今年もこの季節がやってきた! ロックレーベル「TALTO」所属バンドが一堂に会した「TALTOナイト2020」徹底レポート!
TALTO | 2020.02.17
東京カランコロン、SAKANAMON、マカロニえんぴつが所属するロックレーベル「TALTO」。そのレーベルイベントが「TALTOナイト」だ。今年は東京・福岡・大阪を行脚する本イベントの初日が、この東京・渋谷TSUTAYA O-WEST公演である。まったくもってバラバラな個性をもち、しかし間違いなく共通する部分のある3バンド(そのへんはあわせて行った動画インタビュー「ライブ閑話」を観てほしい)。あからさまにライバル心をむき出しにしたり、逆に先輩後輩感を出したりはしなくても、そこには明らかに熱くてエモいバンドどうしの関係性があった。そんな競演の模様をレポートする。
まずステージに登場したのは、この日のオープニングアクトとして抜擢された横浜出身の4ピースバンド、レイラ。結成3年ながら、すでに数々のコンテストやオーディションに入賞。その実力は折り紙付きだ。静かにステージインすると、ボーカル・有明がギターを爪弾き歌い出す。そして高らかにシンバルが叩かれ、力強いバンドサウンドが鳴り響く……すわのドラムと牧野ウスシオのベースが叩き出すどっしりとしたリズムと、三浦太樹が奏でる重めのギターリフ、そして少し気だるそうで独特の粘っこさがある有明のボーカル。正真正銘のオルタナティブ・ロックだ。1曲目「SEASIDE」を終え、「よろしくお願いします」という有明の挨拶から2曲目「Emma」へ。アグレッシブなドラムが曲を牽引し、言葉を放り出すような歌がそこに独特のニュアンスを与えていく。おもしろいぞこのバンド。
「改めまして、こんにちは。横浜のレイラです。15分という時間はだらだらライブをやるには短すぎるかもしれないですけど、今日ここにいる方々の記憶に残るには十分な時間だと思っています」。そんな強気の言葉から鳴らされた最後の曲「アパートの中で」。静と動のダイナミズム、大ぶりなリズムと繊細なギターのタッチが描き出すコントラストのなか、ふつふつと沸き立つ愛が溢れ出してフロアを覆っていく。わずか3曲の熱演は、たしかに観客に消えない爪痕を残したはずだ。
レイラの余韻も残るなか、最初のメインアクトとして登場したのはTALTOの第1弾アーティストでもある東京カランコロンである。佐藤全部(Ba)はどこで売っているのかもわからないタフマン(栄養ドリンクのアレね)のTシャツを着てタフマンを持って入場し、タフマンを一気飲み。今日も元気いっぱいである。真っ赤なライトに照らされて、まず披露されたのは、いちろー(Vo/Gt)がハンドマイクで踊り歌うディスコチューン「true!true!true!」だ。ストロボきらめくなか体をくねらせ、フロアを煽るいちろー。最後の決めポーズもばっちり決まり、「東京カランコロンです。よろしく!」という挨拶に歓声が上がる。
続けて最新ミニアルバム『Melodrive』からの「リトルミスサンシャイン」。いちろーのアコギのストロークとカントリー調の弾むリズム、そしてせんせい(Vo/Key)とのハーモニー。カランコロンの「らしさ」をストレートに発揮したこの曲、風を切るように走るサウンドはぐんぐん明るさを増していく。シンプルな楽曲だが、そのぶんこの5人にしか鳴らせないムードと、今のカランコロンの抜けのよさが息づいているのがはっきりとわかる。
と、ここでせんせいがおもむろにカウベルを叩き出し、なだれ込んだのはまさかの「三毒」。カランコロンの変態性といびつさを発揮しまくるこの曲が「リトルミスサンシャイン」で生まれた爽やかな空気を一掃していく。脱臼しそうなリズムパターンと違和感てんこ盛りのおいたん(Gt/Cho)のリフ、佐藤のフレットレスベースが鳴らすうねうねとした低音。それらがサビに突入した瞬間に一気にポップに化ける。相変わらず一筋縄ではいかないバンドだ。「改めまして、男女ツインボーカルバンド、東京カランコロンです! いぇーい! わいわいわい!」といちろー。同じエッグマンのレーベルでも体育会系の[NOiD]と比べて「TALTOはみんなケンカ弱そう」といういちろーに、せんせいは「おにぎり分け合う感じ」と応える。
