フォーリミならではのエンタメ総決算、「YON EXPO」をたまアリで観た!
04 Limited Sazabys | 2019.11.28
04 Limited Sazabysが地元・名古屋で開催している主催フェス「YON FES」の姉妹イベントとなるワンマンライブ「YON EXPO」が、さいたまスーパーアリーナで開催された。エキスポ=博覧会という名を冠したとおり、この日、会場周辺にはゲームコーナーや写真展、RYU-TA(Gt/Cho)の「麺や おがた」など、様々な企業とコラボしたパビリオン「YON PAVILION」を設置。会場周辺は午前中から、それぞれのブースを楽しむお客さんで長蛇の列ができていた。先日、最新シングルを「缶」の形態でリリースしたことも話題を呼んだフォーリミは、特にここ最近、既成概念をぶち壊すユニークなアイディアで、リスナーやお客さんに楽しんでもらえるやり方を創造し続けている。そのひとつが「YON EXPO」だ。一方、ライブ本編は、アリーナライブではお馴染みの手の込んだ映像や、新旧を網羅したセットリストを用意。彼らが何を大切にバンドを続けてきたのか、ということが浮き彫りになるような内容だった。
開演時間、ハリウッド映画の予告ムービーのようなオープニング映像が流れ、まるで、その映像から飛び出してきたような正装姿の4人がステージに現れた。1曲目は「Now here, No where」。パワフルで性急なバンドサウンドにのせ、日々の悶々とした気分を代弁するような歌がお客さんを出迎える。アリーナは座席なしのオールスタンディング。スタンド席も総立ち。そんな2万人の大歓声が巨大な会場を一気に包み込んだ。「一緒にいいところまで行きましょう!」というGEN(Ba/Vo)の言葉を合図に、ツインギターを活かした痛快なリフが炸裂した「Warp」から、軽やかなビートにのせて心躍るメロディが弾む「Kitchen」へ。一瞬にしてマックスへと高まってゆく会場の熱気を受けて、序盤3曲で、「ビシッと決めてきたけど、暑い!」と、早くもメンバーはスーツの上着を脱ぎ捨てた。
「俺たちは大人になったので、誰かの足を引っ張るんじゃなくて背中を押したい」と伝えてから披露したのは、9月4日にリリースされたばかりの最新シングル『SEED』からの「Cycle」。疾走感あふれる骨太なロックに、バンドが歩んできた確かな“轍”と未来への“イメージ”を刻むと、続く「message」ではアリーナの各ブロックにいくつものサークルが巻き起こる。攻撃力の高いイントロからステージに煙が噴射した「fiction」、次々と曲調を変えながら聴き手を翻弄する「Montage」(これも『SEED』収録曲)へと、中盤はダークなナンバーを連発。バンドのオールタイムな歴史を総括するライブだからこそ、メロディックパンクという“土壌”に確かに根を下ろしながらも、決してその枠だけに留まらないフォーリミの幅広い音楽性と、その成熟ぶりを強く感じることができる。
途中、スクリーンに、岐阜県・中津川にいるという「麺や おがた」(=RYU-TA)が、さいたまスーパーアリーナまでマラソンでラーメンを出前するという映像が流れると、メンバーの衣装がチェンジ。こういう演出はアリーナならではだ。そして、ミラーボールが会場に美しい流星群を描いた「midnight cruising」や、曲の途中でメンバーが口論する「Galapagos」をたたみかけると、アコースティック編成による演奏が繰り広げられた。HIROKAZ(Gt)がアコギを弾き、RYU-TAがマラカス、KOUHEI(Dr/Cho)がタンバリンを持ち、「labyrinth」を歌いながら、フロアを降りてセンターステージへと移動。そこで披露されたのは「hello」だった。HIROKAZはアコギのまま、RYU-TAがベース、KOUHEIがカホンを叩くという編成。お客さんを近い距離で感じられる場所で、“この幸せな時間が永遠に続いたら”と願うような楽曲を選んだ意味が熱い。
再びメインステージに戻ると、先ほどの映像の続きが流れ、ついに会場に到着した。だが、ラーメンが入ってない!というオチだ。演奏をすれば、アリーナを隅々まで熱狂させる正真正銘のロックバンドでありながら、特にアリーナ公演では、こういう遊び心でエンターテイメントして見せる。これもフォーリミの自由度の高さだ。ダーティな演奏にのせてGENがラップする「Alien」に続き、RYU-TAのシャウトが大暴れした「discord」のあと、MCで「今年は悲しいニュースが多かった」と切り出したGEN。アーティストの訃報も多かったが、GEN自身も体調を崩したことに触れる。そして、「バンドを続けているのは当たり前じゃない。やりたくてもやれない時間がくるんだなって思うと、こんなにたくさんの人が集まってくれて幸せです」と感謝を伝え、バンドにとって大切な楽曲「Horizon」へつないだ。スケール感のある演奏にのせて、“希望の行方を追えよ”と力強く歌い上げるこの歌は、かつてフォーリミが初めて日本武道館でのワンマンに臨む時期に作った楽曲だった。あれから少し大人になり、ずいぶん遠くまで駆け抜けてきたが、あいかわらず彼らは爆音でロックを鳴らし続けている。そのかけがえのなさを噛み締める瞬間だった。
