Ivy to Fraudulent Game 『Parallel』 release tour SHIBUYA CLUB QUATTRO
Ivy to Fraudulent Game | 2018.12.26
フロアの隅々までが観客で埋まり、ものすごい熱気が渦巻いていた渋谷クラブクアトロ。やがて暗転して、開演時間となった途端、独特の静寂が会場内に広がるのを感じた。SEが流れているので厳密な意味では“静寂”ではないのだが、息を呑んでステージを見つめる人々が醸し出している雰囲気、伝わってくる集中力が“静寂”として感じられたのだと思う。本編がスタートしてからも続いたこの感覚は、この日のライブで改めて噛み締めることができたIvy to Fraudulent Gameならでは醍醐味であった。
大島知起(G)、カワイリョウタロウ(B)、福島由也(Dr)が現れたのが、暗がりを通して薄っすらと見えた。続いて登場した寺口宣明(G・Vo)が、スタンドからマイクを外したのを合図とするかのようにスタートした「最低」。ステージ上の4人のシルエットが逆光で浮かび上がり、酩酊感を誘う音像がドラマチックに鳴り響いた。続いて2曲目「徒労」は、寺口が奏でるギターと歌から密やかにスタート。他のメンバーのサウンドも合流して、一気にドリーミーな色合いを深めたアンサンブル。メロディ、ハーモニーはもちろん、残響も何かを語りかけてくる彼らの音楽の魅力は、このオープニングの2曲で早くも鮮やかに示されていた。
そして畳みかけるかのように様々な曲たちがさらに披露されていった……という予定だったようなのだが、福島のイヤモニに不具合が生じたらしい。ここで突然のインターバルとなった。「早速ですが、機材トラブルです(笑)。今日は開演前もいろいろあって。福島の衣装が本番10分前に紛失しまして、7分前に見つかりました。どこにあったかというと、客席です。リュックを置き忘れたらしいです。ここはこんなトークをするところじゃなかったんだよ(笑)」――状況を説明しながら場を繋ぎ、「こぼれ話はないですか?」と他のメンバーに問いかけてもいた寺口のMCは、ライブをたくさん重ねてきたこのバンドのトラブルへの柔軟な対応力も自ずと示していたように思う。
そんな貴重な場面を経て、機材トラブルへの対応が完了。演奏が再開された。激しいビートが鳴り響き「水泡」へ突入すると、観客は一斉に掲げた腕を揺らしながら興奮を露わにした。聞こえてきた波の音、スティックカウントと共にスタートし、観客の打ち鳴らす手拍子も加わりながら壮大な展開を遂げた「she sea sea」。激しく躍動するサウンド、艶めかしい歌声が絶妙に融合していた「Parallel」。エネルギッシュに疾走した「Dear Fate,」。心地よいタメとキメを経て高鳴っていった「trot」……多彩な曲が一気に披露されて、再びインターバルを迎えた瞬間、観客の間から大きな拍手が起こった。
「「水泡」であんなに手が挙がったのは初めてです。ありがとうございます。今日でメジャーデビューしてから1年くらい。2ndシングルの発売が決まりました。1月30日です。先程やった「trot」が初めてCDにカップリングで入ります。俺たちが高3くらいの頃にデモCDでは出してたんだけど。次の曲も10代の時の曲です」、寺口のMCを経てスタートした「傾き者」。どこか寂しげなメロディを通して、やるせない感情が伝わってくるのが独特。続いて披露された「夢想家」は、ピアノで彩ったノスタルジーを誘うメロディが観客を恍惚とさせていた。
清らかなムードを漂わせた「低迷」の後は、急展開が待っていた。「革命」のイントロが奏でられるや否や、観客の間から起こった激しい手拍子。弾いていたギターをスタンドに置き、寺口がハンドマイクで歌い始めると、大合唱も沸き起こり、熱気がすさまじい勢いで広がった。その後も「劣等」「E.G.B.A.」「青写真」「アイドル」……強力なナンバーの数々が連発されて、ステージ上のメンバーたちも観客も、すっかりトランス状態。このバンドのアグレッシブな面が凝縮された場面の連続であった。
