼らにはそこを軽々と突破して、新世代のファンクロックを定着させてほしいと願う。ただし“ファンク”を標榜することは“ロック”を名乗るよりも道は険しい。期待したい。
【ニッポニアニッポン】
イベントもいよいよ大詰め。トリを飾るのは2014年に結成され2016年より現メンバーで大阪を中心に活動を続けるニッポニアニッポン。和田世祐(Vo&Gt.)を中心に山條喜彦(Gt)、小久保俊佑(Ba)、酒井茂樹(Ds&Cho)からなる4ピースバンドだ。暴れ狂うギター。だがその音色はかなりクリーンなトーンで、冷やかな印象だ。その一方でヴォーカル・和田の声は骨っぽく、どこか人間臭い。その対比がこのバンドの醍醐味ともいえる。『群れる青』『.つまりこの世界』。間髪いれずに2曲を畳み掛ける。次から次へと繰り出される思わぬ展開に、いちいち息を呑まされるからたまらない。「オーディションという場を意識せず、いつもどおり、あなたたちに伝えるものを伝えて帰りたいと思います」。そんな和田のMCを挟み、アグレッシヴでクールなステージは続く。出会えたことを感謝し、再び「あなたたちに伝えるものを伝えて帰りたいと思います」との言葉を残してのラストナンバー「新しい朝」は、渾身の力を振り絞り、しっかりと歌を伝えるものとなった。
こうして演奏を終えた4組の中から後日、予選第二回ライブオーディション・大阪の優秀アーティストとしてMankind Rhythmsが選出された。9月、決勝戦であるファイナル審査にまで勝ち進むのは、果たしてどのバンドだろうか。オーディションだからこそ150%の力で振り切る者、オーディションだからといって気負わず普段通りのステージを見せようと思う者、このイベントに対する姿勢は様々だ。だが、いずれもがそこにいる観客に向けて演奏していたことは間違いない。そのスタンスとともに、その音楽に真摯に耳を傾け、票を投じたオーディエンスにも拍手を送りたい。と同時に、自らが選んだアーティストがこの先、どんな発展を遂げるのか、それを見届けていくのも非常に楽しみである。
【取材・文:篠原美江】
【撮影:大阪:松本いづみ】
<予選第1回、東京・大阪レポート>
http://music.emtg.jp/liveReport/201703094291a996e
ニューカマー発見伝特設サイト
http://new.lastrum.co.jp/feature/newcomer
セットリスト
◆予選第二回ライブオーディション・東京
出演バンド・セットリスト
【FACTOTUM】
- 1.Free Word
- 2.ミズリコ
- 3.MASSIVE
- 4.HYPE
- 1.We are サランラッパー
- 2.意識高い系のやつら
- 3.カミングアウト
- 4.Don’t worry be happy
- 1.満月
- 2.ロジック
- 3.姫ごと
- 4.不幸せマニア
- 1.Q
- 2.LIFE
- 3.MAJI
- 4.うちゅう
- 5.チャイナ
- 6.デリバリー
- 7.実験室
- 1.BLUE
- 2.箱庭の子どもたち
- 3.ミッドナイター
- 4.ムーンライター
◆予選第二回ライブオーディション・大阪
出演バンド・セットリスト
【FROM THE CRADLE】
- 1.マスイロ
- 2.全ての心壊れかけている大人達へ
- 3.セックスしたらこの距離はゼロになる
- 4.Y.A.U
- ※掲載無し
- 1.Take me highe
- 2.Crazy For You
- 3.Beyond
- 4.WORKER
- 1.群れる青
- 2.つまりこの世界
- 3.ソングライター
- 4.新しい朝