終盤にかけては、「Puzzle」「Letter」とより強いメッセージを込めた楽曲が続いた。「milk」で、GENがいちばん好きだと語った一節で歌詞を飛ばしてしまう場面もあったが、それもご愛嬌。最後のMCでは、「あと数百枚でソールドするところだった」と、チケットが売れ残ってしまったことを明かしたGEN。こういうとき、実際はソールドしていなくとも、「ソールドアウト」と銘打ってしまうことが、実はよくある。だが、GENはそれが嫌だったと言う。当日券で行きたいと思ってくれた人を拒むことになるし、「ステージで嘘をつきたくない。自分たちを大きく見せたくない」からだ、と。ああ、こういうところが、彼が愛される理由だなと思う。弱点も全部曝け出すから、裏表がないのだ。ラストは「Feel」に続けて、「monolith」で終演。インディーズ時代からライブハウスで歌い続け、バンドとともに成長してきた楽曲を、アリーナというスペシャルな場所でも(いや、だからこそ)忘れずに演奏してくれることで、またバンドのお客さんの絆が強くなった気がした。
アンコールでは、もうこの日、何度口にしたかわからないほど繰り返した「幸せです」という言葉をさらに重ねて、GENがお客さんへの「ありがとう」を伝えると、「Squall」に続けて、「Remember」では銀テープが発射。エンドロールが流れたあと、「これからも一生一緒にいてください」という言葉とともに、ワンマンのアンコールでしか演奏しない親密なポップソング「Give me」を届けて、ライブは幕を閉じた。ワンマンライブに来てくれるお客さんをちゃんと特別扱いしてくれる。そういうはっきりとした意思もこのバンドの魅力だなと思う。ライブが始まったときより、終わったときのほうが、もっとフォーリミを好きになっていた。
この日、途中のMCで、GENが「よく今後どうなりたいかを聞かれるけど、正直、次に向かっている場所はない」というようなことを言っていた。それは、決して目標を見失ったとか、そういう意味ではない。名古屋の小さなライブハウスから始まったフォーリミは、悔しさを火種に、より高い壁を越えようと突き進んできた。だが、アリーナ級の会場まで辿り着いた4人の目指す場所は、昔のように簡単には言い表せないものになっているのだと思う。それは、「YON EXPO」のような新しい価値観の創造かもしれないし、「みんなのバンド」としての使命を果たし、より良い曲を作り続けることかもしれない。今後も開催し続けたいと言っていた「YON EXPO」は、そういう未知の領域へと突入したバンドの在り方を、毎回確認するような、そんな大切な場所になりそうな気がした。
【撮影:ヤオタケシ、Viola Kam (V’z Twinkle)】
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リリース情報
SEED
2019年09月04日
日本コロムビア
02.Montage
03.Cycle
セットリスト
YON EXPO
2019.9.29@さいたまスーパーアリーナ
- 01.Now here, No where
- 02.Warp
- 03.Kitchen
- 04.Cycle
- 05.message
- 06.My HERO
- 07.fiction
- 08.Montage
- 09.Chicken race
- 10.midnight cruising
- 11.Galapagos
- 12.me?
- 13.swim
- 14.labyrinth
- 15.hello
- 16.Shine
- 17.Utopia
- 18.Alien
- 19.discord
- 20.Horizon
- 21.Puzzle
- 22.Letter
- 23.milk
- 24.Feel
- 25.monolith
- 01.Squall
- 02.Remember
- 01.Give me
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※全ヵ所シークレットゲストあり。ファイナルのみワンマン。
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2020/2/2(日) 愛知 ポートメッセなごや
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。