愛され続けて19回目『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO』イベントレポート
RISING SUN ROCK FESTIVAL | 2017.09.30
本格的オールナイト野外ロックフェスとして1999年から開催され、今年でなんと19回目を数える『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO』。毎年多くのオーディエンスと出演者から愛され、そしてまた歴史あるこの野外ロックフェスに、今年は音楽ライター荒金良介が参戦。開放的な北海道は石狩の大地から、現場の空気をばっちりお届けしたいと思う。
●2017年8月11日[金・祝]
「ライジングサンがアーティストに愛される理由がよくわかった」と、多くの出演バンドが異口同音にそう言っていた。今年で19回目を迎える『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO』。北海道小樽市の石狩湾新港樽川埠頭横 野外特設ステージで行われ、個人的には初参加ゆえに観るものすべてが新鮮に映った。
羽田空港から一路、新千歳空港へ。札幌市内の麻生(あさぶ)駅からシャトルバスに乗り、会場を目指した。ああ、やはり東京と比べて空が広いなあ、と早くも北海道気分を満喫。また、バスを追い越す若者の車中ではWANIMAが爆音で流れていた。40分足らずで会場に着くと、まずは全ステージを渡り歩いた。
簡潔に感想を言うなら、各ステージ間の距離がとにかく半端じゃない。しかも至る所にキャンプ・サイトが設けられ、音楽とレジャーが完全に一体化している。とりわけ驚いたのは会場内に郵便局があったこと。大きな荷物を抱えた女性2人組は「関西から来たんで、飛行機に積めないから」と教えてくれた。参加者はゆうパックでキャンプ・グッズを郵送し、会場で受け取る仕組みが整備されている。面白いなぁ。
今日はどんよりした曇り空。暑さの心配は皆無で、むしろ肌寒さを覚えるくらいだった。最初はメインの《SUN STAGE》トップを飾る10-FEETから観戦。「goes on」で始まると、あまりの盛り上がりに演奏を一旦ストップ。仕切り直して、次々と曲を繰り出すと、「B’zのTシャツ着た人がダイブしてた! 全曲歌ってた! 」とTAKUMA(Vo/G)は満面の笑みで告白。それから「EASY COME,EASY GO!」(by B’z)のフレーズを少し弾いた後、TAKUMAとNAOKI(B/Vo)がハイタッチする光景も微笑ましかった。「ヒトリセカイ」、「太陽4号」と歌モノ路線を貫く近作の楽曲が続き、特に後者は耳元で語りかけるようなフォーク風味の曲調で、北海道の雄大な空気とマッチしていた。そして、16年前のデビュー作収録の「BE FRIENDS AGAIN」をここで披露。英語詞メロディック時代のシンプルな曲調も抜群に映えていた。
それからビッケブランカを観るべく、《def garage》へ移動。裏声を多用した魅惑のハイトーンで迫るビッケブランカの歌唱力、サポート・メンバーを従えた賑々しい音像により、観客を至福のポップ空間に誘う。「北海道には縁がある、第二の故郷」と本人は言っていたが、眼前のお客さんと対話する温かいパフォーマンスがそれを裏付けていた。「Natural Woman」でダンスフロア化させると、場の温度もグッと上がり、ラストは底ナシのパーティー・チューン「ファビュラス」へ繋ぐ。バングルスのヒット曲を彷彿させる80’Sポップスのキラキラした輝きも眩しく、聴く者の体を執拗に揺さぶる高揚感溢れる音色は素晴しかった。
女性ドラマー擁する3人組、Saucy Dogが《RED STAR CAFE》に登場。「あなたの希望になる曲を」と石原慎也(Vo/G)が言うと、「ロケット」をプレイ。感情剥き出しの力強いヴォーカル、熱のこもった演奏も迫力十分。「北海道、初めてライブに来ました!」と、せとゆいか(Dr/Cho)が挨拶し、「ナイトクロージング」、「グッバイ」と立て続けに披露。この日、初めてライブを観た人たちも多かったかもしれない。しかし、何か爪痕を残そうとするバンドの前のめりの姿勢が伝播したのか、曲が進むにつれ、観る者を心をグッと掴んでいた。
