20回目のRISING SUN ROCK FESTIVAL 7.4万人を動員,来年21回目の開催も!
RISING SUN ROCK FESTIVAL | 2018.08.13
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:n-foto RSR team
1999年のスタートから今年で20回目の開催となった「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO」は
全ての入場券がSOLD OUTとなり、総入場者数74,000人のオーディエンスを迎え、8/12(日)昼12時で2泊3日、50時間の開催期間を終了した!
初日の夜は雷雨に見舞われるなど、過酷な環境での野外フェスとなったが、数々のドラマを生みながら、20回目の朝を迎えた。
そして来年、21回目のRISING SUN ROCK FESTIVALの開催も発表!
【RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO】
2019年8月16日(金),17日(土)開催決定!
RISING SUN ROCK FESTIVALは来年に向けて動きだす。
<RSR2018入場者数>
8/10(金) 37,000人
8/11(土) 37,000人
TOTAL 74,000人
【サカナクション】<8/10(金)21:30~@SUN STAGE>
雨が降る夜のSUN STAGEに登場したのはサカナクション。青い幻想的なライトに覆われたステージがパッと明るく照らされると、山口一郎が指揮者となってバンドを率いながら、「サンプル」でライヴがスタート。そして「アイデンティティ」「セントレイ」とアップテンポのナンバーを立て続けに披露し、雨もお構いなし!といった具合にたくさんの手が上がる。4年ぶりに地元へ戻ってきた彼らのパフォーマンスを、この場所に集まったすべての人が身体全体で楽しんでいることが伝わってくる。
鍵盤の音色から回転するように展開していく「ネイティブダンサー」から、流れるように入っていった「ライトダンス」では、アグレッシブなベースソロにうねうねとしたギターが絡みつき、サイケデリックな空間を生み出す。さらに、「風が気持ちいいですね」という山口の言葉から、ループするデジタルサウンドが心地よい「多分、風。」へ。曲のラストで暗転し再びライトがついた瞬間、5台のmacの前で横一列に並ぶ5人。一瞬の場面転換で「ミュージック」へと続いていく。曲中で再び暗転し、次に明るくなった時にはもとのバンドセットの状態に。おなじみの演出だが、このだだっ広い石狩の土地でのそれは、鳥肌が立つほどに、よりスケール感がアップして見えた。
ライヴ終盤の「ルーキー」では、山口のシンセ、ギターの岩寺とベースの草刈が鳴らす太鼓のリズムが雄大な土地に響き渡る。だんだんと大きくなっていくサウンドに比例して、会場全体の人の動きも大きくなっていき、レーザーが夜の雨の空に真っ直ぐ伸び、「ライジングサンロックフェスティバルー!」という山口の声を合図に、会場の熱気は一気に最高潮へ。「まだまだ踊れますか? 明日、山下達郎さん来るんですよね? 羨ましいわー!」と笑顔いっぱいに山口が語ると、ラストナンバーとなる「陽炎」を披露。バンドマイクなった山口はステージの左右を動き回り、さらに強まる雨を物ともせずにSUN STAGE前方に用意されているお立ち台のほうへ。雨に打たれながらも、この場所へ集まった人たちと共に音楽を楽しんで唄う彼の笑顔は、まるで小学生のよう。あの純粋無垢な表情は、やはり生まれたこの北海道の空の下だからこそ見られたものだろう。
