前へ

次へ

SAKANAMON、10周年を締めくくった豪華対バンツアー『連々々』

SAKANAMON | 2018.11.21

 結成10周年を迎えたSAKANAMONが、アニバーサリーイヤーを締め括る企画として行った対バンツアー『連々々』。そのファイナル公演に最初に登場したのは、KEYTALKであった。「おさかな天国」のほのぼのとしたメロディが流れる中、ステージに現れた彼らは、序盤から「桜花爛漫」「Summer Venus」「Love me」など、強力なナンバーを連発。観客はフロアで明るい笑顔を浮かべながら踊り続けていた。同世代のSAKANAMONが、精力的な活動を重ねていることを心から喜び、「僕らができる最高の祝福は、ここにいるみんなのテンション、ライブハウスの温度を上げていくことです!」と寺中友将(Vo/Gt)が言ってからスタートした「MABOROSHI SUMMER」では、SAKANAMONの藤森元生(Vo/Gt)と木村浩大(Dr)もステージに現れてハイテンションにダンス。観客を明るく盛り上げていた。

 続いて登場したのは、結成29周年の大先輩、フラワーカンパニーズ。藤森と木村が踊って観客の喝采を浴びた「真冬の盆踊り」など、見どころが満載であったが、披露された曲の数々にSAKANAMONへの温かいエールがこめられているように感じられたのも非常に印象的だった。「メンバーチェンジもなく、活動休止もなく、ヒット曲もなし。この3つを続けてるとバンドは大体上手くいく。SAKANAMONは大丈夫だよ。まだヒット曲がないから」という鈴木圭介(Vo)のMCを聞いて、観客は大爆笑。「深夜高速」「はぐれ者讃歌」「ハイエース」「最後にゃなんとかなるだろう」などから伝わってきた心情と風景は、SAKANAMONのメンバーの胸に深く響いたのではないだろうか。

「いらっしゃいませ。よろしくお願いします!」、藤森が挨拶をしてから演奏が勢いよくスタート。「クダラナインサイド」で幕開けたSAKANAMONのライブは、瞬く間に観客を熱く巻き込んでいた。エネルギッシュであると同時に、朴訥とした雰囲気も漂わせる彼らの音楽は、いつでもライブハウスを平和な熱気で包んでいく。続いて、「幼気な少女」と「アイデアル」も披露されたことにより、会場全体に心地よい興奮の輪が広がっていた。

「起こしの、みなさま、本日、ツアー、ファイ、ナル、です。渋谷の、みなさん」……やたらと途切れ途切れで、何を言っているのか非常にわかりにくい藤森の挨拶を横で聞きながら、「踊りは滑らかだったのに……」と呆れていた森野光晴(B)。そんな和やかな場面の後、観客の間から「おめでとう!」という10周年を祝福する声が上がった。そして、「素敵なライブを観させていただいたKEYTALKさん。フラワーカンパニーズさんは、「深夜高速」でエモーショナルなところから始まり、「真冬の盆踊り」まで。素晴らしいライブを観させていただきました」……妙に堅苦しいトーンであったため、「なんで評論家みたいなの?」と森野にツッコミを入れられたりもしつつ、「みなさんの熱を下げるわけにはいきません。べらべら喋らず、さっさと曲に行こうかと思います」という藤森のMCを経て、「STOPPER STEPPER」がスタート。「普段、社会で踊らされがちなんじゃないですか? 今日は自らの意思で踊ってください!」という言葉に応えて、全力で踊った観客のエネルギーが、フロアを激しく震わせていた。

 瑞々しいメロディをじっくりと噛み締めさせてくれた「追伸」の後に再び迎えたインターバル。KEYTALKとフラワーカンパニーズとの関係性ついて、メンバーたちは語り合った。まず、KEYTALKは、6年くらい前に出会い、毎月のように対バンをしていた時期があったらしい。そして、昨日、自分たちのツアーのファイナルを大阪で迎えたばかりであるにも拘わらず、出演してくれたフラワーカンパニーズは、2015年に誘ってもらって、滋賀と和歌山で共演して以来の縁なのだという。どちらのバンドも日本武道館でワンマンライブをしたことがあるという点に触れつつ、「武道館バンドに“おめでとう!”って言われてる俺らのカリスマ」と藤森が胸を張ると、観客は笑いながら拍手を送った。

「きっとフラカン先輩もKEYTALKも、音楽がないとロクでもない人たちの集まりだと思うんですよ(笑)。ほとんどのバンドマンが、そうなんですよね。“俺にはこれしかない!”っていう気持ちでやってるので。みなさんも音楽に救われてるんじゃないですか? みなさんがつらい時に聴いてるのが、僕たちの音楽だったらいいなと。そんなことを常日頃考えております」という藤森の言葉が添えられた「PLAYER PRAYER」は、観客を無我夢中で踊らせていた。続いて、観客が一斉に飛び跳ねながら踊っている風景が壮観だった「UTAGE」。イントロが始まるや否や歓声が起こり、大合唱となった「ミュージックプランクトン」。藤森のダンスに合わせて観客も手を振りながら踊り、「♪KEYTALK~」「♪フラワーカンパニーズ~」という歌声も響き渡った「TOWER」……大盛り上がりした場面の連続で本編は終了。しかし、観客の興奮は収まらず、アンコールを求める手拍子と「ア!」「ゲ!」という熱い声が沸き起こった。

