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FOMARE「変わらないまま、ずっと変わり続けたい」――ツアー初日Zepp Tokyo公演を観た

FOMARE | 2020.11.09

 3ピースバンド・FOMAREの全国ツアー「LIVE HOUSE TOUR 2020~おいでよ目を閉じて~」初日の公演が、10月30日にZepp Tokyoにて行われた。7月にリリースしたEP「目を閉じれば」を引っ提げて行われる今回のツアーは、新型コロナウイルスの影響でスケジュールが大幅に押してしまっていた。そういった事態も含めて、このライブに至るまで、メンバーもオーディエンスも、様々な苦労や我慢、葛藤があったはずだ。しかし、この日の会場を満たしていたのは、あの場にいた全員の「この日を待っていた」という沸点を超えたポジティブな感情の爆発――ただそれだけだった。

 アマダシンスケ(Vo/Ba)、カマタリョウガ(Gt/Cho)、オグラユウタ(Dr/Cho)がステージに登場すると、約8ヵ月振りとなるライブハウスでのライブを「愛する人」でスタートさせた。精魂込めて<当たり前だった毎日がただ恋しいだけなんだ/当たり前だったその声がただ恋しいだけなんだ>と歌われるこの曲は、FOMAREが「LIVE HOUSE」をテーマに、コロナ禍中にリモートでの制作を経て完成させた楽曲。「当たり前」だと思っていたものの真価に気付くのが、「当たり前」が崩壊した時だというのは皮肉なものではあるけれど、FOMAREはそこで何かを切り捨てたり諦めたりすることなく、自分たちが抱えられるものを全部ここまで持ってきた。MCでアマダが「8ヵ月の間に1回だけスタジオ配信のライブをやったんですけど、(ライブハウスでの)無観客ライブはやらなかったんです。我慢して良かったです!」と話していたが、彼らが長い時間耐えて、耐えて、耐え抜いて、やっと辿り着いたZepp Tokyoという初めての大舞台。それは彼らにとっても、オーディエンスにとっても、まさにご褒美のような夜だっただろうし、そんな彼らの喜びは「気持ちで応えてください! その気持ちに負けないようにライブをします!」というアマダの宣言から届けられた「風」のエネルギッシュなアクトからもしっかりと伝わってきた。MCでアマダが「8ヵ月間、待たせてごめんなさい! だけど、皆さん待っていてくれてありがとう!」と叫んでいたが、この時は序盤中の序盤だったにもかかわらず、待っていた甲斐があったと思えるライブになる予感しかしなかった。

そして「この8ヵ月間で、色んな感謝もしたし、色んな愛情を知りました」と語り、改めて「今日までずっと溜めてきた気持ちを、ひとつも零さないように最後までやって帰ります」と気合いを言葉にしてから、ミラーボールの眩い光に包み込まれる中で「REMEMBER」を届けた。恋愛感情、友情、仲間への信頼――人間同士の関わり合いの中で育ちながら、時には一瞬で消えてしまう、儚くも強くもある様々な関係性。そんな人間関係の中で次々と生まれていく、「ありふれた」と呼ぶには思い入れがあり、「ドラマ」と呼ぶには日常的なストーリーを、切なさと高揚が同居する音楽に仕立てあげているFOMARE。オーディエンスも、それぞれの想いを彼らの曲に宿しながら、1曲1曲を抱きしめるように大事に聴いている様子が印象的だった。

