THE BACK HORN 20th Anniversary「ALL TIME BESTワンマンツアー」~KYO-MEI祭り~
THE BACK HORN | 2018.10.17
記念すべき結成20周年アニバーサリー・イヤーを締めくくる<THE BACK HORN 20th Anniversary「ALL TIME BESTワンマンツアー」~KYO-MEI祭り~>ファイナルは、2019年2月8日(金)の日本武道館だ。そのツアー初日を、彼らは原点ともいうべき新宿ロフトで迎えた。20年を凝縮したバンドの心意気と、彼らと見事に共鳴していたオーディエンスとの汗と声が渦巻いた最高の夜となった。
THE BACK HORNがライブハウスでやること自体は珍しくはないが、新宿ロフトのステージにワンマンで立つのはずいぶん久しぶりのことだ。加えて20周年ツアーの初日とあって、THE BACK HORNの4人も、いつもと違った高揚感を持ってステージに登場した。まずは「サニー」などお馴染みの曲でオーディエンスと気持ちを通わせ、満杯のフロアと一つになった。「KYO-MEI祭り、始まってるぜー!」マイクを握りしめた山田将司(Vo)が叫ぶとフロアからハンドクラップが響き、山田が来いよというように両手を挙げると、待ってましたと言わんばかりに力強いシンガロングが起こった。
「今日から来年の武道館まで、全20カ所、全力で駆け抜けます。まず1発目の新宿ロフト、みんなと最高の時間、最高の空間を作っていきたいと思います!」と最初のMCで松田晋二(Ds)は力強く言った。3度目の日本武道館は目下の大きな目標だ。そこに向かうスタートに新宿ロフトを選んだのは、年頭に下北沢シェルターでやったライブが刺激になったかららしい。文字通り顔を付き合わせる距離で、自分たちの音楽と存在をオーディエンスにガチでぶつけ合う、初心を思い出させるものがあったのだろう。もともと余分な飾り気や気取りのないバンドだけれど、新宿ロフトは本当に素でステージに立っている感じだった。
タイトなファンキーさとキレのいいグルーヴでフロアを揺らした「コワレモノ」など、いつもならステージ狭しと動き回る菅波栄純(G)も、流石に動きが控えめだ。だが演奏の熱量はいつも以上だったかもしれない。それは岡峰光舟(B)も同様だが、岡峰には力が入る理由がもうひとつあった。メジャー・デビュー直前のTHE BACK HORNと、脱退したベースの後任として出会ったのが新宿ロフトの店員だった岡峰だ。そんな自分を「THE BACK HORNを見たことがあるTHE BACK HORN」と呼んで笑いを誘う。
中盤のMCで20年前のことを話したことから、そんな岡峰の言葉も飛び出したのだ。松田は「20年前はどれだけお客さんに引いてもらえるかをモチベーションにやっていましたけど、20年も立つとコール&レスポンスもやるようになってくる」と、「コワレモノ」で菅波が呼びかけて盛大なコール&レスポンスが起こったことを振り返る。すると菅波が「今ここにいるお客さんは同じ気持ちの人ばかりだから、完全に理解されてる。ほんとに20年ありがとう」とフロアを見渡した。山田は「みんな20周年を祝いに来てくれてるわけだけど、俺ら的には皆が今日この日まで生きて来たことを祝福したい気持ちでライブをやってるよ」と言った後で、「この景色は思い出すね、2000年頃、光舟が新宿ロフトで働いてた頃」と振ると、岡峰が「東京に出て来て働き出して、くすぶってる頃にくすぶってる人たちに出会った」とまた笑いを取る。新宿ロフトにノスタルジーを感じているわけではないと終演後に岡峰は言っていたが、THE BACK HORNの歴史に刻み込まれた場所として新宿ロフトがあるのは否めない。そんな昔話の後で山田が「18年前に初ワンマンやったのは、このCDを出した時のツアーでした」と紹介して歌い出したのは、彼らのファースト・シングルの曲だ。素朴さもある初期の曲だが、それを今の彼らが演奏すると落ち着いて胸に響く曲になる。
