Anly、Shibuya eggmanで祝した特別な日『Anly 22nd Birthday Live~んふふ!』
Anly | 2019.02.12
今年もまたAnlyのBirthday Liveが渋谷のeggmanで行われた。この1月20日でAnlyは22歳――。20歳のBirthday Liveも21歳のBirthday Liveもeggmanで行われ、つまりその場所でお祝いするのが毎年恒例となったわけだが、同じ場所であるからこそ尚更、1年で彼女がどのように成長し、アーティストとししてどのように進化を遂げたかが目に見えてわかるというもの。また、誕生日になると帰ってくる、いわば第2のホームのような場所でもある故、Anlyがツアーのときよりもリラックスしながら演奏して歌っているのも確かなことだろう。
ぎっしり埋まった満杯の会場。黒のAnly Tシャツ(ポケット付きなのが気に入っていると話していた)とデニムに赤いスニーカーというラフなカッコでステージに立ったAnlyがこの日のオープニングに選んだのは、20歳のBirthday Liveのときに書かれた「Free Bird」だ。昨年、JTA(日本トランスオーシャン航空株式会社)のCMソングに起用されたが、音源としては未発表で、こうしてライブでフルで聴けるのがファンには嬉しいもの。《新しい扉を開けて 羽を広げ飛んでいこう》と歌われるその歌詞は新年の始まりにも相応しく、またループペダルを駆使した演奏が最大限に効力を発揮する曲であるなとも思えた。歌い始めて彼女はたくさんの観客を見ながら笑顔に。1曲目からこんなに明るい笑顔を浮かべるのは、やはりやり慣れた場所であることと、これがファンたちとの親密な関係を築けているBirthday Liveであることが大きいのだろう。「Hello Hello」という繰り返し部分を「一緒に歌ってください!」とみんなに言ってシンガロング。1曲目にして早くも一体感が生まれ、あたたかな空気が会場を満たした。続いて「新曲です!」と言って、「Summer Time Secret」と題された曲を。夏向きの陽気な曲だった。
「ソールドアウト、嬉しいです。いえ~い! 今日でトゥエンティトゥーです! 今日はBirthday Liveなので、何しても許してもらえるんです(笑)」。そんなふうに話してからイントロ部分をループさせ、つい先頃スタジオライブヴァージョンの新しいMV(ちょっぴりセクシーで大人っぽい感じが印象的だった)も公開された「Moonlight」を。続く「DREAM ON」は、音源はトラップ的なあり方でどこか気怠さもあったものだが、ライブとなれば言葉の強調のさせ方も当然異なり、特に後半のラップ部分の「大切なのはお金なんかじゃない 一緒に夢を見れることなんじゃない?」というフレーズに彼女の思いがこもっているように感じられた。
ギターをチェンジすると、Anlyはみんなに「楽しんでますか?」と呼びかけ、そして次の曲を紹介するにあたり、こんなふうに話した。「私には家族の歌が多いんですけど、次も家族の歌です。今日、母からラインが来て、“誕生日おめでとう”って。“お母さん、生んでくれてありがとう”って思いました。あのお母さんから私は生まれてきたのかーって思いますね(笑)。私にはもうひとり家族がいて、次の曲で(その人と)一緒にお祝いできたらと思います」。そうして1stアルバム『anly one』に収録されたフォーキーな「レモンティー」が歌われたのだが、正直、自分はというと鈍いことにこのAnlyのMCでやっと気付いたのだった。そう、この曲が「北斗七星」と同じように亡き兄を思って書かれたものであることを。そのことをこれまでのライブで彼女が明かしたことがあったのかなかったのかわからないが、とにかくそう思って聴いたらAnlyの澄んだ高い声が尚更胸に沁みた。
「ここで私の親友がかけつけてくれたので呼びたいと思います。私の親友、Mahina~!」。Anlyがそう紹介すると、サングラスをかけたMahinaがステージに登場。Mahinaは昨年8月に活動をスタートさせた女性シンガーで、その名前はハワイ語で月の光を意味するそうだ。Anlyがギターを弾き、自身のミニアルバム『mahina & the sun』から「Eyes」を歌うMahina。独特の歌声にはいい意味での揺らぎがあって、とても魅力的だ。その曲を歌い終えると「思っていた以上に(会場のムードが)あたたかい感じで驚きです」と話す彼女。そしてAnlyが一旦ステージを去ると、「私がどん底にいるときに手を差し伸べてくれたのがAnlyちゃんでした。太陽みたいな方だと思って本当に感謝してます」と話し、じっくりとバラード曲「You are my all in all」を歌った。また、「もう一曲、Anlyちゃんと一緒にやりたいと思います」と彼女が言い、再登場したAnlyが「実はふたりで年末くらいに曲を作ったんですよ。すごくいい曲だよね? リリースの予定はまだないんです。渋谷にピッタリの曲」と話して「am 4:00」と題された軽やかな共作曲を披露。仲よしのふたりの息はとても合っていて、このような特別なコラボレーションを観ることができるのもBirthday Liveならではだなと思った。