 そして、以前Zepp Tokyoで行われたTHE NINTH APOLLO主催のライブイベント「平日興行行脚」に出演した際に2階の特設ステージでライブをしたという想い出を振り返りながら、改めて11月25日にリリースされるEP「Grey」を以てメジャーデビューをすることを発表! 会場は祝言に替えた盛大な拍手で彼らを祝った。新たなステージに進むことについて、アマダは「新しくなるだけじゃなく、変わらないまま、ずっと変わり続けたい。ただただ新しいものを追求するだけじゃなくて、僕たちFOMAREが好きな音楽を愛しながら進んでいこうと思っています」と、バンドを代表して決意を述べた。彼らの言う「変わらないまま、変わり続ける」という言葉を、私は「芯となる部分を変えないまま、変化に順応していく」という意味だと解釈した。パンクミュージックが基軸にある彼らのメロディにポップスの要素が加わってきたこともそのひとつだと思うし、自分たちが大事にしているものさえ見失わなければ、いつ、どのフィールドに立っても、FOMAREはFOMAREで在り続けられる。昨年遂行した「47都道府県ツアー」の経験も含め、そう思える自信が3人の共通意識として築き上げられてきたからこそ、不安よりも楽しみな気持ちが勝ったベストな状態で新しい道への一歩を踏み出すことができたのだろう。そしてライブ後半戦の幕開けに、新曲「Grey」を堂々と披露! ドラミングの力強さと哀愁のバランスが絶妙なメロディが心を揺さぶってくる、FOMAREの新たな始まりを告げる1曲だ。そしてそこからは彼らの代表曲とも呼べる名曲「stay with me」と「Lani」を熱演し、ラストまで全速力でかっ飛ばしていった。終演後に熱望されたアンコールでは「ライブハウスに歌います!」とのコールから「HOME」を届け、さらに鳴り止むことのなかった拍手に招かれたダブルアンコールでは、EP「Grey」に収録される新曲「fall」を贈り、ステージを後にした。

 この日の「Lani」の大サビにて、アマダは「今日は俺に任しとけ!」と叫んで、いつもならシンガロングが沸き起こるパートを、ひとり、声が枯れるほどの大声で歌い上げた。そして、その心意気に賛同し、自らの声を彼らに託すかのように、オーディエンスは一斉に拳を振り上げた。そのやりとりが生み出した景色があまりにも綺麗で、久方振りに「ライブでしか出会えない美しさ」に触れられて、心から嬉しい気持ちになった。演者もオーディエンスも関係なく、人間同士の熱のぶつかり合いと生音をきっかけにリミッターが外れ、目に見えない何かから解かれ、感情が開放される場所――それができる場所がライブハウスであり、今まで私たちが当たり前のように体感してきたことだ。そういった出来事も踏まえて、この日のFOMAREのライブを観ることで大事なものを取り戻した気持ちになった。きっとFOMAREにとっても、メジャーデビュー前にこの状況下でツアー初日を迎えられたという経験は、新しい道を歩む途中でいつか振り返った時に、とてつもなく大きな意味を持ったものになっているだろう。そう思わずにはいられない、「記念」と呼ぶに相応しいライブだった。

【取材・文:峯岸利恵】
【Photo by RUI HASHIMOTO[SOUND SHOOTER]】

tag一覧 ライブ FOMARE

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リリース情報

Grey

Grey

2020年11月25日

Sony Music Associated Records

01.Grey
02.Holo
03.fall
04.恋する自分が好きなだけだと思う
05.Hello Blue Days(KEYTALK × FOMARE)

お知らせ

■ライブ情報

FOMARE LIVE HOUSE TOUR 2020
〜おいでよ目を閉じて〜

※終了した公演は割愛
[2021]
02/06(土) 宮城 仙台JUNK BOX
02/13(土) 沖縄 output
02/16(火) 兵庫 MUSIC ZOO KOBE太陽と虎
02/18(木) 岡山 IMAGE
02/20(土) 福岡 FUKUOKA BEATSTATION
02/22(月) 京都 KYOTO MUSE
02/26(金) 群馬 高崎club FLEEZ
02/28(日) 新潟 NIIGATA GOLDEN PIGS RED
03/02(火) 大阪 心斎橋BIG CAT
03/03(水) 愛知 名古屋DIAMOND HALL
03/05(金) 神奈川 横浜F.A.D
03/09(火) 北海道 札幌PENNY LANE24


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01/13(水) 東京 下北沢SHELTER

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06/01(火) 東京 Zepp Tokyo
06/09(水) 愛知 Zepp Nagoya
06/10(火) 大阪 Zepp Osaka Bayside

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