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FOMARE、ファンとの距離をぎゅっと詰めた初ワンマンでバンドとしての風格見せる

FOMARE | 2018.12.12

 振り返れば、現体制になってからのFOMAREの勢いはじつに目を見張るものがあった。2017年12月に1stミニアルバム『If I stay』をリリースし、2018年はレコ発ツアー『If I stay Tour 2018』でスタート。今夏も2ndミニアルバム『0.02』をリリースしつつ、フェス出演やレーベルツアーなどを経て、名実共に実力派バンドとしての地位を確立していった。そして、初の全国ツアー『0.02 Tour 2018 ~君との距離が0になるよ~』の最終日となる12月4日、満を持して初ワンマンを実施。“超満員のTSUTAYA O-EAST”という大きな魔物に挑む3人の姿は、時折初々しさを漂わせながらも、とても勇ましかった。

 暗転したステージに煌々と輝くアルファベットのネオンは、バンドロゴのFOMAREの6文字。アンコールのMCでメンバー達も「ネオン、ヤバくない!?」「ほしいですって言ったら、これくれるのかな?」と嬉しそうに話していたが、彼らを支えるスタッフ達からのプレゼントとも思える温かなネオンに照らされながら、待望の初ワンマンは幕を開けた。

 ≪雨の日も晴れの日も/ほら≫ 突如、無人のステージに響き渡るアマダシンスケ(Vo&Ba)の歌声。自然とフロアから手拍子が湧き起こる中、「ワンマンよろしくねー!」と、メンバー達は意外にもゆったりと姿を現した。しかし、樹下卓弥(Dr)の豪快なドラムで助走をつけると、再び等身大のメッセージを載せた『雨の日も風の日も』を一丸となって届けていく3人。その爆発力はいつにも増して凄まじく、≪ねぇ/僕の心の声は届いているのかな≫という心からの問いかけに応えるように、フロアを埋め尽くすオーディエンスも一斉に拳を突き上げた。これまでも、対バンイベントの会場をまるで自分達のワンマンのごとく掌握してきた彼らだが、この日はO-EASTに集った1200人全員がFOMAREの同志だ。1人1人から発せられる熱量は大合唱と共に高まり、オープニングから息苦しいほどの熱気が会場内に充満していた。

 「一緒に進んでいこうぜ! 風!」清々しい笑顔で突入した『風』では、続出するクラウドサーファーに感化されたアマダが、早くもフロアにダイブ! “君に逢いたい”という衝動を体現した『君と夜明け』はもちろん、≪君との距離が0になるよ≫という歌詞の通り、大きくなる会場のキャパシティに反比例するように、“精神的にも物理的にも、少しでもオーディエンスとの距離を縮めたい”一心でオーディエンスと共に育ててきた『君の涙が乾く頃』も、ツアーファイナルではすでにFOMAREのライブに欠かせない存在となっていた。

 正直、MCにしても、演奏面にしても、初ワンマン・初O-EASTに対する緊張感やぎこちなさ、粗さは少なからずあった。それでも、「初ワンマンで初っ端落ちたわ!(笑)」とダイブに失敗したことを自ら暴露するアマダに対して、フロアから次々に「いいね!」「最高!」と声が挙がるなど、温かな空気が彼らの心を溶かし、いつもの天真爛漫なFOMAREに戻していく。アマダは「俺達のいろんな童貞の卒業を祝いに来てくれてありがとうございます!」とお茶目に挨拶すると、『0.02』を制作しながら感じていた人と人との距離感や、それが生む虚無感を振り返った上で「ステージとみんなの距離はあからさまにあるじゃないですか? でも、それがある中で、本物のライブと本物の歌と本物の声と楽器と、ステージから放つ音……それだけで、今日はちゃんと心と心を0にして帰りましょう! よろしくお願いします!」と言い添え、『夢から覚めても』を熱唱。前作『If I stay』との違いを出すために、積極的に新しいテイストを取り入れたという挑戦的な曲ながらも、≪嗚呼/いつまでも/覚めない夢でいてほしい≫と願うストレートなシンガロングは、FOMAREとオーディエンスが共に歩んできた道のりを物語っていた。

 また、本編中盤には、女性目線で赤裸々な恋愛観をぶちまけた『恋をする自分が好きなだけだと思う』など、ラブソングも多数披露。カマタリョウガ(Gt&Cho)の奏でるアルペジオに導かれたラブバラード『春風』は、ワンマンならではの幻想的なライト演出も加わり、舞い込む桜の香りすら感じるほど。遠距離恋愛の切なさを綴った『mirror』では、本当に恋人に語りかけているようなアマダの歌声と、そのシーンをドラマティックに彩るカマタのギターソロがとくに印象的だった。どんな楽曲も、ただ音源をなぞるのではなく、時折メロディーや歌詞を変え、今抱えている想いとして届けていくのがFOMAREらしさだが、リリースインタビューの際にカマタが“(『0.02』の収録曲の中で『mirror』は)とくに優秀な子供”と例えていたように、『mirror』はワンマンという晴れ舞台で一際大きく羽ばたいていた。とはいえ、FOMAREの進化は常に予想のさらに上をいく。翌日にリリースを控えていた最新シングル『スノウドロップ』より、恋人との日常の中で見過ごしていたものへの後悔を綴った『Can’t help myself』を初披露したのだ。哀愁を秘めた軽やかなバンドサウンドと、やるせない心情が絡み合い、初めは身構えていたオーディエンスも徐々に体でリズムを刻む。そこに警鐘を鳴らすかのようなスリリングなギターが滑り込み、同じく『スノウドロップ』収録の『悲しきハッピーエンド』へ。真っ赤なライトや不穏な世界観がフロアを飲み込む中、≪ねぇ/僕達は/幸せだったじゃないか≫≪僕が生まれなかったら/きっと君は幸せだったんだ≫と訴えかけるエモーショナルな新曲に、FOMAREの新たな世界を垣間見た。

