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日本最大級のライブサーキットイベント「TOKYO CALLING 2019」レポート第一弾!

TOKYO CALLING | 2019.10.02

 日本最大級のライブハウスサーキットフェス『TOKYO CALLING』が、大トリを務めた「忘れらんねえよ」の明日への活力を与えてくれるステージをもって大成功の中、その幕を閉じた。毎年その規模や会場、来場者数は拡大。今年は9月14日の新宿、15日の下北沢、16日の渋谷の39会場で開催され、全389組のアーティストが出演した。動員数は延べ約1万3千人。皆が各会場を楽しみ、各街を堪能した3日間であった。

 そんな『TOKYO CALLING』も今年で4年目。幸いにも初回より欠かさず参加させてもらってきたが、いよいよ同フェスがいい意味でブランド化し、それが確立し始め、あわせて「再会の地」「出会いの地」「成長確認の地」と、街毎にその役割や意義、特色がはっきりと別れ、表れだした印象を受けた。

 初日は新宿。こちらは13の会場にて全128のアーティストが出演した。これまではロフトが最大規模のキャパシティであったのだが、今回はそれよりも大きな会場としてBLAZEも加わり、より規模の大きなアーティストの受け皿も出来た。故に、これまで中堅と目されていたアーティストたちが、よりノビノビとライブが出来ていたようにも映った。

 そんな初日の新宿は、「さらに大きくなっての再会の場所」。世界有数の歓楽街歌舞伎町らしく、ここをゲートウェイに世界へと飛び出していくポテンシャルを有したアーティストが集っていた感がある。

ネクライトーキー
 まずはロフトバーでエモく合唱系のGENNARIを観て、続いてロフトに移動。塩入冬湖のソロ体制となった新生FINLANDSを観る。やさぐれでパンク度が上がった、その変貌具合に驚かされた後、BLAZEに移動。ネクライトーキーを観た。
 キメが多いぶん楽しみな部分がきた際の、キター(゚∀゚)ー!という感覚と、そこにノれたり、一緒に声を合わせるのが快感でもある彼ら。この日はほぼMCナシでガンガン音楽のみで攻めてくる。 メンバーひとりひとりが順に駆け現れ、各々が満場に向けて挨拶。そんな中、朝日(G.)のみ控え目にゆっくりとステージへ。マイペースとハイペースが同居したその活動や音楽性とも似た、実に彼ららしい登場だ。そんな朝日のギターに中村郁香(Key.)のシンセベースが乗り、1曲目の「許せ!服部」へ。のびのびとハッキリでキュートなもっさ(Vo.&G.)のボーカルはこの日も健在だ。対してフロアも彼らを熟知しているオーディエンスが盛り上がりを助力していく。続く「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」に入ると藤田(B.)の運指が生み出す躍動感が会場に横ノリを育んでいく。更にライブを邁進させた「オシャレ大作戦」ではカズマ・タケイ(Dr.)の怒涛のドラムソロも炸裂。盛り上がりに更なる油が注がれていく。
「こんにちはこんばんはネクライトーキーです。以上」ともっさ。この日のMCはこれオンリーであった。
「めっちゃかわいいうた」では、ドライブ感と更なるパーティ感に対して後半は急展開。そんなめまぐるしい展開にしっかりお客さんもついてくる。また、トロピカル性が呼び込まれた「こんがらがった!」を経て、「音楽が嫌いな女の子」では目まぐるしさとキュートとキッチュの強度もアップ。もっさのリリックに詰め込んだその情報量もマックスを記録した。そしてラストは「遠吠えのサンセット」が大団円に…とはもちろんいかず。変わらず最後まで会場をツンデレで引っ掻き回した。


