向井太一、一層タフに成長しファンとの絆がゆるぎない強さを手に入れた「ONE MAN TOUR 2019 -SAVAGE-」ファイナル
向井太一 | 2019.11.21
9月18日にリリースした3rdアルバム『SAVAGE』をひっさげてのワンマンツアー、ファイナルの会場は彼にとって最大規模となるZepp Tokyo。ステージで「命をかけて作ったアルバムでした」と語られたとおり、自分のなかにある葛藤や苦悩と向き合って生み出した『SAVAGE』を通して彼が手にした強さは、確かにそのステージにも奥行きや厚みとなって表れていた。そしてその先には、大きな光がしっかりと灯っていたのだ。
SEが鳴るとステージが青いライトに照らされ、おなじみのバンドメンバーが登場。続いて白いシャツを着た向井太一がステージに現れる。スタンドマイクで静かに歌い出したのはアルバムのラストトラック「Dying Young」。夜が明けて世界が光で満ちていくような、壮大で美しいオープニングだ。歌い終えるとゆっくりと一礼。「東京、お待たせしました!」という言葉に歓声と拍手が上がる。
続く「Savage」で「Everybody, hands up!」とフロアに声をかけると、一気にオーディエンスとの距離が縮まっていく。力強いベースの音に駆り立てられるように体を揺らして歌う向井はとても気持ちよさそうだ。ステージ背後のスクリーンに映し出された白黒のグラフィックと青いライトがコンセプチュアルに使われる「Runnin’」、「みんなこの曲知ってるよね? よかったら一緒に歌ってください!」という言葉とともにスタートした「Crazy」。Zepp Tokyoのステージとフロアがどんどん一体感を増していく。
軽やかな挨拶を経て「この数年間のスタート地点に立つきっかけとなった曲です」という紹介から歌われた「SLOW DOWN」へ。どちらかといえばシックな舞台演出と、明らかに迫力を増したサウンドのフォルム。マイク一本だけを握り、全身を使って歌声を届ける向井の姿は、何も気負わず、かといってその佇まいの中に凛としたものを感じさせる。これまで何度か彼のライブを観てきたなかでも、これほど「引き受けている」向井太一を目にするのは初めてだ。等身大の親密さを感じさせながら、同時にここに集まった人たちをさらなる高みに連れて行こうという強い意思が滲む。客席とコミュニケーションを取りながら研ぎ澄まされた音楽を繰り出す様はポップスターのようでもあり、傷だらけの挑戦者のようでもある。ひときわ攻撃的に響いた「SPEECHLESS」でシンガーの本能を解放すると、続く「Can’t breathe」では極彩色の映像をバッグにドスの効いた低音から叫びのような声まで、ブルージーな憂いを帯びた歌を響かせる。真っ赤な色を効果的に使った演出も相まって、それまでの曲にはなかった濃いエモーションを浮かび上がらせる。
「みなさんついてきてますか?」。そんなふうにフロアに問いかけるくらい、この日の向井は気持ちを全面に出しながら力強く前へ前へと進んでいく。自身を鼓舞するような強いメッセージが刻まれた「最後は勝つ」を激しく体を動かしながら歌う向井の姿は、どこか無敵感すら感じさせる。そして「リセット」の美しいメロディを力強く歌い切ると、今度はヒップホップのぶっといグルーヴに身をまかせながら「眠らない街」を繰り出す。ステージの横幅を存分に使いながら、まだ足りないとでもいうようにフロアを煽り立てていくのだ。
半ば気圧されるような感じでその歌を受け止めているうちに、早くもライブは終盤戦へ。イントロから歓声が起きたアッパーチューン「FLY」で一面のハンドウェーブを巻き起こすと、力強い4つ打ちのビートがエキサイティングな「ICBU」へ。それまでと打って変わってカラフルなライトがステージを照らす中、「ジャンプできますか?」の言葉とともにZepp Tokyoが巨大なダンスフロアに変貌する。そのままビートをつないで「Great Yard」へ。オーディエンスによるコーラスパートも完璧で、ここに至って会場の一体感はピークに達した。本編最後の曲は音楽へのぶれない意志を歌った「I Like It」。「声を聞かせてください!」という向井にオーディエンスは全力で応えてみせた。
「今回ツアーを進めていくうちに、自分を再度見つめ直す時間ができた」とアンコールでステージに帰ってきた向井。「人に対する嫉妬だったり、隠したくなるような思いが渦巻いている時期に作りました」という『SAVAGE』の背景が赤裸々に語られていく。音楽という夢に向かって突っ走ってきたこれまでのこと。でも自分が思う以上のスピードで、いつしか自分の才能を疑うようになったこと。アートワークやスタイリングなどトータルでセルフプロデュースするというスタイルも「器用なだけじゃないか」と思ってしまうほど、彼は追い詰められていたのだ。
しかしそんな彼を救ったのもやはり音楽だった。『SAVAGE』というアルバムは、自分のなかにある苦しみをすべて吐き出すことで、彼自身を救うための作品でもあったのだ。滔々と語る向井。思わず感極まって声をつまらせながらもメンバーとチームに感謝の念を伝えると、これまでの歩みとこれからの未来を照らし出すように「道」を披露。そして最後にはここに集った全員と手を叩きながらの「空」――Zepp Tokyoには、向井太一という表現者が一層タフに成長したこと、そして彼とファンのあいだの絆が揺るぎない強さを手に入れたことを証明するような、ブライトで美しい光景が広がっていた。
【取材・文:小川智宏】
【Photo by Yosuke Torii】
リリース情報
SAVAGE
2019年09月18日
TOY’S FACTORY
02.Runnin’
03.Savage0
04.ICBU
05.君へ
06.Can’t breathe
07.Voice Mail
08.最後は勝つ
09.道
10.Dying Young
Bonus Track. I Like It
セットリスト
ONE MAN TOUR 2019 -SAVAGE-
2019.11.14@Zepp Tokyo
- 1.Dying Young
- 2.Savage
- 3.Runnin’
- 4.Crazy
- 5.SLOW DOWN
- 6.SPEECHLESS
- 7.Can’t breathe
- 8.Confession
- 9.君へ
- 10.最後は勝つ
- 11.リセット
- 12.眠らない街
- 13.FLY
- 14.ICBU
- 15.Great Yard
- 16.I Like It -ENCORE-
- EN1. 道
- EN2. 空
お知らせ
timeloop
2019/12/23(月) Zepp Namba
向井太一「ASIA TOUR 2020」
2020/03/18(水)広州 MAO Livehouse
2020/03/19(木)深圳 B10现场
2020/03/21(土)成都 楽空間
2020/03/22(日)上海 MODERNSKY LAB
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。