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日本全国のライブハウスを繋いだ日本最大級のオンラインサーキットフェス「NIPPON CALLING 2020」レポート第4弾!

NIPPON CALLING 2020 | 2020.10.10

【東京少年倶楽部】
 『NIPPON CALLING』2日目、「東北・新潟・京都SATAGE」のトップバッターは、京都MUSEのステージに立った東京少年倶楽部。松本幸太朗(Vo/Gt)、gyary(Gt/Key)、三好空彌(Ba)、古俣駿斗(Dr)が登場して、最初に届けられたのは「1998」。松本がギターを弾きながら歌い始めた後、他のメンバーの演奏も合流。熱量を一気に増しながら迫ってきたサウンドが心地よい。随所で響かせるユニゾンのコーラス、構築されたアンサンブルのフレッシュな息吹を存分に感じることができた。

 ドラマチックに高鳴るメロディ、gyaryによるブルージーなギタープレイを堪能させられた「flipper」、起伏に富んだ展開を遂げながら街の風景をじっくりと描き上げた「西武新宿駅、改札を出て左」――さらに2曲を披露した後、想いを語った松本。「6月にCDを出して、本当はツアーをする予定だったのができなくて……でも、落ち込んだりしても今しかこの時間はないし、東京少年倶楽部の3年目も今しかない。落ち込んでふさぎ込んでも何の意味もない。だから胸張って今できることをやって、こういう形でもできるなら、それでもいいかなと思って出させてもらいました。初ワンマンも控えてて、今、全然マイナスな気分はないです。光しか見えてないので、それを渡せたらなと思います。またライブハウスで会いましょう!」というMCを経て、「踏切」が最後に届けられた。演奏が展開する中で浮かび上がった多彩な音像が爽やか。瑞々しい余韻を残して、彼らのライブは締め括られた。

【ヤングオオハラ】
 ヤングオオハラは、初っ端からエンジン全開! オープニングを飾った「サマタイ」のダンサブルなビートが文句なしに痛快だった。フロアは当然ながら無観客。しかし、たくさんの笑顔が煌めくパーティー空間と化したかのようだった。「沖縄桜坂セントラルから俺らの音楽を届けに来ました。一緒に遊んでくれ!」とハローユキトモ(Vo/Gt)が言い、2曲目「MAGIC」に突入すると、ますます力強く躍動した4人の演奏。「キラキラ」がスタートする前に機材トラブルが少しあったが、そんなアクシデントも臨場感を増すためのアクセントとしていた様が頼もしかった。全力で歌うユキトモ、実に楽しそうにサウンドを交し合うヨウヘイギマ(Gt)、ミツキング (Ba)、ノリバルカン(Dr)を観ている内に、自ずと身体を揺らし始めた視聴者が少なからずいたのではないだろうか。ライブハウスの熱量が産地直送で届けられたかのような感覚が、序盤の3曲の時点で既にあった。

 穏やかなサウンドを奏でながら、メンバーたちがとても気持ちよさそうにしていた「アイラ・ビュー」。時折、ソウルフルなトーンを帯びるユキトモの歌声の魅力が存分に発揮されていた「朝になったら」。そして、「最近、みんな何してる? 俺らグダグダばっかしてんの。なんかモヤモヤして。これ新しい曲なんだけど、俺らのアンサーを全部詰め込みました!」と視聴者に向かって呼びかけてからスタートした「パジャマでシー」。トロピカルテイストも交えた爆音がとにかく楽しい! ライブハウスでたくさんの人々と一緒に盛り上がれない状況が続いているわけだが、我々の中に渦巻いているフラストレーションを、この曲は思いっきり粉砕してくれた。

【湯木慧】
 スタート時間となり、画面上に現れた湯木慧。床に座ってアコースティックギターを抱えている姿が目を引く。そして歌い始めた1曲目「Answer」。奏でるギターの音色と一体となりながら響かせる歌声がとても豊か。作り上げられているムードは密やかだが、奥行き深い感情表現で彩られた空間が生まれていた。続いて披露された「網状脈」。コードのカッティングにのせて、出会いと別れが複雑に連鎖している人生を精一杯生きる意志が浮き彫りにされていく。感情を真っすぐに我々の胸の奥に向かって投げ込んでくるかのような歌声に惹かれずにはいられないオープニングの2曲であった。