アンコールでは、バンドの初期の時代を代表する「三日月サンセット」を。彼らがまだ北海道にいる頃に作られた曲だ。どんなにバンドが大きくなろうが、どんなにドラマチックで派手な演出が加わろうが、今でも彼らの根っこにあるのは、この北の大地で始まった、音楽がバンドが好きだという純粋な思いなのだろう。「ありがとう」と大きく手を振ってステージを去っていったメンバーは、やはり子供のように楽しそうであった。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:古渓一道
【yonige】<8/10(金)17:00~@EARTH TENT>
EARTH TENTの2組目として登場したのはyonige。野心とは無縁のマイペースなスタイルに反して、飛ぶ鳥を落とす勢いで爆進中の2人。彼女たちへの期待値の高さは、初登場で用意されたそのステージの大きさや、満場のフロアからも十二分に伺えた。今か今かとと待ち構える観客の中、やはりゆったりと登場した牛丸ありさ(ヴォーカル・ギター)とごっきん(ベース・コーラス)。1曲目に披露したのは「最愛の恋人たち」。真っ赤な照明の中で〈灰になってもうどれほど経つだろう/今思えばあなたのことは/好きじゃなかったけど好きだったような〉と恋に溺れた人間のやるせない気持ちを唄い上げ、瞬く間に会場を自分たちの色に染め上げた。続いて「リボルバー」「our time city」を披露しMCへ。「改めまして、yonigeです。初めましてのライジングでこんなクソデカいステージを用意してくださって、ありがとうございます。雨宿りで入ってきた人もありがとう」と語ったのち、「私たち北海道が大好きで。何でかって言うと、露骨に食べ物が美味しいから! この後はジンギスカンを食べる任務があります」と熱い北海道愛を露わにしたごっきん。そして次第に強まる雨足に「イヤモニ外すと雨の音がすごいね」と驚いた牛丸だが、その後「アボカド」を筆頭としたとアッパーチューンを披露し、雨で凍てつく多くの観客たちの熱を上げさせた。その一方で、「沙希」といったしっとり聴かせる曲では、曲中に訪れる一瞬の静寂の合間に雨音が美しく響き、まるで雨も演出のひとつかのようにyonigeの音楽がより深く、色濃く彩られていた。ラストはCMでもお馴染みとなった「笑おう」で大団円。〈うまくいかないことが多くても/泣いて生まれてきたから/笑って行こう〉と綴られた前向きな詞は、何事もなんとかやっていけそうな勇気を与えてくれる。yonigeの曲は恋愛中の独りよがりな感情に共感させてくれる一方で、こんなふうに希望の光も与えてくれるのだから面白い。計12曲も披露し、初登場とは思えない堂々としたパフォーマンスでEARTH TENTの夕刻を飾ったyonige。途中、雨宿りがてら入ってきた観客の多くが足を止めそのまま聴き入る姿が印象的で、強い雨をも味方につけて一瞬にして自分たちの世界を作り上げた2人がとても頼もしく見えた。彼女たちへの期待値はさらに増え続ける一方だし、一番大きいステージで演奏する日もそう遠くはないのだろうと思いながら、ステージを去る彼女たちの姿を見送った。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:小川舞
【獄門島一家】<8/10(金)19:40~@RED STAR FIELD>
20年目のライジングサンの皆勤賞男、中村達也(LOSALIOS、MANNISH BOYS)が家長である獄門島一家がレッドスターフィルドに登場した。ステージに楽器陣の3人が現われ、“西園寺”ことKenKen(RIZE,Dragon Ash, LIFE IS GROOVE)はおもむろにベースを弾きはじめると、そこにメガネをかけ、ねじり鉢巻に黒のタンクトップの上に真っ赤な腹巻(この日のために知り合いに届けてもらったらしい。しかもラメ入り)という“お父様”スタイルの中村達也のドラムと、“お兄様”こと長岡亮介(ペトロールズ)のギターが重なっていき、セッションがスタート。その後半、一家のお嬢様である“長女” アヴちゃん(女王蜂)がステージに登場し、さしていた傘を放り投げたのを合図に「無法地帯」が始まった。続く「獄門島一家のテーマ」では、お兄様、西園寺、お父様の順にソロを披露。