ハルカミライが強くなるための「挑戦」――自身最大キャパで挑んだ幕張メッセ公演「A CRATER」
ハルカミライ | 2019.12.17
これは「自由」を勝ち取るための「挑戦」なのだ。
八王子発の4人組、ハルカミライは今年結成7年目を迎え、自身最大キャパとなる幕張メッセ国際展示場1ホールにてワンマンを開催。会場に入ると、真っ先に目に飛び込んできたのは壁の側面に張られた黒幕にある白抜きの文字だった。「HRKMRI IS ALWAYS AT THE LIVE HOUSE」。バンドの理念を掲げた、そのメッセージの意味を考えながら、開演を待つ。360度ステージを取り囲む形で観客の数はみるみる増え、その表情はみんなキラキラと輝いていた。これから何が始まるんだろう、というバンドに対する期待感を肌で感じた。
開演時間が過ぎ、SEが流れはじめ、小松謙太(Dr/Cho)、関 大地(G/Cho)、須藤 俊(B/Cho)、そして、最後に橋本 学(Vo)が現れると、ステージをピョンピョン飛び跳ね、頭を搔き毟り、檻の中のライオンのごとく右往左往する。「シャーッ! やって来たぞ、幕張、始めようか!」と橋本が号令をかけると、「君にしか」でスタート。ド頭から観客は拳を突き上げ、次の「カントリーロード」に入ると、関は最前ブロックにいきなり降り、観客の眼前でギターを搔き鳴らす。その特攻ぶりを見て、「行ってんなあー!」と声を出す橋本。2曲目の時点でただならぬムードが立ち込めていた。また曲中に自己紹介を挟み、「歌、俺とお前!」と高らかに叫ぶ橋本のMCには毎回ゾクッとするし、会場を一つに束ねるマジック・ワードと言っていいだろう。
そして「ファイト!!」が始まるや、後方のブロックにいた人がサーフして最前ブロックにどんどん入って来る。曲をやり終えると、「一応ブロックあるけど、関係ねぇ、いいよ」と声をかける橋本。俺たちはやりたい放題にやるから、お前たちも好き放題にやってくれ、と言わんばかりだ。これは本当にバンドと観客の間に信頼関係がなければできないことである。最前ブロックの密度は高くなるばかりだったが、幸いにも僕の周りでは大きな混乱やトラブルは起きてなかった。観客1人ひとりが秩序を守り、この場所を最高にエンジョイしている。
「360度、キャパでかいとか関係ねぇ、いつも通りのライブをやる」と言い、多幸感に満ちた「幸せになろうよ」においては女性ファンをステージに上げる場面もあり、さらに「決めたセトリでこれやるとか、嫌だから」と再びここで「ファイト!!」をぶっ込む。続けて「Tough to be a Hugh」を2回プレイする脱線ぶりで、これには観客も大盛り上がり。予定調和なんてクソ食らえ、自分たちがドキドキしなけりゃ、受け手が興奮するわけねぇだろ。そう言外ににおわせる、ハルカミライの吹っ切れた自由度に序盤から拍手喝采を送りたくなった。ライブはまだ中盤にも達していなかったけれど、ここにいる人たちの心をガッチリと掴んでいた。
破天荒な暴れっぷりを魅せる一方で、「星世界航行曲」、「ウルトラマリン」、「Mayday」、「ラブソング」と橋本のソウルフルかつエモーショナルな歌唱力が味わえるミドルテンポの楽曲を連投。「世界を終わらせて」では出だしから観客は歌詞を歌い上げ、会場は静かに燃え盛っている。楽曲の激しさや勢いだけに依存せず、みんなが歌える楽曲を多く持つバンドは強い。音楽は受動的な側面が大きいけれど、一緒に歌うという行為はとてつもなく能動的な行為だ。ハルカミライの楽曲は積極的に参加したくなる魅力に満ち溢れている。
「いつものライブハウスと違うと思ってる奴、挑戦なんだよ、強くなるために、進化するために」と橋本は言っていた。だだっ広い幕張メッセで自分たちのライブを貫き通し、まだ見ぬ景色に辿り着きたい。今日はその第一歩なのかもしれない。ニューシングル表題曲「PEAK’D YELLOW」は、まさにみんなで歌える曲の最新型と言えるものだ。イントロからバンドと観客の息がピッタリ合った大合唱で幕を開け、曲中にもそれが続く。俺とお前の歌が幕張メッセを包み込む。天井のライトが激しく明滅する演出も相まって、キラキラと輝くような一体感を作り上げていた。
だが、小綺麗にまとまった状態で後半を迎える気は、彼らにはさらさらなかった。ここから脱線パート2に突入だ。「エース」の後半に橋本がベース、小松がボーカル、須藤がギター、関がドラムとパートをチェンジして演奏。その編成のまま「ファイト!!」をやり、次は関がベース、橋本がドラムと一部交替してさらに「ファイト!!」のダメ押しという流れに観客も大興奮。「幕張でこんなことやっていいの? 恥ずかしいわ。でもこれが俺たちの挑戦、お前らも勇気を出してやってみろ!」と橋本はかっこ良くまとめていたが、自分でも笑いが止まらない様子だった。こんな飾り気のなさも愛される理由なのだろう。
