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“混沌”を断ち切る「Goodbye Chaos Tour」で見せた、パノラマパナマタウンの夜明け

パノラマパナマタウン | 2017.11.10

 自分たちの音楽は“混沌”だと、パノラマパナマタウンは最新アルバム『Hello Chaos!!!!』のインタビューで言っていた。ただただ学生サークルのノリで自分たちなりの“かっこいい”を追求してきた彼らは、それが何というジャンルに属す、何という種類の音楽かを知らない。あえて言えば、ヒップホップのクレイジーさとロックンロールの有無を言わせないグルーヴ感をかけ合わせたような音楽だと思うが、その説明も言葉足らずで、まどろっこしい。ゆえに、混沌。だが、それにおさらばしようと名づけられたのが、今回バンドのキャリア史上最大級のキャパで開催された東名阪ワンマンツアー「Goodbye Chaos Tour」だ。それは迷いや葛藤を断ち切って、この音楽こそをバンドの明確な意志と呼ぶためのツアーだ。

そのファイナルを飾った新宿LOFTのライブは、オープニングナンバー「PPT」に出てくる歌詞を借りて言うなら、“相当ヤバかった”。あいかわらず自分たちの思う“かっこいい”に愚直なまま、だが、いままで以上に自分たちが鳴らす音楽に確信をもって、そのステージに立つパノラマパナマタウンは、この日、岩渕想太(Vo・Gt)の「俺たちは絶対に曲げない」という言葉とともに、遂にA-Sketchからメジャーデビュー進出することを発表した。

「待たせたな、ウィー・アー・P・P・T!」。岩渕が誇らしげに自分たちバンド名を宣言すると、ソールドアウトとなった満員の新宿LOFTのフロアから大きな歓声が湧き起こった。“相当ヤバいぜー”を連呼するパノパナの自己紹介ソング「PPT」を皮切りに、“君が選ぶ未来だけに身をゆだねろ”と自由への道を鼓舞するミクスチャー系ガレージロック「リバティーリバティー」など、前半はほぼMCを挟まずにノンストップで駆け抜けていく。バンドのリズムの要として、いままで以上に頼もしさが増した田村夢希のドラム、バンド随一のヤンチャなプレイで黒いグルーヴを生むベースの田野明彦、執拗に繰り返されるいなたいフレーズがときにボーカル以上の存在感を放つギター・浪越康平、そして、全身でバンドの音を感じながらフロアと対峙するボーカルの岩渕。その佇まいはパノラマタウンという自分たちの居場所でこそ、それぞれが最大限のパフォーマンスを果たせることを自覚したように、1年前、2年前と比べて格段にロックバンドらしい姿になっていた。

 スカのリズムにのせて世のエンタメに対する焦燥と本音を綴った「エンターテイネント」、「上京して、クソみたいな東京という街の曲を書きました」と紹介した未発表の新曲「ねぇ、東京」、規則的なフレーズがスクエアな音像を描き出したかと思えば、途端に祭囃子の様相へと変わる「ホワイトアウト」など、岩渕が反骨精神を剥き出しにして放つ辛辣でザラリとした言葉の数々は、ライブハウスという空間でより強い意味を帯びる。初っ端から9曲40分をほぼノンストップで駆け抜けたあと、MCではツアー中のホテル泊で体験したという怖い話を始めたメンバー。「でも、みんなのおかげでちょっとずつ良いホテルになってます。絶対に幽霊がおったところから、幽霊がおるかおらんかぐらいのところに(笑)」というオチをつけると、会場は温かい拍手に包まれた。そして、「アンダーグラウンドで終わらせるつもりもない。メインストリームになるまで、俺らがかっこいいと思うものをやり続けるので、よろしくお願いいたします」という岩渕の言葉から、ライブは後半戦へと突入する。

 岩渕の地元・福岡のシャッター街の様子を綴ったバラード曲「真夜中の虹」から、のちのバンドの本拠地となる神戸の街に捧げたミディアムテンポ「パン屋の帰り」へ。これまでに歩いてきたルートを辿り直すように届けた2曲は郷愁を誘うハイライトだった。そして、TVアニメ『十二大戦』のオープニングテーマとして話題の新曲「ラプチャー」(喜び、歓喜の意味があるという)ではラップを封印してメロディアスなロックバラードを届けると、「ラスト突っ走るぜ!」という岩渕の言葉を合図に、「パノラマパナマタウンのテーマ」から怒涛のクライマックスを作り上げていく。

