teto 「ツアー2019 正義売買-seigi bye bye-」ファイナル TSUTAYA O-EAST
teto | 2019.07.09
ライブが終わって浮かんだのは「tetoがいてよかった」という素朴な感想だった。より丁寧にいうなら、「tetoのいる時代に生きていてよかった」だろうか。実際、いつの時代もそうであるように僕らの生きているこの時代もろくなもんじゃないし、tetoが歌っているのもそんなろくでもない時代の風景にほかならないのだが、そんな時代に、tetoと一緒にもみくちゃになって転げながら生きることは、きっと後々振り返ったときにとても眩しく見えるはずだ。そう、まさに「時代」という曲で「昔のあなたにはもう会えなくたって/あなたと居た事実が真実が何より美しいんだ」と歌われているように。
昨年来ライブの動員を増やし続け、初のワンマンツアーからわずか1年でここO-EASTをソールドアウトさせたteto。「ツアー2019 正義売買-seigi bye bye-」ファイナル。この日のフロアにも若いファンを中心にさまざまなお客さんが思い思いのファッションに身を包んで集結していた。Tシャツに短パン姿のパンクキッズがいると思えば、その横にはリュックを身体の前で抱えてじっとステージを見ている若者がいる。アホみたいに突っ走るパフォーマンスにあっけに取られている女の子がいれば、顔をくちゃくちゃにして歌いまくっているお姉さんもいる。彼ら彼女らを結びつけているのは、目の前でナイフを振り回すようにロックンロールを鳴らす4人組だ。「俺たちは強い!」「生きたい!」――アンコールで小池と観客のあいだで成立したのはそんな、あまりほかでは聞かない感じのコール&レスポンスだった。そのどうしようもなくむき出しで、どうしようもなく本音の言葉。tetoが多くの人を惹きつけるのは、そこに本気の生と実感があるからなのだと、改めて思った。
tetoのライブがいつもそうであるように、この日もステージ上には常にハプニングの予感が漂っていた。小池がサビを叫ぶように歌うところから始まった1曲目「高層ビルと人工衛星」(そういえば前回のワンマン、リキッドルームの本編はこの曲で終わったのだった)から、音源の何倍もの衝動性が爆発する。曲中さっそく小池がダイブを決めたその瞬間に、最高の夜は約束されたも同然である。何かを必死で手繰り寄せるように、何か遠ざかっていくものを掴みにいくような激しいライブ。最新シングル『正義ごっこ』からの楽曲「夜想曲」のサビのフレーズをお客さんに任せて笑顔を見せたかと思うと、次の瞬間には「闇営業がどうとか、人の不倫がどうとか、知ったこっちゃねえ! それより自分が朝起きられなかったり人とちゃんと話せなかったりするほうがよぽど事件じゃボケ!」と唾を飛ばしながら叫ぶ。超高速でぶん回される感情が、次々とオーディエンスの胸を射抜いていく。
ワンマンライブに臨む気持ちを「自分の部屋に友達を呼んでる感覚なんです」と表現していた小池。それは「おもてなし」というより「ただ一緒にいる」という形の愛情表現だと思う。「俺なりに楽しく生きているので、革命なんて起こさないでください」という言葉が物語るように、この世の中やこの人生の楽しさや嬉しさはもちろん、やるせなさやしんどさや怒りや悲しみもまとめて、小池は結局この世界を愛そうとしている人だ。「トリーバーチの靴」で山崎陸(G)と佐藤健一郎(B)がコーラスを叫び観客が絶唱するかたわらでスピーカーの上からフロアに向かって跳んでみせた瞬間や、「Pain Pain Pain」で鳴らした長いフィードバックノイズや、「溶けた銃口」でソロを弾く山崎を笑顔で見るその表情や、その他もろもろのシーンに、それが滲み出ている。鋭い言葉とシンプルなメロディ、そしてそれをハマっているのかハマっていないのかギリギリのところで音像化していくバンドのテンション。それらがすべて、本人の意志いかんにかかわらずばっちり外に向かって開けているものになっているのもそのためだ。フロアからは何度も合唱が起き、小池は何度もフロアにダイブし、そして真っ正直な言葉でフロアに語りかける。過去曲から最新シングルの楽曲、そしてさらなる新曲までを網羅したセット。その1曲1曲に刻まれているのは小池の生きた日々だ。それがライブで爆発することで、そこに集まったひとりひとりの生きる日々に重なる。「拝啓」からMCを挟んで、普通なエレキギターで弾くところを「今日はアコギな気がした」とアコースティックギターに持ち替えて歌われた「時代」、そして「光るまち」へと進んでいった本編のラストは、今ここに集まっていることの喜びを卒直に伝えていた。
アンコールではかねてから「宣言」していたとおり「15曲のアルバムが出せそう」ということ、そしてそれにともなって全国47都道府県ツアーを開催することが発表された。そしてポジティブな思いが溢れ出す「手」から「新しい風」へ。最後にはこの日もぶっ壊れるスレスレのテンションで突っ走るバンドをときに走り、ときに抑えながら支え続けていた福田裕介(Dr)も小池に促されダイブを決め、フロアもこの日の最高潮とばかりに盛り上がった――のだが、それで終わりではなかった。場内の明かりがついても手拍子をお送り続けるお客さんの前に、ダッシュで小池が戻ってくる。そしてギターを抱えて「そこで歌う!」とフロアの真ん中に突入したのだ。そうして歌われたのは「My I My」。みんなの歌う声が圧倒的で、小池の歌とギターはほとんど聞こえなかったが、そんなことはどうでもいい。こうやって「部屋に遊びに来た友達(仮)」と人生をシェアするのがtetoというバンドだし、小池を中心にお客さんの輪が何重にも重なっている美しい光景はそんな彼らの姿を思いっきり象徴していた。
【取材・文:小川智宏】
【撮影:馬込将充】
リリース情報
正義ごっこ
2019年04月24日
UK.PROJECT
2. ラムレーズンの恋人
3. 時代
4. こたえあわせ
セットリスト
ツアー2019
正義売買-seigi bye bye-
2019.6.30@TSUTAYA O-EAST
- 1.高層ビルと人工衛星
- 2.暖かい都会から
- 3.夜想曲
- 4.こたえあわせ
- 5.ラムレーズンの恋人
- 6.散々愛燦燦
- 7.トリーバーチの靴
- 8.ねぇねぇデイジー
- 9.Pain Pain Pain
- 10.溶けた銃口
- 11.夢見心地で
- 12.あのトワイライト
- 13.9月になること
- 14.コーンポタージュ
- 15.拝啓
- 16.時代
- 17.光るまち 【ENCORE】
- 1.手
- 2.新しい風 【DOUBLE ENCORE】
- 1.My I My
お知らせ
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2019/07/07(日)新宿LOFT
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2019/07/10(水)静岡UMBER
2019/07/11(木)池下CLUB UPSET
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2019/07/13(土)心斎橋Music Club Janus
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2019/07/14(日)北海道いわみざわ公園
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2019/08/25(日)長崎市稲佐山公園野外ステージ
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2019/09/15(日)神奈川県・川崎市東扇島東公園・特設会場
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2019/09/29(日)山梨県・山中湖交流プラザ きらら ARTISTS
ボロフェスタ2019
2019/10/25(金) , 26(土) , 27(日)
京都KBSホール・CLUB METRO
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