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チリヌルヲワカ 「During The Night Tour 2019」ファイナル

チリヌルヲワカ | 2019.08.01

 10作目『太陽の居ぬ間に』を携えてのツアー「During The Night Tour 2019」ファイナルを、代官山UNITで迎えたチリヌルヲワカ。全国10カ所を巡ったこのツアーがスタートする直前に、阿部耕作(Dr)が年内で脱退することが発表されたため、このツアーが一段と特別な意味を持っていたことは言うまでもない。この後のライブ予定が告知されているとは言え、もしかしたら3人でのライブを見るのはこれが最後になるのでは、と落ち着かない気持ちで会場に足を運んだ人も多かったに違いない。そんな空気を受け止めながらもチリヌルヲワカは、新作を経て更に進み続けている3人を堂々と見せつけるライブで満杯のオーディエンスを楽しませた。

 オープニング・ナンバーは新作でも1曲目の「トライアングル」。赤いスポットライトに浮かび上がるユウ(G,Vo)が鳴らすブリティッシュ・トラッド系のバンドを思わせるギター・フレーズに空気が引き締まる。リズム隊のどっしりとしたビートに乗り、ユウが伸びやかなハイトーンで「私の歌声が聴こえていますか」と歌うと、フロアから拍手が起こった。そこへ阿部がシンバルでカウントを入れ7作目のリード曲「ショウタイム」へ。新曲の緊張感をほぐしながら「空想都市」が続くと、腕が上がり掛け声がかかってフロアの熱気は一気に高まった。

 この日最初のMCは、ユウが英語のツアータイトルを噛んでしまい自ら失笑する始まりだったが、「3人の集大成と言えるアルバムができました。それをお届けして全国を回って、ファイナルを迎えました。最後まで楽しんでってください」と、堂々とコメント。このMCで和んだフロアは、最新作からの「ジオラマ」もお馴染みの曲のように盛り上がり、「it」は“一兎、二兎”とサビをシンガロング。ユウも間奏ではステージに置かれたお立ち台に登ってギターを弾き、更にオーディエンスを沸かせた。ユウの歌がテンションを上げた「念じる」を終えると一息入れ、MCタイムに。

 「今回のアルバム・タイトル『太陽の居ぬ間に』が示した通り、今回のツアーはほぼ全公演悪天候で、全く太陽が居ない(笑)。こんなことになるとは思ってなかったんですけど、ちょっと責任感じます。でもツアーとしては、これが演出になったんじゃないかと思って、悪くないかなと思っています。そんなニュー・アルバムの中からやってみたいと思います」

 イワイエイキチ(B)のベースが響いてスタートした「因果関係」は、サーフ・ロック風のギター・リフが歌とともに変化していくユウらしい曲。程よいテンポに歌いながら体を揺らし、気持ちよさそうに間奏を弾いていた。そこからファースト・アルバム収録の「苔の生したこんな代は」に突入した途端、フロアの熱気がまた上がった。初期の曲だがライブで演奏するうちに練り上げたところもあるからだろう、新曲と同じように現在の彼らのものとなって響いてくる。それはその後に続いた「松の木藤の花」「印-しるし-」も同様で、サビを3連にしてメリハリをつけるユウ独特の歌に歓声が送られ、その声にユウとイワイが代わる代わるお立ち台でソロを弾き応えていた。

 しばらくステージが暗くなり一息入れたところで、新作の表題曲「太陽の居ぬ間に」の落ち着いたイントロが響いた。方向感覚を失うような長いトンネルを走っている時のトランシーな感覚を、戻れない過去から未来へ進むしかない時間軸に重ねたこの曲は、希望をつなぐのでもなく諦めるのでもない、ユウ独特のセンスに溢れている。ユウ自身も気持ちが入るのだろう、落ち着いた様子で歌う歌が心に沁みてくるようだった。その流れを受けた「連鎖」をシンプルなリフを刻みながらユウは歌い、「化 ス」では再び新曲らしい緊張感も持ちながらユウらしいシニカルさを込めた歌が存在感を増した。この曲ではイワイのベースもまた存在感を発揮し、催眠的な低音を響かせドラマチックな演奏に彩っていた。