なかでも、ドラムソロのタイミングでは、ひときわ大きな歓声と拍手が起きる。そんなライジング20回連続出演ミュージシャンが「我が家に咲いた仇花!」と紹介したアヴちゃんは、キュートなヴォーカルにドスの効いた歌声、ハイトーンからデスヴォイスまでも自在に操りながら、レッドスターフィルドに集まったオーディエンスをぐいぐいと引き込んでいく。「シーサイドスーサイド」では、トランペットを吹いた時の妖艶でしなやかな美しさのある彼女の立ち姿に目は釘付けに。そして、「お腹すいちゃった」という言葉から始まった、80’S歌謡ど真ん中のメロディと獄門島一家によるアグレッシヴなサウンドとのマッチングが最高なシブガキ隊の「スシ食いねェ!」のカヴァーで、会場を完全掌握。中村、KenKen、長岡のグルーヴも最高潮に達し、最後は「多幸感」から「獄門島一家のテーマ」で終了。思えば、獄門島一家の初ライヴはここライジングサンだった。その5年前の鮮烈な印象をさらに上書きする今回のパフォーマンスによって、中村達也にとって20回目となるライジングサンのステージに、艶やかな花を添えたのであった。超多忙な面々によるバンドゆえ、神出鬼没なライヴ活動となっているわけだが、またここ蝦夷の地で鮮烈な再会ができることを願ってやまない。そして21年目のライジングでは、どんな形で中村達也と会えるのか? まだ開催中ではあるけれども、今から楽しみでならないのである。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:西槇太一
【怒髪天×RSR FRIDAY NIGHT SESSION】
“TRIBUTE TO bloodthirsty butchers IN EZO 2018” <8/10(金)23:00~@def garage>
会場に泊まるキャンパーズのために行われる、恒例のFRIDAY NIGHT SESSION。
今年は怒髪天がホストとなってのbloodthirsty butchersトリビュート・セッション。1999年、第一回目のこのフェスで鮮烈な印象を残した彼らのトリビュートは、20回目となる今年、大きな意味があった。そして2013年の吉村秀樹の急逝から5年。これまで休止状態だったブッチャーズがライヴを行う、ということも。
まず増子とWESSの若林氏がMCとして登場。このトリビュート・セッションにあたっての思いを語る。ハウスバンドは怒髪天のメンバーが務める。彼らをバックにひとりひとり、ヴォーカリストがステージに上る。トップバッターは椎木知仁(My Hair is Bad)。緊張した面持ちでの「ジャックニコルソン」は、その青さすら残る純粋さが、吉村の姿をダブらせる。続くKO(SLANG)は、吉村の大きなパネルを掲げて登場。昨年出演したライジングでも、吉村のことを語っていたことを思い出した。そして増子が登場し、つまり怒髪天として「I’m on fire」を披露。増子はかなり感極まっているかのような表情だった。
再びMCタイム。増子とKOが吉村について話す。湿っぽくならないように迷惑だった思い出を語ろうとするが、深い仲の二人だけあって、どの思い出も強烈なものばかりだ。
続いては吉野寿(イースタンユース)。増子、KO同様、若き札幌時代からのバンド仲間だ。吉村が愛飲していたいいちこを片手に登場し、エレキで「Never Give Up」を弾き語りするが、なんといいちこボトルネック奏法を披露。「昨日『観に行きます』って連絡したら『出ろ』って言われた」という後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)はアコギ弾き語り。この日、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとしてのステージでも、吉村が好きだったという「マーチングバンド」とブッチャーズの「banging the drumを披露していたが、なんというブッチャーズ愛か!
