前へ

次へ

音楽に触れる楽しさ、温かさ、美しさを実感したブリッツワンマン。徹底レポート!

マカロニえんぴつ | 2020.01.23

「タイトルの『season』には“旬”の意味もあったりします。時代の旬になることは、いつかは腐ってしまうのが前提だとつい考えてしまって……。でも、そのように時代の旬を追いかけるよりは、あなたと私との一対一の関係――そのお互いが必要とし合った結果が旬であったなら、ずっとバンドも旬でいられるんじゃないかな。自分たちのやってることはずっと変わっていなくて。常にグッドミュージックを想いのままに届けることなんです。これからもそれをずっとやり続けていきたい!」。
これはライブ中、昨秋発売のミニアルバム『season』収録曲の「TREND」を始める際に、はっとり(Vo/Gt)が同曲に寄せて語ったMCだ。そしてこれは私の中で、この日、最も印象に残っている言葉でもあった。
「まさに!」と、彼らのこれまでの道程や数々の楽曲を思い返しながら改めて納得する一方、彼らはその旬の相手を、世間や社会ではなく、現在彼らを欲していたり求めている人たち、そしてその向こうで待っている、これから出会い、昇華し合う人々に向けて曲を贈る決意、加えて、あえて世のトレンドに迎合したり左右されずに、自己が思うグッドミュージックをさらに探求し、確立し、持続させ、拡大していく所存と意志が、冒頭の言葉を含め、この日の彼らのライブの幾場面から窺えた。

 ミニアルバム『season』とともに回ったマカロニえんびつのワンマンツアー「マカロックツアーvol.8 ~オールシーズン年中無休でステイ・ウィズ・ユー篇~」が、ここマイナビBLITZ赤坂にて大盛況ののち幕を閉じた。彼ら史上最大規模のワンマンツアーではあったが、追加公演も含めてチケットは全ヵ所早々にソールドアウト。マイナビBLITZ赤坂公演で見ても、前日の同会場での追加公演も含めて2daysとも即完。あまりのプラチナぶりに急遽動画中継配信が決定したほどだ。

 セットリストも照明や演出もライブ用のアレンジも、実にこの規模でやり慣れているかのような自然さ溢れるライブを展開したこの日の彼ら。あわせて、この日は動画中継を通して、今後じかに会えるかもしれない人々に改めての自己紹介や自己の誇示、曲に対する想いを語る試みも取り入れられ、新参古参問わず、わかりやすく伝わりやすく、どの曲も彼ららしさ全開だったのも印象深い。

 これまで流れていた場内のBGMがUNICORNに変わり、場内にまもなく開演の雰囲気が流れる。そこにいつもの登場SEが響き渡り、ライトで真っ赤に浮かび上がったステージに、まずは田辺由明(Gt/Cho)、高野賢也(Ba/Cho)、長谷川大喜(Key/Cho)、サポートドラムの高浦充孝が現れる。間を置き、はっとりも登場。まずはステージ中央のはっとりにスポットライトが当たり、「青春と一瞬」のサビが弾き語りにて歌われる。ひと節歌い終えると1コーラス目に戻り、そこにバンドサウンドもジョイン。ジワジワと同曲が場内に染み渡っていく。「焦るな。だけど時間は無限ではない」といった秘めたメッセージにみんなが自身を照らし合わせる。続いて、田辺のワウと高野のスラップが映えた「トリコになれ」では躍動感のあるファンキーなサウンドが場内にバウンスを引き起こす。また「レモンパイ」に入ると景色がさらに聡明に。シチュエーションや機微により、ときには甘く、ときには酸っぱく響く同曲だが、この日はどこか甘美に感じた。

「お待たせしました。待ってた?」とはっとり。満場が「もちろん!」代わりの大歓声を返す。場内を四望し、「こっから見るとすごい景色。古くからの方々から最近好きになってくれた方々まで、幅広く楽しめるようにまんべんなく考えたセトリ。とはいえライブは一緒に作り上げるもの。ぜひ一緒に作り上げましょう」とはっとりが優しくエスコートしていく。

