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名古屋の路上から飛躍するサスフォー、渋谷のロック好きを魅了したアツい一夜。

Suspended 4th | 2019.11.15

 名古屋・栄の路上を中心に活動してきた、サスフォーことSuspended 4th。彼らは今年7月にPIZZA OF DEATH RECORDSから1stミニアルバム『GIANTSTAMP』を発表し、ジワジワと注目を集めている超大型新人である。その1stミニのリリースを記念した東名阪3ヵ所に及ぶレコ発ツアーも即日完売! 最終日にあたる東京・渋谷TSUTAYA O-Crest公演は、結論から書くと、勢いに乗るバンドの今を生々しく体現し、ストリート発の、正真正銘のライブバンドであることを見事に証明してくれた。

 この日対バンを務めたのは、大阪発のそこに鳴る。鈴木重厚(Gt/Vo)、藤原美咲(Ba/Vo)の魅惑の男女ツインボーカル編成(ドラムはサポート)により、耳目を釘付けにするプレイでこれでもかと魅せる。序盤からポップにしてカオスな音像を解き放ち、観客の度肝を抜く。鈴木はタッピングを交え、素早い運指でテクニカルなギターを披露。一方、藤原も負けじとブリブリとうねりを上げるベースを鳴らし、こちらもタッピングで追撃。そのバトル感で会場の熱を高めながら、息の合った掛け合いボーカルでキャッチーな側面もアピール。めくるめく曲展開の中で胸をすくメロディが抜群に光っていた。

 そして、20時18分、Kazuki Washiyama(Gt/Vo)、Seiya Sawada(Gt)、Hiromu Fukuda(Ba)、Dennis Lwabu(Dr)のメンバー4人が姿を現し、緩やかなジャム・セッションで場を温めていくサスフォー。次第に急斜面を登るように演奏は熱を帯び、ド頭から長いセッションを紡ぐ。けれど、これがまったく退屈ではない。むしろ心地よい準備体操のごとく、彼らの音世界に自分が順応していくのがわかった。それから「GIANTSTAMP」に雪崩れ込むと、満杯のフロアも「待ってました!」とばかりに活気づく。ミドルテンポで突き進む曲調だが、地を這うグルーヴ感が最高に気持ちよく、気付けば「ウォー!ウォー!」の大合唱が広がっていた。

 イントロからハンドクラップが起きると、次は「97.9hz」へ。演奏は激しさを増し、それに応えて観客もジャンプしている。ベースとドラムのリズム隊が楽曲を力強く引っ張り、そこに宙空を泳ぐ浮遊感に富む歌メロが乗り、会場はサスフォーの空気一色に染まっていった。場内のあまりのフィーバーぶりに、メンバー自身もうれしさを隠せないのか、「控えめに言って、最高ー!」とWashiyamaは歓喜の声を上げるほど。

 そして、当初は『GIANTSTAMP』を曲順どおりにプレイする予定だったものの、今ツアーのライブ中にその順番を間違えたらしく、大阪、名古屋公演と同様にここでも「Vanessa」を繰り出す。冒頭から高揚感に溢れたバンドアンサンブルで焚き付け、O-Crestはダンスホールに様変わり。歌えや踊れの、すっさまじい熱気が渦巻いていた。それを経て、彼らの楽曲の中でもかなりテンポの速い「ストラトキャスター・シーサイド(incl.Jam session&Venezia)」を披露。イケイケで突っ走る演奏は加速の一途を辿る一方だ。さらに原曲をそのままなぞるのではなく、セッションでグルッと寄り道をして、ライブならではの景色を作り上げる。予定調和に収まらず、かといって奇を衒うわけでもない。メンバー4人で楽しく楽器で会話しているような雰囲気だ。その光景に観ているこちらもテンションが上がってしまう。言ってしまえば、普通にプレイしても十二分に魅力的な楽曲たちばかりである。にもかかわらず、この瞬間にしか鳴らせないビートやグルーヴを叩き付け、いい意味で聴き手を裏切るアプローチを挟み込む。これは、ストリートで培った彼らなりの対話術と言っていいだろう。

 話は少し逸れるが、今年1月にLED ZEPPELINの再来と言われているGRETA VAN FLEETのライブを観たが、彼らも曲に入る前や曲間の繋ぎに平気で10~20分のセッションを放り込む。GRETA VAN FLEETと同じく、サスフォーにも偉大なる先人ロックバンドの血が脈々と受け継がれ、それを現代版に昇華したかっこよさを感じた。ふと見渡すと、今日の会場にも女子高生からスーツ姿のサラリーマンまでが詰めかけ、その客層の幅広さにも驚いた。サスフォーが30、40代辺りのロック好きのツボを突く理由は、そういうところにもあるのだろう。

