日本最大級のライブサーキットイベント「TOKYO CALLING 2019」レポート第二弾!
TOKYO CALLING | 2019.10.02
下北沢 『TOKYO CALLING』の2日目は下北沢。今年は一気に3会場が増え、13会場128組のアーティストが出演した。この街柄とも言えるのが、昔から連綿と続く<これからの大器が眠っている街>感だ。過去多くの著名アーティストが、この下北沢からの立脚を機に現在のステータスを築いていった。まさにそんな登竜門性や、これから育っていくであろうアーティストとの出会いと発見、成長と現行も楽しみに赴いたこの日。筆者も新旧織り交ぜ、幾つもの嬉しい出会いや発見、今後の彼、彼女らの更なる成長や躍進へと想いを馳せさせてもらった。
KUZIRA
まず一発目はSHELTERへ。メロディックパンク系3ピースバンドKUZIRAを観た。彼らの魅力は末武竜之介(Vo.&G.)による少年性のあるボーカルと、熊野和也(B.&Vo.)とふちたくと(Dr.)によるハーモニーとコーラス。翌日には北海道にて憧れのKen Yokoyamaとの対バンも控え、その気合いも充分だ。「短い時間ですが、俺たちの時間だけはかっこいい自分でいて下さい」と末武。しかしその言葉とは裏腹に、逆に自身のカッコイイ姿を見せてくれたのも印象深い。
ステージに現れるやいなや「TOKYO CALLING!準備はできてるか!!」と、ガツンとデモンストレーションで場内に目覚ましを一発。激走ナンバー「In The Deep」にて、のっけから会場を並走させていく。また、「Detour」に入ると、ふちの生み出す疾走感溢れる8ビートの中、裏打ちも交え会場の至るところにスカダンスの花を咲かせ、続けてスカパンク性を活かした「Ambivalent Attitude」、ショートチューンの「Muggy」が次々に連射されていく。
「機材壊さない以外は何やってもいいから」(末武)と、ここからは更なる盛り上がりが…と思いきや一旦ブレイク。ウェットな弾き語りから一変し、「Backward」に入ると勢いとそれを抜けて現れる開放感のある景色を味わわせてくれた。そして熊野がリードボーカルをとる「wing it」に入ると再びシフトアップ。クラウドサーフの数も増していく。対して会場全体を躍らせバウンスさせたのは「Blue」であった。同曲では会場も力強くシンガロング。また、「Clown」ではストーナーなイントロから性急を抜け、スカの裏打ちと目まぐるしい展開ながら、しっかりとそれについていくオーディエンスたちも頼もしかった。 後半は、景色感とダイナミズム溢れる「Missed My Stop」が素晴らしい情景に出会わせてくれ、最後は「Snatch away」でまた陽が昇る感を味わわせてくれた。と、そこで大団円…と見せかけて、最後はやはりスパッと締めたかったのだろう。追い打ちをかけるが如く特別に「BOX」がプレイされ、同曲が気持ち良く彼らを翌日の北海道へと送り出した。
キタニタツヤ
THURSDAY’S YOUTHのベース脱退前の、私にとっての最後のライブとなりそうだったので、その現行を目に焼きつけんとQueへ移動。その後、この日はこれまで以上に荒々しい演奏に映ったおいしくるメロンパン(9/25発売の新譜からの曲もやってくれた)をGARDENで観たのち、BASEMENT BARに移動。元々女性コーラスであったKDをボーカルに添えた新生キイチビール&ザ・ホーリーティッツを少しだけ観覧。キタニタツヤを観るため、再びGARDENに戻る。
キタニタツヤはシンガーソングライターでありクリエーター。sajou no hanaのメンバーとしても活躍。楽曲提供も行い、ベーシストとしてヨルシカをサポートするなどマルチなアーティスト/ミュージシャンだ。 このようなサーキットフェス自体初出場だという彼。この日は自身の最新現行を魅せてくれた。
自らがベーシストでもある為、自身のベースプレイが映えるナンバー等もあるのだが、この日はほぼボーカルのみのスタイルで勝負。普段はオルタナや歌もの等、幅広い音楽性を有しながらも、この日は比較的黒っぽい方面の音楽性で勝負に出た印象がある。 退廃的ながらも、そこに込められた一縷の希望が会場を引き連れていく彼の歌の数々。1曲目は「夢遊病者は此岸にて」。秋好ゆうき(G.)のスモールクローン的なゆらぎのあるギターを含め、ミッドナイト感やシティポップ感を場内に満ちさせていく。ほぼ終始ハンドマイクスタイルで歌ったキタニ。荒げなステージアクションたっぷりに次々と歌を繰り出していく。踊り方を教えてやるから。と歌われる「悪魔の踊り方」に入ると更にアクションは激化。ノイジーさやグリッチ、ターンテーブルトリック音が混じる中、佐藤ユウスケ(Dr.)の生み出すビートが会場にバウンス性を育くんでいく。
