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エモーションたっぷりの歌声を一人ひとりに突き刺した、銀杏BOYZ初の武道館公演

銀杏BOYZ | 2017.10.25

「味をしめたので来年も日本武道館でやる」と、ライブ後半に峯田和伸(Vo・Gt)は大胆発言をしていた。実際にやるかどうかはさておき、峯田本人の中ではライブの途中段階で余りあるほどの手応えを感じていたのだろう。  「日本の銀杏好きの集まり」と題された、銀杏BOYZ初の武道館公演はトータル3時間に及ぶ長尺ライブとなった。時に激しく、時にゆったりと、この場を我が部屋のように自由気ままに振る舞い、歌と演奏に没頭する姿が印象的だった。その峯田の雰囲気に吸い込まれるようにして、観客もどっぷり銀杏BOYZの世界に浸ることができたに違いない。

 開演18時半、スクリーンには銀杏BOYZのライブで歌い、叫び、泣くファンの表情をとらえた映像が流れる。こうした見せ方も実にうまい。オープニングから期待感を無性に煽られてしまった。そして、サポートメンバーの山本幹宗(Gt)、加藤綾太(Gt)、藤原寛(Ba)、岡山健二(Dr)がそれぞれ定位置に付き、けたたましいドラムを合図に峯田が登場。「エンジェルベイビー」で幕を開けると、ノイジーかつカオティックな演奏の中で、徐々にメロディが鮮明に浮かび上がってくる。峯田はハナからお行儀よく歌おうなんて思わない、エモーションたっぷりの歌声を武道館に突き刺していく。それから「まだ見ぬ明日に」に入ると、既に峯田は口元から唾液を零して、マイクを口に咥えたりと、我が道を突っ走るエンジン全開ぶりだ。  そして、「2017年10月13日金曜日、この日だけこの国を背負って歌う」と言うと、02年に発表されたGOING STEADY名義の「若者たち」をプレイ。もう、イントロからアドレナリンが噴出する名曲である。曲を終えると、峯田は客席、アリーナと右から左へ武道館に集まった観客をじっくり眺め、深く頷く。そこに言葉は介在しない。お互いに強く厚い絆を感じ合うような空気が流れていく。銀杏BOYZとファンの関係性を象徴する一コマだった。  「駆け抜けて性春」に突入すると、会場の温度はグッと押し上がる。煽動的な曲調ゆえに熱がダイレクトに伝播したのだろう。それを経て、峯田がアコギを持つと、「べろちゅー」、「骨」と繋ぎ、後者では男女に分けてコール&レスポンスを図り、ポップなメロディも抜群に映えていた。また、「きもいね。」の歌詞をサポートメンバーがキレイにコーラスするパートも聴き応え十分であった。自らのおでこに何度もマイクをぶつけながら歌い上げた「円光」、クリープハイプの「二十九、三十」のカバーを挟んだ後、「こんな神聖な場所で1曲目から鼻水バーッで・・・」と峯田らしいMCを挟んで観客を和ませると、さらに「一人ぼっちだらけの空間を見たかった」と付け加え、ここで「夢で逢えたら」を披露。どれだけ会場がスケールアップしようとも、峯田は一人ひとりの人間に歌を届けようとするスタンスを崩さない。  「ナイトライダー」、「トラッシュ」と畳み掛け、「I DON’T WANNA DIE FOREVER」へ。曲に入る前に「"ラブラブシール"(歌詞の一部)とか、こんな歌しか唄えない」と本人は零し、今年40歳になるけど何も満たされない。また、ラスベガス銃乱射事件にも軽く触れ、こういう場所を大切にしたいと訴える峯田。その流れから聴いたこの曲に、思わず涙腺が緩むほど感動した。  グループサウンズの雰囲気も漂う「恋は永遠」でメロディの良さに心を奪われると、次は「BABY BABY」だ。演奏する前に、チン中村(Gt)、安孫子真哉(Ba)、村井守(Dr)とかつてのバンドメンバーを含む関係者に感謝の言葉を述べ、「歌っているときにはあいつらが後ろにいる」と心情を吐露すると、ようやく曲をスタート。後半には観客が歌詞を歌い上げ、アリーナでは肩を組んでシンガロングする男性2人組も見かけ、改めて多くの人に愛されている楽曲であることも痛感した。その後にステージ背面が星空のごとく輝く演出が施される中、「新訳 銀河鉄道の夜」を放つ。ロマンチックなメロディを会場の四隅に沁み渡らせると、ライブもそろそろ佳境に差し掛かってきた。  峯田のアコギ弾き語りからバンドサウンドに移行する「光」を披露。静から動へ、螺旋階段を駆け上がる危機迫る演奏に圧倒。ここ武道館を軽々と飲み込むエネルギーを放出していた。それから怒濤のパンク・ナンバー「NO FUTURE NO CRY」、ラストは「僕たちは世界を変えることができない」で盛大に本編を締め括った。

 アンコールに応えると、まず峯田がステージに一人で現れ、弾き語りで「人間」を熱唱。そして再びバンド編成により、「ぽあだむ」、「もしも君が泣くならば」で会場を一つに束ね、初の武道館公演は無事に幕を閉じた。カオティックな情動を撒き散らす場面もあったけれど、全体的には音楽と真正面から向き合う峯田のキラキラした表情がなによりも心に残った。峯田とサポートメンバーもすっかり馴染み、バンド然とした佇まいが色濃くなってきただけに、これからがより一層楽しみになってきた。ライブ終了後の場内もポジティブなムードが漂っていたように思う。新しい銀杏BOYZとしての歴史は、ここから始まるのかもしれない。今日の素晴しいライブを反芻しながら、温かい気持ちに包まれて帰路に着いた。  

【取材・文:荒金 良介】
【撮影:高田梓】

リリース情報

恋は永遠

恋は永遠

2017年09月27日

初恋妄℃学園

1. 恋は永遠
2. 二十九、三十(クリープハイプ カバー曲)

お知らせ

■ライブ情報

サンボマスター『今年は何かとはっちゃけたい!~2017全国ツアー~』
11/11(土) なんばHatch

F.A.D YOKOHAMA presents THE SUN ALSO RISES vol.44
11/24(金) F.A.D YOKOHAMA

『ティッシュタイム61~オナマシ18周年&イノマー51執念SPECIAL NIGHT~』
11/25(土) 渋谷La.mama

uP!!!SPECIAL dabadabada vol.1
2018/02/27(火)@Zepp Tokyo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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