16年ぶり KICK THE CAN CREW 日本武道館ワンマンライブ!
KICK THE CAN CREW | 2018.09.13
『908 FESTIVAL 2018』の翌日に日本武道館でワンマンライブを行ったKICK THE CAN CREW(以下KTCC)。約1年前も日本武道館で『復活祭』を行った彼らだが、単独公演でこの場所に立つのは16年ぶり。果たしてどのようなライブになるのか? 期待に胸を膨らませて会場内に入ると、熊井吾郎(DJ・MPC)がKTCCのナンバーを次々流して観客を沸かせていた(このコーナーの名前は“901フェス”という名前が付けられていた。“901”は“クマイ”と読む)。そして、ついに迎えた開演。真っ白なスモークが吹き上がり、ステージ中央の床下からリフトアップされてKREVA、MCU、LITTLEが登場すると、すさまじい歓声が沸き起こった。オープニングを飾ったのは「Keep It Up」。絶妙なコンビネーションのラップが交わされるこの曲を生で体感して、誰も彼もがすっかり居ても立ってもいられなくなったのだろう。アリーナ席、1階席、2階席……あらゆるエリアから熱い歓声がステージへと届けられた。続いて披露された2曲目「全員集合」は、「今日歌うならこっちだろ」と《全員集合》を《現地集合》にする粋なひねりが加えられて、観客は大喜び。序盤からワクワクする場面の連続となった。
「なんでもないDays」と「GOOD TIME!」も披露された後に迎えたインターバル。「16年ぶりの武道館。前回は『復活祭』でワンマンじゃなかったんですよ。その時はいろんな方々が出てくれて、復活を祝ってくれました。祝ってもらう立場だったので、なかなか踏み込んだ曲はできなかった。「ほにゃららら%」あるいは「千ほにゃらら」(※昨年の復活を飾った曲「千%」のこと)で、《経てからのここ》って言ってるけど、“どこ経てきたの?”っていう感じだよね。どうやってきたのか聴きたいわけじゃん? 20年ぶりとかの曲も経たいじゃん? 曲を使ってみんなで一緒に経て、復活の狼煙をまた上げようじゃないかと。でも、その前に高らかに宣言しないと。いつの時代も俺らはスーパーオリジナルだった!」――KREVAの宣言を合図にスタートした「スーパーオリジナル」(01年リリース)は、KTCCのメジャーデビュー曲。続いて「タカオニ2000」(00年リリース)へと突入したのだが、終盤でインディーズデビューシングルのタイトル曲「タカオニ」(97年リリース)へと転じてびっくり! KREVA曰く、オリジナル版の「タカオニ」を歌うのは約20年ぶりだったらしい。そして、サプライズはさらに用意されていた。KTCCの結成のきっかけとなった曲であり、コンピレーション盤『THE BEST OF JAPANESE HIP HOP vol .7』に収録されたオリジナル版の「カンケリ」(97年リリース)から「カンケリ01」(01年リリース)へと雪崩れ込むというのは、彼らの初期の活動を一気に辿れる怒涛の展開であった。このようにして彼らの《経て》を感じたら、《からのここ》である「千%」を当然聴きたくなる。この曲にはサンプリング音源を早回しした印象的なコーラスが入っているが、それを歌っていたシンガー・YURIをゲストに迎えて披露された。
3人のラップの連携がとても複雑な構成となっていて、ライブでの成功率が低い曲なのだという「SummerSpot」を歌い終えると、「やることやったなー!」とホッとした表情でステージから去ろうとしたKREVAとMCU。すると、「まだ何も終わっちゃいないぜ!」とLITTLEが2人を引き止めた。そして、スタートしたのは「イツナロウバ」。恒例となっている3人のやり取りを経て突入したこの曲は、観客を大盛り上がりさせていた。山下達郎の「クリスマス・イブ」をサンプリングした「クリスマス・イブRap」も披露されて、とてもロマンチックなムードで包まれた日本武道館。「イツナロウバ」と「クリスマス・イブRap」は、メジャーデビューした01年の曲だが、当時の彼らのエネルギッシュな活動を思い出させてくれた。
