アンテナ、ココロオークション、ウソツキが3年ぶりにハレソウツアーを決行!
ハレソウ | 2018.11.02
アンテナ、ココロオークション、ウソツキが合同開催するハレソウツアー2018のファイナルが代官山ユニットで開催された。2015年以来、3年ぶりとなった今年のハレソウツアーは、4月にアンテナのボーカル渡辺諒の病気療養による活動休止の発表があり、一時は開催も危ぶまれた。だが、渡辺本人の強い想いにより、渡辺不在のまま全7ヵ所をまわることを決断。各会場のゲストバンドとして、Mr.Nuts、Halo at 四畳半、空想委員会、ユアネスらを迎えて、ファイナルまで駆け抜けた。それはハレソウツアーとしては、完全なかたちではなかったかもしれない。だが、ココロオークション・粟子とウソツキ・竹田の代理ボーカルでアンテナのライブも行なった今年のツアーは、“音楽のチカラを心から信じる”という変わらないハレソウの信念が貫かれ、同時に、この3バンドの強い絆を改めて感じるものだった。
アンテナは、池田晃一(Gt)、鈴木克弘(Ba)、本田尚史(Dr)という楽器隊だけでステージに現れた。「お久しぶりです、アンテナです」。大きな拍手に迎えられて、池田があいさつをすると、早速ココロオークションの粟子真行(Vo/Gt)をゲストボーカルに呼び込んだ。粟子が「大好きな曲をやりたいと思います」と紹介したのは、「深海おまじない」。軽やかなビートにのせて、アンテナの「ブックメーカー」、ウソツキの「一生分のラブレター」、さらに自分たちココロオークションの「ナゾノクサ」からワンフレーズを盛り込む、粟子らしい粋なメドレーで湧かせた。続けて、ウソツキの竹田昌和(Vo/Gt)が登場。「銀河鉄道に乗ってきました。“アンテナ”の竹田です」と自己紹介をすると、「またハレソウは3バンドで回ると思うので、今度は諒くんもつれてきます」と伝えて、会場は温かい拍手で包まれた。そして、キラキラとしたシンセのフレーズが彩るバラード曲「天国なんて全部嘘さ」をエモーショナルな歌唱で届けると、池田が「もうひとりゲストを呼んでいます」と言って、なんと渡辺がステージに現れた。まさかの療養中の出演に会場がざわつくなか、渡辺は「出たかった……」と悔しそうに言い、各地で今回のツアーに力を貸してくれたゲストバンドへの感謝も伝えた。ライブを締めくくったのは、メンバーが“謎のパーティソング”と呼ぶ、陽気なポップナンバー「ピザ取るから」。4月の活動休止以来、久しぶりに元気な姿を見せた渡辺の嬉しいサプライズに、“アンテナ復活”への期待も膨らむステージだった。
続いて登場したのは、東京公演のゲストバンド、ユアネス。ザーザーと雨音が響くなかで女の子が後悔の想いを語りかけるポエトリーリーディング「雨の通り道」から「虹の形」でライブは始まった。ボーカル黒川侑司がファルセット混じりで紡ぐ繊細なメロディに寄り添うように、古閑翔平(Gt)、田中雄大(Ba)、小野貴寛(Dr)がエモーショナルに音を鳴らしていく。続けて、ドラマチックに表情を変える変拍子にあわせて、“あの日の放課後”を丁寧に描き出した「あの子が横に座る」へ。メンバーの高い集中力が聴き手を歌の世界へ引き込んでいった。「僕らがバンドを組む前から前線で活躍してるバンドに呼んでもらえて光栄です」。MCで喋りかけた黒川は、演奏のときに見せる近寄りがたい雰囲気とは一転して、朴訥した口調が印象的だ。地元・福岡の訛りで、「バンドっていいなと思います。かっこいいですよね。そっちから見たら、僕たちもかっこよく見えてるのかな(笑)」と言うと、「ユアネスでいちばん好きな曲です」と紹介した「凩(こがらし)」、そして、代表曲でもあるバラード「Bathroom」を続けて披露。「今日めっちゃ調子がいいから、あんまり喋りたくないです(笑)」と、間もなくリリースされる新作の告知は手短かに、最後は、臆病者が奮い起こす勇気をテーマにした疾走感あふれる「pop」でライブを締めくくった。そのステージは、小野の言葉を借りるなら、まさに「バンドっていいな」と思わせるのに十分なもの。どこまでもピュアな衝動があふれていた。
SEにコールドプレイが流れ出すと、ステージ袖でメンバーが「おー!」と気合いを入れるかけ声がフロアまで聞こえてきた。次にステージに現れたのはココロオークションだ。1曲目の「星座線」から、井川聡(Dr)が叩き出す躍動感のあるビートにのせて、美しいミラーボールの光がフロアに水玉模様を描き出す。続けて、新曲「向日葵」へ。夏を象徴する太陽のような花をモチーフにして、“君の笑顔 見せて”と歌う、ココロオークションらしい爽やかなポップソングだ。MCでは、粟子が「ウソツキとアンテナと出会ったとき、あ、俺と同じことを音楽でやりたいやつがいる、この3組で音楽シーンを変えたいと思って、ハレソウを結成しました」と、ハレソウを組んだいきさつを説明。