一夜限りのワンマンライブで提示された、Haloの歩みと現在地、そして未来。
Halo at 四畳半 | 2019.08.06
Halo at 四畳半が6月5日にリリースした最新ミニアルバム『from NOVEL LAND』を携え、一夜限りのステージとして開催した「NOVEL LAND LANDING」。会場は東京・お台場のZepp DiverCity(TOKYO)で、バンド史上最大規模のワンマンライブとなる。コズミックなオープニングSEが鳴り響き、場内のミラーボールが仄かな光を乱反射するなか、渡井翔汰(Vo/Gt)、齋木孝平(Gt/Cho)、白井將人(Ba)、片山僚(Dr/Cho)が姿を見せる。詰め掛けたオーディエンスから喝采を浴びる4人である。
のっけから雄大な視界の広がりを喚起させるロックアンサンブルが立ち上がり、新作『from NOVEL LAND』から「スイング・バイ」が繰り出されるオープニング。スイング・バイとは天体の運動と引力を利用して宇宙空間を移動する専門的な技術のことだが、渡井はこの曲の中で、果てしなく彷徨う人生に力強い意味付けをもたらしてゆく。1コーラス目を歌ったあとに「Zepp、会いたかったよ!!」と笑顔で呼びかける表情も、オーディエンスとの間の引き付け合う力を感じているからだろうか。幻想的な浮遊感を描き出してゆくバンドのサウンドスケープも素晴らしい。2曲目には2017年のミニアルバム『Animaplot』から「ステラ・ノヴァ」を鮮烈な響きで繰り出し、宇宙規模のイマジネーションを繋ぐ流れである。
「これから先には何があるんだろうか。歩いて行くのもいいけど、どうせなら空飛んで行こうぜ!!」と呼びかけ、豪快なコンビネーションで放たれるのは「飛行船」。渡井は、確かな熱量をもった口上のように、オーディエンスを想像力豊かな歌の世界に誘い込もうとする。Halo at 四畳半のロックは実にエモーショナルで躍動感に満ちているけれども、ファンはただその熱狂に身を委ねてライブの時間を過ごすというよりも、真剣な眼差しをステージ上に送り、何か大切なものを受け止めようとしている姿が、いつもながらに印象的だ。そういったオーディエンスの姿勢も、ライブのムードを特別なものにしているのだろう。
改めて挨拶する渡井は、「いろんな曲を引っ括めて、2019年最新型のHalo at 四畳半を、皆さんに体感していただきたいと思います!」と意気込みを告げていた。そう、これは単なる新作ライブではない。彼らは昨年のフルアルバム『swanflight』でメジャー進出を果たすよりも前から、文学的な感情表現と奥行きのあるメッセージを数多くの作品に込めてきたが、今回のライブでは例えば「天文薄明の街へ」と「夕映えの丘で」で少女の物語を続けて歌い、オーディエンスの想像力を掻き立ててくれる。それはさながら、いくつもの短編小説が折り重なって描かれる大作物語のようだ。オーディエンスはその一期一会の物語の中に飛び込むようにして、ここぞというところで高らかな歌声を上げる。
齋木が作曲を手がけた新作曲「スケイプ・ゴート」は、野心的なギターリフの推進力で突き進むロックナンバーだが、そんななかで炸裂する《塞がった扉から漏れ出す光だけを/信じて生きていけ/それが偽物と知ってしまったとしても/悟られずに》といった渡井節全開の歌詞がまた素晴らしい。彼はずっとこんなふうに、甘い気休めをかなぐり捨て、失敗や過ちをおかす人間の残酷な世界を生きるための歌を紡いできた。Halo at 四畳半のキャリアすべてを注ぎ込んでより大きな物語を描き、最新のサウンドとメッセージを届けるライブが、この「NOVEL LAND LANDING」なのである。
白井のベースがカウンターのメロディを奏でるようにしながら、じっくりと披露される「綻びの果て」のあとには、「水槽」と「リビングデッド・スイマー」が立て続けに披露され、息苦しい世界を泳ぎ渡る人々のシンパシーを誘う。CGアニメーションを背負って鳴り響かせる勇壮なロックサウンドも見事だ。そして美しく夢見心地な歌い出しからダイナミックに展開してゆく「アルストロメリア」は、オーディエンスの熱い歌声にも支えられ、濃密なコミュニケーションの時間が育まれてゆくのだった。
「どうだい、我々の新境地は。体感できてる!?」と楽しそうに告げ、メンバーにもMCを促す渡井。白井は、今回のライブに向けて彼のトレードマークである長髪を右側だけ編み込んできたことを語り、オーガニックレストランについて語る片山や、ボルダリングにはまっているという齋木は、それぞれの健康志向について話題を提供していた。渡井の新調したギターが、以前使っていたモデルとそっくりであることを見抜くオーディエンスに「すごいね!」と賛辞を送り、2本のギターを並べて見せたりもする。
