フォーリミ完全復活! 地元・愛知で満を持して開催した「YON EXPO’20」の全貌を見た!
04 Limited Sazabys | 2020.12.29
ついに、フォーリミがライブの現場に帰ってきた。ワンマンライブは今年1月のFC限定ライブ以来、観客の前でやるライブという意味でも、2月21日に行った「MYSTERY TOUR 2020」大阪公演、2月22日のHEY-SMITH主催「ハジマザ」ツアー大阪以来9ヵ月ぶりである。もともと今年の春以降はGEN(Ba/Vo)の耳の状態もあって活動を休もうと決めていたとはいえ、これほど長い間ライブをやらなかったというのはもちろんフォーリミにとって初めての経験である。その長い期間に溜まった鬱憤を爆発させ復活を遂げる舞台として彼らが選んだのは、地元・愛知県のAichi Sky Expo。中部国際空港セントレアに隣接する巨大な展示場である。昨年のさいたまスーパーアリーナに続いて「YON EXPO」として開催された2日間のワンマンライブは、ロックバンドという生き物のおもしろさと奇跡的なすばらしさを全力で伝えてくれた。
今回の「YON EXPO」のコンセプトは「Terminal」。場内には保安検査場を模したゲートが設けられ、ステージには空港の案内掲示板をモチーフにした装飾(よく見るとバンドのディスコグラフィが記されている)が施されている。場内の影アナウンスも機内放送ふうなら、オープニングの映像も飛行機の中で流れる非常設備案内ビデオふうである。空港に近いロケーションというのもあるが、彼らのメジャーファーストアルバムが『CAVU』――航空用語で「限りなく視界良好」を意味するタイトルだったことを考えると、ここから再びスタートするんだというバンドの意思が伝わってきて感慨深い。
筆者は2日間を通して観たが、結論から言うと1日目と2日目はまったく違うライブだった。セットリストが違うというのはもちろんだが、それだけではない。メンタリティという意味でも技術的な意味でも、フォーリミは2日間をかけてすべてを取り戻していった。その変化が、すべてステージの上で表現されていた。どこまでもリアルなドキュメント。ロックバンドのライブというのはそういうものだったと、彼らは改めて思い出させてくれた。
今回のライブのテーマソングともいえる「Terminal」からスタートした1日目は、久しぶりのライブということもあって当然緊張感がみなぎっていた。「ライブハウスシーン、そして名古屋に帰ってきました。ただいまー!」と叫ぶGENの声にも力がこもる。RYU-TA(Gt/Cho)のギターのイントロから突入した「fiction」やKOUHEI(Dr/Cho)のドラムを切り口に突っ走った「Alien」(ドーンと特効の花火も鳴り響いた)とメンバーそれぞれの見せ場を序盤から盛り込みながら、ライブは徐々に熱を高めていく。HIROKAZ(Gt)が「緊張している」と素直な気持ちを吐露したり、GENが「2日しかいないのに、帽子6個持ってきた」と告白したり、RYU-TAが「1曲目から感動した」と声を震わせたりと、今まであまり記憶にない感じのMCからもわかるとおり、この日のフォーリミは明らかにいつもと違っていた。GENやKOUHEIがやたら衣装にケチをつけていたのも(袖が長いとか、パンツの裾が太いとか)、緊張の表れだったのではないかと今にして思うが、その緊張を振り切るようにバンドはひた走った。
「注目の10曲目は?」というGENの言葉から中盤で早くも「swim」を繰り出し、「midnight cruising」ではミラーボールの反射光で巨大な会場に満点の星空を描き出す。ここにきて「やっと落ち着いてきた、心が」というGEN。ちょうどいいタイミングでやってきたのが、アコースティックコーナーである。初日に披露されたのは「Horizon」と「hello」。こうしてアコースティックの形になると彼らの曲の良さがますます引き立つ。とくに「hello」に込められたメッセージは、コロナ禍の今だからこそ強く響くものだった。
こちらももはや恒例の茶番VTR(メンバーがパイロットやCAや柄の悪い乗客に扮してコントを繰り広げる)を挟んで、早くも後半戦へ。4人は整備士ふうのツナギに着替え、「monolith」を皮切りに次々と攻撃的な楽曲を畳み掛けていく。「EXPO、揺れろ!」というGENの声も響いた「knife」、そして「mahoroba」を経て、披露されたのは久しぶりにライブでやるという「夕凪」。ヘビーなギターリフが終盤に向けてライブをドライブしていく。「こういう状況にあって、俺らって不要不急の存在じゃん。身体の健康に全然関係ないからさ。でも、身体の健康には役立たないけど、心の健康には役立てる気がしています。会いに来てくれた皆さんには感謝しかないです」。いろいろな思いを経て出てきたのであろう言葉を切々と語るGEN。その思いのすべてを乗せて鳴らされた「Letter」をひときわエモーショナルに聴かせると、「milk」では思い切り歌詞をトばすというアクシデントを挟みながらも、最後には「Squall」と「My HERO」(オーディエンスの手拍子も力強かった)ででっかい風景を描き出してみせた。
明けて2日目は「Feel」からアグレッシブに始まった。演奏の塊感、GENの声のハリ、すべてが前日とは違う伸びやかさを見せている。客席からの手拍子を受けながら絶好のロケットスタートを切ると、そのあとは本当にあっという間だった。ステージの端までアクションしながら楽しそうにギターを弾くHIROKAZ、「climb」でのKOUHEIの躍動感溢れるビート。ハイトーンを響かせるGENの表情にも自信がみなぎっているように見える。