さらに、「俺たち、本気で音楽のちからを信じています。音楽でみんな心を輝かせられるって信じてます」と熱く語りかけると、そんな音楽への想いをテーマにした「ヘッドフォントリガー」へと突入。大野裕司(Ba)とテンメイ(Gt)が向かい合い、楽しそうに演奏するステージの真ん中で、粟子の清涼感のある歌声が、優しく、力強く響き渡っていく。中盤は、センチメンタルな夏の景色を描いた代表曲「線香花火」と「蝉時雨」のあと、粟子が即興の歌にハレソウへの想いを託すと、ラストソング「フライサイト」へ。この場所から未来へと高らかに離陸していくようなテンメイのギターを後押しにして、粟子が「なりたい自分を諦めるなよ!」と滾る想いを伝えると、フロアから力強くこぶしが突き上がる多幸感に満ちたフィナーレ。音楽への揺るぎない信頼感を胸に、真っ直ぐに“君”と向き合うステージは、どこまでも誠実だった。
トリを飾ったのは、ウソツキ。「決して嘘をつかないバンド、ウソツキです。銀河鉄道に乗ってやってきました」。いつもの竹田のあいさつを皮切りに、「一生分のラブレター」からライブをスタートした。心踊るバンドサウンドにのせて、“何回だって告白をしよう”と歌う精一杯のラブソング。その温かい雰囲気を、吉田健二(Gt)の歪んだギターのフレーズで打ち破ると、藤井浩太(Ba)の黒いグルーヴと、竹田の早口で言葉を畳みかけるボーカルで攻める、最新アルバム『Diamond』の新曲「口内戦争」へ。ズボンに片手をつっこみ、時々タンバリンを叩きながら歌う竹田のボーカルスタイルが印象的だ。序盤を終えて、「もう終わるのか……まだ始まったばっかりだけど(笑)」と、ツアーの終わりを惜しむような竹田のMCを挟んだあとも、ウソツキの新曲モードは続いた。現行の海外ポップシーンのトレンドをさりげなく織り交ぜた「夏の亡霊」から、「知ってる」「偽善者」へ。幅広く、深い音楽への造詣を、“ウソツキの音楽”として見事に結実させた最新アルバムの楽曲たちは、いままで以上にウソツキというバンドの個性を唯一無二のものとして輝かせていた。MCでは、「このアルバムで……怖いんだけど、革命ってやつを起こそうと思ってます。みなさん……ついて、来いよ!」と、竹田。全然言い慣れてないし、たどたどしい口調だったけど、いまのバンドへの自信が滲み出た言葉だった。クライマックスのバラード曲「名もなき感情」のあとは、“全てラブソング”という、ここまでのセットリストをひっくり返すような、ウソツキらしいオチとして届けた「ラブソングは無力だ」で終了。披露した全7曲中6曲がアルバムからの新曲という潔い攻め方には、いまのウソツキの充実ぶりを物語っていた。
アンコールは、アンテナ、ココロオークション、ウソツキの総勢12名が全員ステージに登場して、今回のツアーに向けて、ハレソウ名義のオリジナル曲を届けた。誰が演奏するかは、各会場くじびきで決めるルールだったというが、この日は、まさかの全パートがウソツキに決定。だが、ベースはウソツキ藤井が全公演で一度も当たりくじを引けなかったココロオークション大野に同情して演奏をチェンジしたかたちで、新曲「ハレルヤ」を披露した。渡辺、粟子、竹田が代わる代わるボーカルをとり、あなたとの永遠の未来を誓うバラード曲を優しく聴かせたあと、渡辺が「音楽って良いなって、心の底から思います」と、しみじみと語りかけて、ラストソング「ハレソウ」へ。最後はゲストのユアネスも交えて、“明日はハレソウ(晴れそう)だ”という朗らかなメロディを紡いでいくと、お客さんもスマホのライトでフロアを美しく照らしていた。雨のあとには、必ず晴れがくる。そんな意味を込めた、ハレソウの名に相応しい、笑顔あふれる、晴れやかなフィナーレだった。
ライブが終わったあと、ライブハウスから外に出ると、開演前、どしゃぶりだった雨は見事にあがっていた。さすが、ハレソウ。そんな小さな奇跡に感動しながら、また何年後になるかはわからないが、次に開催されるハレソウツアーでは、アンテナ渡辺が完全復活したかたちで、さらにパワーアップした3バンドの姿を見せてほしいと心から思った。
【撮影:ハヤシマコ】
【取材・文:秦理絵】
お知らせ
[ユアネス]
Shift Tour 2019
2019/01/05(土)福岡 INSA
2019/01/13(日)渋谷 WWW
2019/01/19(土)名古屋 APOLLO BASE
2019/01/20(日)大阪 RUIDO
[ウソツキ]
ワンマンツアー
2018/11/10(土)福岡Queblick 2018/11/11(日)大阪Shangri-La 2018/11/18(日)名古屋CLUB UPSET 2018/11/24(土)仙台enn 2nd 2018/12/13(木)渋谷CLUB QUATTRO
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