レビュー

FOMARE | 2018.12.05

 レーベルツアー『small indies table tour 2018』のファイナルの舞台(9月28日恵比寿LIQUIDROOM)で予告していた通り、12月5日、FOMAREがニューシングル「スノウドロップ」をリリースした。シングルとしては約1年6ヵ月ぶりだが、コンスタントにアルバムをリリースし、精力的にライブを重ねてきたFOMARE。今作が4曲入りシングル(ボーナストラックを含む)であることも、彼らの勢いを物語っている。

 これまでのFOMAREというと、キャッチーな頭サビや、冒頭からギター/ベース/ドラムが一体となって勢いよく駆けだしていくような爆発力のある楽曲が多く、それこそアルバム『If I Stay』に収録されている「君と夜明け」のような疾走感のある曲でリスナーの心をガッと掴み、一気に自分達のペースに飲み込むというのが彼らのライブスタイルだった。それゆえ、1曲目の『libido』を聴いた時、イントロのドラマティックなギターフレーズに続く、自問自答のようなAメロが新鮮に映った。≪時々あるようででも無いような/この距離感が近く近く近くなり合う度に/悲しく寂しく時々激しくなるのは何故なんだろう≫そう淡々と吐き出す、アマダシンスケ(Vo)の哀愁を帯びた歌声。それはまさに、“絶対に夜に歌詞を書いていた”、“歌詞を書くために実体験を思い出そうとすると、夜のことを思い出す”というアマダ自身のリアルな温度感を伝えている。その一方で、≪去年の冬の記憶の欠片が突き刺さる≫というサビでは、急激に幸せだった頃の記憶が流れ込んでくるような展開に。一見、別れた恋人同士を描いたように見える歌詞なのに反して、アマダの“切ない曲だけど、別れの曲じゃないです”というSNSでの発言からも、本音が深読みを助長する。そんなところも、この曲の面白いところだ。

 ちなみに、前作『0.02』のタイトルが未だ成長過程のFOMAREと、じつはコンドームの薄さを表していたのに続き、今回のリードが『libido』(性的衝動)というのも興味深い。偶然のリンクなのか、お茶目な遊びゴコロなのかは当事者のみが知るところだが、センチメンタルな世界観と生々しい言葉のギャップが、じつにFOMAREらしさが垣間見えた。

なお、カップリングには、当たり前のように繰り返される恋人との日々の中、見過ごしていたものへの後悔を綴った「Can’t help myself」。≪ねぇ僕達は/幸せだったじゃないか≫≪僕が生まれなかったら/きっと君は幸せだったんだ≫と、徐々に開いていく恋人との距離を嘆く「悲しいハッピーエンド」を収録。ボーナストラックとしてジョンレノンの名曲「HAPPY X-MAS (WAR IS OVER)」をカヴァーするなど、冬をコンセプトにした1枚ながらも、これまでと変わらず“大切な人との距離感”を丁寧に描いた作品となっている。

「スノウドロップ」をリリースする前日、12月4日には、TSUTAYA O-EASTにて『FOMARE presents 0.02 TOUR ~君との距離が0になるよ~』のファイナルを迎えたFOMARE。雪山で夏を満喫するという季節感ゼロなアーティスト写真が話題を呼んでいる彼らだけに、その先も、冬に夏を呼び込むほどの熱いライブを繰り広げてくれることだろう。エモーショナルなバラード『libido』を始め、新たな楽曲達がライブにどんな彩りを加えるのか、楽しみに待ちたい。

【文:斉藤碧】

リリース情報

スノウドロップ

スノウドロップ

発売日: 2018年12月05日

価格: ¥ 1,200(本体)+税

レーベル: small indies table

収録曲

1.libido
2.Can’t help myself
3.悲しいハッピーエンド
Bonus Track HAPPY X-MAS(WAR IS OVER)

全3曲+ボーナストラック

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