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ユアネスが描いた「死生観」をリキッドで体感した一夜――その景色に込められた想いのドキュメント。

ユアネス | 2020.03.09

 2月16日、4ピースバンド・ユアネスの全国ワンマンツアー「One Man Live Tour 2020 “ES”」のファイナル公演が、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて行われた。本ツアーは昨年11月20日にリリースされた最新EP『ES』を引っ提げてのツアーであり、今回の恵比寿LIQUIDROOM公演はバンド史上最大規模でのワンマンライブだったのだが、会場は超満員。開演前から、オーディエンス一人ひとりの期待感がフロアにみっちりと充満していた。

 開演時間になると、薄暗いステージにポエトリーリーディングの「あなたは嘘をつく」が流れ出す。オーディエンスの拍手に迎えられて黒川侑司(Vo/Gt)、古閑翔平(Gt)、田中雄大(Ba)、小野貴寛(Dr)が登場すると、「ES」をプレイしてライブをスタートさせた。例えばミュージカルのように日常のワンシーンに堂々と音楽を挿入していくのではなく、ごく自然に寄り添うように、すっと私たちの日々の景色の中に入り込んでくる。ユアネスの音楽は、そういった優しさ、温かさ、謙虚さが滲み出ているということが、最初の1曲の入り方ひとつから伝わってきた。そしてこの冒頭の1曲をプレイして以降、「あの子が横に座る」をきっかけに「cinema」や「少年少女をやめてから」、「凩」など、前々作と前作にあたるミニアルバム『Ctrl+Z』とEP『Shift』に収録されている楽曲を中心に続けて演奏していった。黒川の美しく澄んだボーカルが「曲=物語」の語り手として“言葉”を紡いで、ダイナミックに全身を使って音を叩き出す小野のドラムと、柔和ではあるが力のこもった田中のベースが“躍動”を、古閑のギターの繊細かつ鋭いフレーズが“情景”を演出していく。4人が丹念に折り重ねていく音、声、文字、描写――オーディエンスは、そのひとつひとつを決して取りこぼすまいと、じっとステージを見つめていた。

 MCでは、約1年前に行われた東京での初ワンマンライブにも触れながら、黒川による「ユアネスというバンドの魅力をしっかり見せられるライブにしたいと思っています」という宣言があったが、緊張感やあどけなさがなんともユルい空気を生み出したこの時間は、音楽のみならず、彼らの人間的な魅力にも気付かせてくれるものだった。フロアからの温かな笑い声が心地よく響いたMCを経て、ライブの中盤ではバラード「Bathroom」を筆頭に、3拍子の穏やかなテンポがじんわりと胸に染み入る「夜中に」、切なさが心を打つ「日々、月を見る」、そしてミラーボールに照らされながらジャジーな雰囲気が心地よく身体を揺らした「100㎡の中で」を届けた。

 続くMCでは、黒川に代わり古閑がマイクを取り、今年4月にバンドとして初めてアニメ主題歌を担当することが発表され(実はこの情報は前日にすでに発表されていたが、改めて公表された)、会場は大歓声に包まれた。そんな喜ばしい報告もありつつ、ユアネスのブレーンである古閑は、「今作は3枚目の全国流通盤なんですけど、前作のリリースから1年近く経ってしまい、皆さんを待たせてしまったと思うんです。でも、自分が納得した状態で曲を届けたいし、後腐れなく自分たちの曲を聴いてほしいんです。やっぱり、忘れられたくないんですよ。いつか自分という人間がいなくなっても、音楽だけは残ってくれるし、忘れられたくない」と涙ぐみながら真摯に伝え、「人生は花のようだ」という古閑の死生観が込められた「紫苑」を届けた。「死生観」と言葉にすると少し硬いイメージだけれど、比喩を用いることでその考え方がより近しいものに感じるし、古閑が想起していた「花」というモチーフはユアネスの音楽にぴったりだなと思った。儚げだけれど凛としたメロディ、滑らかで優しい抑揚、触れた人間の想像力を掻き立てる叙情的な歌詞――ユアネスの音楽を構成するすべての成分に、花に似た人を惹きつける魅力がある。黒川の宣言を有言実行するように、そうしたバンドの魅力を余すことなく放出した彼らは、ユアネスの新機軸とも言うべき「CAPSLOCK」を経て、「ツアーファイナルの最後に、どうしても持ってきたかった曲」と話し、ラストに「風景の一部」をプレイした。冒頭の「あなたは嘘をつく」の《私の事は…忘れてもいいから》というフレーズに呼応するように、この曲で《「忘れてもいいから」ってさ/君が泣きながら言うから/僕の方が哀しくなるんだ》と優しく歌いながら、この日のライブの始まりと終わりをそっと繋げるのと同時に、全国8ヵ所に渡るツアーをきれいに締め括った。

