決意の4thアルバム、堂々完成。今だからこそ歌える応援歌――その核心に迫る。

ファンキー加藤 | 2020.04.03

『F』という、超シンプルなタイトルに詰め込んだ熱い思いがビンビンに伝わってくる。ファンキー加藤の4thアルバム『F』。ロックバンドのルーツとラッパーのアイデンティティ、J-POPヒットメイカーのプライドをミクスチャーした全11曲の中にいるのは、最新にして最高のファンキー加藤だ。オールドスクールである自分を認め、笑顔の裏でぐっと拳を握りしめながら走り続ける男の姿は、同世代を生きる人への力強い応援歌になるだろう。新しいスタートラインに立ったファンキー加藤の言葉を聞こう。

【ファンキー加藤】4/1発売 4thアルバム「F」全曲試聴
――アルバムは約2年ぶり、4枚目ですか。
ファンキー加藤:今のご時世、アルバムをCDでリリースさせてもらうこと自体がありがたいことじゃないですか。10年前はルーティンのように、シングル、アルバム、ツアーという流れを当たり前だと捉えていたけど、2020年になってまたリリースできることにすごい喜びがあったし、今まで以上に1曲1曲に愛情を注いでいこうと思いましたね。
――おととしの9月に「希望のWooh」を出した時には、もうアルバムを見据えていた?
ファンキー加藤:いや、まだですね。そのあとツアーをやって、2019年にはソロ5周年のイベントや主催フェス「OUR MIC FES」もあって。特に「OUR MIC FES」にかける労力は大きかったので、それが終わってからアルバムの制作に入りましたね。「OUR MIC FES」で若いミュージシャンの、純粋に上を目指して頑張る姿に学ばされたというか、尻に火をつけてもらった感覚はあります。「よし、俺も頑張ろう!」って。
【ファンキー加藤】 「希望のWooh」MV
――たしかに、同じ応援歌でも以前とは変化がある気がする。もうイケイケがむしゃらの世代ではないし、大人の目線の応援歌というか。
ファンキー加藤:正直、弱気になった時期もあって、事務所の社長に愚痴ったことがあるんですよ。最近の若いバンドマンの活躍を見て、「俺はもうオールドスクールですね」って言ったら、社長も「そうだな」って(笑)。「時代はどんどん先に進んで行くんですね」「じゃあおまえ、今からバンドできるか」「できないです」「じゃあどうする」「ファンキー加藤を貫き通します」みたいな会話があって。そういった気持ちも全部アルバムにぶつければ、それがファンキー加藤のオリジナルになるだろうという思いはありました。筋肉痛が2日後に来る年代の、ありのままの姿がこのアルバムですよ。
――シングル以外の、アルバムの新曲を中心に掘っていくと、まず「今だけを信じて」。ここで<お互い激動の平成をよくもまあ乗りきって来れたな>と歌ってる、「お互い」って誰なんだろう。
ファンキー加藤:それはおそらくファンではあるんだけど、特に誰ということはなくて。ザ・クロマニヨンズのヒロトさんが、「今やれてることが素晴らしい」ってインタビューでよく言うんですよ。過去も未来も素晴らしいけど、今やっていることがいちばんいいことなんだって、そこからインスパイアされた部分もあります。いろんなことがあった平成が終わって、令和2年になって、「こうやって生きてる俺たち最高じゃん?」ということですね。それはファンの皆さんも、僕に興味のない皆さんも含めて、「よく乗りきって来れたな。今がいちばんいいよな」と言いたかったので。
――先行配信された「終われない歌」は?
ファンキー加藤:これがさっき話した、愚痴や弱音から生まれた曲なんですよ。「俺はもうオールドスクールですね」「じゃあ引退するか」「嫌です。歌い続けます」という会話の中で生まれた決意です。サビの頭のフレーズ<歌うよ まだ終われない歌を>のところは、「歌うよ、ストレートに」「歌うよ、ラジカセのように」とか、いろいろ出したんですよ。最終的に「終われない歌」という言葉の、諦めきれない感じや鬼気迫る感じがいいなと思って。「終わらない」じゃなくて「終われない」が良かったんですよね。結果的にそれがタイトルになって良かったです。
「終われない歌」MVフル(2020年4月1日(水)発売4thアルバム「F」収録楽曲)
――「DIVE」はロックバンドのスタイルの、新曲の中ではいちばん勢いがある感じ。
ファンキー加藤:メロディのテンションが俺を若返らせてくれたというか、このサウンドとメロディで老け込むわけにはいかないぞと思って、20代後半ぐらいの気持ちで歌った気がします。先行配信曲として「終われない歌」と最後まで競ってた1曲です。
――「八王子キッド」は、タイトルどおりの地元賛歌。ファンモン時代から脈々と続くライン。
ファンキー加藤:そうですね。ビートたけしさんの「浅草キッド」が昔から好きで、最近は紅白歌合戦でまた脚光を浴びましたけど、俺もいつか、デビューちょっと前ぐらいの時期のことを書いてみたいなと。高校生ぐらいの時期を思い返すことはあったんですけど、20代前半の、ファンモン結成ちょっと前ぐらいの思い出を曲にしたことがないなと思ったので。そんな時にたまたま、KICK THE CAN CREWのLITTLEくんと食事する機会があって、LITTLEくんも八王子だから、地元の話とか、ラップの韻の話とかしてたら、自分の中でどんどん「八王子キッド」の構想が膨らんできて、「よし、これを形にしよう」と。それで、ほぼほぼ完成したぐらいの時に、LITTLEくんから「新曲聴いてよ」って連絡が来て、パッと見たらタイトルが「八王子少年」で(笑)。