増子が後藤、吉野、そしてブッチャーズのジャケットを描いた奈良美智をステージに呼びこむ。ここでも吉村伝説が披露されるが、そのどれもが愛である。続いて登場したTOSHI-LOW(BRAHMAN)は「散文とブルース」の〈いつの日かまた僕らを連れてって〉という歌詞を〈ライジングサンにまた戻ってきて〉と唄った。そして再び増子がTOSHI-LOWとRACCO(Idol Punch)を呼び込みトークの間、セットチェンジ。期待が高まる。
ラストに登場したのはbloodthirsty butchers。射守矢雄、小松正宏、田渕ひさ子の3人が音を鳴らす。あのフィードバックノイズ。止まっていた時計が動き出した。そこに吉村はいないが、確かにブッチャーズの音が鳴っていた。吉村の声が聴こえた気がした。3人はただひたすらに演奏する。あれだけリスペクトするヴォーカリストが登場し、その愛を叫んでも、ここに立てるのはただひとりなのだ。失ったものの大きさと、そして強い愛情を感じる瞬間だった。
ラストは「7月」。そう、20年前、この会場で最後に披露し、吉村がギターを空へと投げた伝説の1曲だ。あの日は田渕もNUMBER GIRLとしてここに出ていた。ライジングサンの20年、そしてブッチャーズへの思いがそこにあった。強く雨が降る中、アンコールを求める拍手はなかなか鳴り止まなかった。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:西槇太一
【ペトロールズ】<8/11(土)14:00~@RAINBOW SHANGRI-LA>
「一度はけてまた出てくるのは恥ずかしいから」という理由で、サウンドチェックの流れでゆるりと本編を始めたペトロールズ。しかしそのゆるっとした空気とは裏腹に、1曲目の「闖入者」から、精巧な積み木細工のような緻密な演奏で、ダイナックなサウンド空間を描いていく。続く「表現」でもコーラスワークでさらに演奏に厚みをもたせ、3ピースとは思えないほど奥行きのあるサウンドを展開。時計の針のように明確に刻まれる一定のリズムの上で、自由に泳ぐように奏でられる長岡亮介のギター。時に重厚感を増すリズム隊と重なり合いながら、心地よいグルーヴがRAINBOW SHANGRI-LAを包んでいく。
中盤はしっとりとムードたっぷりに「ホロウェイ」を披露。ねっとりと濃厚なサウンドの下に横たわるベースラインが、腰のほうから身体を揺らせにくる。そこに身を預けていると、突如、激しくぶつかり合うように音を放ち、今度は耳をガシッと掴まれる。さらに「KA・MO・NE」では、絡み合うような音色とコーラスにより、分厚い毛布に包まれているような感覚に。ステージもステージ下も、お互いに自由に音楽を浴びている。淡々とした表情から、「ラララ」と声を合わせるサビ、そして激しいインストパートと繰り返しながら壮大な景色を作り出してく「Fuel」で、テントのテンションもさらに上がっていく。
最後は、アグレッシブなファンクチューンの「止まれ見よ」。長岡とリズム隊の2人が交互にヴォーカルをとっていき、次々と場面を展開しながら大きなうねりを巻き起こし、RAINBOW SHANGRI-LAを完全支配。3人というミニマムなバンド編成の中で、そのルールに則り、自由に音楽を鳴らしていたペトロールズのステージ。それは、一定のルールは作りながらも、個人のモラルとマナーに判断を委ね、みんなで楽しめる空間を作ろうとするライジングサンと少し似ているような気がした。そして3人は清々しい表情でステージを後にした。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:藤川正典
【よよかの部屋】<8/11(土)15:10~@RED STAR CAFE>
