FIVE NEW OLD 恵比寿LIQUIDROOM 東京ファイナル
FIVE NEW OLD | 2018.11.30
インタビューの際もステージの上からも、以前よりFIVE NEW OLD(以下 : FiNO)は、これまで何度も今回のツアータイトルでもある「ONE MORE DRIP」を標榜してきた。時と場合によって、そのニュアンスは変わるだろうが、大まかにそれは「人生をより彩ってもらうべく自分たちの音楽性」と私は捉えている。そして実際、その信条と共に彼らはライブを重ね作品を出し、「歓び」といういささか目に見えづらいものながらも充足した気持ちを我々に寄与し続けてくれた。そして、それを実現する為に常に用いていたのが、彼ららしい「一手間(ひとてま)」だったりもする。
FiNOが初のワンマンツアー「ONEMAN TOUR 2018 "ONE MORE DRIP"」を行い、大成功の中この恵比寿LIQUIDROOMにてファイナルを迎えた。本ツアーは今秋発売のニューEP「For A Lonely Heart」と共に全国9箇所を回ったもの。同会場は彼ら単独では最大規模。にも関わらずチケットは早期完売し、人気や期待値の高さを裏づけた。
重複するが本ツアーは集まった者たちに更なる彩りを寄与すべくとの主旨が掲げられたもの。まさにこの日の同会場では、彼らが贈り出す様々なタイプの楽曲を通し、生活が彩られ、潤い、豊潤でふくよかな、心が更に豊かになる、そんな充足感に終始溢れていた。
SEに乗り、青白く浮かび上がったステージと青いバックライトの中、シルエットながらメンバー各人がゆっくりと現れる。間を空けHIROSHI (Vo., Gt.)も登場し、「東京~!!」とハイトーンで場内に向けシャウト。会場が作り出すスタジアムアンセムの中、血肉を注ぐが如くのバンドサウンドが融合し、1曲目の「Undercover」が形づくられていく。誠に生命力溢れる発信だ。続いて、HIROSHIがギターを手に HAYATO (Dr., Cho.)の生み出す8ビートに乗せて「Youth」を走り出させると、疾走感と共に爽快さとポップさが会場を包んでいく。また、ウェイヴ気味のシンセ音の中、たゆたうように「Gold Plate」が始まると、合わせてHIROSHIもよりジェスチャーを交えハイトーンのファルセットを効かせたその歌声を存分に会場に染み渡らせていく。同曲中盤では、「四次元ポケットわたえもん!!」とHIROSHIがWATARU (Gt., Key., Cho.)のギターソロ突入を誘う。WATARUが、その期待以上の景色感溢れるギターソロをキメると、それに負けじとSHUN(Ba.Cho.)のベースも楽曲の有する躍動感を引っ張っていく。同曲では一旦ブレイクを交え、間ではHAYATOが4ビートのシャフルで繋ぐ中、「今日はこの会場を出る際には新たな気分になったような、新鮮で何か得られたような嬉しい気持ちになってもらいたい」とHIROSHI。交えたコール&レスポンスの後、再び怒涛のWATARUのギターソロが炸裂。ステージの最前でギターを弾きまくる。そして、会場をピースサインと共に楽しそうにバウンスさせた「Not Too Late」では、間にはダブステップや艶やかでセクシーな面も交え、HIROSHIのハンドマイクに切り替えたての歌唱も記憶に強く残っている。
気づけばリズムはさりげなくスムーズにサンバへと移行。「Liberty」へ。最後は倍テンに豹変した同曲が会場を、“これでもか!!”と惹き込んでいく。対してFMシンセの幻想的で神秘的な和音の中、「今日は誰1人として置いてきぼりにしたくない。自然に体をたゆたわせているだけで大丈夫」とHIROSHI。それを体現するかのように「Dance with Misery」に入ると、幻想的で神秘的なサウンドと躍動さの合わさった同曲が会場をたゆたうように躍らせていく。
この日はマルーン5の「Sugar」のカバーも楽しめた。オリジナルの賑やかでパーティ感溢れる雰囲気に対し、より歌に重点が置かれ、いささかウェットさを擁した印象を受けた彼らのカバー。WATARUもシンセで温かみのあるサウンドを加味し、HIROSHIのファルセットも韻もスタッカートの効いた歌い方も絶好調で、特に後半は高いファルセットの多用にも関わらず、それらを難なく歌いこなす様には感動すら覚えた。
「ただ踊らされるだけでなく、気ままにビートに体を預けてみましょう」(HIROSHI)と「Stay (Want You Mine)」を、またインスト曲では、暗闇からゆっくりと浮上していくような、深海から海面に向けて顔を出し、光を浴び包まれていくような感覚を味合わせてくれた。同曲ではSHUNもカオシレーターを交えイマジナリティを添えていった。
中盤は彼らの出自とも呼べるオルタナやエモーショナルな面が特化した楽曲たちが連射された。「Liar」では、より力強さと大らかさを手に入れた同曲が、あえてHIROSHIが感情的で時に声を荒げて歌うスタイルとマッチ。ストロボフラッシュの中、楽曲がエモーショナルにスパークしていく様を見た。そしてそこを抜け、より視界がクリアになった際の「Halfway Home」では、更に会場を引き連れて眺めの良い場所への引き連れが行われる。その際のサビで現れる爽快感や景色の壮観感にはたまらないものがあった。
後半に向けては、正反対的に聴き浸らせるメロウな曲が続いた。ソフィストケイトされた「Melt」を経て、ピアノと歌にてしっとりと贈られた「Too Good To Be True」では会場中が聴き入る光景も印象的であった。それにしても、ここ最近のHIROSHIの歌声と表現力のアップは凄い。中でもハイトーンやファルセットといった高音部の映え方には目を見張るものがあった。
