ポしなのクリエイティビティ全開! 鋭くも温かいステージの模様をご覧あれ!
ポップしなないで | 2019.12.16
儚さも妖しさも可愛らしさも内包した独特の歌声が魅力のかめがい(Key/Vo)と、作詞作曲を手がけるかわむら(Dr)からなる2ピース、ポップしなないで。ロックバンドのような、演劇のような、ラッパーのような……多彩な顔を持つ彼らが、今夏、3rdミニアルバム『禁じられてはいない遊び』をリリース。同作を引っ提げた「『禁じられてはいない遊び』レコ発ツアー"ヨルネコアルク"」が、9月22日、東京・渋谷WWWでのワンマンライブで幕を下ろした。
吹奏楽部の練習を連想させる金管楽器の懐かしい残響に包まれるなか、薄暗いステージには、鍵盤とドラムセットが寄り添いスタンバイ。そこに、程よい緊張感を纏ったふたりが満を持して登場。スポットライトがパッとかめがいを照らすと、「言うとおり、神さま」の弾き語りからライブはスタートした。じっと命が吹き込まれるのを待っていた鍵盤が、無邪気な音色で観客に手招きをすると、かめがいの幼さを残した声が最初の物語を語り始める。間奏でかわむらのドラムが加われば、WWWはポップしなないでが紡ぐ非日常の世界にゆっくりと塗り替えられていった。
「渋谷WWW、ポップしなないで、おまえらを救いに来たぜー!」
ふいに演奏を止め、かめがいが叫ぶと、助走をつけるようなドラムから「フルーツサンドとポテサラ」へ。軽やかなサウンドと捲し立てるようなファストラップが心地よい「砂漠の惑星」では、超満員のフロアからも自然と手拍子が湧き起こった。いわゆるロックバンドのライブではよくある光景も、曲に合わせて手を挙げたり、メンバーが煽ることが珍しい彼らのライブにおいては、ひと際特別な意味を持っていたのだろう。「不登校少年少女のエチュード」を歌い終えたかめがいは、フロアを見渡しながら「本当にうれしい」と満面の笑みを浮かべていた。
その後、「今年の夏は暑かったね」と語りかけてから届けたのは、最新ミニアルバム『禁じられてはいない遊び』より「ラムネ日記」。ミラーボールの光と青いライトが駆け回るなか、ソーダのような清涼感のあるサウンドが甘酸っぱい歌声を溶かして、観客一人ひとりの中に思い出の夏を描き出す。同じくミニアルバム収録曲の「バンジー!」は、前作を出したときスタッフに「目標を達成できなかったらバンジー」と課題を課したことがきっかけで生まれたということで、ドッドッドッドッというキック音が鼓動のように鳴り響き、畏怖とユーモアが融合した新感覚のポップソングに仕上がっていた。
ようやく迎えたMCでは、「ついこの間まで、お客さんひとりの前でやってたのにね」(かわむら)、「それもうちのお客さんじゃない人ね」(かめがい)と笑いを誘いつつ、改めて、会場に足を運んでくれた人たちに感謝を伝えるふたり。その流れでかわむらが「北海道の不良女と三鷹の純朴な青年がよくもまぁ……ありがとうございます」と述べると、「We are ポップしなないで」という台詞を言い添え、「ヤンキーラブ」「初恋ラボ」といったラブソングを連発。一転して、「サビで手を挙げてもいいやつです」という控えめな煽りから突入した「救われ升」では、かめがいとかわむらが放つ言葉に合わせて、観客全員がリズミカルに手を挙げ、楽しいひとときを共有。叫びにも似た開放的なロングトーンが耳に残る「コトリズム」や、《まあいっか!》《大丈夫!》というフレーズが魔法の言葉のように響いた「エレ樫」も演奏され、観客の心を浄化していった。
本編中盤には、巻き舌ですごみを効かせた歌声がセクシーな「大正カゲキロマン」や、切なくもどこか前向きな心情を淡々と吐き出す「好きになったような気がしたんだ」など、懐かしい楽曲を披露。そのまま、イントロのピアノからポしなワールド全開の代表曲「魔法使いのマキちゃん」に繋ぐと、フロアはひと際華やいだ。
家出がテーマの「Life is walking」を演奏する前には、「みんなは家出をしたことがありますか?」と問いかけるかめがいの周りをかわむらが歩き回り、「何? すごい嫌な感じ。せめてなんか言えよ」と突っ込まれる場面も(笑)。楽曲からも、宇宙を浮遊しているような心地よいゆるさが漂い、怒濤の楽曲披露においてふっと肩の力が抜けるタイミングとなった。
また、最新アルバムからは「暗いね、ナハトムジーク」と「Creation」も演奏。「Creation」では赤と青のライトが鋭く交差し、ドラムと鍵盤のみで構成された音像の美しさを際立たせる。《正気の沙汰ではないけれど わたしこれしかないから》という歌詞からは、アーティストとしての決意も滲んでいた。
【LIVE】ポップしなないで「Creation」@渋谷WWW
そのうえで、かわむらが「人生最悪で、嫌なことばっかりある。でも、ほかにも見えるものがあったらいいなと思ってバンドをやっています。そういう曲を作りました」と紹介したのは、サビの破壊力がすさまじい「おやすみシューゲイザー」。メンバー自ら手拍子を促し始まった「UFO Surf」では、「U!」「F!」「O!」「Surf!」のコール&レスポンスが繰り返され、ふたりと観客の距離をグッと縮めた。
