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原因は自分にある。、「仮想げんじぶ空間」で見せた成長と未知数

原因は自分にある。 | 2020.07.27

 ――「初めてチケット代をいただいたイベントが、オンラインだったんです」。彼らにそう語らせることになるんだから、本当にコロナはイジワルだ。初ステージだって、フリーじゃない初イベントだって、1周年という記念日だって、人生で1回しかないのに。

 7月12日、原因は自分にある。がオンライン上で開催した「仮想げんじぶ空間」を観て、そんなことを感じずにはいられなかった。本来であれば、現地でファンと一緒に祝えたであろう1周年や「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」のリリース。メンバーにも、きっとスッキリしない思いはあっただろう。しかし、そんな状況下で彼らは、今の7人ができる原因は自分にある。らしいイベントをやりきった。1年で人はこんなに成長するのだと、まだまだ未知なる可能性を秘めているのだと見せつけたのだ。

 プログラムは、スタジオでの収録パフォーマンス映像とメンバートーク生配信を組み合わせ構成。トークでは小泉光咲が画面越しの出演となったが、パフォーマンス映像では全員揃って歌い踊る姿を披露した。

 バックミュージックが途切れると、それぞれのメンバーをフィーチャーしたムービーがスタート。映し出された「さあ、いこうか」の文字により、1stシングルの「原因は自分にある。」が導かれた。次々に切り替わるカメラワークと映像のコンビネーションは、オンラインライブだからこその美味しいとこ全部盛り。久しぶりの集合映像は、この7人こそが原因は自分にある。だと強く訴えかけていた。続く「嗜好に関する世論調査」では、アニメーションを交えた映像で見せていく。二次元とも三次元とも違和感なくハマるのは、ボカロ以降の文脈を引いた彼らの楽曲ならではだろう。<2択 2択>とクルクル変わる画面はMVを彷彿、いつだって全力で歌う武藤潤の姿には、純粋で手の抜き方を知らない彼の人柄がよく表れていた。

 MCを挟み、ダンスナンバーの「Joy to the World」へ。さっきまで年相応の無邪気な笑みを浮かべていたのに、曲が始まると色っぽい表情を浮かべるものだから思わずドキリとしてしまう。個人撮りの映像は、ライブだと注視できないそれぞれの強みを浮き彫りにしていった。少年と大人の間を行き来する桜木雅哉の儚さ、バレエ由来の美しさが息づく凛とした吉澤要人の佇まい、自分の魅せ方を熟知し次々と違う顔を覗かせる杢代和人のあざとさ。ライブがなかった半年間にも、彼らは止まることなく進化していたのだろう。<Chu-Lu Chu Chu-Chu>と投げキスをする姿は、スタダコードぎりぎりではないかと思うほどセクシーな空気を放っていた。

 ひと際オーディエンスの心を揺さぶったのは、ピアノアレンジの「ラベンダー」だ。柔らかなピアノの音に乗り、小泉の透き通った声が響くと一気に切なさが吹き込んだ。メンバーをあえて省いた部屋が変化していくアニメーション映像は、7人の歌をしっかりと聴かせリスナーの心をこれでもかと揺さぶる。コメント欄は「切ない」「泣く」といった声で溢れかえった。

 EBiDAN最年少でありながら、曲ごとに違った魅力を発揮できてしまうのが、原因は自分にある。のすごいところ。さっきまでのしっとりした雰囲気は、どこへやら。「ギミギミラブ」では、キラキラのアイドルスマイルで悩殺していく。大倉空人はクールなラップと共に視聴者を「せーの!」と煽り、盛り上がりは最高潮。視線の先にファンがいなくても、心の奥ではファンをしっかりと見つめ、全力スマイルで今できるすべてを出し切る。収録だからこそできる全力のパフォーマンスには、会えない距離なんて気にさせない、濃縮されたパワーが詰まっていた。

 最後のMCでは、この日が誕生日だった吉澤を祝う一幕も。コメントを求められ「誕生日にイベントがあるのも嬉しいですし、メンバーと一緒にいられるのが幸せ。17歳は、いろんなことを学んで吸収する1年にしたいと思います」と吉澤は語った。
 「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」が、途中で途切れてしまうハプニングもあったが、慌てつつもメンバーのチームワークでカバー。不測の事態へ戸惑いが隠せない姿には、“デビューして1年”という初々しさが感じられ、愛らしくもあった。

 気を取り直して迎えたラストナンバーは、7月12日に配信開始となった「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」。ダンスリーダーである長野凌大をセンター&歌いだしに据えた楽曲ということもあり、出だしから安定感は抜群だ。リモートで振り入れを行ったというダンスも、個人の強みがよく反映されている。どんな表情がいいのか、どんな動きがいいのか、どんな歌い方がいいのか。この1年間、“原因は自分にある。の自分とは”と、それぞれが向かい合ってきたのだろう。デビュー時の画一的なかっこよさから、一歩脱した7人の姿がそこにはあった。

 最後は、長野が「こうやってライブができているのは、あなたのおかげなので。あなたの手をとって上に上がっていきますので。これからもよろしくお願いします」とファンへの感謝を示しフィニッシュ。約1時間のプログラムを締めくくった。

 普段は等身大のあどけなさを残しつつも、ステージが始まると一気にスイッチが入る、原因は自分にある。。「BATTLE STREET」企画で鍛え上げられたプロ意識は尋常じゃなく、常に遠くのほうしか見ていない。正直いって、世界的なボーイズグループと比べたら歌もダンスもまだまだ未熟だ。しかし、冷静な視線で自分たちを見つめ、大きな夢を恥ずかし気もなく語る彼らなら、どんな野望も成し遂げられるような気さえしてくる。だってすでに7人は、たった1年(半年間はライブなし)という月日のなかで、これだけの成長を見せてくれたのだから。平均年齢16.7歳という未知数が描く未来を、大いに期待したいものである。

【取材・文:坂井彩花】
【撮影:笹森健一】

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リリース情報

シェイクスピアに学ぶ恋愛定理

シェイクスピアに学ぶ恋愛定理

2020年07月12日

SDR

01.シェイクスピアに学ぶ恋愛定理

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セットリスト

仮想げんじぶ空間
2020.07.12

  1. 01.原因は自分にある。
  2. 02.嗜好に関する世論調査
  3. 03.Joy to the World
  4. 04.ラベンダー
  5. 05.ギミギミラブ
  6. 06.シェイクスピアに学ぶ恋愛定理

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