「早熟」という言葉がこれほどふさわしい人はそういないだろう――弱冠8歳、小学2年生のドラマー・よよかが率いる家族バンド、かねあいよよかのステージがあまりにも異次元過ぎた。ステージに登場し、自身の身体より一回りも二回りも大きなドラムセットのもとへ向かい、椅子に腰掛けるやいなや「よよかの部屋へようこそ~」とあどけない声で、まずは集まった観客に挨拶したよよか。「自己紹介がわりにドラムソロを披露します」と言ったのち繰り出されたのは、その小さな身体からは想像もできないほどパワフルでヘヴィなドラムさばき。さきほどまで彼女に対し「可愛い~」と言葉を投げかけていた観客たちも、完全に度肝を抜かれ言葉を失っていた。そして「これからよよかのお友達を紹介します!」と母・りえ(ヴォーカル・ギター)の紹介のもと登場したのは……KenKen! 想定外過ぎるゲストに一気に沸き立つ観客。その衝撃に拍車をかけるように続いて登場したのは、なんと奥田民生。その豪華過ぎる「お友達」とともに披露したのは、よよか自身が作詞作曲したという「ハッピー」。天才的なドラムスキルに加えて作詞作曲もできるというのだから、良い意味で本当に末恐ろしい。途中、民生が間違って笑ってしまうシーンもあったが、よよかを筆頭に全員が心底楽しそうに演奏する光景は、観ているこちら側も何とも言えない多幸感に包まれた。しかし何だこのセッション。ほのぼのして、楽しくて仕方がない。その後、家族がステージを去ったところでまたもや「お友達」の登場。次は一体誰が?と待ち構える観客の前に現れたのはCROSS ROADSの聡一郎、そしてChar! とんでもないメンツが集結し披露されたのは、レッド・ツェッペリンの「Good Times Bad Times」。濃密過ぎるパフォーマンスに、思わずこの光景は夢か現か幻か?と疑いかけたが、これは8歳の女の子が音楽を通じて大人も子どももひとつにした紛れもない現実なのだ。弱冠8歳の彼女から溢れる底知れぬパワー、そしてキラキラした目で楽しそうに演奏する姿は終始グッときたし、これから彼女がどんな感動を与えてくれるのだろうかと楽しみになった。だがその一方で、どうかこの先も彼女にとって音楽がただひたすらに「楽しいもの」であってほしいと、思わず強く願う自分がいた。一瞬にして一生忘れられないステージや、こんなにも熱いサプライズが観られるのはライジングならではだ。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:藤川正典
【マキシマム ザ ホルモン】<8/11(土)16:00~@SUN STAGE>
各ステージで熱演が繰り広げられる中、SUN STAGEを熱狂の渦へ包み込んだのは、マキシマム ザ ホルモンだ。
SEが流れる中、メンバーがステージ上に現れると、うぉー!という絶叫のような歓声があがり、その歓声に油を注ぐように、1曲目からいきなり「恋のメガラバ」が投げ込まれる。どっしりとした重低音と、それに合わせて腕を上下に動かしながら踊りまくる観客によって、北の大地がビリビリと震える。昨年は同じSUN STAGEの深夜帯に登場し、降りしきる雨の中でのパフォーマンスだったことを振り返り、工藤静香の「嵐の素顔」を挟みつつ(笑)、今年で20回目を迎えたライジングサンに向けて、「20年の歴史の中で一番の時間作ろうぜー!」と気合いの言葉を語るダイスケはん。その後、「鬱くしき OP~月の爆撃機~鬱くしき人々のうた」「便所サンダルダンス」と立て続けに演奏し、エネルギーを轟音に乗せて放出していく。
「お前ら自由すぎんか? でも今日はバカになってもいいよ!」とダイスケはんが、集まった人たちの背中をさらに押して高める。そう、この日だけは、普段必死に学校で勉強している学生も、会社で気を遣いまくっている社会人も、誰もが自由で、誰もが夢中になってバカ騒ぎしていいのだ。「絶望ビリー」や「爪爪爪」で、全力でヘッドバンギングするお客さんたちは、とても美しく見えた。
後半戦では、さらに獰猛なサウンドがSUN STAGEに襲いかかる。突然の雷雨のように激しく鳴り響く重低音が、熱気をぐいぐい上昇させていく。演奏しているメンバーもあまりのアグレッシヴさに、ナオはせっかく施してきたジェルネイルが10本中4本も外れるという自体も。しかし、そんなことはお構いなしに「F」でラストスパート。そして、あらためて20年間続いてきた(続けてきた)ライジングサンへの敬意を語り、体調不良で急きょ出演キャンセルとなってしまった仲間のJESSE(The BONEZ)の思いも背負いながら、その場にいるすべての人と共に恒例の〈恋のおまじない〉を(ちなみに、屈強な外国人セキュリティの方々もしっかり参加させていた)。最後は、スペイシーなサウンドが印象的な「恋のスペルマ」を披露。20回目となるライジングサンを、ヘヴィなサウンドでガッツリとお祝いしたのだった。
