ファンキー加藤が叫んだ全身全霊のメッセージ――「超ワンマンライブ “F”」をレポート!
ファンキー加藤 | 2020.10.30
10月26日、ファンキー加藤の無観客生配信ライブ「ファンキー加藤 超ワンマンライブ “F”」を観た。ニューアルバム『F』のリリースに合わせて予定されていた「ファンキー加藤 ライブツアー “F”」は、コロナ禍による影響で無念にも全公演中止になってしまったが、そのまま黙っておとなしくしている男ではない。いつだって逆境を生きるパワーに変えてきたのがファンキー加藤だ。初の無観客、初の生配信ワンマンライブで、一体何を見せてくれるのか? 午後6時、期待に満ちた幕が上がる。
1曲目は、まさかのスローバラード「太陽」だ。しかも会場は、夜の野球場。誰もいないバックネット裏に座り、目を閉じて歌う、その表情をカメラがクローズアップする。予想外の立ち上がりから、一気にビートがはじけて「今だけを信じて」へ。立ち上がった加藤がスタンドを駆け下りてグラウンドへ向かう。曲は「終わらない未来」に変わった。「ニッポン! 届いてるか!」と何度も叫びながら、ピッチャーマウンドの上で思い切り飛び跳ねる。<さあ 頑張ろうぜ>という歌詞がいつも以上にリアルに響く。DJもコーラスもいない、文字どおりのワンマンライブだ。
「この歌が日本中の誰かに届いていると信じながら、ガチガチに歌っていくんで、最後までよろしくお願いします!」。
曲は「DIVE」、そして「希望のWooh」。グラウンドにユニフォーム姿の野球選手たちが飛び出し、キャッチボールを始めた。加藤は3塁側のベンチに飛び込んで廊下を駆け抜け、1塁側のベンチから飛び出して歌い続ける。「希望のWooh」のMVをオマージュした野球場ならではの、スピード感いっぱいの演出が楽しい。スタッフ総出で、ファンキー加藤仕様ののぼり旗を振る。曲を締めくくる大ジャンプを、何台ものカメラがまるで空中浮遊のようにエフェクト加工してみせる。チーム加藤の連携は完璧だ。
「寒いけどいい汗かいてるよ。天気も晴れたし、最高のシチュエーションになったんじゃないかと思います」。
元野球少年の血が騒いだか、おもむろにグローブをはめてノックを受ける加藤。ボールを投げながら、「輝け」を歌う加藤。わざわざ2倍疲れることをここでやるか?と、画面のこちら側でツッコミを入れながら、でもこれこそがファンキー加藤だよと思う。「ブラザー」ではユニフォーム姿の兄と弟が登場し、史上初の加藤3兄弟の共演が実現した。「俺は本当に照れ臭いよ!」と叫びつつ、3人でキャッチボールをしながら歌う、その顔は言葉とは裏腹に本当にうれしそうだ。そのままチームメイトに見守られ、ライブの絶対的定番曲「あとひとつ」へ。グラウンドに仁王立ちで歌う姿が熱い。何十回も生で聴いてきた歌だが、改めて、野球場にこれほど似合う歌はないとつくづく思う。
「正直、やさぐれに近い日々もありました。でもSNSとかを見て、ひとりぼっちではないと感じていました」。
緊急事態宣言中の思いを正直に語る、その顔はすでに迷いを振り切った顔だ。スローチューン「つながるから」を力強く歌い切り、ぐっとスピードを上げて「冷めた牛丼をほおばって」へ。さらに「ちっぽけな勇気」、全力疾走のパフォーマンスが続く。<雨に打たれ 風に吹かれ コロナが蔓延したって 俺たちは諦めないから>、最後の言葉をアドリブで変えて伝える、その思いは画面のこちら側までしっかり届いている。
「俺から音楽を取ったら何も残らない。来年も再来年もずっと歌っていられるように、これからも頑張っていきます」。
いつもライブでは大合唱になる「My VOICE」を、今日は誰もが家の中で、心の中で歌っているだろう。「歌ってくれ!」とマイクを天に突き上げた加藤には、その声が聴こえていたはずだ。気がつけば、無観客生配信ライブという慣れない形式に違和感を覚えなくなり、ボリュームを上げてライブに引き込まれている。たぶん誰もがそう思っただろう。どんな状況でも全力で歌う以外の答えを知らない、ファンキー加藤の初挑戦は、確かな成功に終わった。
だがしかし、ライブはまだ終わらない。ここからは、ファンクラブ会員限定のアンコールタイムだ。吐く息が白い気温にもかかわらず、半袖Tシャツでマウンドに戻ってきた加藤が、「君でした。」を真心込めて歌う。長年支えてくれたファンへ、一緒に年を取っていくことを肯定する歌詞が胸に沁みる。「俺にとってあなたは必要な人です。これからも共に歩んでください」。それはファンキー加藤の、すべてを音楽に懸ける覚悟を示す生涯歌手宣言だ。
こうして、しんみりとしたフィナーレに……なるはずがないのは、ファンキー加藤のライブを1度でも体験した人はわかるだろう。最後はド派手に明るく元気よく、タオル回しの定番チューン「まわせ!」を聴かずに終われない。バッターボックスに入った加藤が、全力疾走でダイヤモンドを一周してホームへ滑り込む。息を切らし、砂まみれになりながら寝転がって歌い続ける。なぜそこまでやるのか――理屈はいらない、これがファンキー加藤のライブ、そしてライフだ。
この「ファンキー加藤 超ワンマンライブ_“F”」のライブ映像は、11月3日23時59分までアーカイブ配信されるので、ぜひチェックしてほしい。ライブ中のMCでは、ファンキー加藤の誕生日、12月18日に東京・昭和女子大学人見記念講堂にて、有観客によるワンマンライブ「FUNKY KATO BIRTHDAY LIVE“TANZANITE”」の開催も発表された。止まっていた時計が動き始めた――愚直に希望を歌い続ける男の歌が、輝く時代がまたやってきた。
【撮影:堂園博之】
<アーカイブはこちらから>
https://tixplus.jp/feature/funkykato_202010/
[視聴期間]
11月3日(火・祝)23:59まで
リリース情報
F
2020年04月01日
ドリーミュージック
02.今だけを信じて
03.終われない歌
04.君でした
05.DIVE
06.八王子キッド
07.死守
08.Be Alright
09.デ・マ
10.40
11.夢のカケラ feat.ファンキー加藤&ベリーグッドマン(SC Remix) / SPICY CHOCOLATE
セットリスト
超ワンマンライブ“F”
2020.10.26
- 01.太陽
- 02.今だけを信じて
- 03.終わらない未来
- 04.DIVE
- 05.希望のWooh
- 06.輝け
- 07.ブラザー
- 08.あとひとつ
- 09.つながるから
- 10.冷めた牛丼をほおばって
- 11.ちっぽけな勇気
- 12.終われない歌
- 13.My VOICE 【ENCORE】
- EN1.君でした。
- EN2.まわせ!
お知らせ
FUNKY KATO BIRTHDAY LIVE
“TANZANITE”
12月18日(金)東京 昭和女子大学人見記念講堂