再び《SUN STAGE》に戻ると、UVERworldのメンバー5人がステージに立つ。「7th Trigger」、「I LOVE THE WORLD」と勢いよく畳み掛け、ライジングサン初登場であることを告げた後に「最高の夜にすると決めた! 」とTAKUYA∞(Vo)が言うと、映画『銀魂』主題歌の「DECIDED」を披露。スクリーンに歌詞が流れ、劇的な曲調をさらに盛り上げる演出も効果的だった。そして、「WE ARE GO」をプレイ中にひとつの物体が宙空を舞う。「興奮すると、クツを飛ばしちゃうんです。熱くなったら、左足の魂(クツ)も飛んでいくんだから」とTAKUYA∞は言い、場をドッと沸かせた。また、10-FEETやB’zを学生時代に聴いていたようで、大好きなアーティストと同ステージに立つ喜びを爆発させると、過去にライジングサンにライブを観に来ていたことを告白。彼らにとって、いつか出演したいと思うフェスのひとつだった。その気持ちがひしひしと伝わる衝動的なパフォーマンスを見せつけた。
その後は《RED STAR FIELD》に足を伸ばし、THE BACK HORNを観ることに。赤と青の照明が闇夜をファンタジックに彩る中、宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」をここで披露。山田将司(VO)の包容力に富む優しい歌声、繊細なバンド・アンサンブルが壮大なスケールを描く。多くの人たちが、音に吸い込まれるように聴き入っている。「来年20周年、メジャー・デビューしてすぐ《EARTH TENT》に出た」とライジングサンとの関わりを話した後、最新26thシングル表題曲「孤独を繋いで」をプレイ。切れ味鋭い演奏が織り成す、アッパーな躍動感に心を射抜かれた。
そして、初日の《SUN STAGE》トリを飾ったのはレキシ。「帰って来たぞー!」と開口一番に発すると、エンタメ性抜群のステージで観客を手玉に取る。「年貢 for you」では撮影中のカメラマンにリクエストを尋ね、細川たかしの「北酒場」、松山千春の「大空と大地の中で」、チェッカーズの「涙のリクエスト」と軽快に歌い上げていく。「まさかB’zさんのあとにやるとは・・・」とレキシは驚きつつ、2011年のライジングサン《BOHEMIAN GARDEN》に初出演したことに触れ、2時間半やって怒られたエピソードを挟む。それから「狩りから稲作へ」に移ると、「稲穂持ってないの、恥ずかしくないよ。稲穂、持ってる方が恥ずかしいよ~」と声をかけ、終いには「稲トラソウル!」で観客を見事に一つに束ねる。しかもトータル10回ほど連発! これには大爆笑した。もはやレキシの独壇場と化し、曲を知ってる知らないを超越した抱腹絶倒ライブを貫徹した。
●2017年8月12日[土]
2日目は朝から雨が降っていた。会場に着くと、大きな水たまりや地面のぬかるみがひどい場所もあり、昨日と比べても、明らかに2、3倍の体力が必要とされる状況だった。ゆえに余裕を持って早めに動くことを心がけた。《RAINBOW SHANGRI-LA》に辿り着くと、「おはようございます! sumika始めます! 」と片岡健太(Vo/G)が元気よく挨拶。雨脚が激しくなる中、晴天のごとく爽やかなメロディを解き放つ。片岡は05年のライジングサンに出場した斉藤和義のライブを観て、チケットを買わず、自らの力でこの場所に立ちたいと思ったそうだ。念願のフェス初登場にメンバー自身も感極まっているように見えた。「雨で疲れていると思うので、皆さんを復活させたいと思います!」と言うと、「ふっかつのじゅもん」をプレイ。ダンサブルな曲調で観客を踊らせた後、普段はやらない曲と前置きし、「友達の結婚式とかで歌えたらと思って」と付け加えると、「ここから見える景色」を演奏。至福のメロディ・ラインが胸に沁み入った。
続いて、《def garage》にBAND-MAIDが登場。メイド服とハードロックな曲調をコンセプトに掲げた5人組ガールズ・バンドで、国内はもちろん、ワールド・ツアーも積極的に行っている。彩姫(Vo)のハイトーン・ヴォーカルを主軸に、小鳩ミク(G/Vo)が歌/コーラスで援護し、キャッチーなメロディをさらに輝かせる。MISA(B)、AKANE(Dr)の安定感抜群のリズム隊を土台に、速弾きを含むメタリックなKANAMI(G)のギター・ソロも随所で炸裂。ルックスとは真逆を突っ走る、硬派な演奏で多くの人を焚き付けていく。「もっと声出して!」と小鳩が煽ると、ゴリゴリのヘヴィなリフで攻める「Don’t Let Me Down」へ。サビに突入すると、観客はクラップ&ジャンプと大騒ぎ。その後もフェスを意識して作った「Play」など、アグレッシヴな演奏を叩き付けた。
