ここから始まるVaundyの歴史――ライブの素晴らしさを体感できた待望のワンマンライブ
Vaundy | 2020.10.29
コロナ禍以降、2020年に躍進したニューカマー・アーティストにとってライブ活動は大きな悩みの種となった。対バン・イベントとは異なり、ステージから見渡せば自分のファンばかりが集まるという憧れのワンマンライブ……。しかし春以降、ライブ開催の予期せぬ延期、出演の決まっていたフェスの中止、そんななか、ある種妥協案として生まれた初の試みとなる無観客での配信ライブ。現実を受け入れ、今できることとして様々なチャレンジがなされていった。
しかしながら、2020年10月10日。ついにVaundyが有観客ライブ『2nd one man live "strobo"』を、今年完成したZepp Hanedaにて実現した。もちろんまだウイルス対策へ万全の注意を払った制限付きではあるが、これはVaundyだけでなく、音楽シーンにとって大きな一歩となるだろう。当日は、スペースシャワーが手掛ける有料課金型ライブ配信サービスLIVEWIREと、OPENRECからライブ同時生配信を実施。今夏、Spotify PremiumのテレビCMに「不可幸力」が抜擢されるなど、いま最も勢いある新しい才能の晴れ舞台なのだ。
オープニングは、SEとして「Audio 001」。そのまま1曲目は、暖色系のライトのなかFODドラマ『東京ラブストーリー』主題歌となった「灯火」からスタート。続く、Spotify PremiumテレビCMソングとなった怪しげな雰囲気を携えた言葉が躍動するポップチューン「不可幸力」。生バンドによるライブであるゆえに、楽器隊サウンドの迫力がいつも聴いていたストリーミング音源から、さらなるレベルアップを感じられた。これぞ、ライブ空間ならではの活きたグルーヴだ。そして、ブルーな照明が映える透明感あるナンバー「life hack」へと立て続けに人気曲を披露していく。
本日最初のMCでは「こんばんは。(フロアを見渡しながら)緊張しますね。手が震えます。今日は、雨がけっこう降っていましたか(※天気予報では台風上陸)? 今日は僕の日ではないです、僕たちの日です!!」と、ようやく出会えたオーディエンスに向かって優しく宣誓する。
続いて、未発表曲を3曲連続で披露していく。Vaundy史上もっともアッパーでハードかつキャッチーなサウンドを奏でる1曲目。さらに、前回ライブでも披露された16ビートにドライブするギターサウンドが心を鷲掴みにする2曲目。セミアコ片手に郷愁感ある雰囲気を作り出す魔法めいたナンバーなどなど、本日のライブでは、ネクストなVaundyスタイルが新曲とともに形作られていく。宝物のような貴重なる体験だ。
そして、SE「Audio 002」を挟んで、ファン人気の高い柔らかな夜を描いたポップチューン「napori」、そしてポエトリーな直情的な言葉が心にグサっと突き刺さる「Pain」、さらに女性コーラスとのデュエットで展開されるミディアムな雰囲気を醸し出す未発表曲が続いていく。
今日のVaundyは饒舌だ。「一旦休憩。改めましてVaundyです。ありがとうございます! 出したくても(オーディエンスのみんなは)声が出せないですよね(※ウイルス対策上、声を出してはいけない制限あり)。よし、次の曲は僕たちが、家に引きこもっている時に起きた悲しいことを綴った曲なんですけど。だけど、悲しいだけじゃきついなって。そのなかに生まれる、笑顔だったり楽しいことを書いた曲です」。
普段、ライブでは多くは喋らない彼が、観客と対面する初のワンマンということで緊張しながらもテンション高めのトークを繰り広げていく。続いて、またもや初披露となるリズミカルに展開するキャッチーかつ距離感の近いポップソングを披露。シャッフル・ビートなめっちゃ良い曲だ。そして、アコギ片手に優しくもポップな世界観が秀逸な「Bye by me」へと続いていく。
MCで、会場に訪れてくれたオーディエンスやスタッフへ感謝を述べ、「最近のなかで一番汗をかいています。今回インターネットでもライブ配信をしていて。(ステージ袖を見ながら)……コメントを見てもいいですか(iPadを手にとる)? (コメントを見ながら)“音域が広い!”ありがとうございます(笑)。“最高!”だって。ありがとう!! 次回もまたよろしくお願いします! ここからはラストスパートです」と挨拶。
ラストは、あたたかな雰囲気のイントロダクションからパーソナルな感情を吐き出す名曲「僕は今日も」、パーカーの帽子を被りながらマイク片手にアッパーなダンスチューン「soramimi」、そしてVaundyが“発見”された記念すべき代表曲といえる「東京フラッシュ」を軽やかにプレイ。
オーラスは、オーディエンスとのライブでの盛り上がりを想定して生み出したという、まさにこの日のために作られたかのようなロックチューン「怪獣の花唄」をエモーショナルに披露。Vaundyも「ほんとにこれが最後です。みなさんいけますか!」とフロアを煽る。
オーディエンスは残念ながら声を出すことはできない。もどかしい。しかし、手拍子と突き上げる腕によって気持ちが爆発寸前なことは伝わってきた。思わず胸が張り裂けんばかりの光景だ。そう、このシーンがずっとずっと観たかったのだ。ようやく「怪獣の花唄」で伝えたかった景色を垣間見ることができた。うん、完全なるコール&レスポンスは来たるべき日へとっておこう。
未発表の5曲の新曲を含む全15曲。ライブの素晴らしさをひさびさに体感させてくれた素晴らしきパフォーマンス。Vaundyのポップアーティストとしての歴史が、ここからようやくスタートしたような気がする。誰もに自慢したくなる愛すべきステージであり、キラーチューン尽くしの新曲など、Vaundyの底力を体感できた熱狂の時間となった。
今回、泣く泣く会場に来られなかったファンは多いことだろう。1日でもはやく、Vaundyのライブパフォーマンスをより多くのオーディエンスが生で体感できる日が来ることを祈りたい。いやあ、ほんと新曲がまためっちゃよかったのだ。早く次のアルバムが耳にできる日を期待したい。
【撮影:Takeshi Yao】
リリース情報
[Nulbarich]ASH feat. Vaundy
2020年10月28日
CONNECTONE
02.ASH feat.Vaundy (n-buna from ヨルシカ Remix)
セットリスト
2nd one man live “strobo”
2020.10.10@Zepp Haneda
- SE Audio 001
- 01.灯火
- 02.不可幸力
- 03.life hack
- 04.未発表曲/初披露
- 05.未発表曲
- 06.未発表曲
- SE Audio 002
- 07.napori
- 08.Pain
- 09.未発表曲
- 10.未発表曲/初披露
- 11.Bye by me
- 12.僕は今日も
- 13.soramimi
- 14.東京フラッシュ
- 15.怪獣の花唄