 「大分の山奥のおばあちゃんの家に帰った時に作った曲です。過疎化が進んでいて、つぶれかけた家がたくさんある場所で作ったんですけど、今の世の中、“つぶれる”という言葉が特別に感じられて。歌いながらいろいろ思いました」と、歌い終えた後に語っていた「追憶」。“赤い金魚が嘘、黒い金魚は本当”という色を使ったメタファーを織り込んでいる旨を語っていた「金魚」――彼女の言葉と共に受け止めると、曲の中に広がる世界が一層生々しく伝わってくる感覚があった。そして、ラストに届けられたのは「スモーク」。この曲を歌う前に、何が正解で不正解なのかわからない日々が続いている現状への想いを彼女は言葉にして伝えてくれた。「わからない現状、不安な自分を肯定してあげることができたら、少しは楽になるんじゃないかなと。答えのないことと戦いながら生きている全てのみなさんに届いて、自分を肯定してあげられる力にこの曲がなったらと思っています」という言葉が添えられたこの曲は、たくさんの視聴者の胸に深く沁みたはずだ。

【アメノイロ。】
 広島県尾道市出身のロックバンド「アメノイロ。」のライブのオープニングを飾った「月夜に溶ける」。アルペジオ、残響、柔らかなコードの響きを活かした木村洸貴(Gt)、てらみこうき(Gt/Vo)によるギターアンサンブルに本多隆志(Dr)のドラムが加わり、広がっていったサウンドがドリーミーで心地よかった。拭い去ることができない記憶をじっくりと描き上げた「水彩の日々に」。抑制を利かせる場面と狂おしいサウンドを高鳴らせる場面を交互に展開させながら、壮大な世界を作り上げていた「遠い街で」……精緻に構築されたサウンドから、大きなエネルギーが放たれているのを感じた。

 「来年の『NIPPON CALLING』、または『TOKYO CALLING』で絶対に会うために、僕たちとあなたで音楽を繋いでいきましょう。最後までよろしくお願いします」というてらみのMCを経て届けられた「ランタナ」と「メリープ」。透明感に満ちた歌声と多彩な色合いを浮かべる楽器のコントラストが、それぞれの曲で描かれている物語をじっくりと想像させてくれた。「ここを選んでいただき、本当にありがとうございます。僕らは収録なので、当日、僕らがどんな風に出るのか楽しみにしながらやっているんですけど。ちょっとでもいいバンドだと思ってもらえるように、僕らは歌うだけです」と、メンバーを代表して語ったてらみ。そして、ラストを飾ったのは「あとがき」。気持ちよさそうに音を交し合っていたメンバーたちが、アウトロで一瞬、向かい合ってアイコンタクトを交わしていた場面が印象的だった。終始、音を丁寧に重ね合わせながら様々な空間を生み出していた「アメノイロ。」。ライブハウスで直に体感すると、さらにたくさんの喜びを得られそうなバンドであった。

【CRAZY VODKA TONIC】
 聴こえてきたドラムのビートが先陣を切ったCRAZY VODKA TONICのステージ。カメラで映し出された 池上優人(Vo)、奥本真光(Gt)、進竜馬(Ba)、坂本志穂美(Dr)は、互いに向かい合うフォーメーションで演奏していた。 オープニングで届けられたのは「灯台と水平線」。飛び跳ねながら伸び伸びと歌っている池上が、なんだかとても羨ましくなった。ドラマチックに高鳴るこのサウンドの真っ只中に身を置いたら、さぞかし気持ちいいことだろう。そして、「カメラマンはここにたくさんいますが、みなさん、スマホのスクリーンショットで俺たちのかっこいい瞬間を収めてください。共に良い時間を作りましょう!」と池上が視聴者に呼びかけてから「東京が溺れる」がスタート。骨太なギターを軸とした重厚なサウンドが刺激的。思わず身体を激しく揺らしたくなった。

 途中のMCタイムでは、グッズ販売をしているサイトや、音源を配信しているサイトにアクセスできるQRコードが画面に表示された。奥本が指を鳴らすと、魔法のように現れたQRコード。配信ライブだからこその演出を考えつつ、自分たちの音楽を積極的に広めようとする前向きな姿勢がそこには表れていた。「いろいろイベントも飛んでしまって。今、できないし、仕方ないし、クヨクヨしてもしょうがないので、できることをしていこうと思います。日本を明るくしていきましょう!」と語っていた池上。制作中の初の映像作品への手応えも明るく語り合っていた4人の姿は、とても前向きであった。

 思わず手拍子をしたくなるビートをたっぷり届けてくれた「踊り子は笑う」。キャンドルの灯のように静かに揺れる電灯の映像をオーバーラップさせつつ、温かなメロディをじっくりと展開させた「ダイニングテーブルにて」――さらに2曲が届けられて締め括られた彼らのライブ。演奏、楽曲はもちろん、ポジティブな佇まいも魅力的なバンドだった。地元・広島県福山市を拠点にしつつ、今後も活動の場をどんどん広げていくに違いない。