 最前列の柵へと身を乗り出して“地下室に僕らだけの神様を作ろう!”とフロアを煽った「SHINKAICHI」、さらに、あの「リバティーリバティー」を超えるライブアンセムになりそうな高速アジテートソング「フカンショウ」のあと、本編のラストソングに置かれたのは「MOMO」だった。この曲では前半部分の歌詞をまるごと飛ばして、岩渕が抑えきれずに思わず口走ってしまった言葉を以下に全て綴る。

「言いたいことが特になかったのは昔の話(本来「MOMO」の出だしは“言いたいことは特にない”で始まる)。2013年、大学の隅っこで書いた熱狂。いま俺たち新宿LOFTのステージでやってる。つまんねえとか、絶対売れねえとか言われても、俺たちは負けねえ!2018年新春、パノラマパナマタウン、メジャーデビューする。これが通過点だ。これからもよろしく!」。

 本当はアンコールで盛大にやる予定だったという重大発表を勢いでやってしまい、そのあとの歌詞はぐちゃぐちゃだったが、それも含めて全てがパノパナらしいメジャー発表だった。その瞬間、会場に集まったお客さんから大きな歓声があがったことは言うまでもない。

「さっき勢いで言っちゃったんだけど、ここで満を持して言いたいと思います(笑)」。ちょっと照れ臭そうに、アンコールで岩渕が改めてメジャーデビューを発表すると、ずいぶん長いこと祝福の拍手が鳴りまなかった。

「話していい?」。そんなふうに言ってから、岩渕は、2013年に全員が楽器初心者だった結成当時のことから振り返った。メジャデビューをできるバンドだと思ってなかったこと、初めて作った「ロールプレイング」という曲のこと、MASH A&Rのオーディションでグランプリを獲ったこと、なかなか自分たちの曲が届かない葛藤、そこから立ち直った経緯。その最後に「いまからは何を言われても、ちょっとぐらい迷うことはあっても、絶対に曲げない。迷いそうになったら満員の新宿LOFTの光景を思い出して、また前に進んでいくので。一生忘れません」と言った。そして、これからの冒険への決意を胸のうちで静かに燃やすような「odyssey」のあと、「いい趣味してるね」では岩渕がフロアに降りてお客さんと一体になり、「世界最後になる歌は」でシンガロングを巻き起こすと、「俺たちの夜明けだ、ありがとう!」という言葉でライブを締めくくった。

 去り際、岩渕は「すげえアルバムができたら、待っとけよ、お前ら!」と言っていた。かつて根拠のない自信から始まったパノラマパナマタウンだったが、バンド結成から4年、ときに悩みながらも、新宿LOFTをソールドアウトするまでに成長できた彼らが次回作へと寄せる自信は、いまや根拠のあるものへと変わっていた。ここからが彼らの夜明けだ。

【取材・文:秦 理恵】
【撮影:浜野カズシ】

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リリース情報

パノラマパナマタウン「[配信]ラプチャー」

パノラマパナマタウン「[配信]ラプチャー」

2017年10月03日

MASH A&R

01.ラプチャー

お知らせ

■ライブ情報

『Exhibition Match』 広島編
11/10(金) 広島4.14

レコメンダーpresents 春日組魂2017
11/12(日) Shibuya WWW

パノラマパナマタウン&CLUB UPSET presents "Mixed Martial Arts game" ~UPSET中井50歳祭り~42公演目
11/21(火) 名古屋 CLUB UPSET

BUTAFES 2017 -NAMAKEBUTA METABOLIC ROCK FESTIVAL-
11/23(祝・木) MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎 / KOBE LIVEACT BAR VARIT / KOBE BLUEPORT / KINGSX / Live House ART

パニックバカンス2017
11/25(土) 京都GROWLY

愛はズボーン presents『アメ村天国2017』
11/25(土) 大阪心斎橋アメリカ村周辺ライブハウス6会場

JOKAFES
11/26(日) 福山城下複数会場にて

MUSIC LINXS vol.33
11/29(水) 新宿LOFT

CHAI 1st Album「PINK」発売記念『やっぱり育ちたいトゥアー』
12/03(日) 仙台enn2nd
12/08(金) 高松DIME
12/10(日) 福岡 DRUM SON
12/11(月) 広島 CAVE-BE

パナフェス 2017
12/17(日) Kobe SLOPE / MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎 / ART HOUSE

SPARK!!SOUND!!SHOW!!『アーバンキル年末SP』
12/22(金)心斎橋BRONZE

COUNTDOWN JAPAN 17/18
12/30(土)幕張メッセ国際展示場1〜11ホール、イベントホール

MASH A&R presents 「MASHROOM 2018」
2018/01/21(日)新木場 STUDIO COAST

でらロックフェスティバル 2018 powerd by @FM
2018/02/03(土)-04(日)
DIAMOND HOLL / APOLLO BASE / SPADE BOX など

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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