 アンコールに演奏された「虹の形」と「pop」を聴き終えて、この日のセットリストを振り返ってみると、彼らは前半/中盤にプレイされた昔の楽曲の間に『ES』の楽曲を挟み入れていなかったことに気付いた。もしかしたら、それは偶然なのかもしれない。けれど、今まで4人が乗り越えてきた出来事や想いがあってこそ、「死生観」というテーマで作られた『ES』という作品があるし、これまで生み出してきた曲を1曲1曲丁寧に辿ってきた先に鳴らされるからこそ生まれる感動や説得力があると思う。この日、『ES』の楽曲たちをイヤホン越しに初めて聴いた時の感動を超えるものがあったのは、ライブだからこその生音がそう思わせたのではなく、ユアネスというバンドのそういった真面目さや物語性を重んじる姿勢を、体感として感じることができたからにほかならない。この日はアニメ主題歌を担当するというニュースのほかに、今年の夏に東名阪の3ヵ所で自主企画を行うことも発表された。彼らの物語はまだまだ続く。この先に待つ、ユアネスが紡ぎ育んでいく新しいストーリーを読み聴くことが、益々楽しみになるライブだった。

【取材・文:峯岸利恵】
【撮影:Daisuke Miyashita、Kisa Nakamura】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル ユアネス

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リリース情報

ES

ES

2019年11月20日

HIP LAND MUSIC

01.あなたは嘘をつく
02.ES
03.紫苑
04.ZQ5QEBS
05.CAPS LOCK
06.風景の一部

セットリスト

One Man Live Tour 2020 “ES”
2020.02.16@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 01.SE + あなたは嘘をつく
  2. 02.ES
  3. 03.あの子が横に座る
  4. 04.cinema
  5. 05.少年少女をやめてから
  6. 06.凩
  7. 07.色の見えない少女
  8. 08.Bathroom
  9. 09.T0YUE9
  10. 10.夜中に
  11. 11.日々、月を見る
  12. 12.100㎡の中で
  13. 13.紫苑
  14. 14.ZQ5QEBS
  15. 15.CAPSLOCK
  16. 16.風景の一部
【ENCORE】
  1. EN1.虹の形
  2. EN2.pop

お知らせ

■ライブ情報

ユアネス 東名阪 自主企画ライブ(仮)
06/19(金)東京 渋谷Veats Shibuya
07/16(木)大阪 心斎橋Music Club JANUS
07/17(金)愛知 伏見JAMMIN’



THE KINGS PLACE LIVE Vol.19
03/29(日)東京 Zepp DiverCity(TOKYO)
w/ KEYTALK / FOMARE / マカロニえんぴつ / KUZIRA

大ナナイトvol.130
~大ナナイトJAPAN TOUR~
"KYOTO MUSE 30th Anniversary"

04/17(金)京都 KYOTO MUSE
w/ Ivy to Fraudulent Game / ラックライフ

大ナナイトvol.131
~大ナナイトJAPAN TOUR~

04/18(土)山口 周南RISING HALL
w/ Ivy to Fraudulent Game / ラックライフ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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