オルガンがちょっとしたノスタルジックさとセンチメンタルさを呼び込んでいった次曲の「Sad Girl」では、ミッドナイト感に深海感も付加。よりフロウに自由度も増し、サビの上昇感が刹那さを引き上げにかかる。
ここまでオルタナ的なギター音だったが「クラブ・アンリアリティ」からはファンキーさへと変わる。4つ打ちと同期のファットなベースが会場を心地良くたゆたわせ、9/25発売の新作からの「Stoned Child」では、ディスコで上昇感のある同曲がオーディエンスを酩酊させていく。さらなる躍動感が増した「きっとこの命に意味は無かった」を経て、最終曲にてキタニもここでようやくベースを。ベースフレーズが印象的な「芥の部屋は錆色に沈む」のポップさが会場をさらっていくのを見た。
osage
そしてMOZAICに移動。TOKYO CALLING初登場であったosageを観た。「本気の歌を歌っていきたい。それが届き響いてくれたらいいな」という想いを込めた山口ケンタ(Vo.&B.)による、ちょっとハスキーさの混じった歌声も特徴的な彼ら。金廣洸輝(G.)、松永祐太朗(G.)、田中優希(Dr.)のプレイも手伝い、全体的に夜明け感や間もなく陽が昇りまた新しい1日が始まるーーそんな未明観にも似た音楽性も印象的だ。
「TOKYO CALLINGは憧れと目標でもあった。ここにいれば嫌が上でも自分の歌を伝えることができる。だとしたらこっちのもの。嘘は持ってきていない。是非みなさんも心で聴いてほしい」と、気概を込めた歌が次々と放たれていく。
「サーキットフェスは一発勝負。TOKYO CALLING始めます!!」山口の力強い第一声と共に「移ろう季節に花束を」から彼らのライブは力強く始まった。もう夜が明けるから そうしたら忘れるから…。切ない歌ながら勢いを擁したバンドサウンドが会場をグイグイと引っ張っていく。更に加速を上げていくように「セトモノ」に入ると、会場から力強い拳が上がり、続く「エンドロール」では、勢いと切なさーーそこを抜けた開放感やストレートさが伝わってくる。
中盤からはミディアムな曲が続いた。エモいギターも特徴的な「スープ」が、ジワジワと染み込んでいくように場内いっぱいにその秘めたエモさ広げていけば、幻想的なミラーボールが回る中、この景色のようにいつかは輝けますように…という願いが込められ歌われた「vega」、そして、この日ここを選んだ正解のような「ウーロンハイと春に」が<自分は自分らしく>と言い諭されているかのように力強く響いた。
UMEILO
THREEに移動。小柄な女性ベース&ボーカルのドリームポップ的な歌声と、今どき珍しい往年のグランジ、シューゲイズ的な音楽性も印象的だったOh No Darkness!!を観たのち、風知空知に移動。フクザワ×aquarifa、Cuonの岩田真知による弾き語り&ライブペインティングを観覧。そのまま付近にあるmona recordsにて、カフェだろうがお構いなし。普通のライブハウスレベルのライブを展開したヨイズを観て、再び風知空知に戻り、大橋ちっぽけのネイキッドなアコースティックスタイルのライブを堪能した。
そこからCLUB251に移動。ちょっと古い印象ながらも、今も色褪せないスタンダードなテーマや歌詞が、逆に今の時代に珍しく新鮮。対してサウンドは現行性を有した北海道のUMEILOを観覧する。
まずは、DAICHI(G.)、ひ(B.)、たいが(Dr.)が一人一人順にステージに現れ、間を空けて伊藤純輔(Vo.&G.)が登場。あえて鳴らしたフィードバック音の中、「北海道札幌から来ましたUMEILOです」と伊藤。あわせてガツンとバンド一丸のデモンストレーションを力強く場内に放っていく。1曲目の「ダーリン」を機にライブを走り出させた彼ら。突っ込んできそうなぐらい感情移入たっぷりのサウンドながら、そこにあえて乗ぜず、ややアンニュイなボーカルも印象的だ。サビで現れるストレートさも気持ち良かった同曲を経て、たいがのドラムが4つ打ちで繋げていく中「革命より抜粋」に。タイトなたいがのドラムと、ひのベースの運指が躍動感とドライブ感を寄与していく。伊藤もファルセットを交えて同曲を歌う。
その伊藤のギターと歌から入ったミディアムな「春火鉢」の際には、一度ブレイクを作り間を空けリプレイ部分という粋な展開も。また、同じくミディアムな「春雨」では、愛しい人への想いを更に募らせるような同曲と共に、秘めたエモさが場内いっぱいに広がっていくのを感じた。「また来ます!!」との誓いを残し、最後は再びライブを走り出させるように「高空」へ。ふと香る懐かしい匂いが、聴く者をあの日あの時へと引き戻してくれた。
オレンジスパイニクラブ
一旦、Half time Oldの熱いステージを観にGARDENに入り、続いて入場規制になる寸前の近松にイン。オレンジスパイニクラブを観る…と書きたかったが場内は立錐の余地がないほどの超満員。最後列での観覧となった為、ステージは全く観えず。したがって音だけでのレポで成立させてもらう。