ライブ後半は、ストレンジな曲調でありながらどこか優しい「怪獣とまぼろしの国」を経て、怒涛のスパートへと向かう。眩くギラギラとした「リバース・デイ」、そして畳み掛けられる「箒星について」「スプートニク」という熱いライブナンバーのなか、人間味溢れる思考を共有するロック体験は、他の何物にも代え難い。渡井は、学生時代に立ち上げたバンドはいい思い出になればいいとただ思いながらやっていたことや、次第に音楽が大切なものになって多くの人に支えられてきたこと、メジャーデビュー時には引き返せない道のりの怖さを乗り越えてきたことを語り、「月並みな言葉だけど、出会ってくれてありがとう」と告げる。そして「これからも、Halo at 四畳半をよろしくお願いします。俺たちの音楽は、いつでもあんたの味方だ!!」と言い放ち、「シャロン」の歌い出しをオーディエンスに委ねるのだった。
アンコールでは、「俺たちが歩いてきた道のりを歌っているような曲です」と紹介しつつ、新作『from NOVEL LAND』の最後に配置された「メイライト」を届けてくる。大ぶりなメロディのフックも、唐突に始まるスリリングなコンビネーションも見事に決まったパフォーマンスだ。今後、長い時間をかけて付き合っていきたいナンバーである。そして最後には“モールス”の大合唱にテープキャノンが放たれ、今回の美しいライブは幕を閉じた。9月からは、地元・千葉県佐倉市での追加公演も決定した2マンツアーが開催される。そこでは、どんな物語が紡がれるのだろうか。
【取材・文:小池宏和】
【撮影:落合由夏】
リリース情報
from NOVEL LAND
2019年06月05日
日本コロムビア
02.リビングデッド・スイマー
03.スプートニク
04.スケイプ・ゴート
05.夕映えの丘で
06.綻びの果て
07.メイライト
セットリスト
NOVEL LAND LANDING
2019.7.19@Zepp DiverCity(TOKYO)
- 1. スイング・バイ
- 2. ステラ・ノヴァ
- 3. 飛行船
- 4. 天文薄明の街へ
- 5. 夕映えの丘で
- 6. 朝を迎えに
- 7. スケイプ・ゴート
- 8. 春が終わる前に
- 9. 綻びの果て
- 10. 水槽
- 11. リビングデッド・スイマー
- 12. アルストロメリア
- 13. 怪獣とまぼろしの国
- 14. リバース・デイ
- 15. 箒星について
- 16. スプートニク
- 17. 悲しみもいつかは
- 18. シャロン 【ENCORE】
- 1. メイライト
- 2. モールス
お知らせ
Halo at 四畳半 2MAN TOUR ARK"WANDER LIGHTS"TOUR 2019
09/23(月・祝)札幌 COLONY
w/ LAMP IN TERREN (O.A)アルクリコール
09/28(土)福岡 Queblick
w/ PELICAN FANCLUB (O.A)atelier room
10/02(水)心斎橋 Music Club JANUS
w/ WOMCADOLE (O.A)ユレニワ
10/03(木)名古屋 ell.FITSALL
w/ Saucy Dog (O.A)postman
10/17(木)Sound Stream sakura
w/ サイダーガール (O.A)CULTURES!!!(ex.Damn Drive)
お茶の水大楽器祭り in ソラシティ
08/10(土)御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンター2F(渡井翔太のみ出演)
TREASURE05X 2019 ~RISING RESOLUTION~
08/12(月)名古屋市公会堂
GM+
08/23(金)なんばHatch
PassCode主催"VERSUS PASSCODE 2019″
08/25(日)名古屋 DIAMOND HALL
くさのねフェス2019
08/31(土)佐倉草ぶえの丘
PELICAN FANCLUB 2MAN SHOW 2019 “versus"
09/04(水)渋谷 WWW
TOKYO CALLING 2019
09/16(月・祝)渋谷 ライブハウス13会場
MEGA☆ROCKS 2019
10/05(土)仙台 ライブハウス11会場
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。