 なお、本編後半は、ミニアルバム『0.02』を掲げて大きく飛躍した2018年を締め括るように、メロディアスな『HANABI』で華やかに加速しつつ、『23:12』『stay with me』『新しい歌』といった、初期のFOMAREを象徴する楽曲達を立て続けに披露。彼らの初期衝動を体全体で感じようと、クラウドサーファーやダイバーが続出した。若さゆえの衝動、不安定さ、無敵さを内包しながら駆け抜けた本編のラストナンバーは、『タバコ』。カマタ、樹下という最高の仲間に背中を預け、ヴォーカリストである自分の存在理由を確かめるように歌い上げるアマダの力強い声は、演奏が終わりメンバーがステージを去った後もしばらく耳に残っていた。

 「緊張しました! でも、それがぶっ飛ぶくらい人が多すぎて、負けらんねぇー!って思って、叩きました! ツアー何本か来てくれた人も、今日初めて来てくれた人も、今日来れなかった人もいると思うんですけど、すべての人に“ありがとうございます”!」(樹下)

 「去年、(地元の)群馬で頑張って100人入れたバンドが、こうやって1200人になって……ありがとうございました!」(アマダ)

 アンコールで再びステージに登場すると、メンバー達は口々に感謝を述べる。そして、そのまま代表曲『Lani』に続くと、1200人の頼もしい歌声が彼らを包み込み、アマダの豪快なダイブでワンマンは終幕……と思われた。だが、FOMAREを求める声は一向に止まず、Wアンコールでは『HOME』、トリプルアンコールでは『君と夜明け』を全力で届けた。トリプルアンコールの際に「求めてくれる人達のためだけにやります!」と叫んでいたが、きっと、彼らを求める声はこれからますます大きくなっていくのだろう。それでも、オーディエンス1人1人とFOMAREの距離は決して開くことはない。そんな強い決意と絆を改めて確信した夜だった。

【撮影:橋本塁(SOUND SHOOTER)】
【取材・文:斉藤碧】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル FOMARE

リリース情報

スノウドロップ

スノウドロップ

2018年12月05日

small indies table

1.libido
2.Can’t help myself
3.悲しいハッピーエンド
Bonus Track HAPPY X-MAS(WAR IS OVER)

全3曲+ボーナストラック

セットリスト

0.02 TOUR ~君との距離が0になるよ~
2018.12.04@TSUTAYA O-EAST

  1. 01.雨の日も風の日も
  2. 02.風
  3. 03.君と夜明け
  4. 04.君の涙が乾く頃
  5. 05.夢から覚めても
  6. 06.恋をする自分が好きなだけだと思う
  7. 07.春風
  8. 08.mirror
  9. 09.Can’t help myself
  10. 10.悲しいハッピーエンド
  11. 11.HANABI
  12. 12.23:12
  13. 13.stay with me
  14. 14.新しい歌
  15. 15.タバコ
【ENCORE1】
  1. EN-1.Lani
【ENCORE2】
  1. EN-2.HOME
【ENCORE3】
  1. EN-3.君と夜明け

お知らせ

■ライブ情報

FOMARE presents SLAM VOL.2 ~スノードロップ リリースパーティー~
2018/12/17(月) 新宿ACB HALL
w / Northern19

FOMARE presents "small sausage tour" (men’s limited)
2019/03/21(木) 心斎橋BRONZ
2019/03/22(金) 名古屋CLUB UPSETE
2019/03/28(木) 新代田FEVER



ポルノ超特急2018 -5th ANNIVERSARY-
2018/12/22(土) 京都パルスプラザ

MERRY ROCK PARADE 2018
2018/12/24(月) ポートメッセなごや1号館~3号館

rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 18/19
2018/12/29(土) 幕張メッセ国際展示場1~11ホール&イベントホール

TAKASAKI “COUNT DOWN MEISTER” GIG!! 『2018⇒2019』
2018/12/31(月) 高崎 club FLEEZ

BRONZE presents "上毛の火"
2019/01/05(土) 心斎橋BRONZE
w / 秀吉

10th Anniversary SANUKI ROCK COLOSSEUM 2019 -MONSTER baSH × I?RADIO 786-
2019/3/23(土)、24(日) festhalle / オリーブホール / DIME / MONSTER / SUMUS caf? 瓦町駅地下広場 / 786FM香川ステージ(公開放送・トーク)
※FOMAREの出演は3/23 or 3/24のどちらかの出演となります。

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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