――あははは。モロ被り。
ファンキー加藤:すぐ電話しましたもん。「大丈夫ですかね?」「いいんじゃない。お互いバイブス通じ合ってるね」って。最近になって、「八王子会」というものが出来て、一緒にご飯食べることになったりとか、八王子にまつわる出来事が多くて楽しんでます。
――こういう、ファンキー加藤のラッパーとしてのアイデンティティを見せつける曲は、必ず入れてほしいですよ。アルバムに1曲は。
ファンキー加藤:やってて楽しいです。この曲に限らず、今回結構韻を踏んだんですよ。「デ・マ」もそうで、それはラップをする際のマナーですから。踏もうと思えばまだまだちゃんと踏めるぞと思いましたね。去年の年末にCreepy Nutsと一緒にラジオをやらせてもらった時に、R-指定くんがファンモンの初期の曲の韻をすごくほめてくれたんですよ。それってあんまり触れられなかったことなんですね、当時は。J-POPフィールドに来てみると、韻の大切さは脚光を浴びづらくて、「じゃあ何が大切なんだ?」ってチャンネル数を増やしていった結果、韻を踏むパーセンテージが減っていった。でもR-指定くんがめちゃくちゃ絶賛してくれて、自分の中でまた韻の火が再燃して、それが「八王子キッド」や「デ・マ」には反映されてると思います。楽しいんですよ、韻を踏むのって。
――<とにかくパーティーを続けよう>というフレーズも、ある年齢以上のラップを知ってる人はピンとくるフレーズだし。
ファンキー加藤:ちょっとニヤッとしてくれれば。これはいいフレーズですよね。
――「死守」は、生きる/死ぬというテーマに真っ向から向き合った曲。こんなに直球でしっかり歌うバラードってありそうでなかった気がする。
ファンキー加藤:ここまで「死」というものを連想させるのは、ファンキー加藤としてどうなんだ?という意見もあったんですが。僕も年齢を重ねてきて、そういう災害や事件のニュースを目にした時の心の痛み具合が変わってきたんですね。そういうところから「死守」というワードが出てきて、「自分の命のように大切なものってなんだろう?」とか、内面と向き合いながら書きました。今回のアルバム、ひとつの試みとして、全体的に曲を短くしてるんですよ。こういうバラードは、今までは5分を超えてたんですけど、省けるところは省いてます。サブスクの時代なので、11曲入って43分とか。オールドスクールですけど、そこは世の流れにちゃんと乗ろうと(笑)。「あれ、King Gnuの曲って短いぞ」みたいな、そのへんはちゃんと研究して作りました。
――そして「デ・マ」ですけどね。これは……。
ファンキー加藤:これは……サビで完全に「デ〇マ」って言ってますね(笑)。
――ああそうか。これがアルバムごとに必ず1曲入ってる、やりたい放題な曲。今気づいた(笑)。
ファンキー加藤:いいんですそれで。最初はマネージャーも社長も気づいてなくて、結構時間が経ってからカミングアウトしたんですけど、社長はノーリアクションでした(笑)。毎回この1曲だけは、事務所のスタッフさんもレコード会社のディレクターさんもノータッチで、自由にやれる場所。それで今回は「デマ」と「デ〇マ」をダブルミーニングにして作ってみました。
――みなさんぜひ、エロとメッセージの高度なダブルミーニングの世界をご堪能あれ(笑)。
ファンキー加藤:今までの、このタイプのおふざけソングは、その時代を彩ったダンスミュージックで作ってきたんですよ。で、今はトラップが流行ってるから、T-PAINみたいにオートチューンをかけてラップしてみるかって、田中隼人と一緒にキャッキャ言いながら作った曲ですね。オートチューンの機材も購入したので、ツアーでもやります。知らない方のために、一応小道具として「デ〇マ」を用意しておこうと思います(笑)。
――はいはい(笑)。そしてアルバムのラストを飾るのが、SPICY CHOCOLATE名義で一足先にリリースされていた「夢のカケラ feat.ファンキー加藤 & ベリーグッドマン(SC Remix) / SPICY CHOCOLATE」。
ファンキー加藤:これはボーナストラックのような、ライブ終演後のBGMみたいな感覚で。気持ちよく余韻に浸ってもらおうと。
――そんなアルバムのタイトルは、超シンプルに『F』。
ファンキー加藤:アルバムのタイトルも決まってないのに、まずツアータイトルを発表しなきゃいけなかったんですよ。ファンキー加藤の“F”、4回目のツアーだからFOURの“F”とか。あとは、俺が多用する未来=Futureという言葉とか、飛ぶ=Flyとか、自由=Freedomだったり、好きな言葉を英語にしたら“F”で始まるワードが多かったんですよ。「Fight」とかね。それをひとくくりにして<ライブツアー“F”>ということにして、それぞれの“F”をこのツアーで見つけようみたいな。それでアルバムはどうしようという時に、「あらためて“F”って良くない?」みたいな、そういう決まり方ですね。
――みなさんぜひ。今が最高のファンキー加藤をお楽しみに。
ファンキー加藤:社長との話で生まれた、「ファンキー加藤で居続けなきゃいけない」という約束は十分果たせたなと思ってるし、アルバムを作っている段階ですごく手ごたえがあったんですよ。完成間近になって、「今まででいちばん好き」と言ってくれるスタッフさんもいて、それがしっかりとした自信になってますね。胸を張って、「これが今のファンキー加藤です」と言える1枚に仕上がったと思います。