撮影:浜野カズシ
【サニーデイ・サービス】<17:30~@BOHEMIAN GARDEN>
ライジングサンの記念すべき第1回のクロージングを務めたサニーデイ・サービス。彼らはその翌年12月に解散してしまったのだが、2008年7月に再結成を発表。ふたたび曽我部恵一、田中貴、丸山晴茂の3人がステージに揃った最初の場所も、ここ石狩平野であった。そんなライジングとはゆかり深い彼らが、小雨交じりの夕刻のボヘミアンガーデンに登場し、「baby blue」でライヴをスタートさせた。続く「スローライダー」は、第1回にもプレイされたナンバーであり、リリースされたばかりの新曲であったのだが、それから20年の時を経て、当時よりも、幾分穏やかでたおやかなグルーヴで聴かせる。「今日を生きよう」を終え、曽我部が「あんまりこういうことはしないのだけど、今日にぴったりの曲があるので」と言い、予定していた楽曲を急遽変更して披露したのは、「雨の土曜日」。霧雨が降り続く空に響いていく切なく優しいメロディ。そのあとに演奏された「苺畑でつかまえて」は、7月に今年5月亡くなったことが知らされたドラマー丸山が参加した最後の曲のうちのひとつだ。
「ありがとう」と、今この場に集まってくれたオーディエンスとライジングサンへの感謝を伝えたあとプレイされた「セツナ」は圧巻であった。ギターをかき鳴らし、時にマイクスタンドを掴みながら、いろんな想いを歌に乗せて声を放つ曽我部恵一。彼の熱量に呼応するかのように、メンバー全員が頭を振り乱し、演奏はどんどんエモーショナルに。相変わらず小雨は降り続き、少し肌寒くなってきてはいたが、ステージ上に渦巻いていくエネルギーによって、ボヘミアンガーデンは徐々に熱を帯びていったのだった。
「亡くなって、さみしいよ。それだけ」という曽我部の言葉に続いて、「白い恋人」「愛と笑いの夜」「青春狂想曲」と初期のナンバーが続けざまにプレイされていく。そこから見えてくる、彼らにとってかけがえのない友人でありバンドメンバーであるドラマー丸山への惜別と、20年目のライジングへの愛情にグッとさせられる中、ラストナンバーの「サマーソルジャー」が始まった。曽我部のギターがイントロを鳴らした瞬間、オーディエンスの両手が上がり、メロディに合わせてゆらゆらと揺らめいていく。ライジングサンが迎えた初めての夜明けに鳴されていたこの曲で、サニーデイ・サービスの今年のライジングでのライヴは幕を閉じたのだった。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:原田直樹
【山下達郎】<8/12(土)18:10~@SUN STAGE>
小雨降る中、SUN STAGEに山下達郎登場。
過去、2010年と2014年にも出演し、4年に1回というオリンピック周期でこのステージに立っている彼だが、今年も圧倒的な存在感を見せつけた。
観客はもちろん、出演者や関係者の注目度も相変わらず高い。リハ代わりのセッティングを「LOVELAND,ISLAND」で軽く合わせると、そのまま「SPARKLE」へ。
「山下達郎です。今晩もよろしく」
挨拶から「THE THEME FROM BIG WAVE」へ。「4年ぶりですが、今年は私がついに最年長です」と笑いながら、7月にリリースしたばかりの新曲「ミライのテーマ」を披露。そして「新しい曲の次は古い曲やります」と「僕らの夏の夢」へ。まさに夏の夢を見ていたわけだが、そこから〈真夏の奇跡〉が始まった。