《SUN STAGE》に姿を見せたWANIMA。今年3月にはさいたまスーパーアリーナで初ワンマン公演を大成功に収めた3人組。この日も「元気しとった?」とKENTA(Vo/B)は親密に語りかけ、「ともに」、「ここから」と連発。それからFUJI(Dr/Cho)は、今日同ステージに出演する久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」を一部歌うサービス精神旺盛っぷり。さらにバンドが音頭を取る形で、前方から観客全員参加のウェーブも巻き起こし、雨をモロともしないポジティヴな空気を作り上げる。また、「オドルヨル」の曲中に「ライジング! 」と掛け声を挟んだり、「THANX」では寒気も吹き飛ばす温かいエモーションに心の芯まで熱くなった。また最新シングル「Gotta Go!!」収録の「CHARM」も、聴くたびにリスナーの背中を力強く押すパワーを蓄えているように響いた。
そして、《EARTH TENT》を煌びやかな空間に様変わりさせたのはgo!go!vanillasだ。一発目「おはようカルチャー」からシンガロングの大合唱を作り上げ、「バイリンガール」、「ラッキースター」と体を揺さぶるノリのいい曲調を連打。牧達弥(Vo/G)の歌声、一枚岩と化した4人のバンド・アンサンブルも最高。ジェットコースターに乗り込んだような爽快な気分を味わった。「7月に音楽バカを詰め込んだアルバム(『FOOLs』)を出した。音のディープなところは行こう、俺たちの音と逃避行しようぜ!」と言うと、「サウンドエスケープ」を放つ。柳沢進太郎(G)のブルージーなギターはいい味付けとなり、ロマン溢れるドリーミーな音色も北海道の大地と共鳴していた。
再び《SUN STAGE》に戻ると、back numberが姿を見せた。「半透明人間」、「SISTER」、「わたがし」と次々と曲を披露。雨の止まぬ曇天の空に、彼らの音楽はなぜかよく似合う。陰のある曲調が多いから、という理由ではない。心の深奥部分にスーッと手を伸ばし、優しく触れてくるメロディは灰色の空と相まって、より壮大に響き渡った。中盤に演奏した「ヒロイン」の切ない歌メロも、いつも以上に心に沁みたのは言うまでもない。後半は「MOTTO」、「青い春」、「スーパースターになったら」と激しいナンバーで畳み掛ける。静から動へ、オーディエンスを感情を気持ち良くアゲていく手腕もさすが。この地で彼らのライブをまた堪能したい、と素直に思った。
引き続き、同ステージで[Alexandros]を観ようと構えていたら、唐突に花火が打ち上げられた。2日目はオールナイトだ。ライブはまだまだ続く。その最中に崇める花火も実にいいものだ。話を戻そう。[Alexandros]はミドルテンポな「ワタリドリ」で火蓋を切った。メロウな曲調が闇夜に映え渡る。「石狩の皆さん、大人の時間を始めましょう! 」と川上洋平(Vo/G)が言うと、ラップを交えたミクスチャー風の「Kaiju」へ。すると川上はステージと客席の間に設置しているお立ち台に何度も出向き、観客をアジテートしたり、自らヘドバンして曲に没頭する。そのアグレッシヴなパフォーマンスには耳目を奪われた。「Kick&Spin」と前半はノリのいい曲調を畳み掛け、後半は「Starrrrrrr」、「Adventure」とメロディアスなナンバーを披露。「北海道に新曲を持ってきた! 」と告げると、最後を大胆にも新曲で締め括り、このサプライズに観客も盛大なリアクションで返していた。その景色を眺めながら、「お前ら最高だ! 愛してるぜ! 」と川上は感謝の言葉を述べていた。そんなまっすぐな発言さえも、北海道という土地、ライジングサンという場所は悠然と受け止める。
アーティストも、ここに集まった観客も、心を丸裸にさせられるフェス。ここでは送り手と受け手の最高のコミュニケーションが成り立っている。それになによりも感動した。多くの出演者がまたライジングサンに出たい、と欲する気持ちがわかった気がした。
なお来年20回目を迎えるRISING SUN ROCK FESTIVALの開催が既に発表されている。
【RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO】
2018年8月10日(金)、11日(土・祝)
我々も今から本当に楽しみでたまらない。 SEE YOU NEXT YEAR !
