ゲスの極み乙女。全国ツアー『ゲスなのか、タコなのか』、ツアーファイナル
ゲスの極み乙女。 | 2018.11.07
8月29日、4枚目のアルバム『好きなら問わない』をリリースしたゲスの極み乙女。。今年、結成6周年というタイミングで発表したこのアルバムは、川谷絵音(Vo&Gt)が自らワーナーミュージック内に設立した自主レーベル、TACO RECORDSの第一弾アルバムでもある。この作品を掲げ、9月14日のZepp Sapporoを皮切りに“ゲスの極み乙女。全国ツアー『ゲスなのか、タコなのか』”をスタートさせた彼ら。そのツアーファイナルが10月26日、東京国際フォーラムで開催された。もちろんこの日のチケットはオールソールドアウト。会場には幅広い年齢のファンが集結し、彼らを支持する層の厚さを見せつけていた。今回は、このツアーファイナルの模様をお伝えしよう。
場内の照明がゆっくりと落ちていくと、ステージにはほな・いこか(Dr)、休日課長(Ba)、ちゃんMARI(Key)が声援を受けて登場。そして、最後に川谷絵音が長身にロングコートというスタイリッシュな出で立ちで現れる。1曲目は「戦ってしまうよ」。今年1月にリリースしたシングルであり、2018年のバンド活動にはずみをつけたナンバーだ。続いてアニメ『中間管理録トネガワ』のオープニングテーマとなった「颯爽と走るトネガワ君」をプレイ。話題の曲を立て続けに投入し、瞬く間にペースをつかんでいく。この後、アルバム曲が惜しみなく披露されていくのだが、複雑な展開を繰り広げる楽曲が多いにもかかわらず、サラリと軽快に聴かせるスキルは圧巻。各メンバーも完全に音を楽しんでいるのが伝わってくるし、メンバー同士の呼吸が何とも心地よい。合間に「猟奇的なキスを私にして」といった人気曲もはさみ、観客のテンションを上げていく。さらに特徴的だった演出は、7曲目の「sad but sweet」でダンサーを登場させ、曲の表情を深めていた部分だ。ここでは川谷もダンサーとの絡みに参加し、華麗にステップをキメてみせた。中盤、12曲目の「僕は芸能人じゃない」まではMCもなく、ひたすらテンションの高いパフォーマンスで圧倒していく。
このあと、ようやくMCタイムになったが、ここで雰囲気は一転。「僕は芸能人じゃない」を歌い終わった川谷に向かって、ほな・いこかが「芸能人じゃん」と、毒づく。すると川谷は「Mステに出てるところまではアーティスト」と、独自の理論を展開。この先、どう進行していくのかと思ったところで川谷が「誰か元気を出させてくれる人はいないかな」とつぶやき、ちゃんMARIの「あ、いい人がいる」という(台本っぽい)キッカケで、メンバーは一旦楽屋へ。すると……突如、お笑いコンビのさらば青春の光がステージに現れ、『キングオブコント2018』で笑いをとった、予備校で繰り広げられる“鼓舞する人”のネタをステージで披露する流れに! これまでも芸人をステージに招くという荒技を行ってきたゲスの極み乙女。だが、この日も想定外の構成が見事ハマり、場内は爆笑の渦に。研ぎ澄まされたパフォーマンスとコントという究極の組み合わせが生む落差にすっかり引き込まれてしまった。ちなみにこのコラボは、川谷の交友関係の賜物らしく、彼の閃きと行動力にも驚かされた。
さんざん空気がほぐれたところで、本編は後半へ。ここで『好きなら問わない』にも収録されていた「私以外私じゃないの」のリミックス・バージョンを聴かせ、場内を沸かせる。続く「オンナは変わる」では再びダンサー達が登場。曲に躍動感をもたらした。さらに「ロマンスがありあまる」では休日課長がウッドベースに持ち替え、アンプラグド・バージョンでシブく聴かせたかと思うと、サックスをフィーチャーした「ホワイトワルツ」では、オトナっぽいアレンジで変化球を投げつけてくる。もちろん、大詰めでは「パラレルスペック」や「餅ガール」など、懐かしめの曲で大いに盛り上げ、アルバムのラストナンバーでもある「アオミ」で本編をキッチリと締めくくった。
アンコールでは現在オンエア中の読売テレビ・日本テレビ系 木曜ドラマF『ブラックスキャンダル』の主題歌になっている新曲「ドグマン」をライブで初披露。バンドの最新形を惜しげもなくさらけ出した。大ラス曲は「キラーボール」。ここで再び赤い衣装に身を包んだダンサーが出現、華やかさを演出する。また、曲間にちゃんMARIがピアノソロで、難易度の高いショパンの「幻想即興曲op66」を弾き始めると、川谷が「ちゃんMARIが思う国際フォーラムを!」と即興でソロをオーダー。これに迷わず対応するちゃんMARI。こういうニクいまとめ方をしてくれるのは、彼らの強みだと思う。
ライブが終わってみると、やっぱり“してやられた!”という心地よい思いがジワジワと湧いてくる。さらに、終演後には川谷絵音のソロプロジェクト“独特な人”の始動というアナウンスがあり(詳細発表は年明けになる模様)、最後の一瞬までファンを驚かせてくれたゲスの極み乙女。――やはりタダ者ではない。モリモリに詰め込んでも、結局は楽曲のよさが印象に残るのだから、何とも不思議なバンドである。計算と偶然、技とノリが一体化した見どころ満載のライブだった。
【取材・文:海江敦士】
【撮影:石ヶ森 三英】
リリース情報
好きなら問わない
2018年08月29日
ワーナーミュージックジャパン
02.はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした
03.イメージセンリャク
04.もう切ないとは言わせない
05.戦ってしまうよ
06.sad but sweet
07.僕は芸能人じゃない
08.颯爽と走るトネガワ君
09.ゲンゲ
10.私以外私じゃないの(Remix by PARKGOLF)
11.招かれないからよ
12.ホワイトワルツ(adult ver.)
13.アオミ
セットリスト
ゲスなのか、タコなのか
2018.10.26@国際フォーラム・ホールA
- 01.戦ってしまうよ
- 02.颯爽と走るトネガワ君
- 03.ぶらっくパレード
- 04.はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした
- 05.猟奇的なキスを私にして
- 06.イメージセンリャク
- 07.sad but sweet
- 08.サイデンティティ
- 09.もう切ないとは言わせない
- 10.ゲンゲ
- 11.招かれないからよ
- 12.僕は芸能人じゃない
- 13.私以外私じゃないの (Remix by PARKGOLF)
- 14.オンナは変わる
- 15.ロマンスがありあまる(unplugged)
- 16.ホワイトワルツ (adult ver.)
- 17.パラレルスペック
- 18.餅ガール
- 19.アオミ 【ENCORE】
- EN-01.ドグマン
- EN-02.星降る夜に花束を
- EN-03.キラーボール
お知らせ
CROSS FM 25th Anniversary MUSIC JUNCTION 2018
12/25(火)福岡国際センター
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。