Mahinaがステージから去ると、Anlyはここでまたも新曲を初披露。「愛情不足」と題されたバラードだ。そして「さあ、ここからもうたいへんだよ。今日は好きなことをやらせてもらえて幸せです。本当にありがとう」と言って、熱っぽく「FIRE」を。ザクザクと弾いたギターをペダルでループさせ、さらにはギターを打楽器のように叩いてトラックを作り、歌をのせる。「オー・オー」と歌われるところは観客とシンガロング。会場の温度がグンと上昇した。その熱さをキープしたまま、「私たちは死なないって曲です!」と言って、またまた新曲「We’ll never die」を力強く披露。そして本編のラストは激しくギターを叩いて「エトランゼ」を。「タオルを回せ!」の掛け声と共に観客みんなが持っていたタオルをぐるぐる回し、レゲエで言うところのヘリコプターの状態に。完全なる一体感。歌い終えるとAnlyは「最高の誕生日でした。どうもありがとう!」と言ってステージを去った。
当然、鳴りやまないアンコール(=Anlyコール)。ステージに戻ってきたAnlyが「ちょっと遊ばせてください」と言ってギターを弾こうとするものの、音が出ない。「あれ? 音がこないな」と彼女が不思議がっているところに、サプライズ。マネージャー氏がケーキを運んでくると、観客たちから自然に「♪ハッピ・バースデイ・トゥ・ユー」の合唱が起きたのだ。何が起こったのか理解したAnlyはケーキの蝋燭の火を吹き消すと、「嬉しい。私はみんなの誕生日をこんなふうに祝えないので、毎日一回、心のなかでお祝いします」。そう言ったあとクイーンの「ウイ・ウィル・ロック・ユー」を歌い始め、その繰り返し部分をみんなでシンガロング。Anlyは大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』のフレディよろしく「ウェンブリー!」と叫んだりもしながら湧かせていた。そして「今日はめいっぱい楽しませていただきました。最後に私が助けられた曲を歌って終わります。でもまたすぐに会えるでしょ?」と言い、5月からスタートする全公演ループ・セットでの全国ツアー『Anly“Loop Around the World” -Track 2-』の開催を発表。そのあと美しいバラード「Venus」を熱唱した。ギターとループペダルだけでありながら、その歌はスケール感を有し、どこまでも広がる様を感じさせたのだった。
予定ではここで終わるはずだったが、その熱唱から感動を得た観客たちの拍手と声は収まらない。ということで、予定外のダブルアンコール。Anlyは「じゃあ、“カラノココロ”か“笑顔”のどっちかを歌って終わろうと思うんですけど、どっちがいい?」と観客たちに問いかけ、この日は「笑顔!」と答える人が圧倒的に多かったため、最後にしっとりとその「笑顔」を歌って22歳のBirthday Liveは幕を閉じた。
こうしてまた全曲ギターとループペダルで音を作りながら、膨らみを持ったライブを見せたAnly。昨年のツアー「Anly“LOOP”Around the World~Track1~」はループペダル・セットだけで16公演行ない、その成功もあってより自信をつけたのだろう。冒頭に書いたようにこの日の彼女はリラックスしてライブを楽しんでいるようだったし、余裕のようなものも感じとれた。だが振り返ってみれば、このように全編ループ・セットのライブを本格的に行うようになったのは1年前。まさに2018年のBirthday Liveからだったのだ。つまりたった1年でこれほどまでにAnlyはループ・セットの演奏を自分のスタイルとして消化し、これほどまでにライブ・アーティストとしての著しい進化を遂げたわけである。実際彼女はステージの上で、以前よりずっと開かれた心持ちで歌っているように見えるし、ライブ運びの自由度も増している。また新曲も数多く披露されたわけだが、曲作りにおける自由度もまたグッと高まっているように感じられた。そうして驚くほどの速度で進化を遂げているAnlyは、この1年でどんな物語を、どんな景色を、僕たちに見せてくれるのだろう……。「Anly“Loop Around the World” -Track 2-」の開催含め、期待は高まるばかりだ。
【取材:文:内本順一】
リリース情報
お知らせ
Anly“Loop Around the World" -Track 2-
05/02(木・祝) 福岡・INSA
05/19(日)兵庫・神戸VARIT.
05/25(土)宮城・仙台LVE HOUSE enn 2nd
06/15(土)大阪・梅田BananaHall
06/16(日)京都・someno kyoto
06/22(土)東京・渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
06/23(日)愛知・伏見JAMMIN’
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。