『CAVU』の意味を説明しながら披露した同作からの「days」、「nem...」、そして「medley」と前日はやらなかった楽曲を立て続けにぶちかますと、客席の温度も一段と上がっていく。実は「medley」はKOUHEIのジストニア(ドラマーの職業病である)の影響もあって封印していた楽曲だったそうで、それをこの日に解禁したというところにも、並々ならぬ決意が透けて見える。前日に続いてスケールの大きな景色を描き出した「midnight cruising」を終えて、GENが言葉を吐き出す。「鳴らしてるだけでエモい。みんながいるだけでエモい」。少し肩の力が抜けたからこそ、そんな実感が湧いてきたのだろう。「RYU-TA、いつもウンコ長いじゃん? そのウンコすらエモい」と独特の視点でその実感を語りつつ、「俺たちの居場所はここだな」と言い切るGENの声はどこまでもうれしそうだ。
前日に続いての「Horizon」とともに「soup」を披露したアコースティックコーナーに続いて、ライブは怒涛の後半戦に突入する。ソロ回しも決まった「Night on」から「monolith」を経て、「Alien」、そして「Utopia」へ。激しいビートがどこまでも突き進むなか、GENとRYU-TAが観客と一緒にジャンプする。「Shine」では弾むようなリズムが4人を後押しし、「大切なものを取り戻せてる感じがします」というGENの言葉とともに鳴らされた「hello」からは思いの丈が溢れ出る。歌い終えて「気づいたんだけど、俺、歌うまくない?」とメンバーに話しかけるGENはいつもどおりだが、そのあとスタッフへの感謝を述べつつ「恵まれているってこと、忘れてました」と語る声は心なしか震えていた。
「自分自身に生まれ変われ!」というメッセージとともに放たれた「Squall」を経て、前日の1曲目だった「Terminal」で本編を締めると、アンコールでは「swim」でこの日最大の一体感を生み出し、ワンマンでしかやらない「Give me」で大団円……かと思いきや、「感謝ついでに」もう1曲、「Remember」を披露。最後まで全速力で突っ走り、2日間の復活ライブは幕を閉じた。
たくさんの楽曲が演奏されたライブにあって、2日間ともにセットリストの真ん中あたりで鳴らされた「Jumper」はとりわけ印象的だった。コロナ禍真っ只中にリリースされ、遅ればせながらこの「YON EXPO」がライブ初披露となった最新曲。歌詞のポジティブでパワフルなメッセージと、たくましく練り上げられたアンサンブルは、この日鳴らされるためにあったのだと思った。「YouTubeじゃ足んないんだよ! 配信じゃ足んないんだよ!」。2日目のアンコールでGENはそう叫んだ。ライブハウスシーンで生きると決めたバンドが、この日までどれだけの思いを抱えてきたのか。彼自身を襲った病気も含めて、この場所にたどり着くまでにどんな逡巡を経てきたのか。その言葉にすべて表れていた。地元・愛知で、フォーリミはもう一度滑走路を走り、高く高く飛び上がった。ここからまた、新しい「フライト」が始まっていくのだ。
【取材・文:小川智宏】
【撮影:ヤオタケシ、瀧本JON...行秀】
セットリスト
YON EXPO’20
2020.11.28-29@Aichi Sky Expo
[DAY1]
- 01.Terminal
- 02.climb
- 03.Chicken race
- 04.message
- 05.fiction
- 06.escape
- 07.Alien
- 08.Jumper
- 09.Kitchen
- 10.swim
- 11.midnight cruising
- 12.Horizon
- 13.hello
- 14.monolith
- 15.knife
- 16.mahoroba
- 17.夕凪
- 18.Letter
- 19.milk
- 20.soup
- 21.Squall
- 22.My HERO
- EN1.Now here, No where
- EN2.Give me
[DAY2]
- 01.Feel
- 02.Warp
- 03.climb
- 04.days
- 05.nem...
- 06.medley
- 07.midnight cruising
- 08.Jumper
- 09.fiction
- 10.Milestone
- 11.mahoroba
- 12.Horizon
- 13.soup
- 14.Night on
- 15.monolith
- 16.Alien
- 17.Utopia
- 18.Letter
- 19.shine
- 20.hello
- 21.Squall
- 22.Terminal 【ENCORE】
- EN1.swim
- EN2.Give me
- EN3.Remember
お知らせ
DAY1 - SETLISTプレイリスト
https://VA.lnk.to/YONEXPO20-DAY1
DAY2 - SETLISTプレイリスト
https://VA.lnk.to/YONEXPO20-DAY2
■ライブ情報
ONAKAMA 2021
2021/01/24(日)愛知 名古屋 日本ガイシホール
2021/01/31(日)大阪 大阪城ホール
2021/02/11(木)福岡 マリンメッセ福岡
w/ THE ORAL CIGARETTES / BLUE ENCOUNT
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。