●2017年8月11日[金・祝]
「ライジングサンがアーティストに愛される理由がよくわかった」と、多くの出演バンドが異口同音にそう言っていた。今年で19回目を迎える『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO』。北海道小樽市の石狩湾新港樽川埠頭横 野外特設ステージで行われ、個人的には初参加ゆえに観るものすべてが新鮮に映った。
羽田空港から一路、新千歳空港へ。札幌市内の麻生(あさぶ)駅からシャトルバスに乗り、会場を目指した。ああ、やはり東京と比べて空が広いなあ、と早くも北海道気分を満喫。また、バスを追い越す若者の車中ではWANIMAが爆音で流れていた。40分足らずで会場に着くと、まずは全ステージを渡り歩いた。
簡潔に感想を言うなら、各ステージ間の距離がとにかく半端じゃない。しかも至る所にキャンプ・サイトが設けられ、音楽とレジャーが完全に一体化している。とりわけ驚いたのは会場内に郵便局があったこと。大きな荷物を抱えた女性2人組は「関西から来たんで、飛行機に積めないから」と教えてくれた。参加者はゆうパックでキャンプ・グッズを郵送し、会場で受け取る仕組みが整備されている。面白いなぁ。
今日はどんよりした曇り空。暑さの心配は皆無で、むしろ肌寒さを覚えるくらいだった。最初はメインの《SUN STAGE》トップを飾る10-FEETから観戦。「goes on」で始まると、あまりの盛り上がりに演奏を一旦ストップ。仕切り直して、次々と曲を繰り出すと、「B’zのTシャツ着た人がダイブしてた! 全曲歌ってた! 」とTAKUMA(Vo/G)は満面の笑みで告白。それから「EASY COME,EASY GO!」(by B’z)のフレーズを少し弾いた後、TAKUMAとNAOKI(B/Vo)がハイタッチする光景も微笑ましかった。「ヒトリセカイ」、「太陽4号」と歌モノ路線を貫く近作の楽曲が続き、特に後者は耳元で語りかけるようなフォーク風味の曲調で、北海道の雄大な空気とマッチしていた。そして、16年前のデビュー作収録の「BE FRIENDS AGAIN」をここで披露。英語詞メロディック時代のシンプルな曲調も抜群に映えていた。
それからビッケブランカを観るべく、《def garage》へ移動。裏声を多用した魅惑のハイトーンで迫るビッケブランカの歌唱力、サポート・メンバーを従えた賑々しい音像により、観客を至福のポップ空間に誘う。「北海道には縁がある、第二の故郷」と本人は言っていたが、眼前のお客さんと対話する温かいパフォーマンスがそれを裏付けていた。「Natural Woman」でダンスフロア化させると、場の温度もグッと上がり、ラストは底ナシのパーティー・チューン「ファビュラス」へ繋ぐ。バングルスのヒット曲を彷彿させる80’Sポップスのキラキラした輝きも眩しく、聴く者の体を執拗に揺さぶる高揚感溢れる音色は素晴しかった。
女性ドラマー擁する3人組、Saucy Dogが《RED STAR CAFE》に登場。「あなたの希望になる曲を」と石原慎也(Vo/G)が言うと、「ロケット」をプレイ。感情剥き出しの力強いヴォーカル、熱のこもった演奏も迫力十分。「北海道、初めてライブに来ました!」と、せとゆいか(Dr/Cho)が挨拶し、「ナイトクロージング」、「グッバイ」と立て続けに披露。この日、初めてライブを観た人たちも多かったかもしれない。しかし、何か爪痕を残そうとするバンドの前のめりの姿勢が伝播したのか、曲が進むにつれ、観る者を心をグッと掴んでいた。
再び《SUN STAGE》に戻ると、UVERworldのメンバー5人がステージに立つ。「7th Trigger」、「I LOVE THE WORLD」と勢いよく畳み掛け、ライジングサン初登場であることを告げた後に「最高の夜にすると決めた! 」とTAKUYA∞(Vo)が言うと、映画『銀魂』主題歌の「DECIDED」を披露。スクリーンに歌詞が流れ、劇的な曲調をさらに盛り上げる演出も効果的だった。そして、「WE ARE GO」をプレイ中にひとつの物体が宙空を舞う。「興奮すると、クツを飛ばしちゃうんです。熱くなったら、左足の魂(クツ)も飛んでいくんだから」とTAKUYA∞は言い、場をドッと沸かせた。また、10-FEETやB’zを学生時代に聴いていたようで、大好きなアーティストと同ステージに立つ喜びを爆発させると、過去にライジングサンにライブを観に来ていたことを告白。彼らにとって、いつか出演したいと思うフェスのひとつだった。その気持ちがひしひしと伝わる衝動的なパフォーマンスを見せつけた。