せんせいがリードボーカルを取る「It’s more wonder」でののびやかなメロディと洒脱なグルーヴ、4つ打ちのキックがスケールの大きな景色を描き出すダンスナンバー「ALL OVER」でのアンサンブルの妙味と高揚感、観客の盛大な手拍子とともに鳴らされた「ビビディバビディ」で発揮される、丸いようでじつはトゲトゲがびっしり生えた東京カランコロンの核の部分……曲ごとにくるくると表情を変えながら、カランコロンにしか鳴らせないポップミュージックを披露していく。最後の曲は「どういたしまして」。軽快なビートに乗せてこの上なくポップなメロディが躍る。お客さんの「どういたしまして!」のコールも決まり、濃厚なライブは終わりを告げた。
続いて登場したのはSAKANAMONの3人。森野光晴(Ba)は、おそらくカランコロンの全ちゃんからもらったのであろうタフマンをステージ中央で高々と掲げてみせる。「はい、どうも、いらっしゃいませこんばんは、SAKANAMONです!」という藤森元生(Vo/Gt)のいつもの挨拶から1曲目「クダラナインサイド」へ。研ぎ澄まされた3ピースの音像がバシンバシンと小気味よく耳に飛び込んでくる。
続けて披露された「幼気な少女」ではフロアを巻き込んでの合いの手と掛け声も決まり、一気にO-WEST全体の温度が上がっていく。それにしても、メロディと演奏、そして歌詞がまっすぐに飛んでくる。SAKANAMONってこんなに王道感のあるバンドだったっけ? それとも、TALTOのバンドたちの中にいるから相対的にそう見えるってことか?と驚いていたのだが、そのあと「みなさん、世の中にはステキないいことを歌っている歌がたくさんありますね。我々はあえて『鬼が怖い』というただそれだけの、メッセージ性ゼロの曲を作りました」と「鬼」に突入するのを見て安心した。「鬼!鬼!」というリフレインが癖になる曲で、最終的に「鬼怖い」が「蟹美味い」になるところがミソ(カニだけに)なのだが、この、人とはちょっと違う視点から言葉を畳み掛け、それが妙に真理を突いてしまうのは藤森の天才的なところである。
「こんばんは、お肉大好きSAKANAMONです!」という口上から藤森の、これまたいつもどおりとっちらかったMCへ。「初めて観る方は……慣れてください!」とどこまでもマイペースだ。そして2月26日にリリースするニューアルバム『LANDER』から「自分の居心地のいい場所を思い浮かべて聴いてほしい」と「HOME」を披露。さっきの「鬼」とは打って変わって、やさしくてセンチメンタルなロックナンバー。ストレートなメッセージが素朴に心を打つ名曲だ。やっぱり王道だろう、SAKANAMON。
藤森のリフから初期曲「ミュージックプランクトン」で再びぐいっとギアを上げると(大サビの観客の大合唱も最高だった)、ハイテンポの4つ打ちビートで疾駆する「SECRET ROCK’N’ROLLER」では間奏でひとりで来た人に挙手させ、「あなたたちは特別な才能を持っているんです」と孤独な「シークレットロックンローラー」を肯定してみせる。「TALTO、ステキなバンドが揃っております。今後とも、TALTOともどもSAKANAMONを応援よろしくお願いします」。そんな最後の挨拶を経て、ピンスポットライトを浴びた藤森がギターを爪弾き「テヲフル」を歌い始める。徐々にバンドの音が重なって、美しい広がりが生まれる。藤森の絶唱といってもいい歌に込められたメッセージが、すべてを肯定するような力強さで光を放つ。どこまでも愚直で、不器用で、口下手。でもその音楽はどこまでも正直に、彼らの中にある熱いものをさらけ出していた。
トリを務めるのはマカロニえんぴつだ。ステージに登場したベース・高野賢也がレーベルロゴの入ったタオルを掲げると歓声が起きる。メンバーから遅れてステージインしたはっとり(Vo/Gt)がギターを下げると、「ミスター・ブルースカイ」からライブはスタートだ。ゆったりとしたテンポのなか、じわじわ高まるエモーションでフロアを包み込んでいけば、曲が終わる頃にはO-WESTは完全にマカロニえんぴつの世界に変貌する。