「もろびとこぞりて」が流れた後、あのイントロが聴こえてくる。「クリスマス・イブ」だ。SUN STAGEを埋めた3万人がどよめく。誰もが知っているこの曲も、ライヴで聴くのは初めての人も多かっただろう。スクリーンにも冬のイメージ画像が映し出されている。そして「BOMBER」を挟んで聴こえてきたのは、KinKi Kids「硝子の少年」のセルフカヴァー。さらに「このまま続けるつもりでしたけど、ノイズったのでギター変えます。お詫びにオマケです」と呟き、始まったのは近藤真彦の「ハイティーン・ブギ」。彼のライヴで、これらのセルフカヴァーは特に珍しいわけではないのだが、フェスで披露されると強烈なインパクト。会場の盛り上がりも凄い。
畳み掛けるように「アトムの子」が始まる。ふと気づくと、3人だったコーラスが4人に増えている。竹内まりやだ。会場のボルテージはさらに高まる。山下は「今年は手塚治虫生誕90周年ですから」と話し、「鉄腕アトム」のフレーズを唄う。「LOVELAND ISLAND」ではギターのカッティングがさらに切れを増し、彼のライヴではおなじみの、拡声器で叫ぶパフォーマンスで締めた。
バンド全員と手を繋ぎ一礼し、ステージから引き上げると思いきや、そのまま「恋のブギウギトレイン」へ。さらにラストはギターを置き「さよなら夏の日」を唄い上げた。彼がフェスに出るたびに思うが、夏フェスの締めにこれ以上の曲はない。
今年も夏が終わる
撮影:菊地英二
【CHAI】<8/11(土)22:10~@def garage>
デフガレージのテントにひしめく人、ステージに立つメンバーの姿をよく見ることはできないが、音だけでも体感したいとテントを取り囲むように集まっていた人々。今、多くのロックリスナーたちが、どれほどまでに注目し期待してるのかがよくわかる、そんなCHAIの初ライジングサンのライヴ。
とても華奢な体つきからは考えられないほど、ぶっとい音を鳴らすユウキのベースに導かれるように始まった「Sound & Stomach」でライヴはスタート。ポップでファニーなサウンドでもって、まずオーディエンスを揺らしたあと、「今日は来てくれてありがとう! 楽しんでいってね」というヴォーカル&キーボードのマナの言葉に続いて、彼女とは双子の姉妹であるカナがギターをかき鳴らし「ボーイズ・セコ・メン」へ。双子ゆえに同じ周波数で聴こえているからなのだろうか。マナとカナがユニゾンして唄うメロディに心地よくなっていると、後半にかけてギアをあげていく4人の演奏に横っ面を叩かれるような気分に。もうこの時点で、多くの蝦夷ロッカーズの心と耳を掴んでいたのであった。
マナとカナのアカペラから始まり、ユウキとドラムのユナもコーラスに加わって、Abbaの名曲「ダンシング・クイーン」のメロディを引用しながら行われた自己紹介のあと、〈コンプレックスはアートなり〉というCHAIの基本精神を歌った「N.E.O.」で、デフガレージの熱気は一気に上昇していく。ユナが叩き出す頼もしくシュアなビートと、彼女たちのセンスが光りまくるサウンドによって、気づけばCHAIの音楽にすっかり身体を委ねてしまう。ユウキがシンベを操り、カナがギターを抱えながらシンセを鳴らすなか、マナがハンドマイクでフロアを煽っていく「フライド」では、自由な感性をもった超個性的なメンバーの雰囲気につい忘れがちになる、4人のプレイヤビリティの高さ、というものを改めて思い知らされる。
そして、〈See you バイバイ/good night tonight/good night sweet dreams〉というフレーズが、この日デフガレージに集まった多くの蝦夷ロッカーズへのメッセージのようにも感じた「sayonara complex」をラストにプレイ。
本当にあっという間に感じた、CHAIの初ライジングサンでのパフォーマンス。もっとたっぷりと、そしてもっと大きなステージに立つ4人を見てみたい。ここにいた誰もがそう思ったと同時に、そんな未来が近いうちに蝦夷の地で見られることを確信した、そんなライヴであった。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:藤川正典
【東京スカパラダイスオーケストラ】<8/11(土)27:30~@SUN STAGE CLOSING ACT>
