向井太一 誕生日を記念したスペシャルライブ『27』ビルボードライブ東京公演
向井太一 | 2019.03.14
昨年リリースしたアルバム『PURE』も好評のシンガーソングライター、向井太一。アルバムのリリースツアーに続いて開催されたのが、東京・大阪のビルボードライブでの単独公演『27』だ。タイトルどおり、27歳のバースデーを記念したライブ。いつものライブハウスでの公演とは一味もふた味も違う雰囲気の中で彼の歌に酔いしれる、スペシャルな一夜となった。ここではその東京公演、3月7日・ビルボードライブ東京でのライブをレポートする。
ライブに先立って「ライブ閑話」の動画インタビューにも登場してもらった様子はこちら。
ゴージャスな空間で観客それぞれが飲み物や料理を前に思い思いの時間を過ごす中、バンドメンバー(ドラムの山下賢、マシーンのGeorge、そしてピアノの半田彬倫)の待つステージに登場した向井は華やかなフリルシャツ姿。すぐ近くの客席に語りかけるように歌い始めたのは「リセット」。伸びやかな歌声が空間を心地よく包んでいく。「向井太一です、楽しんでいきましょう!」という声とともにスタートした「FLY」ではマイクを手に軽やかなステップ。向井の求めに応じて広がるハンドウェーブに笑顔がこぼれる。
美しいファルセットを響かせる「Crazy」、ニューウェイブなロックナンバー「Haters」。歌声もさることながら、ステージ全体を使って客席を盛り上げ、全身で感情を表現するパフォーマンスこそ向井太一の真骨頂。客席の近さもあいまって、一気に会場の一体感が増していく。エンターテイナーとしての彼の才能を改めて実感する。ソングライターとして、シンガーとして、そしてパフォーマーとして。ステージ上の向井はすでにスターの風格だ。
バンドメンバーが一旦退場し、久しぶりの共演となったピアニスト・半田とふたりきりでのセッションでは、ジャズのスタンダード「バードランドの子守唄」でジャズを歌い続けてきた彼自身のルーツを表現し(「夢が叶いました」と向井)、さらに「Break up」を切なくエモーショナルに歌い上げると、続けてシンガーソングライター・iriの「会いたいわ」をカバー。デビュー前から向井の自主企画イベント「BDP」への出演などを通して親交を深めてきた盟友ともいえるアーティストの楽曲を情感たっぷりに披露する。半田の弾くグランドピアノの音色が歌とシンクロするようにテンションを上げ、まるでフルオーケストラのような音の広がりが生み出されていく。間違いなくこの日のライブのハイライトとなる名演だった。
戻ってきたバンドメンバーに「おかえり」と声をかける向井。「もっとユルくやろうと思ってたけど、意外にカチッとしちゃうね」と言うが、実際にはこの日のビルボードライブの雰囲気はどこまでもファミリアでフレンドリー。まるでプライベートパーティのような空気の中、「君にキスして」、そしてここ六本木を舞台にした「午後8時」とロマンティックなラブソングを続けて披露し、さらに「眠らない街」では力強いビートに肩を揺らしながらフェイクを決めてみせ、ミラーボールがきらびやかに回転する中歌われた「YELLOW」、とアーバンなソウルナンバー「GREAT YARD」ではオーディエンスに手拍子を求め、会場丸ごと70年代のディスコにタイムトリップさせてしまう。
グルーヴィーなひとときを経て、このライブに『27』というタイトルをつけた理由を語り始める向井。「インディーズデビュー作『24』を作ったときは24歳。いま27歳になろうとしていて、全然変わっていないなと。常に音楽に対して熱量をもって、愛情と感謝と、いろんな気持ちが入り混じって日々作っています。一応目標は立てているんですけど、目標ってゴールじゃないんだなって最近強く思います。満足することって、音楽人生で何もないんだなって感じる今日このごろです。たくさんの可能性が広がっていて、それを楽しみながら過ごしていきたいなと思いました」。そんな言葉とともに歌われたのが、アニメ『風が強く吹いている』のエンディングテーマとして書き下ろした最新曲「道」。一段とスケールを増したメロディと歌が心に響くミドルチューンだ。
「何も変わっていない」と彼自身は表現していたが、その楽曲の移り変わりを聴くかぎり、やはり向井太一というアーティストは変わり続けている。音楽性の幅は広がり、歌詞に刻まれる言葉も強くなっている。そしてそれを歌う彼自身の姿も自信に満ちあふれているように見えるのだ。本編ラストに披露したレゲエのリズムが気持ちいいナンバー「Pure」、そしてレゲエの神様ボブ・マーリーが生んだキラーフレーズ「Everything’s gonna be alright」を引用したアンコールラストの「空」で、会場の天井を突き抜け、六本木の雨空に美しい虹をかけるような晴れやかなフィナーレを飾った向井の表情はどこまでも満足げに見えた。