さんざんふざけ倒した後に「宇宙飛行士」、「アストロビスタ」とロマンチックに聴かせてくれるのだから、そのギャップもたまらない。本編ラスト「ヨーロービル、朝」ではスケールの大きな歌を轟かせ、一旦ステージを降りた。鳴り止まぬアンコールに応え、橋本の弾き語りで「これさえあればいい」を披露。艶のある歌声に聴き入った後、「じゃあな、バイバイ!」と別れの挨拶をするものの、ここから「みどり」、「ファイト!!」と放つ。それで終わるかと思いきや、「俺達が呼んでいる」、「フュージョン」、「Tough to be Hugh」、「エース」と続き、「(事務所の)社長にもう終わろ?て言われた」と橋本が苦笑しつつ、トドメの「これさえあればいい」で再び大合唱を巻き起こし、結局7回(!)のアンコールを行う脱線パート3が最後に待ち受けていた。
普通ならばグダグダで終わりそうなラストである。しかし、観客も嬉々としてこの状況を楽しんでいたし、会場のテンションはアンコールをやる度に上がる一方であった。200人のライブハウスだろうと、360度ステージの幕張メッセだろうと、ハルカミライは己の心に忠実にやり遂げるのみ。一緒に歌って、騒いで、自由奔放にやり切ることが彼らの掲げる「LIVE HOUSE」なのだろう。幕張メッセをライブハウスに変えるなんて言葉さえも陳腐に思えるほど、ぶっ飛んだパフォーマンスの連続に魅せられた。彼らはさらなる「自由」を求めて、これからもっと大暴れしてくれるに違いない。優しいロックスターの「挑戦」はここからが始まりなのだ。最後にこれだけは言っておきたい。控えめに言っても、伝説の名に値する幕張メッセ公演だった。
【撮影:Masanori Fujikawa、小杉歩】
リリース情報
PEAK’D YELLOW
2019年11月13日
ユニバーサルミュージック
02.君と僕にしか出来ない事がある
03.これさえあればいい
セットリスト
ハルカミライ presents「A CRATER」
2019.12.8@幕張メッセ国際展示場1ホール
- 01.君にしか
- 02.カントリーロード
- 03.ファイト!!
- 04.俺たちが呼んでいる
- 05.春のテーマ
- 06.俺よ勇敢に行け
- 07.ゆめにみえきし
- 08.predawn
- 09.October’s
- 10.幸せになろうよ
- 11.ファイト!!
- 12.Tough to be a Hugh
- 13.Tough to be a Hugh
- 14.星世界航行曲
- 15.ウルトラマリン
- 16.Mayday
- 17.ラブソング
- 18.世界を終わらせて
- 19.君と僕にしか出来ない事がある
- 20.Tough to be a Hugh
- 21.それいけステアーズ
- 22.パレード
- 23.PEAK’D YELLOW
- 24.QUATTRO YOUTH
- 25.フュージョン
- 26.エース
- 27.ファイト!!
- 28.ファイト!!
- 29.宇宙飛行士
- 30.アストロビスタ
- 31.ヨーロービル、朝
- 32.これさえあればいい(Vo.橋本弾き語り)
- 32.みどり
- 33.ファイト!!
- 35.俺たちが呼んでいる
- 36.フュージョン
- 37.Tough to be a Hugh
- 38.エース
- 39.これさえあればいい
お知らせ
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2019/12/19(木) 仙台enn 2nd
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2019/12/21(土) ポートメッセなごや1~3号館
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2019/12/22(日) 京都パルスプラザ
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2020/01/08(水) 今池HUCKFINN
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※いずれか1日の出演となります。
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