東京カランコロン、ワンマンツアー『久々の全国ツアーですけど、再起ん動?』ファイナル公演
東京カランコロン | 2017.12.19
ロックバンドという言葉はあるけれど、ポップバンド、あるいはポップスバンドという言葉は存在しない。でも東京カランコロンが歩もうとしている道は紛れもなくそれである、ということがひしひしと伝わる最高のライブだった。
12月9日、渋谷WWW Xにて開催された『久々の全国ツアーですけど、再起ん動?』のファイナル公演。めちゃくちゃ失礼な話だが、当日券が販売されていたので、会場に入るとギチギチに詰めかけたお客さんの多さに驚いた。インディーズ時代から聴いてきた僕にとって(当時はCDショップの店員で、リリースのたびに歌詞カードにサインを貰ってました笑)、その光景が目に入っただけでもう胸がいっぱいだ。
ライブは「恋のマシンガン」で盤石のスタートを切り、「321で」が盛り上がりに火をつけ、「ビビディバビディ」を畳み掛ける。ギターについて言えば、スライドを多用することで同弦によるフレージングを実現、よりなめらかな旋律を奏でるなど、徹底的に引き算されながらもらしさが際立つアレンジにより、男女ツインボーカルのよさがダイレクトに心と体を震わせていく。
「渋谷ありがと~う、すげえ楽しい、すげえ楽しいです!」といちろー(Vo,G)。「今日はツアーファイナルです。めったにない特別な1日です。明日になったら普通の日曜日、その次はまた普通の月曜日。ふふ、けどその普通の毎日が、実はすっごく特別な毎日やと思うんです。だからこれから先も、みんなにとっての普通で特別な毎日が、ずっとずっとず~っと続きますように、愛を込めて」と可愛らしいMCのせんせい(Vo,key)。そして「AWESOME FRIDAYS」が披露される。それにしてもせんせいの澄み切った笑顔はもう菩薩に近いというか(笑)、観ているだけでめっちゃ救われるなあと思う。お次は「つよがリズム」。ソロパートもあり、草食系っぽい見た目なのに実はものすごくガッツとロック感のあるかみむー氏(Dr)、曲の合間はおちゃらけてるけど演奏に入れば耳のよさを生かしたピッチ感とタイム感でアツく弾き倒す佐藤全部(B)、リッチー・ブラックモアさえ匂わせる爆発力を誇るおいたん(G,Cho)が、生き生きとサウンドをかき鳴らしていく。
もやもやも沈んだ気持ちもぱあっと明るく転換するうきうきロックンロールの「ハッピーエンディング」(セッション風のライブ感があったのもよかった!)、へんてこポップな懐かしの代表曲「CAN’T STOP 運命線」を届けて小休止。新たなキーボードが準備され、せんせいが椅子に座り、ポロロンと弾きながら語り出す。「もうとっくに冬なんですけど、真夏の真夜中に友達と3人で、環七を自転車で爆走した時の歌で(笑)、普段自分が見たり、感じたり、食べたり? そういうのをこれからもずっと歌っていきたいなって思うんです」。流れるように「アンサンブル」へ。カランコロンにおけるせんせいはいつも元気いっぱいモードだけど、そのMCや楽曲のずし~んと深淵な煌めきは、ソロ名義の日本松ひとみが顔を覗かせていたようにも思う。
ここで、切ないAOR風つなぎをバックに、佐藤がいちろーに手紙を差し出す。いちろーも困惑。内容はラジオ番組のリクエスト投稿で、ラジオネームは“タルトパイ大盛り”(佐藤全部)とのこと。タルトなのかパイなのか(笑)。いずれにしろ、リクエストを受けて「ぽっかりsweet」に入る。続けざまに「かさぶた」へ。変わったコードは皆無、でも経過和音を挟むことで音数は少ないままドラマチックさを演出、こちらもバンド以前のいちろーソロを思わせる生々しく切ない歌、バラードだけどバンド感たっぷりのリズムと、今だからこその黄金律を奏でてみせた。
「僕たちは音楽が好きでやっているわけなんですけど、たまに好きなことを続けたり、やりたいことを貫くことが難しいなって思う時もあるんですよ。でもそんな時は、何がほんとに好きなのか、自分の本音と向き合って、やっぱりこれをやりたい!とか、そうやって好きが確定すると、嫌なことも吹っ飛ばされるぐらいのパワーを持つことがあって。今夜、僕らの音楽のきらきらが、みなさんの嫌なことを吹っ飛ばしてくれたら一番最高だなと思いますし、僕らにとってもこうやって繋がれたことが、ステージに上がって音楽を続けていく理由になります」といちろーが語り、再びハイテンションゾーンへ突入していく。
