300組以上が出演した日本最大級のライブサーキットイベント『TOKYO CALLING』レポート第二弾!
TOKYO CALLING | 2018.10.16
9月15日~17日、日本最大級のライブハウスサーキットイベント『TOKYO CALLING』が東京の新宿、下北沢、渋谷で繰り広げられ、今年も大盛況を収めた。1日目は新宿、2日目は下北沢、3日目は渋谷の各ライブハウスにて、計300組以上のアーティストが出演。述べ1万人のオーディエンスが各アーティストの鳴らす音楽を思う存分楽しんだ。そんな『TOKYO CALLING』の中日、今回は下北沢会場からのレポートをお届けする。
全10会場が舞台となった下北沢では、12:00にファーストアクトが開演。筆者はまずアイドルグループ中心のラインナップであるReGで、大阪を拠点に活動する“牢獄発囚人ガールズバンド”、82回目の終身刑からスタート。彼女たちのステージは、始まりと終わりに囚人番号で順にメンバーの名前がアナウンスされ入退場するという、徹底したコンセプトで魅せてくれた。本イベント初出演となる82刑(はちけー)のメンバー6人は、全身を黒白ボーダーで統一した囚人スタイリングで合わせ、登場するなり葉月(Vo)が「『TOKYO CALLING』2日目!」と男前な声で呼びかける。そして「はじめましての人も一緒にワンワンしてみましょう!」とアッパーなロックチューン「わんだふる☆カーニバル」からライブを始めた。その後も葉月がステージを牽引し、ダンサーのてのひらえるとマニピュレーターの鈴原優美が観客の盛り上がりをアジテート、HITOMI(Gt)とハル(B)とNOMAME(Dr)がサウンドを支えるという強力な体制でステージを進めていく。キュートな外見やMCからは想像できないダークさと、デスメタルや歌謡曲のエッセンスを融合した独自の世界観で染められる会場。30分間の出番の最後はヘヴィな裏打ちパンク「メシアライザー」で、ヘドバンがフロアを席巻した。9月30日に1stアルバム「脱獄計画」をリリースし4都市+台湾ツアーも控えている彼女たちは、今後さらに飛躍していくに違いない。
この日最大キャパのGARDENでは、アカシック、ヤなことそっとミュート、sora tob sakanaに続いて、4番手にBenthamが登場。小関竜矢(Vo)の「シモキタの皆さま、楽しむ準備はできてますか?!」という煽りがイントロ代わりとなって、いきなり最新作「Bulbous Bow」収録のアッパーチューン「FATEMOTION」で攻め込んでいく。そんなアグレッシブな彼らに触発されかのか、次の「クレイジーガール」ではフロアから自然とハンドクラップが沸き起こった。続く「僕から君へ」では、小関が喉を震わせて放つ美メロと、アンサンブルの奏でる疾走感が合わさり、Benthamが“ハイブリッドロックバンド”と呼ばれる所以を感じさせる。MCでは彼らの所属レーベルKOGA RECORDと『TOKYO CALLING』によるオフィシャルバーのコラボ施策に触れて「癒着がすごい!(笑)」とも。後半はコール&レスポンスやエモーショナルな呼びかけで一体感を高めながら「激しい雨」「パブリック」といったキャッチーな楽曲群を送り拍手喝采。2度目の『TOKYO CALLING』出演は、着実に成長しているバンドの姿をしかと見せつける形となった。
次にGARDENを温めたのは、塩入冬湖(Vo/Gt)とコシミズカヨ(B/ Cho)の2人による女性ロックバンド、FINLANDS。サポートドラマーとギタリストを入れて4人編成で臨んだ彼女たちは、この日に限らず、誰にも媚びないユニセックスなプレイでオーディエンスを圧倒している。一度聴いたら忘れられない中毒性を持っている塩入の歌声が、FINLANDS最大の武器と言えるだろう。この日も、最新アルバム「BI」のナンバーを織り交ぜながら実力を遺憾なく発揮し、初見のオーディエンスを釘付けにしていた。MCで一息つくと「下北沢は東京で一番なじみのある街なので、下北沢の日に出れてうれしいです」と優等生的なコメントもあったが、歯に絹着せぬ物言いの塩入は「サーキットライブって私たち目当てじゃない人も多いと思うし、前と後ろでものすごい熱量の差があって私は好き」とフロアに笑いをもたらす。
GARDENは続いてTENDOUJIのアクト。東京インディシーン屈指の愛されバンドと言われる彼らの噂を聞きつけて会場に人がなだれ込んでくる。スカ調や軽快な4つ打ちの楽曲で、バンドの特色でもあるハッピーグルーヴを振りまく。MC担当のヨシダタカマサ(B)は「ラインナップの中でちょっと浮いてる感じはしたんですけど、楽しんでってくださいね」と、いかつい見た目に反して柔らかい話しぶり。その後はアサノケンジ(Vo/ Gt)、モリタナオヒコ(Vo/ Gt)、ヨシダと、メインボーカルを曲ごとに変える独自のスタイルで曲