【取材・文:宮本英夫】

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リリース情報

F

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2020年04月01日

ドリーミュージック

01.希望のWooh
02.今だけを信じて
03.終われない歌
04.君でした
05.DIVE
06.八王子キッド
07.死守
08.Be Alright
09.デ・マ
10.40
11.夢のカケラ feat.ファンキー加藤&ベリーグッドマン(SC Remix) / SPICY CHOCOLATE

お知らせ

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■ライブ情報

※新型コロナウイルスの感染拡大状況により公演日程に変更が生じる可能性がございます。開催に関する最新情報につきましてはアーティスト公式サイトにてご確認ください。

ファンキー加藤 ライブツアー“F”
【ライブハウスツアー】
04/11(土)静岡 Live House浜松窓枠 ※延期
04/18(土)高知 X-pt. ※延期
04/19(日)広島 SECOND CRUTCH ※延期
04/25(土)兵庫 神戸VARIT. ※延期
04/26(日)京都 KYOTO MUSE ※延期
05/09(土)鹿児島 CAPARVO HALL
05/10(日)福岡 DRUM LOGOS
05/16(土)長野 松本Sound Hall a.C
05/17(日)新潟 Live Hall GOLDEN PIGS RED STAGE
05/23(土)北海道 旭川CASINO DRIVE
05/24(日)北海道 帯広 MEGA STONE
05/30(土)岩手 盛岡CLUB CHANGE WAVE
05/31(日)福島 Club SONIC iwaki
06/06(土)茨城 水戸LIGHT HOUSE
06/07(日)栃木 HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2
06/13(土)大阪 umeda TRAD
06/19(金)東京 恵比寿LIQUIDROOM
07/11(土)兵庫 神戸VARIT. ※振替公演
07/31(金)静岡 Live House浜松窓枠 ※振替公演
08/28(金)広島 SECOND CRUTCH ※振替公演
08/29(土)高知 X-pt. ※振替公演
09/26(土)京都 KYOTO MUSE ※振替公演

【ホールツアー】
10/10(土)埼玉 さいたま市文化センター 大ホール
10/24(土)愛知 名古屋市公会堂
10/31(土)香川 サンポートホール高松 大ホール
11/03(火・祝)宮城 東京エレクトロンホール宮城
11/15(日)神奈川 相模女子大学グリーンホール 大ホール
11/28(土)岡山 岡山市民会館
12/05(土)福井 越前市文化センター 大ホール
12/26(土)大阪 NHK大阪ホール

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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