CHAI『Because ウィーアー・CHAIトゥアー ~ワンマンだよ~』東京ファイナル!
CHAI | 2018.07.25
心底楽しんで、自由に音楽をやっている人を見るのが好きだ。それはベテランであっても若い子であっても一緒だが、自由さの強度という意味では俄然、女の子、または女の子たちの楽しそうな姿が輝いて見えるのがいい。あのプリンスも言ってたけど、女性のほうが男性よりも発想が自由で柔らかく、頭に描いたことをそのまま表現に換えることができるというようなところが確かにあると、そう思う。柔軟だし、そもそも楽しみたい欲求も男性より強かったりするのかもしれない。とにかく楽しんで自由に音楽をやっている女の子~女性を見ると嬉しくなるし、元気になる。オレもこうやって楽しんで何かを表現しながら生きるのだ、それでいいのだと、なんかいろいろ肯定的な気分になる。今、観ていて一番そう思わせてくれるのが、4人組のニュー・エキサイト・オンナバンドCHAIだ。そこそこいい歳したおっさんの自分をもそういう気分にさせるのだから、彼女たちと近い年代の子たちだったらどれだけだろう。コンプレックスだって自分らしさの一部なんだから、そんなの気にしないで楽しいことを楽しもう。表現したいことを自由にオモシロく表現しよう。まさにそれを体現している彼女たちに憧れたり共感したりして今から楽器を始める子も、きっとさぞかし多いに違いない。因みにCHAIは「NEOかわいい」、または「コンプレックスはアートなり」というコンセプトを掲げながら音楽活動をしていて、つまり「『かわいい』の概念をひっくり返す」ことをしてもいるわけで、当然そうしたコンセプトというかメッセージというかは彼女たちと近い年代の女の子たちにズドンと届いて響いているわけだけど、CHAIのライブが女の子たちだけで埋まっているかというと、そんなことはない。若い女の子たちが多いのはまあ確かだけど、男の子だってけっこういる。30代くらいのお客さんだっているし、自分と同じくらいのおっさんやおばさんだって意外に少なくない。つまりCHAIが発しているのは若い子だけに有効なコンセプトやメッセージではなく、年代も性別も超えて届くもの。その音楽は年代や性別を超え、自由であることや楽しむことに対して意識的な人たちを踊りたいとか揺れたいという気持ちにさせるもの。そういうものってことだ。
と、そんなことを考えながら、この日のライブも観た。ワンマンツアー『Because ウィーアー・CHAIトゥアー ~ワンマンだよ~』。そのファイナルである7月12日の恵比寿・LIQUIDROOM公演だ。ステージ後方(ドラムセットの後ろの上あたり)には予め電飾の巨大「CHAI」文字がどーんとあって、SEと共にそれがビカビカ光るなか、4人がいつものように手をふりながらステージに登場してスタンバイ。「ウイ・ア~~、CHAI!」の掛け声を合図に照明がひとりひとりを照らし、始まった演奏の疾走感にたちまち観る者たちが引き込まれていく。オープナーは3rdEP「わがまマニア」の1曲目「We Are Musician」。そうそう、このワンマンは「わがまマニア」のリリース記念でもあったのだった。
ユウキとユナの重厚なリズムにのせ、マナとカナは手をヒラヒラさせたりもしながらダンス&プレイ。カナ・ユウキ・ユナが揃って首を傾けるのもカワイイ「Sound & Stomach」で観客たちも「ハッハ」とか声出しながら気持ちよさそうに揺れていると、ギターはノイジーに歪み、この心地よい揺れと俄かに挿まれる歪みがひとつの快感の生み出し方なのかもなと思ったり。3曲目は早くも代表曲と言ってもいい「ボーイズ・セコ・メン」。観客たちの体温がこの段階で一斉に上昇したのが感じられた。そして「あのコはキティ」に続いてはCHAIならではの「自己紹介」(新EP「わがまマニア」の宣伝も兼ねつつ)。昨年の渋谷WWWワンマンではマドンナ「ライク・ア・ヴァージン」にのせていたが、今回はというとザ・ティン・ティンズの「Great DJ」、さらにはアバの「ダンシング・クイーン」にのせ(“のせ”というか、替え歌にして)NEOカワな自己紹介を。「みんなカワイイ~、そのままがカワイイ~」ってな感じでア・カペラもすると、「よしっ」と“してやったり”のドヤ顔で場に戻るマナだった。
疾走感ありのこれも代表曲「N.E.O.」で強力なグルーブを生み出すとフロア全体の熱はさらに上がってグインとうねり、続く「ハイハイあかちゃん」ではマナとカナがステージを動き回ったりお立ち台に乗ったりしてパフォーマンス。サイレン音始まりの「クールクールビジョン」で80年代初頭っぽいパンキー&ニューウェイビーな音の攻め方をして観客を狂わせたあとは、カナのシンセも印象的な「フライド」を続けた。そのあとは新EP「わがまマニア」のコンセプトについて説明し、観客たちに「自分にとってのわがまま」を投げかけてやりとりしたりも。因みにCHAIが新作で表現したわがままというのは、自分勝手というのではなく、ありのままの自分という意味なのだそうな。そして“わがままな わたしをみて”と歌われる「アイム・ミー」へ。歌詞中の“エブリバディズ・ワンダフル、オーライ!”とは、まさにそこにいるみんなに向けての言葉のように思えた。