日本国内のみならず、アジアなど海外でも積極的な活動を展開しつつある向井。「ライブ閑話」でも自分の音楽性はニッチだと謙遜していたが、ベースにあるのはコアなブラックミュージックだとしても、歌詞に込めたリアルな感覚と華やかなパフォーマンスはJ-POPの新たなスタンダードとなるポテンシャルを秘めている。何より、ピアノだけでも、フルバンドでも、どんなリズムでもどんなグルーヴでも乗りこなし自分の表現へと引き寄せるそのセンスのよさ、そしてシンガーとしての能力に目をみはるような夜だった。
【取材・文:小川智宏】
【撮影:Kenji Kitazato】
リリース情報
PURE
2018年11月28日
TOY’S FACTORY
01.Secret (Co-Produced by BON3AI)
02.Crazy (Co-Produced by BON3AI)
03.Break up (Co-Produced by ☆Taku Takahashi)
04.Haters (Co-Produced by mabanua)
05.Agony (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
06.Answer feat. KREVA (Co-Produced by 蔦谷好位置)
07.リセット (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
08.午後8時 (Co-Produced by grooveman Spot)
09.ポートマン (Co-Produced by Shingo.S)
10.Pure (Co-Produced by 高橋海)
11.Ego (Co-Produced by Chocoholic)
12.Gimme (Co-Produced by grooveman Spot)
Bonus Track. Siren (Co-Produced by tofubeats)
02.Crazy (Co-Produced by BON3AI)
03.Break up (Co-Produced by ☆Taku Takahashi)
04.Haters (Co-Produced by mabanua)
05.Agony (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
06.Answer feat. KREVA (Co-Produced by 蔦谷好位置)
07.リセット (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
08.午後8時 (Co-Produced by grooveman Spot)
09.ポートマン (Co-Produced by Shingo.S)
10.Pure (Co-Produced by 高橋海)
11.Ego (Co-Produced by Chocoholic)
12.Gimme (Co-Produced by grooveman Spot)
Bonus Track. Siren (Co-Produced by tofubeats)
セットリスト
『27』
2019.3.7@Billboard live Tokyo
- リセット
- FLY
- Crazy
- Haters
- Lullaby Of Birdland
- Break up
- 会いたいわ
- 君にキスして
- 午後8時
- 眠らない街
- YELLOW
- GREAT YARD
- 道
- SLOW DOWN
- Pure
- 24
- 空
お知らせ
■ライブ情報
ASIA TOUR 2019
台湾公演:03/22 THE WALL TAIPEI
台湾フェス:03/24 メガポートフェス
北京公演:03/29 疆シン酒
深セン公演:03/30 HOULIVE深セン
上海公演:03/31 ModernSkyLAB上海
韓国公演:04/06 HANATOUR V-Hall
GREENROOM FESTIVAL’19
05/25 横浜赤レンガ地区野外特設会場
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
ASIA TOUR 2019
台湾公演:03/22 THE WALL TAIPEI
台湾フェス:03/24 メガポートフェス
北京公演:03/29 疆シン酒
深セン公演:03/30 HOULIVE深セン
上海公演:03/31 ModernSkyLAB上海
韓国公演:04/06 HANATOUR V-Hall
GREENROOM FESTIVAL’19
05/25 横浜赤レンガ地区野外特設会場
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。