「逃げ出したくなる重圧みたいなものは久々というか、初めてに近い感じで。でも、なんとかこうやってステージに立てました。本当に幸せな気持ちになれました。どうもありがとうございます。この怖さを掻き消そうと最初は必死だったんだけど、怖いままここに立ってやろうと。大げさに言うと、今まで生きてきた24年間の全てを懸けてここに立とうと思いました。なんだかんだバンドを8年、9年やってるので、いい意味でも悪い意味でもライブってものに慣れてくるんですよね。でも、こうして集まってくれる人とか、今日ここに来られなかったけどいつも聴いてくれている人がいるって、すごいことなんだなと思いました。こんなバンドですけど、目の前にいる時は絶対に幸せにします。これからもよろしくお願いします。ずっと来てください」――想いを語った後、大島のギターを伴奏にして歌い始めた寺口。カワイと福島の演奏もすぐに合流し、響きわたった「故郷」の温かいメロディが、本編を穏やかに締め括った。
アンコールで「sunday afternoon」が届けられた後の寺口のMCは、グッとくるものがあった。「渋谷という街、来るだけですごく疲れませんか? 群馬県民の俺からするととんでもない異次元ですよね。でも、いつの間にか来るのにも慣れてきて、都会人の中に溶け込んでしまったような感覚があるんです。自意識過剰かもしれないけど(笑)。こんな街でも、こうやって居場所があるっていうのは、本当に幸せなことですよ。俺は音楽をやってる内は、この街に来続けると思う。いつでも待ってます。そして待っててください、Ivy to Fraudulent Gameでした」――そして彼がギターを弾いて歌い始めたラストの曲は「error」。《あの青に満たされて これで良いと思った あの青に乱されて 描けない》という大合唱が沸き起こった瞬間、ステージ上の4人は嬉しそうな表情を浮かべていた。
濃厚な空気、風景、物語が全曲に宿っていたこのライブは、五感をあらゆる角度から刺激してくれる独特な肌触りであった。全身で彼らの音楽を受け止めていると、各曲が一層深く胸の奥にまで迫ってくるような感覚になったのも印象的だった点だ。Ivy to Fraudulent Gameがなんとなく気になっている人は、絶対にライブに行った方がいい。全国9ヶ所を巡る『“Carpe Diem”Tour』が来年の2月から3月にかけて行われるが、このツアーでも彼らは素晴らしい演奏を届けるに違いない。
【取材・文:田中 大】
【撮影:Yusuke Satou】
リリース情報
Parallel
2018年09月26日
ビクターエンタテインメント
02. error
03. sunday afternoon
セットリスト
『Parallel』 release tour
2018.12.06@SHIBUYA CLUB QUATTRO
- 1. 最低
- 2. 徒労
- 3. 水泡
- 4. she see sea
- 5. Parallel
- 6. Dear Fate,
- 7. trot
- 8. 傾き者
- 9. 夢想家
- 10. 低迷
- 11. 革命
- 12. 劣等
- 13. E.G.B.A.
- 14. 青写真
- 15. アイドル
- 16. 故郷 【ENCORE】
- EN-1. sunday afternoon
- EN-2. error
お知らせ
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Ivy to Fraudulent Game “Carpe Diem” Tour
2019/02/02(土)新潟CLUB RIVERST
2019/02/03(日)仙台CLUB JUNK BOX
2019/02/10(日)札幌cube garden
2019/02/16(土)高松DIME
2019/02/23(土)福岡BEAT STATION
2019/02/24(日)広島CAVE-BE
2019/03/02(土)大阪BIGCAT
2019/03/03(日)名古屋CLUB QUATTRO
2019/03/10(日)新木場STUDIO COAST
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。