お馴染みの「ぶー」コール(メンバーと観客が揃ってブーイングのように手を動かすアレ)をユウキが記念としてSNS用に撮影してから始まった「ぎゃらんぶー」から、「ウォーキング・スター」「FAT-MOTTO」と曲は続き、餃子愛が甘くも優しい「ほれちゃった」へ。そして「ネクストソング、ラストソング。次はCHAIとみんなの未来の曲」とマナが言い、「わがまマニア」収録の「フューチャー」へ。夢と未来を歌に合わせて表現したこの名曲の歌詞を、恐らくここにいたみんなが自分の未来の歌として受け止めたことだろう。
あっという間に本編が終了し、少しの時間のあと、大きな拍手に応えて4人が再登場。全員が紙でできたブタのサンバイザーを持ち、それを客席に投げてから「Center of the FACE!」を演奏。「今の曲は鼻の曲。鼻と言えばブタちゃん」という説明に続き、マナは「こんなにいっぱい来てくれてありがとー」と言って、早くも次のツアーが決まったことを発表した。「ファイナルは東京で、ZEPP TOKYO!」と伝えると、観客たちは喜びと驚きを拍手で表わす。そして「かわいくない人なんていない!これからもCHAIについてきてね!」とマナが続け、その言葉を引き取るように、最後に「sayonara complex」でこのライブを締めた。
名古屋で活動していたCHAIが東京に拠点を移したのが2016年夏。2017年に入ると「SXSW」出演&全米8都市ツアー開催をやり遂げ、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL ’17」の「ROOKIE A GO-GO」に出演。昼から4人は一緒にいろんなバンドを観て楽しみ、自分はフィールド・オブ・ヘブンでピザを買うべく並びながら楽しそうにお喋りしているのを目撃したりもした。そして秋には渋谷WWWでのワンマン公演が即完売し、今年5月には『ミュージックステーション』にも出演。一気にファン層の広がりを見せるなか、今回のワンマンツアー『Because ウィーアー・CHAIトゥアー ~ワンマンだよ~』を成功させて、2018年後半も前へ前へと進んで行く。フジロック(2年連続!)やRISING SUN ROCK FESTIVALを始めとするあれこれのフェスで夏を駆け抜け、11月からは次のツアー『CHAI いく! CHAI くる! トゥアートゥアートゥアー』も開催だ。まさに勢いとまらずといったところだが、4人の楽しみたい欲はまるで尽きることなく、こんなにも音楽は自由で楽しいものなんだという思いの表現がもっともっと膨らんでこれからもいろんなリズムやメロディになっていくのだろう。そう、CHAIはまるで音楽みたいに面白くてあったかくて自由で柔軟なのだ。
【取材・文:内本順一】
【撮影:中磯ヨシヲ】
リリース情報
わがまマニア
2018年05月09日
OTEMOYAN record
2.アイム・ミー
3.フューチャー
4.FAT-MOTTO
5.Center of the FACE !
セットリスト
Because ウィーアー・CHAIトゥアー ~ワンマンだよ~
2018.7.12@恵比寿LIQUIDROOM
- 1.We Are Muician
- 2.Sound & Stomach
- 3.ボーイズ・セコ・メン
- 4.あのコはキティ
- 5.自己紹介
- 6.N.E.O.
- 7.ハイハイあかちゃん
- 8.クールクールビジョン
- 9.フライド
- 10.アイム・ミー
- 11.ぎゃらんぶー
- 12.ウォーキング・スター
- 13.FAT-MOTTO
- 14.ほれちゃった
- 15.フューチャー
- En1.Center of the FACE!
- En2.sayonara complex
お知らせ
CHAIいく!CHAIくる!トゥアートゥアートゥアー
11/17(土) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
11/18(日) 金沢vanvan V4
11/20(火) 京都KYOTO MUSE
11/22(木) 鹿児島SRホール
11/23(金・祝) 福岡BEAT STATION
11/25(日) 広島CAVE-BE
11/29(木) 名古屋CLUB QUATTRO
12/01(土) 梅田TRAD
12/02(日) 高松DIME
12/07(金) 札幌Sound Lab mole
12/09(日) 仙台darwin
12/19(水) 台場Zepp Tokyo
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。