このツアーと前後して彼らがリリースする『ALL INDIES THE BACK HORN』は、今は入手困難なインディーズ時代の作品を新録音したもの。このツアーはそうした時代の曲が中心になるかと予想したのだが、そちらの偏ることなくインディーズ時代の曲から最新曲まで、また代表曲もマニアックな曲もバランスよく組み込んだセットリストになっているようだ。おそらく20本のツアー中に曲をどんどん入れ替えながら武道館に向かって行くのではないだろうか。松田がこんなことも言っていた。「俺たちの20周年でもあるけどみんなにとっての20周年でもある。THE BACK HORNの音楽で20年を一緒に感じて欲しいと思います」
そして終盤は、山田が「20年やってきて、今はおこがましくもみんなに元気を貰って帰ってもらいたい気持ちがあるんだけど、俺らこのライブの力はみなさんから貰ってるものもたくさんあります。年取って忘れてっちゃう気持ち、俺らもみんなに思い出させて貰ってるから、俺らもみんながもしかして忘れそうな気持ちを思い出させてやれたらしいし。本当に大変な時は逃げたっていいと思うし、大事なことは生き抜いて行くことだから。大事なところだけを見つめて一緒にライブしていけたらと思います」と言って「コバルトブルー」など力強い曲を続け、THE BACK HORNならではの光と闇が錯綜し心を震わせる極上のカオスで新宿ロフトを満たした。普段は数千人のオーディエンスを前に演奏している彼らが発するエネルギーを至近距離で感じる迫力は凄まじい。その迫力に圧倒されながら、20年前に演奏しいていた彼らは、また違ったエネルギーで溢れていたのだろうと思った。その波が今に続いているのだ。
そんな彼らの歴史を思わせたのは、ダイナミックな演奏で聴かせた初期の曲「何処へ行く」から、「THE BACK HORNで今一番新しい曲」と山田が紹介した「ハナレバナレ」へと続いたアンコール。最後を飾ったハイテンションのパンク・ナンバーまで、彼らが培ってきたものが凝縮されていた。「最高のツアーになりそうです、どうもありがとう」と山田。この熱を持ったツアーを経ての日本武道館が20周年のフィナーレを飾るにふさわしいものになるのは間違いないだろう。
【取材・文:今井 智子】
【撮影:橋本塁(SOUND SHOOTER)】
リリース情報
ALL INDIES THE BACK HORN
2018年10月17日
ビクターエンタテインメント
01. ピンクソーダ
02. カラス
03. 冬のミルク
04. 魚雷
05. 雨乞い
06. 怪しき雲ゆき
07. 晩秋
08. 何処へ行く
09. 風船
10. ザクロ
11. 桜雪
Disc-2
01. サーカス
02. 走る丘
03. 新世界
04. リムジンドライブ
05. 無限の荒野
06. 甦る陽
07. 茜空
08. ひとり言
09. さらば、あの日
10. 泣いている人
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お知らせ
THE BACK HORN 20th Anniversary「ALL TIME BESTワンマンツアー」〜KYO-MEI祭り〜
10/01(月)新宿LOFT
10/05(金)札幌ペニーレーン24
10/13(土)盛岡Club Change WAVE
10/14(日)KESEN ROCK FREAKS
10/19(金)浜松窓枠
10/21(日)米子AZTiC laughs
11/08(木)京都磔磔
11/10(土)金沢EIGHT HALL
11/11(日)長野club JUNK BOX
11/17(土)高松MONSTER
11/18(日)高知X-pt.
11/30(金)名古屋ダイアモンドホール
12/08(土)福岡DRUM LOGOS
12/15(土)なんばHatch
12/16(日)広島クラブクアトロ
12/21(金)水戸LIGHT HOUSE
12/23(日)仙台Rensa
[2019]
01/11(金)桜坂セントラル
01/13(日)鹿児島CAPARVO HALL
02/08(金)日本武道館
THE BACK HORN 爆轟樂團 20th Anniversary「ALL TIME BEST ONE MAN TOUR」~KYO-MEI祭~<台湾公演>
01/19(土)台湾・THE WALL 公館
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。