熊井がMPCを駆使して多彩なビートを連発。大喝采を浴びたソロコーナーを経て、ライブは後半へ。壮大なサウンドが広がる「LIFELINE」と「ユートピア」が、観客を深い感動で包んでいるのを感じた。そして、「歌いながら思い出した。骨董通りに当時、ファミレスがあって、そこで作ったんだよね」と「ユートピア」に関する約20年前のエピソードをKREVAが話したりもしたインターバル。3人はそれぞれ想いを語った。「今日は超懐かしい曲に久しぶりにタッチしてみたんですけど、声も変わってるし、やりたいことも変わってるのかもしれないけど、根本は変わってないってことを痛感しました。何が変わってないかというと、曲を作ってそれで満足ってことじゃなくて、みんなと一緒に楽しむことをずっと求めてるんだと思います」(KREVA)。「俺ら、「Keep It Up」でステージに出てきたじゃん? 出るのを待ちながら、すげえドキドキしてたんだよね。緊張ってやつかな(笑)。でも、出てきたら、すげえいい顔がいっぱいあるじゃん。緊張なんかどっか行っちゃった。みんな、ほんと何も変わってないな」(MCU)。「我々は『復活祭』をやってからツアーに行って、いろんなフェスにも出させてもらって。キックのタオルとかを持ってる人が来てくれてると、すごく力になる。いつも感謝してます。韻踏むのを大事にしてることもあるけど、みんなのことを応援する気持ちでも曲を作ってるから」(LITTLE)――お互いに時折ツッコミを入れたり、揚げ足を取り合ったりもして爆笑を誘う場面がありつつも、ファンへの温かい気持ちがとても伝わってくるMCだった。
「それじゃあ、ガッチガチのKICK THE CAN CREWを見せてやる。Let’s go!」というLITTLEの力強い言葉と共に突入した終盤は、強力なナンバーが一気に駆け抜けて行った。KREVAは「フェス1本分くらいやってやろうと思う」と言っていたが、まさにそういう内容だったと言えよう。「TORIIIIIICO!」「神輿ロッカーズ」「地球ブルース~337~」「マルシェ」「sayonara sayonara」……曲が披露される毎に果てしなく高まり続けた会場内の熱気。そして、発射された銀テープを握り締めて掲げた観客の手が、日本武道館全体でキラキラ輝きながら揺れる風景が壮観だった「アンバランス」で本編は締めくくられた。
歓声と手拍子に応えてステージに再登場したKREVA、MCU、LITTLE、熊井。全員がお揃いのオリジナルグッズのTシャツを着ているのが微笑ましい。アンコールでまず「完全チェンジTHE WORLD」を披露した後、KREVAは次にやる曲について説明した。「我々、先日新曲を出しまして。岡村ちゃんに声をかけたんだけど、今日は来られなくて。その曲を最後にやって終わりにしたいと思います。サビのところは俺が歌うんで。俺たちが《一緒住んでもいんじゃない?》って言ったら、女子は《いいかも》って答えてください。そして、お待たせました。薄汚い野郎ども!(笑)。お前らが声出す番だぜ。この後に大サビが来ます。シンプルです。何言われても《in the house》」――軽く練習してからスタートした「住所 feat. 岡村靖幸」は、観客の歌声と手拍子が加わり、とても爽やかな一体感を生み出していた。
並んで深々とお辞儀をしたKREVA、MCU、LITTLE、熊井を力強い拍手が包んで迎えた終演。ステージからの去り際に「じゃあ、当然ですねえ……現地解散!」と、この公演のタイトル『現地集合』に絡めたことを言って観客を爆笑させたKREVA。KTCCの貫禄たっぷりのエンタテイナーぶりと、まだまだ現在進行形のフレッシュな姿を目一杯に感じられたワンマンライブであった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:西槇太一】
リリース情報
住所 feat. 岡村靖幸
2018年08月29日
ビクターエンタテインメント
02.Keep It Up
03.住所 feat. 岡村靖幸 (Inst.)
04.Keep It Up (Inst.)