レビュー

マカロニえんぴつ | 2020.11.04

 マカロニえんぴつがメジャー1st E.P.「愛を知らずに魔法は使えない」をリリース。全6曲が収録された本作は、彼らの“音楽の幅”が、彼らの未来に直結する作品になっていると思う。

 じつに自由。そしてじつに、力強い。

 バンドという己のライフスタイル、もっと言ってしまえば“マカロニえんぴつ”という存在をそのまま歌にしたような「生きるをする」で幕を上げる今作。“生きるをする”という、日本語としてあり得ない言葉をタイトルに据えた勇気も素晴らしいが、注目したいのは、マカロニえんぴつには、この言葉を納得させるオリジナリティがあるということだ。彼らの意思表明ともとれる内容のこの1曲は、カントリーの影響を感じるリズムをメインにした軽快な曲……と、断定できないのが、このバンドの面白さ。途中でテンポダウンし、メロディも歌詞も別のアプローチのブロックを挟みこんできている。コーラスのアプローチも含め、非常に繊細なブロックだが、複雑なバンドアンサンブルを経て、急速にテンポをあげ最後はエモーショナルなバンドサウンドに戻していく。

 1曲の中に、サウンドだけでストーリーを展開するのは彼らの得意技だが、ここがじつにスリリングで、魅力的である。個々のスキルの上に成立している、突発的ともとれるストーリー性と、サウンドの大胆な足し引き、テンポのアップダウンは、そのまま人間の感情の起伏に重なるように思う。大人になればなるほど、自制スイッチが働く“感情”という代物を、激しさや初期衝動をそのままに、バンドサウンド全体で表現しようとしているのではなかろうか。だからこそ、聴いた後に、どこかにゴツゴツとした感触が残る楽曲が並んでいるのだろう。

 いい意味で“異端”な楽曲が並んだ今作だが、中でも個人的に最も印象に残ったのが4曲目の「カーペット夜想曲」である。80年代のニューウェイブを彷彿させるエレクトロニックなリズム。ノリで刻むラップのような譜割りのAメロ。しかしながらその譜割りは、ヒップホップ経由でなく、ファンク経由なのでは? 面白いなぁ、と思ったところで、鮮やかにサウンドが翻る。英詞やファルセットも含め、ビートルズの中~後期を思わせるサイケデリックなサウンドアプローチ。冒頭で触れたリズムやフレーズは残したまま、解放感あるサビへ繋がっていく。ダンサブルなリズム、各パートの残響音の重ね方、ディティールの効果音、歌詞の内容など、ファンタジー要素満載の1曲であるが、そんな中で光るのが、歌詞の<どうか会えるうちに会いたい人に!>というワンフレーズである。楽曲全体に漂う夢見る少年のシチュエーションも“会いたい人に会いたい”というリアルで無骨な言葉も、もっと言えってしまえば“生きるをする”というエモーショナルなスタンスも、彼らにとっては、ずっと追い続けてしまう抗えない男のロマンなのだろう。例えば、今、世界中が抱える不安があっても、彼らのロマンは尽きることがない。“マカロニえんぴつ”という、ロマンを奏でる場所がある限り。

 男のロマンって、切りがない、男のロマンって、たぶん、終わりが無い。だからちょっと切なくて、いつでもフレッシュで在り続けるのだろう。

 マカロニえんぴつの新作「愛を知らずに魔法は使えない」は、男のロマンが詰まった、じつにフレッシュな作品である。

【文:伊藤亜希】




▼マカロニえんぴつ「mother」MV▼

リリース情報

愛を知らずに魔法は使えない

愛を知らずに魔法は使えない

発売日: 2020年11月04日

価格: ¥ 1,636(本体)+税

レーベル: TOY’S FACTORY

収録曲

01.生きるをする
02.ノンシュガー
03.溶けない
04.カーペット夜想曲
05.ルート16
06.mother

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