 田辺の作った「恋のマジカルミステリー」がドライブ感と上昇感、ライブならではのタイトさを交えて場内を惹き込みにかかれば、「眺めがいいね」では会場も交えてのバウンス大会。みんな実に楽しそうに跳ねる。「ミュージックラバーのあなたとマカロニえんぴつを繋ぐ歌」と称した「MUSIC」では、はっとりと田辺によるユニゾンリードも冴える。信憑性たっぷりに歌われる《夢を持ったあなたには きっと届く、あなたには/グッドミュージック》のフレーズは、この日も頼もしかった。そして次の曲「愛の手」にて歌われるのは失う怖さ。ラストは背後からの白色ライトでステージが発光、神々しく映った。また、これらとは雰囲気も一変して、性急な「ワンドリンク別」では、会場が激しくグイグイとステージへと惹き込まれていく。もちろん「ワンドリンク別!」のターンでは“待ってました!”と会場も大合唱。従来のファンへのサービスも忘れていない。続いた久々のナンバー「幸せやそれに似たもの」では、その後悔が成仏していく様を見、結局はあなたがいなくちゃダメなのだという気持ちに至る場面が痛かった。また同曲のハイライトは、はっとりと田辺のツインリードを含んだメンバー各々のソロ回し。そこでは彼らの高いプレイヤビリティが味わえた。

 冒頭でも記した、長谷川の作った「TREND」は、『season』の中で最も、従来の彼らになかったタイプの曲。ライブでは浮遊感を交えた不可思議な体験をさせてくれた。なかでも特徴的だったのは照明。白色スポットを美しく使ったその照明は、このような大きな会場ならでは。この場面に限らず、この日は照明類の演出も彼ら史上過去最高。各曲の雰囲気をより可視化させ、逆にバンドも楽曲を映えさせる相乗効果で魅了した。それは結果、彼らが大きな会場で、それ相当の舞台演出を用いても遜色なくステージを成立できる対応力と応用力、器を持っていることを裏付けた。

 バンド全体の骨太でアバンギャルドさ溢れるインストを経て辿り着いたのは、4つ打ち快楽の園「STAY with ME」であった。高野がアナログシンセベース音を交え、フロア頭上にセットされた巨大なミラーボールも回転。至福と高揚と刹那を会場中に広げ、みんなを心地よく躍らせていく。

「一切の負の感情を引き受けに参りました」とはっとり。インストアレンジされた「ブルーベリー・ナイツ」をイントロ代わりに同曲に突入。冷めないで、消えないでという気持ちと、どこか自暴的になっている相混ぜな心境が痛いほど伝わってくる。そして去年を振り返り、「色々な憧れに近づけてくれてありがとう」という感謝の気持ちが込められた「あこがれ」が、“バンドを始めよう!”と思い立ったあの頃の自分に向けてのタイムカプセルのごとく送られた。歌われた《いつか誰かのあこがれになろう》のフレーズも、彼らを慕う後輩やファンが多数の今では、その実現性と、時を経た答え合わせの結果が「正」と出たように、今やその歌に多分の信憑性を帯びていることを実感した。

「残ってる元気を一緒に絞りだそう!」(はっとり)と、「洗濯機と君とラヂオ」が会場を再び並走させれば、「会場中の後悔をすべてなかったことにする魔法の歌やります」と入った「Supernova」では、疾走感がどこかやけくその爽快感を交え、会場中の報われない思いや後悔を一斉に退治してくれた。
「いつまでもあなたの大切な逃げ場所になりたい!」と、より性急に「ハートロッカー」がカウパンクのビートに乗り会場をガシッと抱きしめたまま激走していけば、「本当に楽しい時間でした。これからもこの音楽をどうぞよろしく」の言葉とともに入った「ヤングアダルト」においては、ルーザー目線ながらどこか信じることへの祈りや希望を感じた。

 アンコール、とその前に大事な告知が。4月1日のフルアルバム『hope』リリースと、4月からの全国ワンマンツアーの開催が告げられ、会場が歓喜に包まれた。
そして、そのアルバムに収録される「恋人ごっこ」が一足先に届けられた。《ねぇ、もう一度何回もやろう》《またこんな恋をしたい》と歌われる同曲。途中からの6/8拍子への急変も興味深かった。そして正真正銘のラストは、素通りしないでいてくれたあなたへの感謝の込もった、こちらも6/8のロッカバラード「ミスター・ブルースカイ」。同曲では雲ひとつない青空へと歌が昇華していく様を見た。曲中で歌われている、いつか広がる雲ひとつない青空を想像し、そこに自身を佇ませていたのは決して私だけではないだろう。 「やり切った!」そんな満足そうな表情を残し、彼らは次の“旬”へと向かっていった。

