須田景凪『TOUR 2019 ”teeter”』恵比寿LIQUIDROOM
須田景凪 | 2019.04.24
ティーンの音楽ファンの間で絶大な人気を誇る須田景凪(すだけいな)。ボカロP、バルーンとして大ヒット曲「シャルル」など人気を誇る新しい才能だ。大人はまだ知らない存在だが、大人をも魅了する深みのある世界観を解き放つ。3度目となるツアー、全公演ソールドアウトとなった『須田景凪 TOUR 2019 "teeter"』の千秋楽、恵比寿LIQUIDROOM公演を目撃した。開演前、会場に入った瞬間に感じた湧き上がる高揚感、超満員のフロアは“今か今かと”熱気でいっぱいだ。
まず、キーワード“teeter”の文字がスクリーンに映し出され、バンドメンバーによるイントロダクションからスタート。シャープなギターが心地いい「farce」から幕を開け、続くは1stアルバム『Quote』を中心に「街灯劇」、「idid」、「鳥曇り」など、ソリッドかつグルーヴィーなナンバーをアグレッシヴに繰り広げていく。須田は、ゆっくりとオーディエンスを見渡し「すごい人ですね。ありがとうございます。今日を楽しみにしていました。いい夜にしましょう!」と語りかける。
バンドメンバーには、モリシー(G / Awesome City Club)、雲丹亀卓人(B / Sawagi)、矢尾拓也(Dr / ex. パスピエ)を迎え。ギターカッティングが気持ちいい軽快かつ安定感あるサウンドが展開されていく。
ツアーテーマは2019年1月16日にリリースした6曲入りEP『teeter』をフィーチャー。映像にてサウンドと呼応するように、「Cambell」では雨、「シックハウス」では揺れる花束、「レソロジカ」では花束を持って歩く人と、物語の断片が投影されていく。
須田景凪名義でのシンガー・ソングライターとしてのキャリアは2017年から。まだまだライブ経験は多くはないが、前回のライブと比較しても表現力の進歩を確認できた。その本質的な魅力とは、心に突き刺さる歌えるメロディー。片時も心を離すことのない、中毒性の高い演奏表現。そして、絵の見える抒情的なコトバのチカラに他ならない。MCに耳を傾けると、元々は内向的な性格なんだと思う。しかし、目の前に集まったオーディエンスのパワーになんとか音楽で答えようとする真摯な姿が伝わってくる。メジャーデビュー過渡期であるがゆえの、表現しきれないもやもや感と、そのもやもや感すら吹き飛ばす熱量あるエネルギー。初期衝動のパワーを感じられた一夜だ。
何といっても注目は、大ヒット曲「シャルル」の存在だ。『2018年JOYSOUNDカラオケ年間ランキング 10代』において、総合で1位を獲得した影響力を持つ。「知ってる人は一緒に歌ってください」と含みのある一言によって、フロアでは合唱が起こった。続いても疾走感溢れるビートが感情を高ぶらせる人気曲「パレイドリア」にオーディエンスが熱狂する。
印象的だったのは「いろんなインタビューでよく“須田さんはどんなアーティストになりたいか?”とか“野望は何ですか?”とか尖った質問をされるんですけど。……でも、そんな、めっちゃ売れてやりたいとか、でかい会場でライブをやりたいとかではなく。……昔から、曲を聴いてくれている人の日常に溶け込んだアーティストになりたいと思っていて。改めて、それがどんなことかを考えたんです。……結果、日常に溶け込んでいる存在ってのも大事なんだけど、僕の音楽が皆さんにとっての共通言語、コミュニケーションツールになったら嬉しいなって最近強く思っています」と語っていた一言だ。
言葉を大事に選びながら長めにトークは続く。「ここにいる皆さんが“今日、須田っていうヤツのライブに行ってきたんだ”と誰かに話したときに、ピンと来ない人がいるというのが申し訳なくて……。考え過ぎかもしれないけど、そんな時でも共通言語になれるようにいい曲を書いていいライブをいっぱいやって、あとは……徳を積むんで(笑)、これからもよろしくお願いします」。そして、そんな優しい空気感にぴったりの「浮花」をフロア中に響かせてくれた。
アンコールではバルーン名義でおなじみの人気チューン「メーベル」、そして「密」によって大団円を迎えていく。なお、追加公演 として、7月14日(日)には中野サンプラザホールでの公演も発表されている。
世代間を超える“共通言語となるヒット”が待たれた平成の終わり。2018年をターニングポイントに、その道筋が米津玄師らの活躍によって光明が見えてきたように思う。フェス・カルチャーの浸透以降、熱量高い火種が見当たらなかった音楽シーンだったが、須田景凪やEve、そして神山羊、majiko、Reolなど、シーンを一変しそうなチェンジメーカーの活躍によって新たなページが更新されようとしている。ボカロ文化発、次世代シンガー・ソングライターとして道を開拓する新鋭アーティストによる次世代ポップフィールド。まだ見ぬ世界を突き進む須田景凪は、楽曲力の高さで道を切り開いていきそうだ。
【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
【撮影:藤井拓】
リリース情報
teeter
2019年01月16日
ワーナーミュージック・ジャパン unBORDE
1. mock
2. パレイドリア
3. farce
4. Dolly
5. レソロジカ
6. 浮花
2. パレイドリア
3. farce
4. Dolly
5. レソロジカ
6. 浮花
セットリスト
須田景凪 TOUR 2019 ”teeter”
2019.4.7@恵比寿LIQUIDROOM
- 01.farce
- 02.街灯劇
- 03.idid
- 04.鳥曇り
- 05.Cambell
- 06.シックハウス
- 07.レソロジカ
- 08.morph
- 09.Dolly
- 10.mock
- 11.レド
- 12.シャルル
- 13.ポリアンナ
- 14.パレイドリア
- 15.浮花
- 01.メーベル
- 02.密
お知らせ
■ライブ情報
須田景凪 TOUR 2019 追加公演 "teeter"
7/14日(日) 中野サンプラザホール
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
須田景凪 TOUR 2019 追加公演 "teeter"
7/14日(日) 中野サンプラザホール
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。