超能力戦士ドリアン
 ACBでのFILTERで、彼ら独特のブレイブ感に満ちた場内交えてのシンガロングで妙にやる気と勇気を注入した後、再びBLAZEに移動。超能力戦士ドリアンを観た。
 キャパの拡大にバンドがどれだけ対応できるかも観る際の楽しみの一つな、この『TOKYO CALLING』。去年は下北沢の251での出演であった彼らの今年のキャパは、その際のざっと3倍増し。しかしきっちりと会場全体を巻き込み、しっかり隅々までノらせ楽しませていたのも印象深い。
 彼らはノンドラムにベースレス。それらは同期によって担われている。――はずなのだが、しっかりとセットされた無人のドラムキットにスポットライトが当たり、その不在の架空のドラマーがメンバーのやっさん(G.&Vo)と、 けつぷり(G.)を呼び込む。とは言え、まだおーちくん(Vo.&Dance)の姿は見えず、代わりに着ぐるみの恐竜が現れた。去年より着ぐるみもサイズアップしている。去年同様、「恐竜博士は恐竜見たことないでしょ」からライブを開始させた彼ら。着ぐるみの中からおーちくんが現れ、やっさん、けつぷりの左右のギターの間にはおーちくんという鉄壁のフォーメーションが揃う。そんな彼らの鋭いツッコミが交えられた歌がハッピーなサウンドと共に放たれたこの日。続く「焼肉屋さんの看板で牛さんが笑っているのおかしいね」では、打ち込みのビートにドライブ感のあるツインギターやギターソロも炸裂。鋭くシニカルながらもそれを愉快さで中和し伝える歌が場内のワイパーを育んでいく。 「より会場も大きくなったぶん、お客さんが集まるかが心配だった」とおーちくん。「こんなに集まってくれて安心した」と続ける。 テーマパークの列に並んでいる時のワクワク感とその刹那を秀逸に描写した「おいでよドリアンランド」ではジェットコースターソロも現れ、アトラクションに乗る前のあのワクワク感を蘇えらせてくれた。新曲を初披露した時のお客さんの反応をコミカルに描写した「新曲初披露はムズイ」、対してYouTubeで彼ら最大の再生数を誇る「ヤマサキセイヤと同じ性別」では、会場とのコール&レスポンスを交えしっかりと求心し合っていく。
「これからも必要とされ、また更に大きなステージに立てるバンドになるから」と、最後は自己紹介的ナンバ―「いきものがかりと同じ編成」が。「最後に自己紹介かよ!!」とのツッコミは置いておき、自身のメンバー構成と音楽性を歌に乗せて分かりやすく伝えてくれた。来年は更に大きなステージに立っているであろう彼らを想像したのはきっと私だけではなかったはずだ。


3markets[ ]
 再びACBに戻り、元グッバイフジヤマのメンバーからなる「愛しておくれ」を観覧。甘酸っぱさはそのままに完全に日本語パンク化し、お客さんもシンガロング大会となっていた現状の彼らのスタンスに驚き。その後、HOLIDAYへと移動。古くより活動し、孤高性の高い印象のある、3markets[ ] を久々に観覧した。痛いけど分かり合えそうな、優しそうな歌の数々を響かせてくれた彼ら。masaton.(Dr.)が生み出す力強くブレイブなラテンビートに乗せて、カザマタカフミ(Vo.&G.)による、嫌われたくない内心を張り裂けるような思いの強弱を込めて歌われる「レモン×」から彼らのライブはスタートした。同曲では金子セイメイ(B.)によるエモーションなソロも見られ、その雄姿とグルーヴに会場もグイグイ惹き込まれていく。続く「下北沢のギターロック」では、苛立ちと諦念の混じったバンドマンの表裏と内情をダイレクトに突きつけ、また、荒々しく激しいサウンドと対照的に諦念と冷めたような歌い方とトーンのコントラストも印象深い「僕はセックスができない」、そして、「タイムセール」では、カザマがハンドマイクにて歌唱。その歌内容はどこか「俺は安売りをしない!!」という彼らの長年の活動スタンスにも似た、高いプライドと会場への誓いや宣言にも響いた。また、「バンドマンの彼女」では、去っていった彼女と残されたものを抱きしめながら、空虚感はありながらも変われないという思いも込めて歌われた。
「TOKYO CALLINGを経て以来、他のサーキットに呼ばれるようになった」とカザマ。「自分たちにとって特別なサーキットフェス」と金子セイメイが続ける。疾走気味の8ビートに乗せて「拝啓、1メートル。」では半径1メートルの中で愛し愛され、愛されたいと歌う。躍動感のあるビートの中、「社会のゴミカザマタカフミ」では途中スラッピーな金子のベース、カザマ~矢矧暁(G.)へのギターソロへとつながれていく。自身に対する、分かってはいるけど、どうしても変えられない想いが性急的に次々に吐き出されていく様を見て、それはどこかこのバンドのこれまでの活動や姿勢、発言や数々の逸話とオーバーラップするものがあった。