ここからは、いつもと趣向を変えて、ワンマンならではの挑戦ブロックへ。ギターの石井竜太(ex. ふくろうず)、ベースのいけださき(ex. サカシマ)を迎え、4人編成でラストスパートをかける。この日のオープニングを飾った「言うとおり、神さま」も、ノイジーなギターと小気味よいベースが加わり、疾走感溢れるドラマティックなロックチューンに。「ロケットダンサー」では、躍動感のある演奏が体を揺さぶり、力強い拳までもがリズミカルに突き上げられた。
「私たちでもこんなにすごい景色を見ることができるんだなって、今日やりながら思いました。一人ひとり、全員に心から感謝してます。今日まで生きててよかったって思いました」
本編もあと1曲というところで、かめがいは涙ながらに語った。「今日帰る時に、みんなが少しでも上向きの気持ちになってくれていたらうれしいです。すごく楽しかったこの時間と、すごく暑かったこの夏を終わらせる曲を聴いてください」と告げたラストナンバーは、「2人のサマー」。少し気だるげなサウンドは、石井のアグレッシブなギターを中心にどんどん熱を帯びていく。そして、その熱が最高潮に達した瞬間、残響に包まれながら、石井、いけだ、かわむらがひとりずつ退場。最後に残ったかめがいは、丁寧に頭を下げてから、静かにステージを後にした。
アンコールで再び登場したふたりは、自分たちの音楽を聴いた人たちが、少しでも明るい人生を送れることを願いながら、アルバム収録曲の「ノストラ」と「丑三キャットウォーク」を惜しみなく披露。「丑三キャットウォーク」では、色鮮やかな歌声でボーカルとしてのポテンシャルの高さを見せつけ、アルバムのその先まで覗き込めるほど濃厚なライブとなった。
しかし、観客はまだまだふたりを帰さない。鳴りやまない手拍手に呼び戻されると、ふたりはうれしさを噛みしめながら、弾けるようなポップチューン「早く帰りたい」でダブルアンコールに応えた。そんなツンデレな姿も、ポップしなないでが愛される理由のひとつなのだろう。すべて歌い終えると、かめがいは「みんなも早く帰れよ!」と笑顔で一言。オープニングで「救いに来たぜ!」と叫んでいたように、会場にいた一人ひとりが彼らの言葉にポンっと背中を押され、新たな1歩を踏み出していった。と同時に、かめがいとかわむらもまた、大勢の同志たちとのかけがえのない時間に救われ、新たな活力を手にしたに違いない。ステージを去る時の軽やかな足取り、清々しい表情が、すべてを物語っていた。
【取材・文:斉藤碧】
【撮影:Kazuma Kobayashi】
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ポップしなないで
リリース情報
禁じられてはいない遊び
2019年08月07日
KINGAN RECORDS
02.丑三キャットウォーク
03.ラムネ日記
04.ノストラ
05.暗いね、ナハトムジーク
06.バンジー!
リリース情報
『好きになったような気がしたんだ』(会場限定販売)
2019年12月24日
KINGAN RECORDS
02.好きになったような気がしたんだ
03.夜はこれから
04.放課後より愛を込めて
05.asobiba
セットリスト
『禁じられてはいない遊び』レコ発ツアー“ヨルネコアルク”
2019.9.22@渋谷WWW
- 1.言うとおり、神さま(かめがい弾き語り)
- 2.フルーツサンドとポテサラ
- 3.砂漠の惑星
- 4.不登校少年少女のエチュード
- 5.ラムネ日記
- 6.バンジー!
- 7.ヤンキーラブ
- 8.初恋ラボ
- 9.救われ升
- 10.コトリズム
- 11.エレ樫
- 12.大正カゲキロマン
- 13.好きになったような気がしたんだ
- 14.魔法使いのマキちゃん
- 15.Life is walking
- 16.暗いね、ナハトムジーク
- 17.Creation
- 18.おやすみシューゲイザー
- 19.UFO Surf
- 20.言うとおり、神さま(BAND SET)
- 21.ロケットダンサー(BAND SET)
- 22.2人のサマー(BAND SET) 【ENCORE】
- 1.ノストラ
- 2.丑三キャットウォーク
- 3.早く帰りたい
お知らせ
ポップしなないで ONE MAN SHOW『闇鍋』
2019/12/24(火)東京 下北沢BASEMENT BAR
LIVE DI:GA JUDGEMENT 2019
2019/12/30(月)東京 渋谷CLUB QUATTRO / TAKE OFF 7
w/ 赤い公園 / WOMCADOLE / Karin. / コレサワ / Saucy Dog / SHISHAMO / The Songbards / バレーボウイズ / the band apart / フレンズ / ポップしなないで / Mellow Youth / ヤングオオハラ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。