「ア!」と言ったら「ゲ!」と返すのがお約束、「言葉のキャッチボールではなくてドッチボールです」と木村が称している恒例のコール&レスポンスから始まったアンコール。2019年1月から3ヶ月連続で配信シングルがリリースされ、3月からはワンマンツアー『SAKANAMON THE UPDATE TOUR ~BUDDY→Victor→TALTO~』も行われることが発表されて、観客は大喜びしていた。これまでにリリースされた曲への投票結果を反映して、各地で別々のセットリストを用意するツアーとなるのだという。「今回のツアー、定番曲をあまりやらないっていう裏テーマがありまして。それでやってみたら“結構いい曲いっぱいあるじゃないか”と思った」という森野の発言に対して、嬉しそうに「ヒュゥゥ~」というぎこちない口笛で応えた藤森。「圭介さんが言った通り、俺らはヒット曲がないので、何かに固執する必要はないんじゃないかと」(森野)。「でも名曲はいっぱいあるんだぞ!」(藤森)――というやり取りは大喝采を浴びていた。

「じゃあ、ラブソングを1曲」と藤森が言って、アンコールでまず届けられたのは「君のOOをXXしたい」。エモーショナルなギタープレイを炸裂させた竹安堅一(G/フラワーカンパニーズ)と小野武正(G・MC・Cho/KEYTALK)、一応ギターは手にしつつもひたすら大はしゃぎしながら飛び跳ねていた八木優樹(Dr/KEYTALK)――というコラボレーションが実現して、観客は明るい歓声を上げていた。そして、「今日は本当にありがとうございました。KEYTALKも10年くらいやってて、フラワーカンパニーズは29年。10年ってなかなか大変だと思うんですよ、この時代に。生き残ってこられたのはみなさんのおかげであり、僕の才能のおかげであり(笑)。支えてくれるこの2人(森野と木村)のおかげです。これからももちろんライブがあるし、曲もどんどん出していきます。これから出会うだろうお客さん、仲間、チーム、空間、時間、全てを大切にしていきたいと思ってます。これからもよろしくお願いします!」と想いを語った後、歌いながらギターを弾き始めた藤森。そこに森野のベースと木村のドラムも合流して「箱人間」がスタートした。徐々に高鳴っていった力強いサウンドは、今後の活動に対する決意表明のように感じられた。

 これにて終演かと思われたが、激しい拍手と歓声に応えて藤森、森野、木村がステージに戻ってきた。ダブルアンコールで披露されたのは「ロックバンド」。藤森によるギターソロも交えながら、軽快に駆け抜けていったこの曲を聴きながら笑顔を浮かべた観客の姿は、SAKANAMONの音楽が深く愛されていることを何よりも鮮やかに示していたように思う。たしかに誰もが知っているような華々しいヒット曲があるバンドではない。しかし、彼らの10年間は1人1人の観客の胸にしっかりと響く音楽を誠実に奏で続けた日々の連続だ。そういう揺るぎない事実を、ファンはとてもよく知っている。今後のSAKANAMONも、充実した活動をマイペースに重ねていくに違いない。

【撮影:Daisuke Sakai】
【取材・文:田中 大】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル SAKANAMON

リリース情報

・・・

・・・

2018年01月17日

TALTO

1.ロックバンド
2.STOPPER STEPPER
3.乙女のKANJOU
4.DAVID
5.SYULOVER
6.凡庸リアライズ
7.テヲフル (・・・MIX)
8.反照
9.ケーキ売りの女の子
10.DAPPI

セットリスト

「SAKANAMON10周年対バンツアー“連々々”」
2018.11.11@Shibuya TSUTAYA O-EAST

    [KEYTALK]
  1. 01.桜花爛漫
  2. 02. Summer Venus
  3. 03. Love me
  4. 04. はじまりの扉
  5. 05. 暁のザナドゥ
  6. 06. MATSURI BAYASHI
  7. 07. MABOROSHI SUMMER
  8. 08. MONSTER DANCE
  9. [フラワーカンパニーズ]
  10. 01. 深夜高速
  11. 02. はぐれ者讃歌
  12. 03. ピースフル
  13. 04. ロックンロール
  14. 05. ハイエース
  15. 06. 最後にゃなんとかなるだろう
  16. 07. 真冬の盆踊り
  17. [SAKANAMON]
  18. 01. クダラナインサイド
  19. 02. 幼気な少女
  20. 03. アイデアル
  21. 04. STOPPER STEPPER
  22. 05. 追伸
  23. 06. PLAYER PRAYER
  24. 07. UTAGE
  25. 08. ミュージックプランクトン
  26. 09. TOWER
  27. 【ENCORE】
  28. EN-1. 君の○○を××したい
  29. EN-2. 箱人間
  30. 【DOUBLE ENCORE】
  31. WEN-1. ロックバンド

お知らせ

■ライブ情報

SAKANAMON THE UPDATE TOUR 〜BUDDY→Victor→TALTO〜
03/08(金) 大阪TRAD
03/09(土) 名古屋UPSET
03/14(木) 高松TOONICE
03/16(土) 広島Cave-be
03/17(日) 福岡INSA
03/21(木) 仙台enn2nd
03/23(土) 札幌Crazy Monkey
03/29(金) 金沢vanvanV4
03/30(土) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK
04/07(日) マイナビ赤坂BLITZ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る