300組以上が出演した日本最大級のライブサーキットイベント『TOKYO CALLING』レポート第一弾!
TOKYO CALLING | 2018.10.16
以前はコアな音楽リスナーのものとして名高かったフェスも、いまやイベントのひとつとして一般に普及してきた。都市で開催されているサーキットイベントが、同じように普及するのも時間の問題だろう。大阪の『ミナミホイール』、名古屋の『SAKAE SP-RING』、そして2016年から開始した『TOKYO CALLING』。活動地点を次のステージに進める足掛かりとして、これらのサーキットに出場することを目標にする若手アーティストも少なくない。『TOKYO CALLING』は、東京の中でもライブハウスが密集する地域である、新宿・下北沢・渋谷で開催される都市型サーキットイベントだ。3日間で300組を超えるアーティストが出演し、街は音楽好きな人で溢れかえる。第一弾レポートでは、新宿ロフトに出演したアーティストを中心として6組のアーティストのレポートをお届けする。
トップバッター、空想委員会を見るべく新宿LOFTへ向かうと、開場前の入り口は長蛇の列だった。三連休の初日といえど、ライブスタートは昼の12:00。二度寝よりも音楽を選んでいる人がこれだけいると思うと、すでに胸がわくわくした。定刻が訪れると、照明が落ち空想委員会のメンバーが現れた。1曲目の「1ロマンス・トランス」から、すでにフロアは超アッパー。たくさんの手が高く掲げられ、佐々木(Gt)の「飛べ!」という煽りに会場が揺れる。会場に爽やかな夏の風を吹かせたのは「劇的夏革命」だ。ディレイがかったクリーントーンのギターはさざ波のように煌めき、夏の夜のドキドキのようにドラムは跳ねる。三浦(Vo/Gt)も「真夏が1番似合うバンドです!」と笑顔を弾けさせた。「空想ディスコ」では盛大なコール&レスポンスを巻き起こし、「エール」では熱い演奏を炸裂する。この日のトリではないかと錯覚するようなガムシャラな演奏に、身体が大いに温められた。
体力をがっつり持っていかれたので、周辺のお店で空腹を満たす。コンビニしかりカフェしかり、食べたいものを食べられるのも都市型サーキットのいいところ。再び新宿ロフトに向かうと、MINT mate boxの出番。ステージ上で、口元をにやりとさせアイコンタクトを取るメンバーたち。maho(Vo/Gt)が手をあげたのを合図にライブがスタートした。「メイクキュート」からmahoのエアリーな声が会場中に響き渡る。楽しそうな3人の姿に触察され、彼らの音楽と会話するかのように響く観客のクラップ。スタート前こそ空白が目立ったフロアだが、1曲目が終わることには後ろまでパンパンになっていた。「この瞬間もいつか思い出になるから、この瞬間をこめて歌います」とmahoが告げ封切られたのは、10月3日発売の3rd E.P.『ideal』から「カセットテープ」。胸がギュッとなるリリックとメロディーに新たな彼女たちを見た。曲やライブと共に次々と表現を手にしていく彼らは、来年もっと大きなステージを任されることは間違いないだろう。
あゆみくりかまきのために新宿LOFTで待機。新宿LOFTの特製オムライスをほおばりつつ、その時間までまったり過ごす。アルコールと音楽が格別なのは間違いないが、フードがあるライブハウスは食事まで一か所で完結するのでありがたい(食べてばっかりとか聞こえない)。あゆみ、くりか、まきの3人はというと、リハーサルの時点ですでに全力のパフォーマンス。「終わりまで持たないんじゃないの?」と見てるほうが心配になってしまうくらい。しかし、そんな懸念は全く必要ないのだとパワフルなライブで彼女たちは証明してくれた。「心友フォーエヴァー」で巻き起こる完璧なコール&レスポンス、「ゴマスリッパ―」による観客左右移動とファンと一体になった時間を作りあげる。部外者を作らない見る者すべてを巻き込むステージングに、他のアーティストのファンも思わず笑みがこぼれていた。無理に押しつけられた楽しさは自分のなかにヘイトが残る。あゆくまのアクトが心底楽しいのは、押しつけではなく手を引っ張ってさりげなく輪に誘ってくれるような優しさがあるからなのだと実感した時間だった。
さすが結成20周年を迎えたバンドというべきか。老若男女の様々な人でフロアを埋め尽くしたのは、ガガガSPだった。前田(Vo)はフロアを煽り、観客を前へ詰めさせると、口に含んだ水を盛大にスプラッシュ。ライブが始まる前から、すでに新宿ロフトの空気は彼らの支配下に置かれていた。前田は「最近良いことがないけど、ライブハウスは素晴らしいと思いたい!」といい、「すばらしき人生」が導かれる。彼らの音に突き動かされ、さらに密着度を増す会場前方。モッシュもリフトも巻き起こり、お祭り騒ぎのハチャメチャ空間だ。「燃やせ!!」では今ある輝きを惜しみなく発揮し、「弱男」では“行けよ男たち”と特大のシンガロンを作りだす。“すばらしい人生にしよう”、“中途半端なまま突き進め”。薄っぺらくなりがちな歌詞なのに、彼らが歌うとどうしても胸に刺さって抜けない。それはきっと、パニック障害・鬱を抱えつつもなお、止めることなく命を燃やしている前田の言葉だからに他ならないのだろう。