 話をライブに戻そう。「歌えたら歌って!」と呼びかけると、「ヨンヨンゼロ」を披露。メンバー個々の卓越した演奏力もさることながら、こうした歌ものナンバーでもグッと惹き付けるところが彼らの強味だ。大空を羽ばたくようなスケール感のある歌メロで観客の心を鷲掴みにする。その流れで聴いた「think」も素晴らしく、味わい深い歌声や隙間を活かした演奏で大人っぽい空間を演出。歌ってもいい、体を揺らしてもいい、じっくり耳を傾けてもいいだろう。受け取り方はあなたの自由ですよ、と語りかける音色にただただ心酔した。しかし演奏を終えると、「めっちゃ体力使う! 俺らがいちばん疲れる」と思わず本音を漏らすWashiyama。ムード重視の楽曲はまた異なる集中力を必要とするのだろう。ラストは前作EPの表題曲「INVERSION」で締め括り、ファンキーなグルーヴ感でフロアを盛大に揺らした。

 アンコールに応えると、「ストリート青年の集まりだから、何をやるかわからない。ストリートの常識が通用するのか、10分間見定めさせてくれ!」と言うと、ブルージーなセッションから「Betty」をプレイする。Dennisの正確無比なドラムからFukudaのバッキバキのスラップへ繋ぐスリリングなソロパートを含めて、時の経過を忘れてしまうほど最後の最後まで魅了されてしまった。楽器本来のかっこよさを突きつけながら、音楽の未知なる可能性を貪欲に追求する姿勢に何よりも感動した。

 来年1、2月には3ヵ所に及ぶ追加公演も決まった彼ら。去り際に「次の時代を担うのは俺らだ!」とWashiyamaは力強く宣言していたが、ストリート育ちのタフな精神と音楽でシーンに打って出るサスフォーに期待せずにはいられない。

【取材・文:荒金良介】
【撮影:ヤスカワショウマ@monolust】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル Suspended 4th

リリース情報

GIANTSTAMP

GIANTSTAMP

2019年07月24日

PIZZA OF DEATH RECORDS

01.〒460-0008
02.GIANTSTAMP
03.97.9hz
04.ストラトキャスター・シーサイド
05.Vanessa
06.ヨンヨンゼロ
07.kniht
08.think

セットリスト

GIANTSTAMP Tour
2019.9.27@渋谷TSUTAYA O-Crest

    そこに鳴る
  1. 1.Break out ! ! !
  2. 2.self connection
  3. 3.業に燃ゆ
  4. 4.6月の戦争
  5. 5.さらば浮世写し絵の如く
  6. 6.諦念
  7. 7.絶対的三分間
  8. 8.re:program
  9. 9.Less Than Zero
  10. 10.掌で踊る
  11. 11.エメラルドグリーン

  12. Suspended 4th
  13. - Jam session -
  14. 1. GIANTSTAMP
  15. 2. 97.9hz
  16. 3. Vanessa
  17. 4. ストラトキャスター・シーサイド (incl.Jam session&Venezia)
  18. 5. ヨンヨンゼロ
  19. 6. think
  20. 7. INVERSION
  21. 【ENCORE】
  22. - Jam session -
  23. 1. Betty

お知らせ

■ライブ情報

GIANTSTAMP TOUR II TURBO
2020/1/11(土)大阪 Shangri-La
※対バン後日発表
2020/2/1(土)愛知 名古屋Electric Lady Land
※対バン後日発表
2020/2/9(日)東京 渋谷TSUTAYA O-WEST
w/ Nothing’s Carved In Stone


BASEMENT-TIMES PRESENTS 「SHOW CASE special」
2019/11/17(日)大阪 梅田CLUB QUATTRO
w/ PK shampoo / CRYAMY / オレンジスパイニクラブ

habit
2019/11/20(水)東京 渋谷TSUTAYA O-Crest
w/ HONEBONE / grunband / TarO&JirO and more...

Sunrise In My Attache Case Fireworks Tour 2019
2019/11/22(金)愛知 名古屋ell.FITS All
w/ Sunrise In My Attache Case / ORESKABAND
2019/11/24(日)大阪 VARON
w/ Sunrise In My Attache Case and more...

MIDNIGHT RIVER SUMMIT’19
2019/11/29(金)大阪 Music Club JANUS
w/ I Don’t Like Mondays. / 秋山黄色 / AIRFLIP / Omoinotake / CAT ATE HOTDOGS / reGretGirl / LOCAL CONNECT

DECEMBER’S CHILDREN
2019/12/7(土)東京 マイナビBLITZ赤坂

下北沢にて’19
2019/12/8(日)東京 下北沢ライブハウス

J 2019 放火魔 大暴年会
2019/12/30(月)東京 渋谷TSUTAYA O-EAST
w/ J / 人間椅子 and more...

WOMCADOLE 旗鼓堂堂ツアー
2020/1/17(金)神奈川 F.A.D YOKOHAMA
w/ WOMCADOLE / アルカラ
2020/1/18(土)群馬 高崎club FLEEZ
w/ WOMCADOLE and more...

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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