1曲目は意外にもスロースターターだった。いきなり「キンモクセイ」のちょっとした甘酸っぱさが場内の隅々にまで満ちていく。その雰囲気を切り裂くように「パープリン」に突入するとライブがドライブ感を伴ってグングン走り出していく。更にライブは加速度を上げ、続く「急ショック死寸前」では2ビートに乗せて日本語パンク節が会場のシンガロングと共に共有されていく。
君の苗字を変えたい。変えるのは俺だけという面白いタイプの、自称"卑屈なラブソング"「みょーじ」を経て、これまた偏執なラブソングとも言える「タルバ」ではカントリータッチの牧歌性が呼び込まれる。ここではスズキナオト(G.)のカントリーライクなギターソロも楽しめた。短いタイプの曲は続く。「モザイク」ではエモさが加わり、最後の「敏感少女」ではミディアムが途中から一気に豹変。会場も誇らしげに、届け届けとばかりに渾然一体となって歌っている光景を見た。
ひかりのなかに
その後、GARDENにてLACCO TOWERの雄姿と発売されたばかりの新譜からプレイされた「若者」に感動。そしてこの日のラストはTHREEに移動し、都内を中心に活動するヤマシタカホ(Vo.&G.)、たけうちひより(B.)、ジョー(Dr.)による男女3人組の現役高校生ロックバンド「ひかりのなかに」のステージを観に行く。
「2017年はお客さんとして観に来ていたし、去年はエントリーで落ちた」とライブ中のMCで、このTOKYO CALLINGへの想いを語っていたヤマシタ。そして今回、念願の初出場となった。
トップを飾った「冴えない僕らに灯火を」から、いきなりエモい楽曲がフロアへと放たれていく。男気がある同曲に乗りキュートな歌声ながらしっかりと響いてくる歌にフロアからコブシが上がる。後半のハミング部分では会場も大合唱。早くも一体感が育まれていく。 「トリでやらせてもらう感謝の気持ちを今回は演奏に向けて爆発させたい!」とジョー。続いて、「バンドなんてやってても意味がないじゃないか」「何の意味があるの?」と言ってきたヤツらへの回答のような歌です」という紹介から入った「舞台裏」では、何を言われても自分は自分。この道を歩いてやるし、歩いていくだけという決意に満ちた思いを吐き出せば、君の夢を取り戻せ!!とばかりに、新曲の「ナイトライダー」が暗闇を迷わず突き進むサーチライトの役割を果たした。
ここからは渾身が各曲に込められ送られた。裏打ちも間に交えた「はやぶさ」では、ほとばしる勢いの中、想いと感情を込めた歌に合わせ多くのコブシがステージに向け上がり、本編ラストの「オーケストラ」ではライジングサン感のあるサウンドの上、歌をきちんと伝え切った。 アンコールに応えてくれるも、あえてもう一度会場も交え一緒に歌うべく、再び「冴えない僕らに灯火を」が。ここまでの流れと完全に温まった会場も手伝い、初演時より更にエモく同曲が響く。この際は会場も大合唱。中でもラストのハミングは雄雄しくも明けない夜が明けた気がした。ヤマシタも感極まりフロアに出て歌う。全て終えた後、とてつもなく満足そうな表情を残し3人はステージを去った。
【取材・文:池田スカオ和宏】
セットリスト
TOKYO CALLING 2019
2019.9.15@下北沢 全13会場<第ニ弾>
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■KUZIRA
- 01.In The Deep
- 02.Detour
- 03.Ambivalent Attitude
- 04.Muggy
- 05.Backward
- 06.wing it
- 07.Blue
- 08.Clown
- 09.Missed My Stop
- 10.Snatch away
- 11.BOX ■キタニタツヤ
- 01.夢遊病者は此岸にて
- 02.悪魔の踊り方
- 03.Sad Girl
- 04.クラブ・アンリアリティ
- 05.Stoned Child
- 06.きっとこの命に意味は無かった
- 07.芥の部屋は錆色に沈む ■osage
- 01.移ろう季節に花束を
- 02.セトモノ
- 03.エンドロール
- 04.スープ
- 05.vega
- 06.ウーロンハイと春に ■UMEILO
- 01.ダーリン
- 02.革命より抜粋
- 03.春火鉢
- 04.春雨
- 05.高空 ■オレンジスパイニクラブ
- 01.キンモクセイ
- 02.パープリン
- 03.急ショック死寸前
- 04.みょーじ
- 05.タルパ
- 06.モザイク
- 07.敏感少女 ■ひかりのなかに
- 01.冴えない僕らに灯火を
- 02.舞台裏
- 03.ナイトライダー
- 04.はやぶさ
- 05.オーケストラ 【ENCORE】
- 01.冴えない僕らに灯火を