を重ねていく。フロント全員がボーカルとして立派な歌唱力を持っているバンドは稀有だろう。彼らは11月にWWW Xで曽我部恵一BANDとのツーマンを予定しているが、ベテランの曽我部とも渡り合える、むしろ共鳴する何かが通底しているように見える。
アップカミングなバンド揃いだったTHREEでは、北海道札幌からやってきたマイアミパーティを鑑賞。体の中枢を貫くような無骨な歌と演奏が持ち味の彼ら。さくらいたかよし(Vo, G)は「サーキットイベントはチケット取り置き制とかじゃないので、僕らの出番来てくれるかなといつも不安に思ってますが、いつも見に来てくれてありがとう。もうライブハウスに来なくなってしまった友達がサーキットイベントだと来てくれることもあってうれしい」とリラックスムード。しっとりとした新曲「レイトショー」の熱のこもったプレイには、そんなうれしさが反映されているようだった。ラストスパートの前、彼は今日下北沢で久々に会って気恥ずかしかった友達のことや今の心情をアドリブで弾き語った。「シスター」では中川マサキユ(G)がフロアに降りてファンの目の前でエレキギターを掻き鳴らす一幕も。最後はメンバーそろって曲名を連呼する「ジーザスクライスト」で強烈なインパクトを残していき、ストレートすぎるパフォーマンスの余韻はメンバーが去った後もしばらく続いていた。
イベント終盤頃、GARDENに登場したキイチビール&ザ・ホーリーティッツは、公式のキャッチコピーを借りれば「ハッピーサッドの先のハッピーを歌い奏でるユルくて鋭い5人組バンド」だ。今年2月に初の全国流通盤である1stフルアルバム「トランシーバ・デート」をリリースした彼らは「今日は新曲ばっかりやりまーす」と宣言し、その前置き通り、「日照りになれば裸になって」「平成が終わる」「今夜浮かれたい」といった未音源化曲を連発。90年代ロックバンドの影響を独自の感性でアップデートさせた彼らの音楽には、切なくも和やかな雰囲気が漂っていて、たしかに「ハッピーサッドの先のハッピー」という言葉はふさわしい。11月3日発売の大滝詠一カバーアルバム「大瀧詠一 Cover Book -ネクスト・ジェネレーション編-『GO! GO! ARAGAIN』」に名を連ねるのも納得で、参加曲「指切り」も披露した。歌詞に「下北」が出てくるミドルチューン「透明電車が走る」、ノスタルジーを呼び起こすスローバラード「東京タワー」と、テンポを落とした曲でも観客は離れない。キイチビール(Vo, G)のセンチメンタルなかすれ声に、隣に立つKD(Cho)の女声コーラスが重なり、青春感満点のみずみずしいハーモニーが観る者の心にじんわりと染み入っていた。
【取材・文:鳴田麻未】
マイアミパーティ TENDOUJI FINLANDS Bentham 82回目の終身刑 TOKYO CALLING キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
セットリスト
TOKYO CALLING 2018
2018.09.16@下北沢 全10会場
-
82回目の終身刑
- 1. わんだふる☆カーニバル
- 2. 八つの大罪
- 3. 八式
- 4. 覚
- 5. メシアライザー
-
Bentham
- 1. FATEMOTION
- 2. クレイジーガール
- 3. 僕から君へ
- 4. 激しい雨
- 5. パブリック
-
FINLANDS
- 1.カルト
- 2.PET
- 3.sunny by
- 4.yellow boost
- 5.ガールフレンズ
- 6.ウィークエンド
-
TENDOUJI
- 1.GetUp!!
- 2.D.T.A
- 3.Kids in the dark
- 4.LIFE-SIZE
- 5.Peace Bomb
- 6.HAPPY MAN
- 7.THE DAY
- 8.GROUPEEEEE
-
マイアミパーティ
- 1.誰かの答えになればいい
- 2.一縷
- 3.夜明け前
- 4.レイトショー
- 5.シスター
- 6.ジーザスクライスト
-
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
- 1.日照りになれば裸になって
- 2.平成がおわる
- 3.透明電車が走る
- 4.指切り(大瀧詠一カバー曲)
- 5.こーかい
- 6.今夜浮かれたい
- 7.東京タワー
- 8.ちっちゃなハート