 彼らは自身の歌に共鳴し、共感し、逃げ場所やより所として欲したり、付き合ってくれる人たちとともに、その形態を変化させていきつつも、常に“旬”を保持していく。春にはニューアルバムとツアーとで、彼らはまた全国のあなたに「今の旬」を届けに行くことだろう。そこで体験したものは、きっと何年、何十年経ってもあなたにとっては旬であり続けるに違いない。マカロニえんぴつのはっとりが憧れていたあのアーティストがいつまでも彼の旬であり続けているように、マカロニえんぴつも常に彼らを求める人たちの旬であり続けることを目指す。だって彼らの目指しているもの、やりたいことは結成時から変わらぬ、「グッドミュージックを<想いのまま>に届ける」なのだから。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:酒井ダイスケ】

関連記事

リリース情報

season

season

2019年09月11日

TALTO / murffin discs

01.ヤングアダルト
02.恋のマジカルミステリー
03.二人ぼっちの夜
04.TREND
05.青春と一瞬
06.two much pain(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)
07.ワンドリンク別(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)
08.哀しみロック(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)
09.レモンパイ(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)
10.STAY with ME(2019.05.12 恵比寿LIQUIDROOM公演)

セットリスト

マカロックツアーvol.8 〜オールシーズン年中無休でステイ・ウィズ・ユー篇〜
2020.1.12@マイナビBLITZ赤坂

  1. 1. 青春と一瞬
  2. 2. トリコになれ
  3. 3. レモンパイ
  4. 4. 恋のマジカルミステリー
  5. 5. 眺めがいいね
  6. 6. MUSIC
  7. 7. 愛の手
  8. 8. ワンドリンク別
  9. 9. 幸せやそれに似たもの
  10. 10. TREND
  11. 11. STAY with ME
  12. 12. ブルーベリー・ナイツ
  13. 13. あこがれ
  14. 14. 二人ぼっちの夜
  15. 15. 洗濯機と君とラヂオ
  16. 16. Supernova
  17. 17. ハートロッカー
  18. 18. ヤングアダルト
  19. 【ENCORE】
  20. 1. 恋人ごっこ(新曲)
  21. 2. ミスター・ブルースカイ

お知らせ

■ライブ情報

TALTOナイト2020 東阪福ツアー
01/31(金)東京 渋谷TSUTAYA O-WEST
w/ 東京カランコロン / SAKANAMON / レイラ(O.A.)
02/07(金)福岡 INSA
02/09(日)大阪 Music Club JANUS
w/ 東京カランコロン / SAKANAMON / ヤユヨ(O.A.)

マカロックツアーvol.9 〜Saucy Dogと東名阪ドッグラン!篇〜
02/19(水)東京 恵比寿LIQUIDROOM
02/26(水)愛知 名古屋CLUB QUATTRO
02/27(木)大阪 梅田CLUB QUATTRO

murffin night 2020 in TOKYO
03/18(水)東京 新木場STUDIO COAST
w/ SUPER BEAVER / Czecho No Republic / テスラは泣かない。 / 東京カランコロン / なきごと / SherLock(O.A.)

マカロックツアーvol.10 〜わずかな希望を探し求める者たちよ篇〜
04/18(土)大阪 なんばhatch
04/19(日)香川 高松オリーブホール
04/24(金)神奈川 KT Zepp Yokohama
04/29(水・祝)静岡 Live House浜松窓枠
05/01(金)熊本 B.9 V1
05/02(土)福岡 DRUM LOGOS
05/09(土)新潟 NEXS NIIGATA
05/10(日)石川 金沢EIGHT HALL
05/21(木)北海道 Sound lab mole
05/24(日)宮城 仙台darwin
05/26(火)岩手 Club Change Wave
05/31(日)広島 LIVE VANQUISH
06/05(金)愛知 名古屋DIAMOND HALL
06/13(土)東京 豊洲PiT

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る