ハンブレッダーズ
 ACBに戻りEVERLONGの楽曲にポップダイブした後、再度BLAZEに移動。ハンブレッダーズを観た。「終わらない青春、終わらない思春期を歌いに来ましたハンブレッターズです」とムツムロ アキラ(Vo.&G)。彼らが現れ、その歌が場内いっぱいに放たれていくと、甘酸っぱさとあの日あの時の自分へのやりきれなさや焦燥感が広がり、が故に今の自分が形成された、そんなアイデンティティやバイタリティへと結びつかせていく。
「DAY DREAM BEAT」にて勢いよく走り出した、この日の彼ら。ヘッドフォンの中だけの自分の世界が広がっていく様が歌われ、誰にも邪魔させない無垢で無敵な自分のサンクチュアリが提示される。ノンストップで「弱者の為の騒音を」に入ると雄々しい合唱と拳があがり、そこでは子供のまま大人になれるーーそんな魔法を信じさせてくれた。対してややテンポを落とした「口笛を吹くように」では、その分、ダイナミズムとよりノスタルジックさが楽曲に寄与されていく様を見た。 「新宿はビッカビカして何度来ても慣れない」とムツムロ。「常識の範疇」では木島(Dr.)の生み出すハネたビートと、でらし(B.)の運指の多いベースが躍動感を寄与し、ダンサブルでグルーヴィなサウンドに会場も揺れる。ムツムロの歌い出しから、終わっていった夏をもう一度思い返させてくれた「スクールマジシャンガール」に入ると再度ライブが走り出していく。 「実際はそうは歌っていないのかもしれないけど、自分の背中を押してくれるように響く歌が自分は好きで。今後も少しでも同じ境遇の人のために、そんな歌を歌っていきたい」という言葉の後、彼らの最新曲でもある「銀河高速」が演奏された。自分たちはこれからもこのままのスタイルで走り続けていくという力強い誓いのように、同曲が擁する疾走感と秘めたエモさが場内を駆け抜けていった。


Maki
 ロフトでのPOTでスパーク&スプラッシュさせてもらい、BLAZEでのビレッジマンズストアでロックンロールにどっぷり浸ったのち、またまたACBへ。バンキッシュなサウンドながら、そこに乗る文学的で叙情性のある歌詞や歌も特徴的なMakiを観る。 まっち(Dr.)のドラムの前に山本響(Vo.&B.)、佳大(G.)が集まり、まずは円陣。「歌舞伎町。この街を殺しに来ました」と山本。疾走感に乗せた「ストレンジ」のまっちの前のめりのビートと、歌われる言葉が場内を救うべくいきなり突っ込んでくる。「30分なんてあっという間に終わっちまうぞ。駆け抜けろ!!」(山本)と始まった「春と修羅」。同曲ではドライブ感も加わり、そこに彼ら独特の叙情性が合わさっていく。「バカになって俺についてこい!」「かかってこい!!」と場内を煽る山本と佳大(G.)。次曲「生活の行方」では佳大のエモいギターソロも魅せどころ&聴かせどころでもあった。
「涼しくなってきたなぁ。あんたたちに贈るよ」(山本)と入った、途中からの激走2ビートが会場を並走させた「秋、香る」では、実際に秋の匂いを嗅いだ気がした。心の手紙のような歌は続く。更にその激走に拍車をかけるようにニューシングルからの「斜陽」を経て、「喋ってる暇はないので曲をバンバンやりたいと思います」とここからはラストスパート。「憧憬へ」が喉が乾くまで愛してやるよと歌い、"俺たちがいるから大丈夫"と会場をグイっと引き寄せ抱き寄せれば、「俺たちがあんたたちを呼んでるんだ」と、どうかまた会おうという力強い誓いのように、安心しろ、その気持ちは俺たちが背負って歌うからと言わんばかりに「平凡の愛し方」が放たれる。最後は会場を交えての大合唱。それはとても力強く尊かった。ラストは「かっこいいところを見せてくれ!」(山本)と「シモツキ」へ。「ここで待ってる。君と待ってる」の繰り返されるフレーズも印象深い。「愛してくれてありがとう。観に来てくれてありがとう。俺たちもお前たちを待ってたぜ!!」という気持ちを求愛のように吐き出せば、「俺たちが名古屋からやってきたMakiです!!ありがとう!!」の言葉を残し嵐のようなステージを終えた。