 「ここでメンバー紹介をしたいと思います、ドラム、阿部耕作!」と名を呼ぶと阿部とイワイが軽くジャム・セッションを始め、ユウも加わる。ひとしきり演奏して「ベース、イワイエイキチ!」と呼ばれたイワイは「なんだこのやろう」とひょうきんにすごんでみせ、フロアを見渡して「去年より増えたんじゃね?ありがとう。」「ボーカル&ギター、な・か・し・ま・ゆー・みー!」。それに応えてユウは「ここまでやってこれて、良かったと思ってるんですけど。私たちはいろんな時代を経て、“ぼっちゃん”時代(ぼっちゃんこと宮下治人(G)在籍時の初期)、“ナッキー”時代(ナッキーこと坂本夏樹(G)在籍の2011~2016年)を経て、今。何時代?スリーピースの。名前つけたい」と言われて阿部が「そうすねー、三角時代?」と適当に答え、「トライアングル?意味わかんない」とユウ。そして「どの時代もそれぞれ良さがあったと思うんですけど、どの時代もチリヌルヲワカの音楽を皆さんに届けたい一心でやって来ました。それはこの先も変わらないと思います。皆さんにこのまま見届けてもらえたらと思っています」

 前の晩に眠れずこのことを考えたと、丁寧に語ったユウ。この日のセットリストが、それぞれの時期の曲を新曲と並べて演奏していた意図がわかった気がした。4人編成だった時期の曲を3人になって演奏するのに、彼らは様々な試行錯誤をして現在の形にして来た。冒頭でユウが言ったように『太陽の居ぬ間に』は、そうやって進んで来た3人が新たに得た手応えを詰め込んだ作品なのだろう。改めて「太陽の居ぬ間に」の歌詞を噛み締めた。

 大切なことを言い終えて気持ちがほぐれたのか、阿部のシンバルで曲に入った「ヨスガ」は歌にも演奏にも気合いが入ったようだった。間奏でユウはギターを肩に乗せて弾いて見せ、オーディエンスから大きな歓声を受けた。続くポップな「はなむけ」ではフロアが更に揺れ、気持ちのいいコール&レスポンスにイワイがお立ち台で応えた。オルタナティブ・ロックの強さをこのバンドらしいアンサンブルで聴かせる新曲「前ストロ」から「天邪鬼」「ホワイトホール」と初期の曲が続きフロアの熱気がピークに達したところで、ドラマチックな「バッドエンディング」へ。スケール感のある演奏を一丸となって響かせる3人の呼吸が半端なく、お互いを見やりながら最後まで音を響かせた。

 本編で新作の曲をやりきった彼らは、「マシーン」「ヒトダカラ」「アヲアヲ」「甲と乙」で2度のアンコールに応えた。最後のギターソロでお立ち台に立ったユウは感慨深そうにフロアを見渡し、阿部は曲の終わりにベースドラムを力一杯連打し、その勢いで立ち上がった。3人が全力を尽くしたツアーは、フロアに満ちた熱気の中で幕を閉じた。

 この日に告知されたアコースティック・ライブなど、すでに秋の予定がアナウンスされている。ユウが言ったように、この先の彼らを見届けたいと思う。

【取材・文:今井智子】
【撮影:清水ケンシロウ】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル チリヌルヲワカ

リリース情報

太陽の居ぬ間に

太陽の居ぬ間に

2019年05月10日

ヤマミチレコード

01.トライアングル
02.バッドエンディング
03.前ストロ
04.因果関係
05.太陽の居ぬ間に
06.ジオラマ
07.化 ス

セットリスト

During The Night Tour 2019
2019.7.20@代官山UNIT

  1. 01.トライアングル
  2. 02.ショウタイム
  3. 03.空想都市
  4. 04.ジオラマ
  5. 05.it
  6. 06.念じる
  7. 07.因果関係
  8. 08.苔の生したこんな代は
  9. 09.松の木藤の花
  10. 10.印-しるし-
  11. 11.太陽の居ぬ間に
  12. 12.連鎖
  13. 13.化 ス
  14. 14.ヨスガ
  15. 15.はなむけ
  16. 16.前ストロ
  17. 17.天邪鬼
  18. 18.ホワイトホール
  19. 19.バッドエンディング
【ENCORE】
  1. 01.マシーン
  2. 02.ヒトダカラ
【W ENCORE】
  1. 01.アヲアヲ
  2. 02.甲と乙

お知らせ

■ライブ情報

SOLE CAFE presents
チリヌルヲワカ~アコギな意図’19~

08/25(日) 京都紫明会館

LOFT HEAVEN FIRST ANNIVERSARY
チリヌルヲワカ~アコギな意図’19~

09/05(木) 渋谷 LOFT HEAVEN



つしまみれ20周年20本ツアー
08/24(土) 名古屋CLUB Rock’n’Roll
つしまみれ / チリヌルヲワカ

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10/27(日) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya 2/3
チリヌルヲワカ / MASS OF THE FERMENTING DREGS / Lucie,Too

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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