ズダッパ(ex.音×AiR)定期公演 “ズダッパダッパ” 月イチレポート特集 第3回
ズダッパ | 2017.08.22
ねつ造エンタテインメント ズダッパ、3度目の定期公演「ズダッパダッパseason1 ~虚構のフォルテッシモ~vol.03」。
ボーカルの楓が自ら行うライブ前のアナウンスは、大会場の声援付きに加工され、さらに「ねつ造」感を煽る。さあ今回はどんなステージを見せてくれるのか。
「ズダッパ」のテーマが始まり、ドラムスの竜之介が客席まで降りていく。サービス精神旺盛な演出だ。DJ mAsAyA(以降「mAsAyA」)もスタンバイした後、楓が歌いながら登場。笑顔の3人がステージに並び、挙げた両手を左右に揺らし踊ると、いつも通りショーの幕開けだ。
「叱ってサディスティック」で派手に客席を煽った後、一転して能天気な「ポッポコポッポ」。観客を巻き込む単純な振り付けには中毒性がある。
毎度おなじみの挨拶では、楓の動きがリズム隊とシンクロするのだが、ハプニングのせいかうまくいかない。しかしうまくいかないことも笑いに転化してしまうのは、さすがである。
自己紹介では、mAsAyAだけがサンプラーで喋る。口を閉ざしてサンプラーのパッドを押すだけ、というのが、もはや定番。「冷めてんなぁ」と楓にツッコまれる。
どこまでがリアルなMCで、どこからが台本のあるねつ造なのかが分からないのが、この定期公演の醍醐味なのであるが、またもや楓と竜之介が小競り合いを始める。そしてそれを上回るmAsAyAの一刀両断な発言。発言と言っても、サンプラーを押すだけなのが笑える。
今回のテーマは、バンドをより大きく成長させるためのヒットチューンを作ること。誰もが知っているJ-POPを参考にするのだが、そのジャンルがバラバラ。1曲ずつ研究するが、最後はそのバラバラな曲たちを一つに纏めてしまうという曲芸。バンドならではの音楽遊びだが、それよりもライブ前に会場でBGMとして流れていたのが、これらの既存J-POPだったことに今頃気づいた。どんなところに伏線があるのか分からないので油断出来ない。というよりも、どこを切り取っても楽しむ要素が満載なのが、彼らの魅力だ。
そして恒例のゲストコーナー。今回は、HIROSHIMA FUSION UNITE(以降「HFU」)からTATSUMA、MAKE、Tiga、YURIKAの4人が参戦。YouTuberともJ-POPグループとも言える彼らを迎えて、今回も安定の「むちゃぶりレシーバー」。楓が微妙な結果に終わり、HFUがYURIKAの判定で強引にOKを勝ち取り、竜之介の番で楓が受難。これも前回をご覧になった方々には期待通りの展開。分かっていても面白くて笑ってしまう。ただ、ここからが違う。HFUがすごいのは、その動画再生回数。とりわけ西野カナの「トリセツ(勝手にオトコ版#Cover)」は、群を抜く人気曲。これをズダッパとコラボして演奏するというのだ。竜之介のドラムスとmAsAyAのベースに加え楓がアコースティックギター、YURIKAがパッドを叩き、HFUとしては初めて生バンドを従えての歌唱。観客が注意深く歌詞に耳を傾けている姿が印象的だ。考えてみれば、ハーモニックホールの舞台にこれだけの人数が登壇するのは、最大記録である。TATSUMAは常に楓を困らせ、MAKEは終始ボケる。それを仕切っていく楓が、時には一緒に悪ノリし、時には強引に進行を進める。フロントマンでありながら司会者としてのスキルを上げている楓に、限りないポテンシャルを感じる。
これでゲストコーナーが終わると思いきや、次の「ラブライム!」では楓とTigaのラップバトル。前回初披露したこの曲は、クールなトラックの上で、mAsAyAと楓が女子をめぐってバトルする曲だった。ラップ内容を補強する映像をバックに、Tigaのラップスキルが冴える。そして、まさかのmAsAyAのサンプラーラップ。Tigaと一緒になって客席を盛り上げ、楓をやり込める。まさかの、とは言ったものの、これも前回と同じ展開だ。
負けた楓が落ち込み、竜之介が励まし、不純な動機で楓がやる気を起こし、「波乗りトコナッツ」「ダントツ☆YOU」と立て続けのアゲ曲へ。夏らしく、そしてライブならではの音場が心地よい。鉄板曲「純愛バイセコー」では、切なさが一層高まる。
「これからも良い曲を書いていく」という楓の宣言で、ライブは終幕へ向かう。最後はHFUのメンバーと一緒に「笑いのフォルテッシモ」を熱唱。マイクを持つ人数が多い分、キャラクターの多いカラフルな舞台が楽しい。「笑っていればなんとかなる」というメッセージに背中を押され、会場はひとつになる。
「とにかくお客さんの反応を見てると大成功だったと思います」と、楓が終演後に嬉しそうに語ってくれた。「YouTubeにアップした、HFUさんを紹介する伏線動画からの流れがどうなるか分からなかったんですが、結果的に全員笑かせたんで嬉しいです。3回目の公演で、達成感も今までで一番凄いです。っていうのはたぶん、やりたいことも全部出来たし、台本をしっかり考えられたんで、これまでで最高の出来栄えだったと思います。毎回更新出来ているというという実感があります」そういう楓には、自信が漲っていた。
思えば、前回からズダッパダッパという舞台の「定型」が出来たのだ。3人のキャラ付け。動画の使い方。中盤での楓と竜之介の小競り合いの後、mAsAyAに蹴散らされた楓が奮起する、という進行パターン。これら全てが、見ているほうに安心感を与える。「前回見ていた人にとって面白かったところもありつつ、それが多すぎると初めての人を置いてけぼりにしてしまったらアカンなって考えているんです。」「今回ちょうどゲストの方にラップ色の強い人がいたという偶然にも助けられたんですよ」と、楓は語ってくれた。
謙遜の中にも、逞しさが感じられる彼らに、今後への期待が高まる。
【写真・文:服部旭】