ここからは後半戦。更なる一体感の口火を切らんと、会場に美しいワイパーの壮観を作り出した「Hole」、また「Sunshine」では、<いつも心に太陽を>と明るい気持ちにさせてくれ、同曲ではSHUNのベースが引っ張り、疾走感と爽快感を伴ったブロークンビーツ部分が更なる気持ち良さや高揚感を与えてくれた。また、鍵盤の音色と会場もクラップやバウンスで楽しげに応戦した「Ghost In My Place」や、彼らの重要なゴルペル的な面が炸裂した「By Your Side」では至福感も味わえた。その「By Your Side」の際にはHIROSHIもフロアを通り会場の中央に立ち一緒に祝福するかのように場内と共に歌う場面は、この日最大のハイライトと捉えている。そして、本編ラストは躍動的な「Gotta Find A Light」で締め。「ありがとう」の言葉を残し、HIROSHIが先にステージから去り、残る3人でアウトロをキメる。
アンコールでは各人がツアーを振り返る会話がなされた。それを締めくくるようにHIROSHIからの「達成感がない。まだまだやれるし、まだまだ届けたいものがある。こんなところで止まってられないし、みんなにももっともっといい景色を魅せたい。これからもついてきて下さい」の言葉の後、来春にはアジアや東名阪のツアーを行い、そのファイナルには赤坂マイナビBLITZが待っていることが告げられ、場内も歓喜する。
アンコールは3曲。どれも“待ってました!!”の代表曲ばかりであった。景色感のある「Black & Blue」がここではないどこかへと誘えば、ギターと歌い出しから始まった「Good Life」では同曲が伝える「いい人生にする術」に、会場を交えての雄々しいコーラスが友軍的なエネルギーを加えていく。同曲では二番にてWATARUの歌を堪能することが出来た。対してラストの「Gateway」では、彼らのダイナミズムが溢れんばかりに放たれた。それらはまるで、闇を超えこれまでの道程や苦労や覆ってきた道が昇華されるかのように響き、最後は栄光に包まれるように光量高くなっていくバックライトと共に、先ほどより逞しくなれたかのような自分と出会うことが出来た。
締めに冒頭の「一手間」の話に戻させてもらう。しかし、この一手間こそ実に面倒だったりする。料理で言うと下ごしらえや仕込み、隠し味や愛情の類いのそれは、要する時間や分量、配分やタイミング等も実に重要となってくる。時にはトライ&エラーや試行錯誤、実験や偶発も交え、それらは「もう一つの味」へと変わっていく…。まさにそんな「一手間」をかけ、経たからこその数々の名場面に出会うことの出来た、この日の「ONE MORE DRIP」。それはより濃く深みも香りも更に引き出され、醸し出され、まさに生活を増々彩ってくれるものであった。会場を出た際の言いようのないバイタリティと共に、今はその余韻にどっぷりと浸っている。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:umihayato】
リリース情報
For A Lonely Heart
2018年09月19日
TWILIGHT RECORDS
2. Youth
3. Melt
4. Gold Plate (“Too Much Is Never Enough Tour”at SHIBUYA WWW / 2018.04.14)
5. Liberty (“Too Much Is Never Enough Tour”at SHIBUYA WWW / 2018.04.14)
6. Halfway Home (“Too Much Is Never Enough Tour”at SHIBUYA WWW / 2018.04.14)
セットリスト
ONE MAN TOUR 2018
"ONE MORE DRIP"
2018.11.18@恵比寿LIQUIDROOM
- 1.Undercover
- 2.Youth
- 3.Gold Plate
- 4.Not Too Late
- 5.Liberty
- 6.Dance with Misery
- 7.Sugar(MAROON5 Cover)
- 8.Stay (Want You Mine)
- 9.No title(instrumental)
- 10.Liar
- 11.Halfway Home
- 12.Melt
- 13.Too Good To Be True
- 14.Hole
- 15.Sunshine
- 16.Ghost In My Place
- 17.By Your Side
- 18.Gotta Find A Light 【ENCORE】
- EN-1.Black & Blue
- EN-2.Good Life
- EN-3.Gateway
お知らせ
Survive Said The Prophet / s p a c e [ s ] TOUR 2018-19
12/07 KYOTO MUSE
BIG MOUNTAIN MUSIC FESTIVAL 9
12/9 KAENG KRACHAN COUNTRY CLUB PETCHABURI
MERRY ROCK PARADE 2018
12/24 ポートメッセなごや1号館~3号館
FM802 主催 "RADIO CRAZY"
12/27 & 28 インテックス大阪
rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 18/19
12/30 幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
FIVE NEW OLD x LUCKY TAPES Coupling Tour 「Hit The Trail」
02/18 渋谷CLUB QUATTRO
02/28 名古屋CLUB QUATTRO
03/06 心斎橋JANUS
03/08 福岡DRUM Be-1
VIVA LA ROCK 2019
05/03~06 さいたまスーパーアリーナ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。