感動冷めやらぬまま向かったのは、HOLIDAY SHINJUKU。急いでドアを開けると斉本(Dr)が「手をあげてー! 下げて―! 拍手!」と会場を温めているところだった。そんなほのぼのした空気を「Sally」でぶち破る。Jロックのど真ん中をいく曲で会場の心を掴むと、各々の技術力が光る「解剖傑作」へと繋がれた。井深(Vo)の高音が伸びやかに天井を突き刺し、渡邉(Gt)のテクニカルなフレーズが乱射される。MCが用意周到なバンドハラスメントだが、この日のネタは東京オリンピック。斉本とはっこー(B)の掛け合いで、会場の笑いを誘った。その後も韻の押収が聴く者を圧倒する「一人隠れんぼ」、彼らきってのキラーチューン「君と野獣」を披露。『PAPAFES』で日本各地を周り、エンターテイメントを追求してきた成果を発揮するステージングとなった。TOKYO CALLINGが開催された年から、出演し続けているバンドハラスメント。昨年、新宿Motionで宣言した「イベントのトリ」を飾ることができ、思いは一入だったのではないだろうか。さらにキャパをあげたステージで、エモーショナルなパフォーマンスをしてくれる未来の彼らが楽しみだ。
満喫しまくりなTOKYO CALLING。新宿の夜を笑って締めくくるべく、新宿ACBホールへと猛ダッシュする。会場に駆け込むと聴こえてきたのは“ブース! ブース!”の大合唱。腐ったSHISHAMO、イカレたチャットモンチーことSu凸ko D凹koi(自分で言っていた)のお出ましだ。高速おっぱい揉まないで体操を推奨される「MOMANAIDE」、運動会の定番「天国と地獄」を爆笑アレンジした「元カノ地獄」と彼女らにしかできないナンバーが続く。ライブの定番である川柳タイムはサーキットイベントでも健在。“同棲の末路は家電の奪い合い”などと一句を読み上げ、初見リスナーたちの度肝を抜いた。「YouTubeのコメント欄がスラム街みたいになってます」という先導を受け始まったのは「セックスレスピストルズ」。実は可愛らしいどい(Vo/Gt)の声が繰り出す、ドストレートなリリックはストレートパンチのように鮮烈だ。女の子らしいボーカルであるからこそ、生々しい歌詞がよりリアリティをもつのだろう。ACBのトリとして人々の心をしっかりとかき乱し、会場を締めくくった。
全100バンド以上が新宿に集結したTOKYO CALLING 1日目。イベントが開始した時間はあいにくの雨空だったが、トリのアーティストがライブを終える頃には路上の水たまりも乾き始めていた。雨の日のライブは憂鬱に感じてしまいがちだ。しかし、移動を渋ったことで出会えたアーティストがいたと思うと、それもまた一興かもしれない。普段チケットを買ってまでは見に行かないようなアーティストに出会えるのも、サーキットイベントのいいところなのだから。この日の出会いが、リスナーの興味をさらに広げた日であることを願わんばかりだ。
【取材・文:坂井彩花】
Su凸ko D凹koi バンドハラスメント ガガガSP あゆみくりかまき MINT mate box 空想委員会 TOKYO CALLING
セットリスト
TOKYO CALLING 2018
2018.09.15@新宿 全11会場
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空想委員会
- 1.ロマンス・トランス
- 2.波動砲ガールフレンド
- 3.劇的夏革命
- 4.空想ディスコ
- 5.エール
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MINT mate box
- 1. メイクキュート
- 2. カフェオレ
- 3. カセットテープ
- 4. スタート
- 5. ラブラブファイヤー
- 6.リサイクル
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あゆみくりかまき
- 1. 心友フォーエヴァー
- 2. ジェットクマスター
- 3. ゴマスリッパー
- 4. 反抗声明
- 5. アナログマガール’18
- 6. 鮭鮭鮭
- 7. 自分革命
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ガガガSP
- 1.すばらしき人生
- 2.つなひき帝国
- 3.忘れられない日々
- 4.燃やせ!!
- 5.線香花火
- 6.弱男
- 7.飯食って寝る
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バンドハラスメント
- 1.Sally
- 2.解剖傑作
- 3.一人隠れんぼ
- 4.脇役
- 5.君と野獣
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Su凸ko D凹koi
- ※なし