ぐちゃぐちゃのどん底からもう一度走り始めるんだという覚悟、気概をダッシュでもジャンプでもなく《ダイブするんだ》という言葉で宣誓する「トーキョーダイブ」、どんな評価を受けようとも自分たちが音を奏でる意志は揺るがないと確認する「どういたしまして」。生き様を鳴らす。それはどちらかと言えばロックバンドの闘い方である。カランコロンが目指すのはポピュラーミュージックだ。『東京カランコロン01』は歌を生かすためにアレンジをシンプルにした。その結果、個性を浮かび上がらせた。本当の個性とは奇をてらった手法ではなく、シンプルな定型を突き詰めてもどうしようもなく滲んでしまうものを言う。今作の場合、前述の通りいちろーやせんせいの原点を思わせる部分、楽器陣の特徴がそれだ。そして定型を突き詰めるということは、彼らがポピュラーミュージックのフィールドへ真に足を踏み入れたことも意味する。つまり東京カランコロンなりのポップスが確立し始めたというわけ。加えてバンドの闘い方も武器としているのだから、彼らは今、これまでになかった新しい道を切り開いているということなのだ。
ラストスパートは「泣き虫ファイター」と「16のbeat」。ここまで来たら特別な言葉も演出も必要なく、ただただ全身全霊で弾く佐藤や、全世界を睨みつけるような表情で歌い、歯弾きや背面弾きまで繰り出すいちろーなど、圧巻の熱量でフロアを飲み込んでいく。あっという間に訪れてしまった本編の締め。「走り出せロンリー」、その《不安を追い越して不器用でも一歩進めば/進むほど見えるはずだって》《迷わないように/走り出せロンリー》という決意が高らかに響き渡った。去り際、佐藤は観客にポテチを配っていた(笑)。
アンコールでまず登場したのはせんせいと佐藤全部。一連のコントを経て残りのメンバーもオンステージ、パートを入れ替えた「中華そば」を楽しそうにプレイし、「ほんとにすいませんでした(笑)」といちろー。来年4月からのツアー開催をアナウンスすると、そこでリリースされる会場限定シングル「ギブミー」をいち早くお披露目。愛の込もった歌詞とともに、こうやって新曲をやるところに彼らの誠意を感じる。締めくくりは「指でキスしよう」。至極のラブバラードをしっとりじっくり歌い上げ、万感のフィナーレを飾った。が、お客さんはダブルアンコールを要求。収まらないハンドクラップに応え、せんせいがひょっこり顔を出す。マイクを通さず「アンコールはないけど来年のツアーとシングルを楽しみにしてて下さい。また遊びに来て下さい!」と挨拶し、大歓声とともにツアーの幕を降ろしたのだった。それでも東京再起動は終わらない。彼らはまだまだここから新しい景色を観せてくれることだろう。
【取材・文:秋摩竜太郎】
【撮影:にしゆきみ】
リリース情報
東京カランコロン01
2017年10月04日
TALTO
2.どういたしまして
3.ラブソング
4.ハッピーエンディング
5.AWESOME FRIDAYS
6.321で
7.ビビディバビディ
8.シークレットランド
9.かさぶた
10.アンサンブル
11.つよがリズム
12.走り出せロンリー
ボーナストラック.中華そば
セットリスト
『久々の全国ツアーですけど、再起ん動?』
2017.12.9@渋谷WWW X
- 01.恋のマシンガン
- 02.321で
- 03.ビビディバビディ
- 04.AWESOME FRIDAYS
- 05.つよがリズム
- 06.ハッピーエンディング
- 07.CAN’T STOP 運命線
- 08.アンサンブル
- 09.ぽっかりsweet
- 10.かさぶた
- 11.トーキョーダイブ
- 12.どういたしまして
- 13.泣き虫ファイター
- 14.16のbeat
- 15.走り出せロンリー 【ENCORE】
- EN-1.中華そば
- EN-2. ギブミー
- EN-3. 指でキスしよう
お知らせ
[2018]
会場限定CDリリース2ヶ月連続東名阪ツアー「ギブミー!ギブミー!ギブミー!」
04/27(金) 大阪 梅田Shangri-La
04/28(土) 名古屋 CLUB ROCK’N’ROLL
04/29(日) 東京 shibuya eggman
05/25(金) 東京 shibuya eggman
05/26(土) 名古屋 UPSET
05/27(日) 大阪 2nd LINE
[2017]
COUNTDOWN JAPAN 17/18
12/31(日) 幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
Girl’s UP!!! 10th Anniversary スペシャル3マンライブ!!
~男女ツインボーカル編~
01/22(月) 渋谷eggman
[2018]
宇宙団2nd full album「それなりのつよがり」release party!!
01/31(水) 新宿Motion
BAY CAMP201802
02/04(日) 川崎CLUB CITTA’ + A’TTIC
HIROSHIMA MUSIC STADIUM -ハルバン’18-
03/10(土) 広島市内ライブハウス
03/11(日) 広島市内ライブハウス
TALTOナイト京都編
03/09(金) 京都VOXhall
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。