ReVision of Sence 、悔しさや劣等感を昇華し挑んだZepp DiverCity公演
ReVision of Sence | 2018.12.06
背後に何かをしょっているわけではないのに、この日のReVision of Senceのライブからは背負って(せおって)いる何かが見えた。この場合の“見えた”はむしろ幻の類いだろう。厳密には“感じた”と称した方が適当かもしれない。しかし、私には確かに見えたのだ。この日、この会場に集ったオーディエンスたちの“日常”や“想い”が。もちろんそれらは決して軽いものではなく、集まった人の分だけそれは重く、歩のあゆみを困難にさせる。しかし、逆にそれらを背負った彼らは、その想いを引き受け、“それでも俺らは行くんだ!”との強い覚悟をライブの終始を通し、高らかに宣言していた。
約7ヵ月に及ぶReVision of Sence の『罪と罰ツアー』が、この日のZepp DiverCityをもって幕を閉じた。このツアーは春の『罪』発売後、春から夏にかけて『一生クズの罪編』、晩夏発売の『罰』の発売を経た秋口からの『いいクズの罰編』を経て、そのファイナルシリーズとして東名阪のZeppで行われたもの。この日はそのファイナルでもあり、ボーカルの河井教馬(以下 : かずま)の誕生日でもあった。今春にソールドアウトに至らなかった同会場でのリベンジも含んだ、11月21日。残念ながら今回も完売には未達だったが、自身の単独ライブでは過去最多の集客を記録。明日からまた「クソみたいな日常」へと立ち向かっていけるだけのエネルギーを補填することが出来た。
まずは開演に先駆け会場のウォーミングアップと和まし、臨戦態勢を促すべく恒例の上村元隆(Ba)による注意事項の影アナが入る。今回はニュース風だ。時々の失笑をものともせず煽りを交え進め、最後は「僕らはここでしか体験できないことをお届けします!」と力強く締める。
そこから間を空け、轟くような登場SEに乗り、まずは辻友遥(Dr)、嘉藤康介(Gt)、上村元隆(Ba)、偉町大介(Gt)が一人づつステージに現れ、間を置きかずまも駆け入る。「今までで一番いいライブをお見せしましょう!」と、かずまがライブのスタートを告げる。
オープニング曲は恒例の「ダメ、ゼッタイ、現実逃避」が務めた。これまでよりも更に強力になったレーザー、ライティングが飛び交う中、会場の揃いのフリも冴える。キャッチーさとポップさ、ラウド性やそこはかとない歌謡メロディ具合、そして一体感といった彼らの真骨頂が凝縮された同曲が場内に炸裂していく。「今日は1人残らず楽しませるから目を離すなよ」「広いけど遠いなんて絶対に思わせない」「全員楽しませるから安心してついてきてくれ」と、かずま。曲が「ヨノナカカネ」に移ると、恒例のお客さんの肩車での場内一周が始まる。サビ以外はコニュニケーションに勤しみほとんど歌えないのもご愛敬。この場内の求心と揃いのフリは壮観さを覚えた。また「I’m a クズ人間」では、偉町、嘉藤の両ギタリストも左右でステップに乗りプレイ。サビで現れるストレートさが2ビートと共に数多くのクラウドサーフを生んでいく。同曲では、「いい人になろうと無理する必要なんて全くない。クズ人間のままで十分。それが君のアイデンティティなんだから」と歌っているように響いた。
「周りから嫌な奴と思われても関係ない。このZeppにいる間は誰にも邪魔させない。俺が守るから」と、かずま。負け犬に捧げられた「負け犬のパーティー」は作品以上のアップテンポで贈られ、雄々しいアンセム化させていく。また珍しい曲「カミダノミレクイエム」では駆け抜けるような同曲と共に会場にワイパーの絶景を生み、「ヨノナカカオ」では、軽やかなポップさが呼び込まれ、場内も合わせてモンキーダンスをする光景も楽しめた。また、佐々木希と出会った時に捧げるはずだった「あいにーじゅーあいうぉんちゅー」では各所で楽しいモッシュピットが育まれていく情景を見た。
「みんなで自身の黒歴史を曝け出しちゃおう!」と、それらを成仏させるべく放たれた「黒歴史」が会場のタオル大旋回の壮観を育み、集まった者たちの黒歴史が昇華されていく様を見た。また、ハイパー・ユーロビートに乗せて贈られた「別れました。」では、フロントの4人が並び揃って竿を右に左に。合わせて場内にも高速ワイパーを起こしていった。そして、赤いビームレーザーの放射のなか展開された「君は麻薬」では、ストレートさが気持ち良さを誘い、「ALIVE」ではダイナミックなサウンドと共に光量の高い背後からの照明も感動的に広がっていく。《もう2度と離さない》のフレーズが場内をガッチリと抱きしめていく。
重複するが、この日はかずまの31回目の誕生日。数々の客席からの合間合間のおめでとうの祝福に、「特別な日にしなくちゃいけない強迫観念が生じて、昔は誕生日が嫌いだった。他の人の誕生会に参加する度に、“自分の誕生日もこうやって祝ってくれるのだろうか”と考えて、それが理由で嫌いだった。だけど皆さんと出会え、今ではみなから「おめでとう」と言ってもらえる人間にさせてもらっている。あなたに会えてよかった。今回もソールドアウトはしなかったけど全然恥ずかしくはない。だって俺はこれからもこのバンドに人生を捧げていくんだから」と、かずまが力強く語った。
ここからは後半戦。「いいねパラサイト」の際のかずまが天に向け掲げた拳は神々しく力強く、「NO DIS,NO LIFE.」では無数のクラウドサーフが生まれ、凄さを魅せつけた「リツイートは正義」等がライブの加速度を上げていく。対して美しい鍵盤にバンドサウンドがブレンドされ、ジャージーさも交えた「ヤダヤダ、ムリムリ、弱肉強食」、どんなに辛くても現実から目を離すな。手首切ってる場合じゃないだろ? と歌われた「前略、メンヘラ様」では育まれていく一体感を実感することが出来た。またここでは、かずまの「ライブ終わりたくねぇ」との心の音(こころのね)も聞けた。
