レビュー
THE BACK HORN | 2018.10.17
結成20周年を迎えたTHE BACK HORNは、2018年1月にベスト・アルバム『BEST THE BACK HORN』を、次いで3月には初のミニ・アルバム『情景泥棒』をリリースしてきた。その後はワンマン・ライブに対バンツアー、夏フェスと休む間も無く動き続けていたが、その合間を縫ってレコーディングしていたのが『ALL INDIES THE BACK HORN』だ。
彼らがインディーズ時代にリリースした初ミニ・アルバム『何処へ行く』,初シングル『風船』,初フル・アルバム『蘇る陽』の3作は今は入手困難となっているが、ライブで演奏し続けているのでファンの間で人気の高い曲も多い。そうした曲の代表格とも言える「冬のミルク」は10周年での『BEST THE BACK HORN』に、「ざくろ」「桜雪」は『B-SIDE THE BACK HORN』に、「泣いている人」「無限の荒野」は年頭に出た『BEST THE BACK HORN』に新録音で収録されていた。美しいストリングスとの録音でイメージを一新した「泣いている人」をはじめ、こうした既発曲を聴くと今の彼らが演奏する初期の曲は新曲とは違った新鮮さを持っていることに気づく。この他にライブ盤やライブ映像では録音されてきた曲もあるけれど、スタジオ録音してみると改めて今の彼らが演奏する意味合いと言ったものが浮かび上がってくる気がする。そんなことを彼ら自身も感じたのかもしれない。『ALL INDIES THE BACK HORN』は、その空気を更に感じさせるものと言っていいだろう。
CD2枚組となる『ALL INDIES THE BACK HORN』は、DISC-1に『何処へ行く』の8曲と『風船』の3曲、DISC-2に『蘇る陽』の10曲を新録音したものが収録されているが、当時のアレンジを生かして20年分のスケール感をにじませる「何処へ行く」や印象的なメロディが際立つ「風船」、歌詞に18年前の彼らが透けてくる「蘇る陽」など、楽曲そのものが十分魅力的なことに今更ながら驚かされる。曲順もオリジナルのままで当時の流れを敢えて変えないようにしているし、楽曲そのものが持つ荒削りで若々しいエネルギーを今のパワーで聴かせる凄みは圧巻だ。二十歳ほどの気負いや迷いも含みながら未来に立ち向かう曲を今の彼らが演奏することで解釈も広がり、当時は伝えきれなかったものも浮かび上がってくる。メジャー・デビューを前に脱退した平林直己(B)と作ったインディーズ時代の曲を埋もれさせることなく、その後に活動を共にしてきた岡峰光舟(B)と新たな息吹を与えていることも、20年の歴史の一部だ。『ALL INDIES THE BACK HORN』で起点と現在位置を一気に結んでコンプリートされるTHE BACK HORNの20年の何と濃密なことか!
これまでのベスト盤とも合わせて、彼らにしか歩めなかった、いや彼らだから歩んだ道を俯瞰できることを嬉しく思う。
【取材・文:今井 智子】
リリース情報
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ALL INDIES THE BACK HORN
発売日: 2018年10月17日
価格: ¥ 3,300(本体)+税
レーベル: ビクターエンタテインメント
収録曲
Disc-1
01. ピンクソーダ
02. カラス
03. 冬のミルク
04. 魚雷
05. 雨乞い
06. 怪しき雲ゆき
07. 晩秋
08. 何処へ行く
09. 風船
10. ザクロ
11. 桜雪
Disc-2
01. サーカス
02. 走る丘
03. 新世界
04. リムジンドライブ
05. 無限の荒野
06. 甦る陽
07. 茜空
08. ひとり言
09. さらば、あの日
10. 泣いている人