四星球
 BLAZEのバックドロップシンデレラで阿鼻叫喚にまみれ、その後、ロフトにて今年結成10周年のTHEラブ人間の、変わらずに想い返す終わった青春性を一緒に取り戻し、この日の終着地点はBLAZE。四星球であった。
 まだリハ中に会場に入ったのだが、そのぶん得をした。時間ギリギリまでリクエストに応え、サービスで「天体観測」(BUMP OF CHICKEN)、「BABY BABY」(銀杏ボーイズ) をそれぞれワンコーラスだけ演奏&歌唱。完全に四星球節になっていたのも印象深い。 そして開演。ギリギリまでサービスをしていた為、一度引っ込んで着替え再び現れる時間もなく、やむなしにジングルの間に生着替えをすることに。見事15秒でいつものブリーフにハッピ姿への変身を遂げた。
「コミックバンドがTOKYO CALLINGにやってきました!!」北島康雄(Vo.)のステージからの第一声だ。 「徳島のバンドにトリを任せていただき光栄です。この30分は東京のバンドってことでいいですか」と北島。この日の設定はクラーク博士と僕依存症。結果、この日はクラーク博士推しで進められた。 まずはモリス(Dr.)による2ビートにのって「クラーク博士と僕」が。一曲目から会場も大合唱。続いて、まさやん(G.)に捧げる「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」。楽しみの段ボール細工は"まさゆき"と大きく切り抜き色づけされたもの。巨大なそれを背負いギターを弾きながらステージを右に左に。センターでギターソロもキメる。再び現れた「クラーク博士と僕」では、会場もステージに合わせてエアバンドで一緒に右に左に。北島もバンドの初心に戻ったようにアグレッシブにフロアにダイブして歌う。
 ミラーボールが回る中、全国の女子に捧げるように歌われた「チャーミング」を経て、「ラブストーリーは突然に」(小田和正)の伴奏が…。とは言え、そのメロディに合わせて歌われるのは、「クラーク博士と僕」の歌詞そのまま。器用だな。 パンクロックに乗せて、マッサージソングーーその名も新曲「リンパリンパ」。タイトル通り、かつてどこかで聴いたことある旋律と構成がかなり血流を良くし、身体も軽くしてくれた。この日四度目の「クラーク博士と僕」が歌われ、やはり最後はドタバタしつつも感動の大団円にキチンと持っていくのが彼らの凄い部分。この日は「妖怪泣き笑い」にて明日への活力を与えてくれた。

 アンコールは3日間で唯一この日のこの会場のみ、ここまで残っているアーティストたちが全員集合しセッションした。楽曲は「人間ていいな」のカバー。これが出演者/お客さんの垣根や枠を超えて大合唱され、人々の歌声の輪が広がっていく様子がとても美しかった。

 去年観たアーティストのキャパアップも実に堂々としており、見合い、似合い、各人その器にしっくり来ていたのも印象的だった新宿編。と同時に各アーティストの成長も楽しめた一日であった。

【取材・文:池田スカオ和宏】



tag一覧 ライブ ネクライトーキー 超能力戦士ドリアン ハンブレッダーズ Maki 四星球

セットリスト

TOKYO CALLING 2019
2019.9.14@新宿 全13会場<第一弾>

    ■ネクライトーキー
  1. 1.許せ!服部
  2. 2.ジャックポットなら踊らにゃソンソン
  3. 3.オシャレ大作戦
  4. 4.めっちゃかわいいうた
  5. 5.こんがらがった!
  6. 6.音楽が嫌いな女の子
  7. 7.遠吠えのサンセット
  8. ■超能力戦士ドリアン
  9. 1.恐竜博士は恐竜見たことないでしょ
  10. 2.焼肉屋さんの看板で牛さんが笑っているのおかしいね
  11. 3.おいでよドリアンランド
  12. 4.新曲初披露はムズイ
  13. 5.ヤマサキセイヤと同じ性別
  14. 6.いきものがかりと同じ編成
  15. ■3markets[ ]
  16. 1.レモン×
  17. 2.下北沢のギターロック
  18. 3.僕はセックスができない
  19. 4.タイムセール
  20. 5.バンドマンの彼女
  21. 6.拝啓、1メートル。
  22. 7.社会のゴミカザマタカフミ
  23. ■ハンブレッダーズ
  24. 1.DAY DREAM BEAT
  25. 2.弱者の為の騒音を
  26. 3.口笛を吹くように
  27. 4.常識の範疇
  28. 5. スクールマジシャンガール
  29. 6.銀河高速
  30. ■Maki
  31. 1.ストレンジ
  32. 2.春と修羅
  33. 3.生活の行方
  34. 4.秋、香る
  35. 5.斜陽
  36. 6.憧憬へ
  37. 7.平凡の愛し方
  38. 8.シモツキ
  39. ■四星球
  40. 1.クラーク博士と僕
  41. 2.鋼鉄の段ボーラーまさゆき
  42. 3.クラーク博士と僕
  43. 4.チャーミング
  44. 5.クラーク博士と僕は突然に
  45. 6.リンパリンパ
  46. 7.クラーク博士と僕
  47. 8.妖怪泣き笑い
  48. 【ENCORE】
  49. 1.人間ていいな

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