長いライジングサンの夜が間もなく終わる――。いよいよ、20回目のアニバーサリーイヤーとなった今年のクロージングアクトを務める東京スカパラダイスオーケストラの時間が来た。
今回のスカパラのステージには、スペシャルゲストが7人発表されており、「and more」の文字も。始まる前から特別な日になるであろう期待感がSUN STAGEに充満している。そして、ステージに登場したのはドラムの茂木欣一と、ライジングサン皆勤賞の男・中村達也。
2人によるドラムバトルで火蓋が切られ、続々とスカパラメンバーがステージへ。このスペシャルなステージを前に、「一生懸命作ってきたオリジナルの数々を披露できると思うとうれしいよ。普段は寝て夢見てる時間だと思うけど、起きて夢を見ましょう!」とこみ上げる気持ちを堪えながら語る谷中の言葉には、誰よりもメンバーがこの日を待ち望んでいたことが伝わってくる。
2人目のゲストとなる奥田民生がムードたっぷりに「美しく燃える森」を、さらに追加ゲストであるチバユウスケ(The Birthday)が登場しハスキーな歌声で「カナリヤ鳴く空」を唄い上げる。バンドでコラボした「流れゆく世界の中で」で温かい空気を生み出したキヨサク(MONGOL800)がステージを去ると、うねるベースラインに乗って2人目の追加ゲストのTOSHI-LOW(BRAHMAN)がフードをかぶって登場。フードを脱ぐと何故かハーフパンツ一丁で、そのまま「野望なき野郎どもへ」の雄叫びのような力強い歌声をSUN STAGEにお見舞いする。ちなみに、急きょ出演が決まったということで、スーツを用意してもらえなかっために、この装いなんだそう。
さらにキーボード沖の美しいメロディに乗ってステージに表れたのは永積タカシ(ハナレグミ)。石狩の夜空の下で哀愁たっぷりに鳴らされた「追憶のライラック」は、心をぎゅっと締めつけた。
次にステージに登場したのは、甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)だ。ピンクのジャケットを身に纏い、子供のように大きく足を上げたり、スカのステップを踏みながら「星降る夜に」を披露。キーボード沖のドラマチックな演奏が終わり、ふと上を見上げると、だいぶ空が明るくなってきている。8人目のゲストとなる尾崎世界観(クリープハイプ)が「爆音ラヴソング」を、色気たっぷりに「白と黒のモントゥーノ」を斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)が唄い紡ぐ。そして最後のゲストとなる峯田和伸(銀杏BOYZ)が登場し、唄うのは「ちえのわ」。テンション上がりすぎた峯田は、途中ステージからお立ち台へ大ジャンプ! 谷中にその行動を注意されながらも(笑)、お互いに抱き合って、昨年に続きこの場所でセッションを行えた喜びをぶつけ合う。そして、朝方に唄いたかったという「めくれたオレンジ」を軽快に、しかし濃厚なセッションを魅せた。
すべてのゲストが嵐のように去っていったあと、「まだまだ行くぞー!」という谷中の合図で最高点へ達したSUN STAGE。本編ラストは、「DOWN BEST STOMP」。この2日間で一番の手拍子が巻き起こる。そして興奮冷めやらぬ様子で、そのままアンコールの「Paradise Has NO BORDER」へ突入。ゲスト全員がステージに揃い、スカパラメンバーはお立ち台に並ぶとそれぞれの楽器を大きく動かしながら、圧巻のグルーヴでSUN STAGEがひとつにしていった。「生きてるって気がしたぜ!」と谷中が言葉を残し、RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZOの幕を下ろした。まるで本当に夢のような奇跡の時間。あいにく朝日は見られなかったが、雲の隙間からはたしかに青空が顔をのぞかせ、新しい日の始まりを告げていた。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:西槇太一
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