はっとりと田辺由明(Gt/Cho)の2本のギターと高速ビートが唸りを上げる2曲目「MAR-Z」では変幻自在のテンポチェンジ、流れるようなメロディ、そしてメンバーそれぞれに五線譜の上を動き回りながらも大事なところではピタッとハマるアンサンブルがぐいぐいと観客の耳と目と心を掴んでいく。「おまたせしました、マカロニえんぴつです。TALTOナイト三男、末っ子のマカロニえんぴつですが、初日のトリを務めさせていただきました」とはっとり。そして「レイラのあのライブを観てしまうと気合いが入りますね」とこの日のオープニングアクトを讃えてみせる。彼によれば、メンバー最年長の田辺は楽屋で「若者はああじゃなくちゃ。最近見ないタイプだねえ」と言っていたそうだ。うん、その感想、僕とまったく一緒です。
続いては4月1日リリースのアルバム『hope』からの新曲「恋人ごっこ」。淡々と激情が吹き出すような美しいラブソングを歌い終え、さらにうねるベースと長谷川大喜のキーボードの音色がムーディな空気を演出するソウルナンバー「クールな女」で音楽的なレンジの広さを見せつけると、そこから一転、はっとりの「あらゆるごちゃごちゃした感情を、全部まとめて引き受けに参りました。マカロニえんぴつです」という言葉からピアノとギターのリフがパワフルに鳴り渡り、「ブルーベリー・ナイツ」へ。この曲のもつどうしようもない切なさが、じんわりとフロアに伝播していく。
ギターリフが効いた田辺作曲のロックンロールナンバー「恋のマジカルミステリー」からの「洗濯機と君とラヂオ」で鮮やかなクライマックスを描き出したあと、ギターを弾きながらはっとりが語り始める。「音楽は勝負じゃないって、音楽は強いか弱いかじゃないって、歌は上手いか下手かじゃないって教えてくれたレーベルです。どうしたら勝てるんだ、どうしたら売れるんだ、そんなことばっか考えてたバンドに、そのままでいいんだよっていう至極単純明快な答えを、答えでなくヒントとして落としておいてくれた先輩がいたレーベルがここTALTO。おかげで、やれてます」。そんな言葉でレーベルへの愛を語ると、最後の曲「ヤングアダルト」へ。2019年、マカロニえんぴつを代表する曲となったこの1曲にすべてを託して、5人はステージを降りた。
アンコールに応えて、TALTOのロゴTシャツを着て再登場したマカロニえんぴつ。高野はSAKANAMONのマスコット「サカナもん」とともに登場だ。最後はもはや恒例、マカロニだけでなく、3バンド一緒の「アベンジャーズバンド」(はっとり)ことTALTOオールスターズでの演奏である。楽器の数に限界があるので、一部メンバー(カランコロンの佐藤、SAKANAMONの木村、マカロニの高野)はガヤ担当でスタンバイ。そして披露したのはもちろん「TALTOのレシピ」である。レーベル内の仲の良さが伝わるパフォーマンスに、O-WEST全体が温かなムードに包まれて大団円だ。もちろん3バンドとも自分たちの武器を虎視眈々と磨き続けて今ここにいるのは間違いないが、生き馬の目を抜くインディーズ界の中にサンクチュアリみたいなこんなレーベルがあってもいい。TALTOというレーベルのおもしろさを堪能できる夜だった。
【取材・文:小川智宏】
【撮影:酒井大翼】
リリース情報
レイラ「goodbye.」
2019年07月26日
-
02.戦争が起きたら
03.bitter
04.音楽のある風景
リリース情報
東京カランコロン『Melodrive』
2019年09月04日
TALTO
2.もっとLucky
3.テルミーワイ
4.見えるHorizon
5.ALL OVER
6.Blues Driver
リリース情報
SAKANAMON『LANDER』
2020年02月26日
TALTO
2.LIKES
3.ONE WEEK
4.HOME
5.アフターイメージ
6.YOKYO
7.WOULD YOU LIKE A HENJIN
8.夏の行方
9.少年Dの精神構造
10.矢文
11.CORE
12.コウシン
リリース情報
マカロニえんぴつ『hope』
2020年04月01日
TALTO
ブルーベリー・ナイツ
青春と一瞬[Strings ver.]