ラストスパートでは、今後も活動の根源の一つでもある悔しさをバネや糧に戦っていく気概の「Yeah!めっちゃナンマイダ」が、馬鹿にしてきた奴らを見返してやる力強いいつか見ておれのリベンジソングの様相を魅せれば、「俺がこのステージにしがみついている理由は、あなたと出会いたかったから。俺たちが大切にしたいのはこの会場に集まってくれた人。何だって出来ることを証明するためにここに立った。それぞれの場所で戦って、またライブハウスで会いましょう!」(かずま)の求心力のある言葉を経ての「それぞれの場所」では、力を得た朋友同士の絆の強さを改めて感じたし、生きるのが上手くない者同士の挽歌が場内に響き渡った。
「次の曲をもう一曲歌いたい」と本編最後に選ばれたのは「独白」であった。ストリングスの同期と包み込むようなコーラス。何かを守りたい、何かを愛したい。そんな気持ちがまるで手渡しのプレゼントのように贈られた。
アンコールでは、楽曲に入る前に今日誕生日であったかずまに向けて他のメンバーから、かずまの物まねのプレゼントと似顔絵入りのバースデイケーキが授与された。
アンコールの3曲はとても神々しく響いた。明日からまた一歩一歩あゆんでいく。もっと大きなところでやっていくとの気概と共に贈られた「大切じゃない人は、大切にしなくたっていい」、そして2回目の「ダメ、ゼッタイ、現実逃避」では、この日最大のクラウドサーフを記録。また、最後はみんなで歌える歌として「負け続きの日々」が放たれた。それらはまるで、「これからもまた走っていくから。一緒に行こう」と響いた。
冒頭の「背負う」はけっして一緒に歩む/一緒に行こうといった共有や共走とは違った類い。もう少し彼らがその先に居て、道を作るからその背中にしっかりとついて来いと言っている意味合いのものだ。
まるで傷をなめ合うように挽歌を歌い続けていた日々。それを重ねていくうちに徐々に皮膚は固くなり、その傷は逆に彼ら独特の強さへと変わっていった。彼らはこれから重い重いみなさんの想いを背負う(せおう)役割となることを覚悟し、ここに宣言した。そんな先にはフラつくことや道に迷うこと、投げ出したくなることや立ち止まることがあるかもしれない。そんな時はどうか一緒に彼らの歌をうたって欲しい。何故なら、彼らの歌はみなを代弁しているのと同時に、自分たちにも言い聞かせている歌たちばかりなのだから。
【撮影:タマイシンゴ】
【取材・文:池田スカオ和宏】
リリース情報
罰
2018年08月29日
BUSU RECORDS
2.夢シンドローム
3.野次馬パンデミック
4.別れました。
セットリスト
罪と罰ツアー ~いいクズの罰編~
2018.11.21@Zepp DiverCity
- 1.ダメ、ゼッタイ、現実逃避
- 2.ヨノナカカネ
- 3.I’m a クズ人間
- 4.負け犬のパーティー
- 5.カミダノミレクイエム
- 6.ヨノナカカオ
- 7.あいにーじゅーあいうぉんちゅー
- 8.黒歴史
- 9.別れました。
- 10.君は麻薬
- 11.ALIVE
- 12.いいねパラサイト
- 13.NO DIS, NO LIFE.
- 14.リツイートは正義
- 15.ヤダヤダ、ムリムリ、弱肉強食
- 16.前略、メンヘラ様
- 17.Yeah!めっちゃナンマイダ
- 18.それぞれの場所
- 19.独白
- 【ENCORE】
- En-1.大切じゃない人は、大切にしなくたっていい
- En-2.ダメ、ゼッタイ、現実逃避
- En-3.負け続けの日々
お知らせ
ReVision of Sence ONEMAN TOUR 2019(仮)
02/2 (土) ESPエンタテイメント東京12号館 club 1ne2wo
02/8 (金) 名古屋 大須RAD HALL
02/10(日) ESPエンタテインメント大阪 Club Garden
02/16(土) ESPエンタテインメント福岡 Live HallEMY
02/17(日) 山口 周南rise
02/22(金) 広島セカンドクラッチ
03/3 (日) 福島#9
03/5 (火) 千葉LOOK
03/9 (土) 静岡 浜松FORCE
03/10(日) 三重 四日市club CHAOS
03/14(木) 京都MOJO
03/16(土) 宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2
03/17(日) 仙台CLUB JUNKBOX
03/21(木祝)茨城 水戸LIGHT HOUSE
03/23(土) 新潟CLUB RIVERST
03/24(日) 長野J
04/4 (木) 横浜F.A.D
04/7 (日) 群馬SUNBURST
04/10(水) 神戸 太陽と虎
04/13(土) 岐阜 柳ヶ瀬Ants
04/14(日) 金沢AZ
04/20(土) 香川 高松MONSTER
04/21(日) 奈良NEVER LAND
04/27(土) 札幌DUCE
04/28(日) 札幌DUCE
05/2 (木) 埼玉 西川口Hearts
05/12(日) 滋賀U-STONE
05/18(土) 岡山IMAGE
05/26(日) 愛知 豊橋clubKNOT
06/7 (金) 大阪 梅田バナナホール
06/21(金) 名古屋ELL
06/26(水) 東京 恵比寿LIQUID ROOM
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。