【四星球】
 道を歩いていたら聴こえてきた祭囃子が気になって、ビルの中に足を踏み入れた男性。そこは徳島のライブハウス・グラインドハウス。下半身=白いブリーフ、上半身=法被の4人組がステージ上で演奏している! ――という映像からスタートした四星球のライブ。先述の不審な4人組の正体は、言うまでもなく北島康雄(シンガー)、まさやん(ギター)、U太(ベース)、モリス(ドラム)。彼らが演奏していた「ライブハウス音頭」に合わせて、視聴者によるコメント欄は瞬く間に《ええとこ ええとこ ええとこよ~》という言葉で埋め尽くされていった。そして、「この日のために頑張ってきたんですよね? えらい! コミックバンドがやって来ましたよー!」という言葉と共に2曲目「クラーク博士と僕」がスタート。「配信ライブでひとつ気づいた。映像が切り替わって一瞬暗くなる時、画面を観てる自分が見える。今日、ええとこで黒いやつバーン!って出しますので、どんな顔して観てるのか確認しながら楽しんでもらえたらと思います」と言っていた北島は、時折、カメラに向かって黒いボードを掲げつつ、アナログな手法で真っ黒な映像を作りだしていた。全力で届けられた歌、演奏、メロディ、ハーモニー、ごみ箱に頭からダイブしたまさやん、フラフープをクルクル回した北島……遊び心とおもてなしの心に満ちた四星球のライブは、自宅でくつろいで観ていても堪らないほどパワフルで、がむしゃらで、感動的だった。

 冒頭の1曲だけで、とにかく見どころ満載だったのだが、その後も濃密な時間が続いた。まだ音源化されていない「薬草」は、披露された直後、カラオケバージョンもスタート。口パクをしながら演奏する4人の姿、歌詞の字幕が画面上に流れながら、視聴者の大合唱を促していた。続いて、手拍子を激しく誘ってきた「幸せならCLAP YOUR HANDS」。コミックバンドとしてのプライドが雄々しく示されていた「コミックバンド」でライブは締め括られたかのように思われたのだが、急に興奮して舞台裏に飛び込んだモリス。「どうしたのだろう?」と思っていたら、段ボール製の長くて太くて棒状のものを抱えながら戻ってきた。各方面から叱られそうなので詳述は避けるが、「トレジャーハンター」がBGMとして流れる中、少なからず下ネタ気味の演出がオチとして仕込まれていたこのライブ。4人は奇妙なオブジェを携えながらライブハウスの外へと元気いっぱいに飛び出し、人々が行き交う街中へと消えていった。シュール極まりないエンディング……。しかし、柔軟なアイディアを徹底的に発揮して輝いてみせた四星球は、コロナ禍の中でも実現可能な音楽フェスの形を示した『NIPPON CALLING』のスピリットを、まさしく体現していたと思う。

【取材・文:田中 大】


tag一覧 J-POP 配信ライブ NIPPON CALLING 2020 東京少年倶楽部 ヤングオオハラ 湯木慧 アメノイロ。 CRAZY VODKA TONIC 四星球

セットリスト

NIPPON CALLING 2020
2020.09.22

    <東京少年倶楽部>
  1. 01.1998
  2. 02.flipper
  3. 03.西武新宿駅、改札を出て左
  4. 04.踏切
    <ヤングオオハラ>
  1. 01.サマタイ
  2. 02.MAGIC
  3. 03.キラキラ
  4. 04.アイラ・ビュー
  5. 05.朝になったら
  6. 06.パジャマでシー
    <湯木慧>
  1. 01.Answer
  2. 02.追憶
  3. 03.網状脈
  4. 04.金魚
  5. 05.スモーク
    <アメノイロ。>
  1. 01.月夜に溶ける
  2. 02.水彩の日々に
  3. 03.遠い街で
  4. 04.ランタナ
  5. 05.メリープ
  6. 06.あとがき
    <CRAZY VODKA TONIC>
  1. 01.灯台と水平線
  2. 02.東京が溺れる
  3. 03.踊り子は笑う
  4. 04.ダイニングテーブルにて
    <四星球>
  1. 01.ライブハウス音頭
  2. 02.クラーク博士と僕
  3. 03.薬草
  4. 04.幸せならCLAP YOUR HANDS
  5. 05.コミックバンド
  6. 06.トレジャーハンター

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