Supernova
ヤングアダルト
遠心
恋人ごっこ
全13曲収録予定
※曲順、収録曲数未定
セットリスト
「TALTOナイト2020」
2020.1.31@渋谷TSUTAYA O-WEST
-
レイラ
- 1.SEASIDE
- 2.Emma
- 3.アパートの中で 東京カランコロン
- 1.true!true!true!
- 2.リトルミスサンシャイン
- 3.三毒
- 4.It’s more wonder
- 5.ALL OVER
- 6.ビビディバビディ
- 7.どういたしまして SAKANAMON
- 1.クダラナインサイド
- 2.幼気な少女
- 3.鬼
- 4.HOME
- 5.ミュージックプランクトン
- 6.SECRET ROCK‘N’ROLLER
- 7.テヲフル マカロニえんぴつ
- 1.ミスター・ブルースカイ
- 2.MAR-Z
- 3.恋人ごっこ
- 4.クールな女
- 5.ブルーベリー・ナイツ
- 6.恋のマジカルミステリー
- 7.洗濯機と君とラヂオ
- 8.ヤングアダルト TALTOオールスターズ
- 1.TALTOのレシピ
お知らせ
レイラ魂の爆裂行脚 ~横名阪ツアー 2020~
4/26(日)神奈川 F.A.D yokohama
5/16(土)大阪 Live House Pangea
5/17(日)愛知 CLUB UPSET
murffin night 2020 in TOKYO
3/18(水)東京 新木場STUDIO COAST
SUPER BEAVER / Czecho No Republic / テスラは泣かない。/ 東京カランコロン / なきごと / マカロニえんぴつ / (Opening Act)SherLock
SAKANAMON 全国“着陸"ワンマンツアー~君の街まで~
3/28(土)神奈川 横浜B.B.STREET
3/29(日)静岡 浜松LIVEHOUSE MESCALIN DRIVE
4/3(金)宮城 仙台enn 2nd
4/5(日)北海道 札幌COLONY
4/25(土)愛知 名古屋APOLLO BASE
4/26(日)大阪 梅田Shangri-La
4/28(火)宮崎 floor R
5/10(日)新潟 GOLDEN PIGS BLACK
5/16(土)広島 BACK BEAT
5/17(日)福岡 INSA
5/22(金)東京 渋谷TSUTAYA O-EAST
マカロックツアーvol.10 ~わずかな希望を探し求める者たちよ篇~
4/18(土)大阪 なんばhatch
4/19(日)香川 高松オリーブホール
4/24(金)神奈川 KT Zepp Yokohama
4/29(水・祝)静岡 Live House浜松窓枠
5/1(金)熊本 B.9 V1
5/2(土)福岡 DRUM LOGOS
5/9(土)新潟 NEXS NIIGATA
5/10(日)石川 金沢EIGHT HALL
5/21(木)北海道 Sound lab mole
5/24(日)宮城 仙台darwin
5/26(火)岩手 Club Change Wave
5/31(日)広島 LIVE VANQUISH
6/5(金)愛知 名古屋DIAMOND HALL
6/13(土)東京 豊洲PIT
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。