その後は《RED STAR FIELD》に足を伸ばし、THE BACK HORNを観ることに。赤と青の照明が闇夜をファンタジックに彩る中、宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」をここで披露。山田将司(VO)の包容力に富む優しい歌声、繊細なバンド・アンサンブルが壮大なスケールを描く。多くの人たちが、音に吸い込まれるように聴き入っている。「来年20周年、メジャー・デビューしてすぐ《EARTH TENT》に出た」とライジングサンとの関わりを話した後、最新26thシングル表題曲「孤独を繋いで」をプレイ。切れ味鋭い演奏が織り成す、アッパーな躍動感に心を射抜かれた。
そして、初日の《SUN STAGE》トリを飾ったのはレキシ。「帰って来たぞー!」と開口一番に発すると、エンタメ性抜群のステージで観客を手玉に取る。「年貢 for you」では撮影中のカメラマンにリクエストを尋ね、細川たかしの「北酒場」、松山千春の「大空と大地の中で」、チェッカーズの「涙のリクエスト」と軽快に歌い上げていく。「まさかB’zさんのあとにやるとは・・・」とレキシは驚きつつ、2011年のライジングサン《BOHEMIAN GARDEN》に初出演したことに触れ、2時間半やって怒られたエピソードを挟む。それから「狩りから稲作へ」に移ると、「稲穂持ってないの、恥ずかしくないよ。稲穂、持ってる方が恥ずかしいよ~」と声をかけ、終いには「稲トラソウル!」で観客を見事に一つに束ねる。しかもトータル10回ほど連発! これには大爆笑した。もはやレキシの独壇場と化し、曲を知ってる知らないを超越した抱腹絶倒ライブを貫徹した。
●2017年8月12日[土]
2日目は朝から雨が降っていた。会場に着くと、大きな水たまりや地面のぬかるみがひどい場所もあり、昨日と比べても、明らかに2、3倍の体力が必要とされる状況だった。ゆえに余裕を持って早めに動くことを心がけた。《RAINBOW SHANGRI-LA》に辿り着くと、「おはようございます! sumika始めます! 」と片岡健太(Vo/G)が元気よく挨拶。雨脚が激しくなる中、晴天のごとく爽やかなメロディを解き放つ。片岡は05年のライジングサンに出場した斉藤和義のライブを観て、チケットを買わず、自らの力でこの場所に立ちたいと思ったそうだ。念願のフェス初登場にメンバー自身も感極まっているように見えた。「雨で疲れていると思うので、皆さんを復活させたいと思います!」と言うと、「ふっかつのじゅもん」をプレイ。ダンサブルな曲調で観客を踊らせた後、普段はやらない曲と前置きし、「友達の結婚式とかで歌えたらと思って」と付け加えると、「ここから見える景色」を演奏。至福のメロディ・ラインが胸に沁み入った。
続いて、《def garage》にBAND-MAIDが登場。メイド服とハードロックな曲調をコンセプトに掲げた5人組ガールズ・バンドで、国内はもちろん、ワールド・ツアーも積極的に行っている。彩姫(Vo)のハイトーン・ヴォーカルを主軸に、小鳩ミク(G/Vo)が歌/コーラスで援護し、キャッチーなメロディをさらに輝かせる。MISA(B)、AKANE(Dr)の安定感抜群のリズム隊を土台に、速弾きを含むメタリックなKANAMI(G)のギター・ソロも随所で炸裂。ルックスとは真逆を突っ走る、硬派な演奏で多くの人を焚き付けていく。「もっと声出して!」と小鳩が煽ると、ゴリゴリのヘヴィなリフで攻める「Don’t Let Me Down」へ。サビに突入すると、観客はクラップ&ジャンプと大騒ぎ。その後もフェスを意識して作った「Play」など、アグレッシヴな演奏を叩き付けた。
《SUN STAGE》に姿を見せたWANIMA。今年3月にはさいたまスーパーアリーナで初ワンマン公演を大成功に収めた3人組。この日も「元気しとった?」とKENTA(Vo/B)は親密に語りかけ、「ともに」、「ここから」と連発。それからFUJI(Dr/Cho)は、今日同ステージに出演する久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」を一部歌うサービス精神旺盛っぷり。さらにバンドが音頭を取る形で、前方から観客全員参加のウェーブも巻き起こし、雨をモロともしないポジティヴな空気を作り上げる。また、「オドルヨル」の曲中に「ライジング! 」と掛け声を挟んだり、「THANX」では寒気も吹き飛ばす温かいエモーションに心の芯まで熱くなった。また最新シングル「Gotta Go!!」収録の「CHARM」も、聴くたびにリスナーの背中を力強く押すパワーを蓄えているように響いた。
そして、《EARTH TENT》を煌びやかな空間に様変わりさせたのはgo!go!vanillasだ。一発目「おはようカルチャー」からシンガロングの大合唱を作り上げ、「バイリンガール」、「ラッキースター」と体を揺さぶるノリのいい曲調を連打。牧達弥(Vo/G)の歌声、一枚岩と化した4人のバンド・アンサンブルも最高。ジェットコースターに乗り込んだような爽快な気分を味わった。「7月に音楽バカを詰め込んだアルバム(『FOOLs』)を出した。音のディープなところは行こう、俺たちの音と逃避行しようぜ!」と言うと、「サウンドエスケープ」を放つ。柳沢進太郎(G)のブルージーなギターはいい味付けとなり、ロマン溢れるドリーミーな音色も北海道の大地と共鳴していた。
再び《SUN STAGE》に戻ると、back numberが姿を見せた。「半透明人間」、「SISTER」、「わたがし」と次々と曲を披露。雨の止まぬ曇天の空に、彼らの音楽はなぜかよく似合う。陰のある曲調が多いから、という理由ではない。心の深奥部分にスーッと手を伸ばし、優しく触れてくるメロディは灰色の空と相まって、より壮大に響き渡った。中盤に演奏した「ヒロイン」の切ない歌メロも、いつも以上に心に沁みたのは言うまでもない。後半は「MOTTO」、「青い春」、「スーパースターになったら」と激しいナンバーで畳み掛ける。静から動へ、オーディエンスを感情を気持ち良くアゲていく手腕もさすが。この地で彼らのライブをまた堪能したい、と素直に思った。
引き続き、同ステージで[Alexandros]を観ようと構えていたら、唐突に花火が打ち上げられた。2日目はオールナイトだ。ライブはまだまだ続く。その最中に崇める花火も実にいいものだ。話を戻そう。[Alexandros]はミドルテンポな「ワタリドリ」で火蓋を切った。メロウな曲調が闇夜に映え渡る。「石狩の皆さん、大人の時間を始めましょう! 」と川上洋平(Vo/G)が言うと、ラップを交えたミクスチャー風の「Kaiju」へ。すると川上はステージと客席の間に設置しているお立ち台に何度も出向き、観客をアジテートしたり、自らヘドバンして曲に没頭する。そのアグレッシヴなパフォーマンスには耳目を奪われた。「Kick&Spin」と前半はノリのいい曲調を畳み掛け、後半は「Starrrrrrr」、「Adventure」とメロディアスなナンバーを披露。「北海道に新曲を持ってきた! 」と告げると、最後を大胆にも新曲で締め括り、このサプライズに観客も盛大なリアクションで返していた。その景色を眺めながら、「お前ら最高だ! 愛してるぜ! 」と川上は感謝の言葉を述べていた。そんなまっすぐな発言さえも、北海道という土地、ライジングサンという場所は悠然と受け止める。
アーティストも、ここに集まった観客も、心を丸裸にさせられるフェス。ここでは送り手と受け手の最高のコミュニケーションが成り立っている。それになによりも感動した。多くの出演者がまたライジングサンに出たい、と欲する気持ちがわかった気がした。
【取材・文:荒金良介】
なお来年20回目を迎えるRISING SUN ROCK FESTIVALの開催が既に発表されている。
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